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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1156073 |
審判番号 | 不服2004-4860 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-10 |
確定日 | 2007-04-18 |
事件の表示 | 平成9年特許願第194956号「皮膚美白剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月31日出願公開、特開平10-81618〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年7月4日(優先権主張 平成8年7月16日)の出願であって、平成15年10月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成16年1月5日付けで意見書とともに手続補正書が提出され、平成16年1月26日付けで拒絶査定がされ、平成16年3月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成16年4月9日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 平成16年4月9日付けの手続補正(以下、「審判請求時の手続補正」という。)により、本願の特許請求の範囲は請求項1のみになった。この請求項1は、審判請求時の手続補正前の平成16年1月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に相当し、審判請求時の手続補正により請求項1が削除されたのに伴って、請求項2が繰り上がって請求項1となったものである。 以上のとおり、審判請求時の手続補正の特許請求の範囲に係る補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであるから、適法な補正である。 さて、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年1月5日付け手続補正書及び平成16年4月9日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりの下記のものである。 「【請求項1】下記一般式(I)で表されるエラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の粒子を含有する皮膚美白剤組成物であって、該粒子は平均粒子径が10μm以下で、かつ粒子径が30μm以下のものが70重量%以上のものであることを特徴とする皮膚美白剤組成物。 【化1】 (I) {式中、R1、R2、R3及びR4は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアシル基、-(CmH2m-O)n-H(ただし、mは2又は3、nは1以上の整数)で示されるポリオキシアルキレン基、又は下記構造式【化2】(式省略) で表される糖残基であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。 R5は水素原子、水酸基、又は炭素数1?8のアルコキシ基を表す。}」 3.刊行物及びその記載事項 刊行物1:特開昭64-79103号公報(拒絶査定の引用例2) 刊行物2:国際公開第96/11002号パンフレット(拒絶査定の引用例3) 刊行物1について 記載事項1-1:特許請求の範囲 請求項1及び請求項2 「(1)一般式〔I〕、 ・・・[I] 〔式中、R1?R4は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、・・・ポリ酸化アルキレン(炭素数2または3)残基・・・、R5は、水素原子、水酸基または炭素数1?8のアルコキシ基である。〕・・・で表わされるエラグ酸系化合物を含有することを特徴とする外用剤。 (2)エラグ酸系化合物が一般式〔I〕で表わされる化合物のアルカリ金属塩であって、一般式〔I〕で表わされる酸をpH12?14のアルカリ金属の水溶液に溶解させた後、pHを5?8に低下させて生じた沈澱を捕集したものである請求項1記載の外用剤。」 記載事項1-2:2頁左上欄2?5行 「〔産業上の利用分野〕本発明は外用剤、特に美白効果を有するフェイスケアー及びボディケアー効果に優れた皮膚用外用剤に関するものである。」 記載事項1-3:3頁左上欄16行?右上欄2行 「本発明では、・・・エラグ酸系化合物・・・の一部をアルカリ金属・・・で中和した塩を用いると水分散性が向上し、外用剤調製時の分散不良というトラブルを解消でき、製品の外観や保存性にすぐれ、美白効果も一層すぐれるとの利点が得られる。」 刊行物2について 記載事項2-1:請求の範囲1 「1.有効成分としてニメスリドが基剤成分中に分散状態で配合されている外用抗炎症剤。」 記載事項2-2:請求の範囲11および14 「11.基剤成分中に有効成分である微粒子化したニメスリドを徐々に加え、攪拌して分散させることを特徴とする外用抗炎症剤の製造方法。・・・ 14.微粒子化したニメスリドとして平均粒子径が0.01?75μmであるものを用いることを特徴とする請求項11・・・に記載の製造方法。」 記載事項2-3:2頁18?19行 「ニメスリドは非常に難溶性で水或いは種々の有機溶媒に溶けにくい。」 