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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1155974
審判番号 不服2004-6439  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2007-04-12 
事件の表示 平成6年特許願第213749号「撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年3月22日出願公開、特開平8-76162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年9月7日に出願された特願平6-213749号に係り、原審において平成15年11月17日付の拒絶理由を通知したところ、平成16年1月30日に意見書とともに明細書を補正する手続補正書が提出され、平成16年2月23日付で拒絶査定され、その後、前記拒絶査定に対し査定不服審判が平成16年4月1日に請求されるとともに、平成16年4月28日付の明細書を補正する手続補正書が提出され、当審において、前記平成16年4月28日付の手続補正に対し平成18年2月24日付で補正の却下の決定をするとともに、平成16年1月30日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし請求項4に係る発明に対し、当審が平成18年2月24日付の拒絶理由を通知したところ、平成18年4月28日に意見書とともに同日付の明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由の内容
当審が平成18年2月24日付で通知した拒絶理由は、その内容の概略が次のとおりのものである。
「平成16年4月28日付の手続補正は却下されたので、本願発明は、同年1月30日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである。
本件出願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平4-110835号公報
2.特開平5-107619号公報
3.特開平5-224270号公報
4.特開平2-280131号公報
5.実願平4-62851号(実開平6-16946号)のCD-ROM
6.特開平6-197412号公報[当審注:特開平6-194712号公報の誤記であり、この誤記については審判請求人も了解済み]」

第3 審判請求人がした平成18年4月28日付の手続補正の内容
当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由に対して、審判請求人が平成18年4月28日付でした手続補正による特許請求の範囲についての補正は、次のとおりのものである。
平成16年1月30日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4の記載を、
「【請求項1】 手振れを検出する振れ検出部と、
撮影光学系の少なくとも一部を移動させて、振れ補正を行う振れ補正光学系と、
前記振れ補正光学系を駆動して振れ補正を行う振れ補正駆動部と、
前記振れ検出部からの出力に基づいて、前記振れ補正駆動部の動作を制御する振れ補正制御部と、
振れ補正を行うか否かを設定する振れ補正作動スイッチと、
撮影準備動作を開始させる撮影準備作動スイッチと、
前記撮影準備作動スイッチのオン動作により、前記撮影準備動作が開始された後に、その撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントしてそのカウント時間が設定された時間に達したときに、前記撮影準備動作を停止する撮影準備停止タイマーとを備えた撮影装置において、
前記撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続し、前記撮影準備停止タイマーのカウント時間が前記設定された時間に達したときに前記振れ補正駆動部の動作を停止することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】 請求項1に記載の撮影装置において、
前記振れ補正の実行中に前記撮影準備停止タイマーが開始した場合に、前記撮影準備作動スイッチのオンによって前記撮影準備停止タイマーのリセットを行うことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】 請求項1に記載の撮影装置において、
前記振れ補正の実行中に前記撮影準備停止タイマーが開始した場合に、前記撮影準備作動スイッチのオンによって前記撮影準備停止タイマーのリセットを行い、かつ、前記振れ補正作動スイッチのオフにより前記撮影準備動作と前記振れ補正を停止することを特徴とする撮影装置。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮影装置において、
前記振れ補正作動スイッチにより前記振れ補正が選択され、前記振れ補正の実行中に前記撮影準備停止タイマーが開始した場合に、前記撮影準備作動スイッチのオンによって、
前記撮影準備停止タイマーのリセットを行う第1のモードと、
前記振れ補正作動スイッチにより前記振れ補正が選択され、前記振れ補正の実行中に前記撮影準備停止タイマーが開始した場合に、前記撮影準備作動スイッチのオンによって前記撮影準備停止タイマーのリセットを行い、かつ、前記振れ補正作動スイッチのオフにより撮影準備動作と振れ補正を停止する第2のモードと、を選択可能な選択スイッチを備えたことを特徴とする撮影装置。」
と補正する。

第4 当審の判断
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明1」という。)は、当審が平成18年2月24日付で通知した拒絶理由に対してなされた、上記平成18年4月28日付の手続補正に基づく本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上記「第3」欄の【請求項1】を参照。)
「手振れを検出する振れ検出部と、
撮影光学系の少なくとも一部を移動させて、振れ補正を行う振れ補正光学系と、
前記振れ補正光学系を駆動して振れ補正を行う振れ補正駆動部と、
前記振れ検出部からの出力に基づいて、前記振れ補正駆動部の動作を制御する振れ補正制御部と、
振れ補正を行うか否かを設定する振れ補正作動スイッチと、
撮影準備動作を開始させる撮影準備作動スイッチと、
前記撮影準備作動スイッチのオン動作により、前記撮影準備動作が開始された後に、その撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントしてそのカウント時間が設定された時間に達したときに、前記撮影準備動作を停止する撮影準備停止タイマーとを備えた撮影装置において、
前記撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続し、前記撮影準備停止タイマーのカウント時間が前記設定された時間に達したときに前記振れ補正駆動部の動作を停止することを特徴とする撮影装置。」

2 特許法第29条第2項違反について
(1)引用刊行物等及びその記載事項
引用刊行物1:特開平5-107619号公報
引用刊行物2:特開平4-110835号公報
引用刊行物3:特開平2-280131号公報
引用刊行物4:実願平4-62851号(実開平6-16946号)のCD-ROM
周知技術文献:特開平4-27923号公報