記載事項2-4:3頁3?14行 「発明が解決しようとする課題 本発明の目的は、吸収性のよいニメスリド外用剤であって、・・・局所用外用抗炎症剤を得ることにある。 課題を解決するための手段 ・・・ニメスリドを基剤成分中に分散状態で配合すると驚くべきことに、溶解型で配合した製剤と同等以上の薬理効果を示し」 記載事項2-5:4頁1?8行 「有効成分であるニメスリドは、・・・分散されるべき粒子の粉砕の容易性、経済性の点からみてその平均粒子径は0.01μm以上のものがよく、一方、経皮吸収性、塗布時の触感(ざらつき感)の点からみて75μm以下であること、即ち200メッシュの篩いを通過するものがよく、より好ましくは0.5?50μm、さらに好ましくは、1?30μmである。」 記載事項2-6:12頁11行?13頁6行 実施例5として、ニメスリド(粒子径:0.5?10μm)配合の抗炎症クリーム剤を得たことが記載されている。 記載事項2-7:18頁末9?末行 「発明の効果 本発明のニメスリドを分散状態で配合した外用抗炎症剤は、・・・慢性関節リウマチ、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱鞘炎、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛などの整形領域の抗炎症外用治療薬として大変有用である。」 4.対比・判断 刊行物1には、式 〔式中、R1?R4は水素原子、炭素数1?20のアルキル基、ポリ酸化アルキレン(炭素数2または3)残基、R5は、水素原子、水酸基または炭素数1?8のアルコキシ基である。〕で表されるエラグ酸系化合物(以下、「エラグ酸系化合物A」という。)あるいはそのアルカリ金属塩を含有する外用剤が記載(記載事項1-1)されるとともに、該外用剤の効能、適用部位、剤型に関して、特に美白効果を有する皮膚用外用剤であると記載されている(記載事項1-2)。 そうしてみると、刊行物1には、「エラグ酸系化合物A及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種を含有する皮膚美白用外用剤組成物」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 本願発明の一般式(I)中のR1?R4の選択肢の一つである「-(CmH2m-O)n-H(ただし、mは2又は3、nは1以上の整数)」は、刊行物1発明の一般式〔I〕中のR1?R4の選択肢の一つである「ポリ酸化アルキレン(炭素数2または3)残基」に相当するので、本願発明と刊行物1発明とは「エラグ酸系化合物A及びそのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種を含有する皮膚美白用組成物」で一致し、剤型について、本願発明は特に特定していないのに対し、刊行物1は外用剤としている点で相違し(相違点1)、エラグ酸系化合物A及びそのアルカリ金属塩の粒子の大きさについて、本願発明は「平均粒子径が10μm以下で、かつ粒子径が30μm以下のものが70重量%以上のもの」と特定しているのに対し、刊行物1発明は「粒子」と特定しておらず大きさについての特定もない点で相違(相違点2)する。 相違点1について検討する。 本願明細書の段落【0007】に、本発明は経皮吸収性の極めて優れた皮膚美白剤組成物を提供することを目的とすると記載され、また、段落【0046】に、本発明の皮膚美白剤は、経皮吸収性の極めて優れた美白効果の高い組成物で、塗布時の外観の極めて優れたもので、クリーム、乳液、化粧水等の基礎化粧料、ゼリー剤、軟膏等の医薬品や医薬部外品等の形態で広く好適に使用できると記載されていることから、本願発明の皮膚美白剤組成物は、剤型を特に特定していないものの、実質的には美白を目的とする皮膚用外用剤で化粧料、医薬品、医薬部外品という用途に使用するものである。 そうすると、相違点1には実質的な相違はなく、本願発明および刊行物1発明はともに、皮膚美白用外用剤組成物である。 相違点2について検討する。 刊行物1発明は、本願発明と同じくエラグ酸系化合物A又はそのアルカリ金属塩を有効成分として含有させた外用剤であるが、刊行物1にはエラグ酸系化合物Aやそのアルカリ金属塩が粒子状態で含有されているとは記載されていない。 しかし、刊行物1には、エラグ酸系化合物Aやそのアルカリ金属塩の水分散性を向上すると美白効果も一層すぐれる旨の記載がされているから(記載事項1-3)、刊行物1には、エラグ酸系化合物Aやそのアルカリ金属塩は、分散状態すなわち粒子状態で含有されていることと、その粒子の分散性を向上させると美白効果が向上することとが開示されていると解するのが自然である。 ところで、粒子の分散性は、粒子の大きさを小さくすることで向上することも周知の事項である(化学大辞典編集委員会編 「化学大辞典8」縮刷版第32刷 1989年8月15日 共立出版株式会社発行 179頁「分散系」の項 17?19行)。 そうすると、粒子の分散性を向上させ、もって美白効果を向上させるために、粒子の大きさを小さくしてみることは、刊行物1に記載される事項及び周知事項から当業者が容易に着想することができる。 また、難溶性のために粒子の状態で外用薬に含有させる薬効成分について、経皮吸収性を向上し、もって薬効を向上するために、粒子の大きさを小さくする技術も刊行物2に記載されている。 