ア 当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由の中で「引用例2」として提示した上記特開平5-107619号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「ブレ検出及び補正が可能なカメラ」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】【請求項1】 ブレ検出用のイメージセンサと、そのイメージセンサが出力する撮像データに基づいて、被写体像のブレのデータを演算する演算手段と、その演算手段が出力するブレのデータに基づいて、カメラの撮影光学系の一部を駆動してブレ補正を行なうブレ補正手段と、撮影レンズの焦点距離情報を入力する入力手段と、前記焦点距離情報に基づいて、ブレ検出及び補正の周期を決定する周期決定手段と、を備えたことを特徴とするブレ検出及び補正が可能なカメラ。」
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は被写体像のブレを検出し、フィルム露光中に撮影光学系の少なくとも一部を駆動して被写体像のブレを補正し、ブレのない写真を撮影するブレ検出及び補正が可能なカメラに関する。」
「【0013】【実施例】 以下この発明の実施例を図面を参照して説明する。図1はこの発明に係るブレ検出カメラの主要部を示すブロック図である。
【0014】 図1を参照して、測光用SPD(Silicon Photodiode)2からの信号は測光回路3に入力される。測光回路3は、SPD2の出力を演算し、メインCPU1へ演算結果を出力する。撮影レンズ4は交換可能であり、絞り駆動手段5および焦点調節駆動手段6を通して絞りの駆動および焦点調節が行なわれる。撮影レンズ回路7には、撮影レンズ4に固有のレンズのF値、焦点距離、ブレ補正のための各種パラメータが記憶される。撮影レンズ回路7にはさらに、ブレ補正用の光学系を駆動するアクチュエータおよびその制御回路も内蔵されている。
【0015】 AF検出ミラー8は、位相差型AF検出モジュール13へ撮影レンズ4を通った光束の一部を導く。AF検出ミラー8はフィルム露光時にフィルムへの光を遮らないようにAF検出ミラー駆動手段9により退避される。フォーカルプレーンシャッタのシャッタ幕10は、先幕および後幕を含み、シャッタ幕駆動手段11によって駆動される。スイッチS1はシャッタボタンの第1ストロークでONし、測光およびAF動作を行なう。スイッチS2はシャッタボタンの第2ストロークでONする。フィルム巻上げ手段14は、フィルムの巻上げ、巻戻しを行なう。スイッチSCは連写モードを作動するためのスイッチである。
【0016】 ブレ検出光学系18は後述のブレ検出用のCCDに光を導くための光学系である。
【0017】 12は手ブレの検出及び補正を行うための手ブレ検出補正手段である。12はブレ演算を行うための演算器やブレ補正光学系を制御するためのコントロールCPUを有する。この手ブレ検出補正手段12については後に詳しく説明する。
【0018】 メインCPU1にはさらに、測光値によって定まる露光量に対し、露出補正を行なうための露出補正量入力手段16と、フィルム感度を設定するためのフィルム感度設定手段17とが接続される。
【0019】 図2はこの発明に係るブレ検出カメラの光学系を示す図である。図2を参照して、撮影レンズは4は、ブレ補正レンズ20と、ブレ補正レンズ20を移動するためのブレ補正レンズ駆動装置21とを含む。なお、補正レンズ駆動装置21の詳細については公知であるのでその説明は省略する。カメラボディ32内にはペリクルミラー22が固定されており、撮影レンズ4を通った光束の一部がファインダ光学系の方へ反射され、残りがシャッタ幕10の方へ透過される。ペリクルミラー22を透過した光束の一部は、AF検出ミラー8により位相差AF検出モジュール24の方へ導かれる。AF検出ミラー8は、フィルム露光時にはフィルム上に到達する露光中の光束を遮らないような位置までAF検出ミラー駆動手段9(不図示)により退避される。
【0020】 ペリクルミラー22により反射された光束は、コンデンサレンズ25を透過してペンタプリズム26に入る。ペンタプリズム26の接眼レンズ27側には測光SPD2が設けられる。ペンタプリズム26の1つの面26aは、ハーフミラーになっており、入射光束の一部をベンタプリズム26の外へ取出す。取出された光束はブレ検出光学系18を通り反射鏡28で反射されてブレ検出センサ29へ達する。ブレ検出光学系18はファインダ焦点面30上の像をブレ検出センサ29上に再結像する。ブレ検出センサ29はCCDエリアセンサである。なお、ペンタプリズム26は、ガラスブロックタイプだけではなく、中が空気層となっている中空ペンタミラーのようなものでもよい。
【0021】 以上のようにこの発明においては、ベリクルミラー22を用いて被写体の光をブレ検出センサとなるエリアセンサ29へ伝えるようにしたため、TTL方式のカメラにおいて画像検出方式でブレ検出が行なわれる。さらに、ブレ検出センサ29までの光路中にペンタプリズム26を利用しているため、ブレ検出センサ29までの光路を別に設ける必要がない。」
「【0025】 次に図4を参照して手ブレ検出補正手段12の内容を説明する。手ブレ検出センサ29はCCD撮像部41と、CCD出力を増幅する出力アンプ42と、CCDの積分時間を制御するための照度モニタ43と、測光回路44とを含む。クロックジェネレータ45は、測光回路44の出力を検知してCCDの積分時間および出力アンプのゲインを設定する。また、クロックジェネレータ45はCCDの駆動クロック、A/Dコンバータ51、D/Aコンバータ48、感度ばらつき補正メモリ49、暗出力補正メモリ50のクロックも発生する。ブレ検出センサ29の出力は、差動アンプ46およびゲインコントロールアンプ47を通ってA/Dコンバータ51へ入力される。暗出力補正メモリ50、感度ばらつき補正メモリ49にはそれぞれCCDの感度ばらつき、暗出力の補正のためのデータが記憶されている。暗出力補正メモリ50は、D/Aコンバータ48に対しデータを出力する。D/A変換の出力信号は、差動アンプ46の差動入力に入力される。これによりCCD41の暗出力は補正される。ゲインコントロールアンプ47はデジタル信号により増幅度が制御されるアンプである。ゲインコントロールアンプ47は感度ばらつき補正メモリ49に記憶されている感度ばらつき補正データにより制御され、CCD出力の感度ばらつきを補正する。
【0026】 A/Dコンバータ51の出力信号は、基準部メモリ52または参照部メモリ53に記憶される。アドレス生成器54は基準部メモリ52、参照部メモリ53の各メモリの動作に必要なアドレスデータを発生させる。
【0027】 演算器55は減算回路56と、絶対値回路57と、加算回路58とレジスタ59とを含む。基準部メモリ52および参照部メモリ53のデータが入力として与えられる。
【0028】 演算器55からの演算結果は、演算の種類により相関結果メモリ60、縦コントラストメモリ61または横コントラストメモリ62のどれかに記憶される。これらのメモリは、コントロールCPU63に接続されており、コントロールCPU63からアクセスできる。コントロールCPU63は、アドレス生成器54およびクロックジェネレータ45の制御も行なう。」
「【0109】 以上説明したブレ検出及び補正を含めたカメラのシーケンスを、メインCPU及びブレ補正のコントロールCPUのフローチャートに基づいて説明する。
【0110】 まずメインCPU1のシーケンスについて説明する。図13を参照して、ステップ#5(以下ステップを略す)のループでメインCPUは待機状態にある。すなわち、#5のループによって、レリーズボタンの第1ストロークでスイッチS1がオンになるのを待っている。スイッチS1がオンになると、AF完了フラグAFEF及び信号がリセットされ(#10)、測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラー15など必要な回路の電源が投入される(#15)。次に補正レンズ20の原点復帰信号が撮影レンズ4へ出力され(#20)、タイマがリセットされた後、スタートされ(#25)、撮影レンズ4のレンズデータが入力される。レンズデータ入力後、撮影レンズ4の焦点距離fLに適した補正周期TSが決定され(#32)、開放測光が行なわれる(#35)。なお焦点距離fLとTSの対応は既に述べたように、fL<50mmではTS=10ms、50mm≦fL<200mmではTS=5ms、200mm≦fLではTS=2.5msと決定する。
【0111】 #40ではAF完了フラグAFEFが1かどうかが判断され、1であればプログラムは#65へジャンプし、1でなければプログラムは#45へ進む。#45ではAF検出が行なわれる。#50では、#45のAF検出の結果合焦しているかどうかが判断される。合焦していればプログラムは#55へ行き、合焦していなければ#60へ分岐する。#60ではピント位置へ撮影レンズ4が駆動された後、#45へプログラムはジャンプする。#55でAF完了フラグAFEFが1にされる。#65では#35で得られた測光値、フィルム感度および#45のAFの結果得られた距離情報をもとにAE演算が行なわれる。#70ではCCD41の露光量が設定される。
【0112】 #75でシャッタボタンの第2ストロークのスイッチS2がONされているかどうかがチェックされる。スイッチS2がONであれば、プログラムは#105へ行き、ONでなければ#80へ分岐する。#80ではスイッチS1がONかどうかを判断する。スイッチS1がONであれば、プログラムは#25へジャンプする。ONでなければシャッタボタンが全く押されていないので、#85で一定時間経過しているかどうかをタイマでチェックする。一定時間経過していれば測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラ15等の回路の電源をOFF(#100)してから#5の待機状態へプログラムはジャンプする。一定時間経過しなければ、AF完了フラグAFEFが0に設定され(#90)、プログラムは#80へ進む。
【0113】 #105では、シャッタボタンの第2ストロークが押されているのでレリーズ信号がHレベルにされ、コントロールCPUにその旨が知らされる。#110以降は撮影レンズ4の絞りを#65のAE演算で求めた絞り値まで絞り込む(#110)。ブレ検出信号がHレベルにされ、コントロールCPUのブレ検出シーケンスがスタートされる(#120)。AFミラー8が退避され(#125)、絞り込み測光が行なわれ(#130)、AE演算を行なったシャッタ速度が修正される(#135)。
【0114】 #140ではコントロールCPUからの露出許可信号がHレベルになるのを待つ。露出許可信号がHレベルになれば、シャッタ幕10が走行され、露出制御が行なわれる(#145)。露光が終われば、原点復帰信号が撮影レンズ4に出力され(#150)、補正レンズ20が原点位置へ戻され、ブレ検出信号がLレベルにされて露光が終了したことがコントロールCPUへ知らされる(#155)。
【0115】 フィルムの巻き上げを行ない(#160)、連写モードかどうかが判断される(#165)。連写モードでなければ、#180へプログラムは分岐し連写モードであれば#170へ行き、スイッチS2がONかどうかが判断される。ここでスイッチS2がOFFであれば、連写モードではあるが連写しないのでプログラムは#180へ分岐する。スイッチS2がONであれば、連写を行なうので、ブレ検出信号がHレベルにされ(#175)、プログラムは#130へジャンプする。
【0116】 #180以降は、AFミラー8が検出位置へ戻され(#180)、撮影レンズ4の絞りが開放され(#185)、レリーズ信号がLレベルにされて(#190)、コントロールCPU63にその旨が知らされる。S2がOFFになるのを待ち(#205)、プログラムは#80へジャンプして次の撮影に備えられる。」

そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明1」という。)の記載が認められる。
「シャッタボタンの第1ストロークでONし、測光およびAF動作を行なうスイッチS1と、シャッタボタンの第2ストロークでONするスイッチS2と、ブレ検出用のブレ検出光学系18及びブレ検出センサ29と、該ブレ検出センサ29が出力する撮像データに基づいて、被写体像のブレのデータを演算する演算器55と、該演算器55が出力するブレのデータに基づいて、カメラの撮影レンズ4のブレ補正レンズ20をブレ補正レンズ駆動装置21により駆動してブレ補正を行なう手ブレ検出補正手段12と、メインCPU1とを備えるブレ検出及び補正が可能なカメラにおいて、
前記手ブレ検出補正手段12が、さらにブレ演算を行うための前記演算器55やブレ補正レンズ20を制御するためのコントロールCPU63を有し、
前記メインCPU1のシーケンスにおいて、ステップ#5のループによりレリーズボタンの第1ストロークでスイッチS1がオンになるのを待機し、スイッチS1がオンになると、測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラー15など必要な回路の電源が投入され、タイマがリセットされてスタートした後、レンズデータ入力後、ステップ#32で撮影レンズ4の焦点距離fLに適した補正周期TSが決定され、ステップ#35で開放測光が行なわれ、#45でAF検出が行われ、ステップ#65でAE演算が行なわれ、ステップ#75でシャッタボタンの第2ストロークのスイッチS2がONされているかどうかがチェックされ、スイッチS2が、ONでなければ、ステップ#80でスイッチS1がONかどうかを判断され、スイッチS1がONでなければシャッタボタンが全く押されていないので、ステップ#85で一定時間経過しているかどうかをタイマでチェックされ、一定時間経過しなければ、プログラムは前記ステップ#80へ戻り、一定時間経過していれば、ステップ#100で測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラ15等の回路の電源をOFFしてから、プログラムが前記ステップ#5の待機状態へ戻るようにした、ブレ検出及び補正が可能なカメラ」

イ 当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由の中で「引用例1」として提示した上記特開平4-110835号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「像振れ補正機能付きカメラ」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1)カメラの振れを検出するセンサと、該センサの出力より手振れ量を検出する手振れ検出手段と、撮影レンズ群の光軸を偏心させる補正光学手段と、該補正光学手段を所定の位置にロック或はそのロック状態を解除するロック手段と、前記手振れ検出手段よりの出力に基づいてロックの解除された前記補正光学手段を駆動し、像振れ補正を行う像振れ補正手段とを備えた像振れ補正機能付きカメラにおいて、レリーズ釦操作に応答した撮影準備動作開始用のスイッチ及び撮影動作開始用のスイッチの状態変化に連動させて前記ロック手段を動作させるロック制御手段を設けたことを特徴とする像振れ補正機能付きカメラ。」(1頁左欄4?17行)
「(発明の利用分野) 本発明は、撮影レンズ群の光軸を偏心させる補正光学手段と、該補正光学手段を所定の位置にロック或はそのロック状態を解除するロック手段と、手振れ検出手段よりの出力に基づいてロックの解除された前記補正光学手段を駆動し、像振れ補正を行う像振れ補正手段とを備えた像振れ補正機能付きカメラの改良に関するものである。」(1頁右欄6?13行)
「(発明の実施例) 以下、本発明は図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明の第1の実施例を示すブロック図であり、該図において、1はカメラの振れ情報を出力する後述のセンサの制御駆動を行うセンサ制御、駆動回路であり、2はカメラ内に組込まれたカメラ振れ検出用のセンサ、3は該センサ3の出力より手振れ量を検出する手振れ量検出回路である。4は手振れ量検出回路3よりの手振れ量を絶対変位として換算する為の手振れ量絶対変位変換回路、5は該回路4にて絶対変位されたアナログ量をディジタル値に変換する為の高速A/D変換回路、6はカメラの撮影準備動作,撮影動作,振れ検出動作の制御,補正光学機構の駆動制御やロック機構の制御を行うシーケンス制御回路である。7は検出される手振れ量に応じて作動する像振れ補正装置であり、7-aが実際の補正レンズを動かすことによって振れを補正し、像面上での像を安定させる補正光学機構であり、補正レンズを支持する部材に被係合部を持つ。7-bは補正レンズをある位置にロックする係合部を持ち、前記被係合部に対して係合に依るロック及びその係合の解除を行うロック機構である。8は実際の補正レンズの位置を検出する補正レンズ位置検出装置、9はその補正レンズの位置をディジタル値に変換する高速A/D変換回路である。」(3頁右上欄5行?同頁左下欄11行)
「次に、第4図のフローチャートを用いて動作説明を行う。
先ず撮影準備を示すSW1がオンすると、DXコードT/W(テレ/ワイド)スイッチ等の撮影準備を示すスイッチ入力判定を行い、各種の警告表示用のLEDを消灯し、カメラ撮影の為のBC(バッテリチエツク)1を行い、次に手振れ検出系の動作を保証する為のBC2を行う(ステップ201→202→203→204→205)。その結果BC1がNG(動作保証電圧以下)或はBC2もNGであれば、警告表示(1)又は警告表示(2)を行い、もとのSW1待機動作に戻る(ステップ206→207→201又は208→209→201)。一方、BC1、BC2ともにOKであれば、シーケンス制御回路6は不図示の測光及び測距回路に信号を送り、測距、測光動作を指示する(ステップ206→208→210→211)。そして先のスイッチ入力(ステップ202にて)されたデータをもとにそれら測光,測距結果を演算し、ストロボ使用時であり且つストロボが充電していなければ、ストロボ充電を行い(ステップ213→214)、ストロボ未使用か或はストロボ充電していれば、次に補正光学機構7-aの動作の為のBC3を行い(ステップ213→215)、NGであれば警告表示(3)を行い(ステップ216→221)、OKであれば警告表示(3)を解除(ステップ216→217)する。
次に、カメラ外部にある像振れ補正装置を作動させるか否かのスイッチ状態を判定して、該スイッチがオンであれば該像振れ補正装置内のロック機構7-bのロック解除を前述のようにして行う(ステップ218→219)。つまり、ロック機構7-bにある第3図のプランジャー型ラッチソレノイドへの通電によって行われ、次いで補正光学機構7-aにて像振れ補正効果が得られるべく補正レンズを動作させる(ステップ220)。また、像振れ補正装置を作動させるか否かのスイッチがオフであればロック機構7-bのロック解除も像振れ補正動作も行わない。
次に、撮影動作開始を示すSW2がオンすると、レンズのAF駆動を行い、シャッタ開閉の一連の露光動作を行う(ステップ222→223→224)。この撮影動作の完了後、前記補正方角手段による像振れ補正動作を停止し、その後内のロック機構7-bを作動させ、補正レンズの位置をロックする(ステップ225→226)。その後フィルム巻上げを行う(ステップ227)。」(5頁左下欄9行?6頁左上欄15行)