刊行物2の外用抗炎症剤はエラグ酸系化合物を含有するものではないが、エラグ酸系化合物と同様に水や有機溶媒に難溶性の抗炎症物質であるニメスリド(記載事項2-3)を、基剤成分中に分散状態で含有させるものであり(記載事項2-1)(記載事項2-2)、分散状態で含有させると、経皮吸収性等の問題点が解決できたというものである(記載事項2-4)(記載事項2-5)。 そして、刊行物2に記載される経皮吸収性や塗布時の触感(ざらつき感)と薬効成分粒子の大きさに関する上記知見(記載事項2-4)(記載事項2-5)を皮膚美白剤組成物に含有させる成分粒子の大きさの検討に応用してみることは、ニメスリドを分散状態で配合した外用抗炎症剤の使途が慢性関節リウマチ、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱鞘炎、筋肉痛などで(記載事項2-7)、この外用抗炎症剤を塗布される皮膚の状態が本願発明の皮膚美白剤を塗布される皮膚の状態と大きな差を有するとは考えられない、すなわち刊行物2に記載される外用薬に薬効を発現させる経皮吸収力は、本願発明の皮膚でも同等程度であると推測できることから、容易に着想しえることと考えられる。 さて、本願発明は、本願明細書の段落【0008】によれば、経皮吸収性を向上するために、平均粒子径を極めて小さく、しかも特定の粒度を有するものとし、優れた美白効果を発揮するようにしたというものであるところ、経皮吸収性を向上して美白効果を向上するために、粒子の大きさを小さくしてみることは、上記理由から当業者が容易に着想することができるものである。 次に、粒子の平均粒子径及び特定の粒度についての本願発明の数値特定が、当業者が容易になしえたものか否か検討する。 刊行物2には、粒子の大きさについて、経皮吸収性及び塗布時の触感の点から上限値は「75μm以下であること」と記載され、逆に粉砕の容易性、経済性の点から下限値について「平均粒子径は0.01μm以上のものがよく」と記載され、また、200メッシュの篩いを通過するものがよく、より好ましくは0.5?50μm、さらに好ましくは1?30μmであると記載されており(記載事項2-5)、実施例では0.5?10μmのものを使用している(記載事項2-6)。 そうすると、経皮吸収性や触感の改善を目的として、粒子の大きさに関して平均粒子径を10μm以下とすることは、刊行物2、特に実施例に記載されている粒子の大きさを参考にして当業者が容易に導き出せる。 また、特定の粒度の粒子の含有割合についても、平均粒子径は小さくても大きな粒径の粒子が多く含まれているようなエラグ酸化合物A及びそのアルカリ金属塩では、経皮吸収されずに無駄になってしまう粒子が多く、触感も良くないであろうことは刊行物2の記載を見れば容易に考えられることであり、また、そのようなものを回避しようとすることも当然考えることであるから、これを回避すべく、特定の粒度の粒子の含有割合の特定を、平均粒径の特定と併せて行うことは当業者が容易に着想し得ることである。そして、「特定の粒度」を30μm以下として、その粒度の含有量を70重量%以上と決定することも、刊行物2に記載される経皮吸収される粒子径の数値を参考にすれば当業者が容易に導き出せる。 すなわち、刊行物1発明におけるエラグ酸化合物A又はそのアルカリ金属塩の粒子の平均粒子径を10μm以下とし、30μm以下の粒子の含有量を70重量%以上とすることは、エラグ酸化合物A及びそのアルカリ金属塩の粒径を最適なものに決めるに当たって、刊行物2の記載を参考にすれば、当業者が容易に導き出せることである。 また、本願明細書に記載される実施例、比較例からみて、エラグ酸化合物A及びそのアルカリ金属塩の大きさを本願発明のように特定することにより、経皮吸収性等において予測することができない効果が奏されているとは認められない。 したがって、相違点2に関する本願発明の特定は、当業者が容易に想到しえ得たものである。 なお、審判請求書の手続補正書(方式)の1頁(4)で、請求人は、刊行物2に記載される事項について、「化粧品ではなく、あくまでも医薬である外用抗炎症剤であり、病変した皮膚に対し適用され、・・・本願発明の美白剤組成物とは根本的に相違するものであります。」と主張している。 しかしながら、上記したところであるが、本願明細書の段落【0046】に「本発明の皮膚美白剤は、・・・クリーム、乳液、化粧水・・・等の基礎化粧料、・・・ゼリー剤、軟膏等の医薬品や医薬部外品等、種々の形態で広く好適に使用できる」と記載されているように、本願発明の皮膚美白剤組成物も化粧品に限られているものではない。 また、同じく上記したところであるが、刊行物2に記載される事項が外用抗炎症剤であっても、それを塗布する皮膚は、例えば内部に筋肉痛を起こしている部位の皮膚であるように必ずしも病変した皮膚に限られるものではない。 したがって、請求人の主張は妥当なものではない。 5.結論 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-13 |
結審通知日 | 2007-02-19 |
審決日 | 2007-03-05 |
出願番号 | 特願平9-194956 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 美穂 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
鈴木 紀子 天野 宏樹 |
発明の名称 | 皮膚美白剤組成物 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 浅井 賢治 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 小川 信夫 |