ウ 当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由の中で「引用例4」として提示した特開平2-280131号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、「像ブレ防止機能付カメラ」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「10はカメラ本体内に設けられた全体シーケンスの制御を行うマイコン(CPU1)、11はレリーズ釦の半押しによりONするSW(SW1)、12はレリーズ釦の全押しによりONするレリーズSW(SW2)、13は絞り込みモード選択時にONとなるSW(SW3)であり、外部より撮影者の好みに応じて選択される。」(3頁右上欄12?18行)
「23はレンズ内の制御を司どるマイコン(CPU2)、24は像ブレ防止起動用SW(ZSW)であり、ONの時像ブレ防止動作が作動する。」(3頁左下欄13?15行)
「第3図(a)の#50にてレリーズ釦の半押しか否かの検知(SW1がONしているか否か)を行い、検知したなら#51にてAFLG0,CFLG0のフラグの初期設定として「0」を設定する。」(4頁左上欄2?6行)
「次に、#87にて像ブレ防止起動用SW24(ZSW)の検知を行い、該ZSWがONならば、#88にてまずカメラ側に伝えるべきセンタリングの有無のフラグであるZFLGを「1」とするとともに、CPU2のP0端子の出力をハイレベルにする。」(5頁左下欄15?20行)
「#87にてZSWがOFFならば、#89にてフラグZFLGを「0」とし、P0端子にローレベルの出力を行い、アナログSW30をOFFさせ、像ブレ防止動作は行わない。」(5頁右下欄9?12行)

エ 当審が通知した平成18年2月24日付の拒絶理由の中で「引用例5」として提示した実願平4-62851号(実開平6-16946号)のCD-ROM(以下、「引用刊行物4」という。)には、「手ブレ補正装置」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】 本考案は、撮影時に生じる手ブレを検知し、その補正を行なう手ブレ補正装置に関するものである。
【0002】【従来の技術】 一般に、手持ち撮影をする場合、特に、焦点距離の長いレンズを使用したときや遅いシャッタスピードを使用したときには、手ブレが生じやすく、写真の画質を損なうこととなる。これを防止するために、撮影光学系の一部又は全部を光軸と直交する方向に移動させて像ブレを補正することが知られている。
【0003】【考案が解決しようとする課題】 しかし、前述した手ブレ補正装置は、流し撮り撮影などのように、撮影者が意図的にカメラを振った場合に、意図に反して、手ブレ補正を行なってしまうこととなる。このような問題を解決するために、ブレ補正を行うか否かを選択するオンオフスイッチをカメラに設けた場合に、焦点調節からシャッタレリーズまでの一連の撮影動作から外れたブレ補正モードの切り替え動作を行うために、操作性を損なうこととなる。すなわち、焦点調節リング又はシャッタレリーズボタンに添えた手を一旦離す必要があり、操作性が悪いという問題があった。
【0004】 そこで、本考案は、前述した従来の課題を解決し、操作性の優れた手ブレ補正装置を提供することを目的としている。」
「【0013】 ブレ補正制御手段6は、ブレ検出手段3の出力に基づいて、ブレ補正レンズ群L3の移動を制御する手段である。シフト機構10は、ブレ補正制御手段6の出力に従って、ブレ補正レンズ群L3を光軸に対して直角方向にシフトさせる機構である。ブレ補正モード切り替えスイッチ12は、ブレ補正を行うモードと行わないモードを切り替えるスイッチであり、焦点調節リング13上に設けられている。ここで、焦点調節リング13上とは、リング等の部材の上又は横などに、その部材に直接設けられていることをいう。」
「【0015】 図2は、実施例におけるブレ補正モード切り替え手段を示す構成図である。ブレ補正モード切り替えスイッチ12は、焦点調節リング13上に設けられている。具体的には、焦点調節リング13には、スライドスイッチ14が保持されており、スライドスイッチ14には、一体に摺動ブラシ15が設けられている。」
「【0017】 ついで、ブレ補正モード切り替えスイッチ12により設定されたモードを識別する(S23)。ブレ補正モード切り替えスイッチ12がオン状態(ブレ補正を行なう)の場合には、ブレ限界設定手段4は、入力されたこれらの信号からブレ限界値を決定し(S24)、比較判定手段5に信号情報を入力する。ブレ限界値は、前述したようにブレ補正を加味して決定される。ブレ検出手段3は、ブレを検出して(S25)、振動に応じて信号情報を比較判定手段5に入力する。ブレ補正制御手段6は、ブレ検出手段3の信号情報に従って、シフト機構10によりブレ補正レンズ群L3を移動してブレ補正を制御する(S26)。
【0018】 ブレ補正モード切り替えスイッチ12がオフ状態(ブレ補正を行なわない)の場合には、ブレ補正を加味しないブレ限界値が決定され(S24’)、ブレ検出(S25’)が行なわれる。」

オ 本願特許出願前に頒布された刊行物である特開平4-27923号公報(以下、「周知技術文献」という。)には、「半押しタイマを有するカメラ」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【請求項2】レリーズ釦の半押し操作で電源が投入され、該半押し操作が解除されても所定の電源保持時間が経過するまでは電源を保持する半押しタイマを有するカメラにおいて、
前記半押し操作の開始に伴って計時を開始する計時手段と、
撮影が行われるたびに前記半押し操作の開始から撮影までの撮影準備時間を前記計時手段の計時結果から求めて記憶する記憶手段と、
前記記憶された撮影準備時間から前記所定の電源保持時間を決定する決定手段とを具備することを特徴とする半押しタイマを有するカメラ。」
「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、半押しタイマを有するカメラに関する。
【0002】【従来の技術】 通常のAEカメラでは、レリーズ釦をレリーズ位置の手前の所定位置まで操作(半押し操作)すると半押しスイッチがオンし、これによりカメラ内の測光回路が作動して被写体輝度を検出する。そして、この被写体輝度に基づいて演算された露出値(絞り値やシャッタ速度)を例えば表示回路を介して液晶表示装置等に表示するカメラも知られている。上記半押しタイマとは、その後に半押し操作が解除されて半押しスイッチがオフしても所定の電源保持時間(例えば8秒)が経過するまでは電源を保持するものである。したがって半押し解除後も所定時間は上記露出値の表示が継続して行われるので、例えばこの露出値を見ながら手動により絞り値やシャッタ速度を調整(露出調整)する際に便利である。」
「【0011】 25は半押しスイッチ(電源投入スイッチ)であり、一端は接地され、他端はプルアップ抵抗27を介して電池13のプラス側に接続されるとともに、マイクロコンピュータ11の入力ポートI2に接続される。半押しスイッチ25は不図示のレリーズ釦の半押し位置を通過した位置よりも深い押下(半押し操作)に伴ってオンし、上述のメインスイッチ15がオンしていればこの半押しスイッチ25のオンによりカメラの電源が所定の電源保持時間だけ保持されるようになっている。」
「【0027】 ここまでの手順によれば、メインスイッチ15のオン後に半押し操作によって半押しスイッチ25がオンされると、ステップS107でパワー信号が出力されてトランジスタ19がオンし、各回路が作動可能な状態となるとともに、ステップS108で第一計時が開始される。その後、メインスイッチ15がオフされず、かつレリーズスイッチ29がオンされなければ、ステップS112で露出演算が行われるとともに、ステップS113でその露出値が表示され、ステップS103に戻る。そして、ステップS103で半押しスイッチ25のオフが判定されるとステップS109にジャンプし、その後、ステップS109で第一計時時間t1が所定の電源保持時間τとなったことが判定されるまでは継続的に露出演算と露出値の表示が行われることになる。すなわち、レリーズ釦の半押し操作が行われると、その後に半押し操作が解除されても、上記電源保持時間τが経過するまでは電源が保持されて露出値の表示が継続する。この電源保持時間τは、後述するステップで決定されるものであるが、上述したように当初はτo(8秒程度の時間)とされている。」

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と前記引用発明1とを比較すると、引用発明1における「ブレ検出用のブレ検出光学系18及びブレ検出センサ29」、「カメラの撮影レンズ4のブレ補正レンズ20」、「ブレ補正レンズ駆動装置21」、「ブレ演算を行うための前記演算器55やブレ補正レンズ20を制御するためのコントロールCPU63」及び「ブレ検出及び補正が可能なカメラ」のそれぞれが、本願発明1の「手振れを検出する振れ検出部」、「撮影光学系の少なくとも一部を移動させて、振れ補正を行う振れ補正光学系」、「前記振れ補正光学系を駆動して振れ補正を行う振れ補正駆動部」、「前記振れ検出部からの出力に基づいて、前記振れ補正駆動部の動作を制御する振れ補正制御部」及び「撮影装置」のそれぞれに相当する。
また、引用発明1においては、ステップ#5のループによりレリーズボタンの第1ストロークでスイッチS1がオンになるのを待機し、スイッチS1がオンになると、測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラー15など必要な回路の電源が投入され、タイマがリセットされてスタートした後、AF検出、AE演算等の撮影準備動作が開始されることから、引用発明1における「シャッタボタンの第1ストロークでONし、測光およびAF動作を行なうスイッチS1」が、本願発明1の、撮影準備作動スイッチのオン動作により撮影準備動作が開始されることになる「撮影準備動作を開始させる撮影準備作動スイッチ」に相当するといえる。
そして、引用発明1においては、ステップ#85で一定時間経過しているかどうかがタイマでチェックされ、一定時間経過しなければ、プログラムは前記ステップ#80へ戻り、一定時間経過していれば、ステップ#100で測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラ15等の回路の電源をOFFにしてから、プログラムが前記ステップ#5の待機状態へ戻るようになっているのであり、ステップ#100での測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラ15等の回路の電源がOFFとなることは、とりもなおさず、タイマに設定された一定時間が経過したときには、手ブレ補正コントローラ15等の回路の電源のみならず、測光回路3、AF検出モジュール13等の撮影準備動作の電源もOFFにされて、振れ補正駆動部の動作が停止するだけではなく、測光回路3、AF検出モジュール13等の撮影準備動作も停止することを意味している。
そうすると、引用発明1における前記「タイマ」は、本願発明1の「設定された時間に達したときに、撮影準備動作を停止する撮影準備停止タイマー」に相当するといえるとともに、引用発明1における前記「タイマ」は、本願発明1の「前記撮影準備停止タイマーのカウント時間が前記設定された時間に達したときに前記振れ補正駆動部の動作を停止する」機能をも併せて有しているといえる。
さらに、引用発明1においては、ステップ#5でスイッチS1がオンである場合に、ステップ#15に進んで回路がオンとなり、ステップ#25でタイマーがリセットスタートし、ついでステップ#32において補正周期TSを決定していることから、スイッチS1がオンになると、カメラの撮影レンズ4のブレ補正レンズ20をブレ補正レンズ駆動装置21により駆動してブレ補正を行なう手ブレ検出補正手段12も動作することになるから、引用発明1における「スイッチS1がオンになると、測光回路3、AF検出モジュール13、手ブレ補正コントローラー15など必要な回路の電源が投入され、タイマがリセットされてスタートした後、レンズデータ入力後、ステップ#32で撮影レンズ4の焦点距離fLに適した補正周期TSが決定され、ステップ#35で開放測光が行なわれ、#45でAF検出が行われ、ステップ#65でAE演算が行なわれ、ステップ#75でシャッタボタンの第2ストロークのスイッチS2がONされているかどうかがチェックされ、スイッチS2が、ONでなければ、ステップ#80でスイッチS1がONかどうかを判断され、スイッチS1がONでなければシャッタボタンが全く押されていないので、ステップ#85で一定時間経過しているかどうかをタイマでチェックされ、一定時間経過しなければ、プログラムは前記ステップ#80へ戻り、」の一連のフローは、本願発明1の「前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続し、」のフローに相当するといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、「手振れを検出する振れ検出部と、撮影光学系の少なくとも一部を移動させて、振れ補正を行う振れ補正光学系と、前記振れ補正光学系を駆動して振れ補正を行う振れ補正駆動部と、前記振れ検出部からの出力に基づいて、前記振れ補正駆動部の動作を制御する振れ補正制御部と、撮影準備動作を開始させる撮影準備作動スイッチと、前記撮影準備作動スイッチのオン動作により、前記撮影準備動作が開始された後に、その撮影準備作動スイッチの状態が継続している時間をカウントしてそのカウント時間が設定された時間に達したときに、前記撮影準備動作を停止する撮影準備停止タイマーとを備えた撮影装置において、前記撮影準備作動スイッチの状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続し、前記撮影準備停止タイマーのカウント時間が前記設定された時間に達したときに前記振れ補正駆動部の動作を停止する撮影装置」である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:本願発明1が「振れ補正を行うか否かを設定する振れ補正作動スイッチ」を備えるのに対し、引用発明1は、前記構成を備えていない点。
相違点2:本願発明1の撮影準備停止タイマーが、「撮影準備作動スイッチの『オフ』状態が継続している時間をカウントする」のに対し、引用発明1のタイマは、撮影準備作動スイッチの「オフ」状態が継続している時間をカウントしているのか、あるいは撮影準備作動スイッチの「オン」状態が継続している時間をカウントしているのか、が明確でない点。
相違点3:本願発明1では、「撮影準備作動スイッチの『オフ』状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続する」のに対し、引用発明1では、撮影準備作動スイッチの「オフ」状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続するのか、あるいは、撮影準備作動スイッチの「オン」状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続するのか、が明確でない点。

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
上記引用刊行物2に、「次に、カメラ外部にある像振れ補正装置を作動させるか否かのスイッチ状態を判定して、該スイッチがオンであれば該像振れ補正装置内のロック機構7-bのロック解除を前述のようにして行う(ステップ218→219)。つまり、ロック機構7-bにある第3図のプランジャー型ラッチソレノイドへの通電によって行われ、次いで補正光学機構7-aにて像振れ補正効果が得られるべく補正レンズを動作させる(ステップ220)。また、像振れ補正装置を作動させるか否かのスイッチがオフであればロック機構7-bのロック解除も像振れ補正動作も行わない。」(5頁右下欄16行?6頁左上欄7行)と記載されている。
また、上記引用刊行物3にも、「24は像ブレ防止起動用SW(ZSW)であり、ONの時像ブレ防止動作が作動する。」(3頁左下欄14?15行)、「次に、#87にて像ブレ防止起動用SW24(ZSW)の検知を行い、該ZSWがONならば、#88にてまずカメラ側に伝えるべきセンタリングの有無のフラグであるZFLGを「1」とするとともに、CPU2のP0端子の出力をハイレベルにする。」(5頁左下欄15?20行)及び「#87にてZSWがOFFならば、#89にてフラグZFLGを「0」とし、P0端子にローレベルの出力を行い、アナログSW30をOFFさせ、像ブレ防止動作は行わない。」(5頁右下欄9?12行)と記載されている。
さらに、上記引用刊行物4の段落【0013】にも「ブレ補正モード切り替えスイッチ12は、ブレ補正を行うモードと行わないモードを切り替えるスイッチであり、」と記載されている。
引用刊行物2、引用刊行物3及び引用刊行物4に開示されている上記技術事項からみて、「像振れ補正装置を作動させるか否かのスイッチ」、「像ブレ防止起動用SW24(ZSW)」、「ブレ補正モード切り替えスイッチ12」は、本願発明1の「振れ補正を行うか否かを設定する振れ補正作動スイッチ」に相当するものであり、本願特許出願時の従来周知の技術であるということができる。
そうしてみると、引用発明1に前記周知技術を付加することにより、引用発明1の「ブレ検出及び補正が可能なカメラ」に、本願発明1の相違点1に係る前記「振れ補正を行うか否かを設定する振れ補正作動スイッチ」を備えるようにすることは、当業者が困難性を伴うことなく容易に想到できたものである。

(イ)相違点2について
本件審判請求人の出願に係る本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】に、「【従来の技術】 従来、この種の撮影装置は、AF装置を備えたものが一般的になっており、さらに、撮影時の像振れを補正する振れ補正装置を付加することが提案されている。この振れ補正装置は、手振れ等による光軸の角度変動を検出し、その検出結果に基づいて、撮影画像の像振れを補正する装置であって、例えば、特開平2-66535号(単玉レンズ光学系の例)、特開平2-183217号(内焦式望遠レンズの撮影光学系の一部のシフトによる像補正の例)等が知られている。」と記載され、それに続く段落【0003】に、「一方、このような撮影装置には、半押しタイマーが搭載されていた。この半押しタイマーは、半押しスイッチのオンにより、撮影準備動作を開始した後に、その半押しスイッチのオフ状態が継続している時間をカウントして、カウント時間が設定された時間に達したときに、その撮影装置の撮影準備動作を停止する装置である。」と記載されていて、前記「半押しスイッチのオンにより、撮影準備動作を開始した後に、その半押しスイッチのオフ状態が継続している時間をカウントして、カウント時間が設定された時間に達したときに、その撮影装置の撮影準備動作を停止する半押しタイマー」が、従来周知の技術であることが示唆されている。
そして、本願特許出願前に頒布された上記周知技術文献〔特開平4-27923号公報〕の段落【0002】に、従来の技術として、「通常のAEカメラでは、レリーズ釦をレリーズ位置の手前の所定位置まで操作(半押し操作)すると半押しスイッチがオンし、これによりカメラ内の測光回路が作動して被写体輝度を検出する。そして、この被写体輝度に基づいて演算された露出値(絞り値やシャッタ速度)を例えば表示回路を介して液晶表示装置等に表示するカメラも知られている。上記半押しタイマとは、その後に半押し操作が解除されて半押しスイッチがオフしても所定の電源保持時間(例えば8秒)が経過するまでは電源を保持するものである。したがって半押し解除後も所定時間は上記露出値の表示が継続して行われるので、例えばこの露出値を見ながら手動により絞り値やシャッタ速度を調整(露出調整)する際に便利である。」が記載され、また、同じく段落【0027】にも、「ステップS103で半押しスイッチ25のオフが判定されるとステップS109にジャンプし、その後、ステップS109で第一計時時間t1が所定の電源保持時間τとなったことが判定されるまでは継続的に露出演算と露出値の表示が行われることになる。すなわち、レリーズ釦の半押し操作が行われると、その後に半押し操作が解除されても、上記電源保持時間τが経過するまでは電源が保持されて露出値の表示が継続する。」が記載されていることは、前記「半押しタイマー」が、本願特許出願時の周知技術であることを裏付けるものである。
そして、前記「半押しタイマー」が、本願発明1の「撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントする撮影準備停止タイマー」に相当することは明らかである。
そうしてみると、引用発明1の「ブレ検出及び補正が可能なカメラ」におけるタイマを、従来より周知の前記「半押しスイッチのオンにより、撮影準備動作を開始した後に、その半押しスイッチのオフ状態が継続している時間をカウントして、カウント時間が設定された時間に達したときに、その撮影装置の撮影準備動作を停止する半押しタイマー」とすることにより、本願発明1の相違点2に係る前記「撮影準備作動スイッチの『オフ』状態が継続している時間をカウントする撮影準備停止タイマー」の構成とすることは、当業者が困難性を伴うことなく容易に想到できたことである。

(ウ)相違点3について
本願発明1の相違点3は、「撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントしているのか、あるいは撮影準備作動スイッチのオン状態が継続している時間をカウントしているのか」の相違に基づくものであるから、前記相違点3は、前記した本願発明1の相違点2における「撮影準備停止タイマー」に起因しているといえる。
しかして、前記「(イ)相違点2について」欄において前述したとおり、本願発明1の「撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントする撮影準備停止タイマー」は、従来より周知のものであり、引用発明1の「ブレ検出及び補正が可能なカメラ」におけるタイマを、従来周知の「撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している時間をカウントする撮影準備停止タイマー」とすることが、当業者に容易に想到できたことであることを参酌すれば、本願発明1の相違点3についても、本願発明1の相違点2についてと同様に、引用発明1のタイマとして、従来周知の前記「半押しスイッチのオンにより、撮影準備動作を開始した後に、その半押しスイッチのオフ状態が継続している時間をカウントして、カウント時間が設定された時間に達したときに、その撮影装置の撮影準備動作を停止する半押しタイマー」を採用することにより、本願発明1の相違点3に係る前記「撮影準備作動スイッチのオフ状態が継続している前記カウント中は前記振れ補正駆動部の動作を継続する」の構成は、当業者が困難性を伴うことなく容易に想到できたことというべきである。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術から予測できる範囲内のものであり、格別のものということができない。

ウ まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、当審が通知した上記拒絶の理由によって拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-07 
結審通知日 2007-02-13 
審決日 2007-02-27 
出願番号 特願平6-213749
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森内 正明
森口 良子
発明の名称 撮影装置  
代理人 鎌田 久男  

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