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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61C |
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管理番号 | 1156113 |
審判番号 | 不服2004-15176 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-23 |
確定日 | 2007-04-16 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 87171号「医療用補綴物の製作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 4月 4日出願公開、特開平 7- 88121号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う、平成6年3月17日(優先日:平成5年6月25日、出願番号:特願平5-155604号)の出願であって、平成16年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月22日付けで明細書の特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。 第2 平成16年7月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年7月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「石膏型内に樹脂を充填する医療用補綴物の製作方法において、型閉時前記石膏型内を外気からシールし、その石膏型内空間を真空度合500Torr?0.00001Torrでエアベントから真空排気しながら樹脂を充填することを特徴とする医療用補綴物の製作方法。」(以下、「本願補正発明」という。)とするものである。 (2)補正の目的の適否 本件補正は、その補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の構成要件である「エアベントから真空排気しながら樹脂を充填する」点を、「真空度合500Torr?0.00001Torrでエアベントから真空排気しながら樹脂を充填する」と限定するものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 ア 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、実願平2-96956号(実開平4-55313号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、第1図ないし第5図、並びに第10図ないし第15図とともに、以下の記載がなされている。 「(a)材料充填工程 第1図及び第2図又は第5図に示すように、・・・(中略)・・・シリンダ室3内に合成樹脂材料(例えばスルフォン樹脂A)を装填する。 ・・・(中略)・・・ (b)加熱溶解工程 第1図及び第2図又は第5図に示す材料装填ずみのシリンダ1を加熱炉に入れて加熱し、合成樹脂材料Aを溶解させる。 ・・・(中略)・・・ (c)成形準備工程 第10図乃至第15図は合成樹脂製義歯床のトランスファ成形機を示し、・・・(中略)・・・このトランスファ成形機を利用して、フラスコ(成形型)101をフラスコケース110内に挿入して、クランプ115でクランプする。そして、フラスコ101内の埋没材109に埋め込まれたワックスパターン108を、脱ロウ装置により、加熱軟化させて脱ロウ孔112からロウ回収槽30へ排出させて脱ロウし、埋没材109内にパターン空間133を形成する。それから、乾燥装置でパターン空間133内に乾燥空気を吹き流して、埋没材109を乾燥させる。 ・・・(中略)・・・ (d)射出成形工程 第10図?第15図に示すトランスファ成形機で従前通りのトランスファ成形を行う場合、第15図のようにして行う。 フラスコ101上にトランスファシリンダ128を載せ、トランスファシリンダ128内に可塑性固体の合成樹脂材料(例えば、アクリル樹脂)135を充填する。そして、フラスコ101内のパターン空間133内を真空引き装置で真空引きしながら押圧装置121の出力ロッド123をトランスファシリンダ128内に差し込み、合成樹脂材料135をフラスコ101内のパターン空間133に押し込んでいくのである。」(明細書第8ページ第15行?第11ページ第19行) 上記記載事項からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フラスコ101内の埋没材109に埋め込まれたワックスパターン108を、脱ロウ装置により、加熱軟化させて脱ロウ孔112からロウ回収槽30へ排出させて脱ロウし、埋没材109内にパターン空間133を形成し、 フラスコ101内のパターン空間133内を真空引き装置で真空引きしながら押圧装置121の出力ロッド123をトランスファシリンダ128内に差し込み、合成樹脂材料135をフラスコ101内のパターン空間133に押し込んでいく、 義歯床の成形方法。」 イ 対比 本願補正発明と引用発明を対比すると、その機能及び構造からみて、後者の「義歯床」は、前者の「医療用補綴物」に相当し、以下同様に、後者の「合成樹脂材料135」は前者の「樹脂」に、後者の「押し込んでいく」は前者の「充填する」に、後者の「真空引き」は前者の「真空排気」に、それぞれ相当する。そして、後者の「埋没材109」と、前者の「石膏型」は、共に「成形型」である点で共通する。 「パターン空間133」は「埋没材109内に」形成されているのであるから、引用発明の「合成樹脂材料135をフラスコ101内のパターン空間133に押し込んでいく」工程は、「埋没材109内に合成樹脂材料135を充填する」工程といえる。また、同様のことから、引用発明の「パターン空間133内を真空引き装置で真空引き」する工程は、「埋没材109内空間を真空引き装置で真空引き」する工程といえる。 そして、成形型内空間を真空引き装置で真空引きしながら樹脂を充填する成形技術において、該成形型の型閉時に、成形型内を外気からシールしなければ真空引きできないことは常識的なことであるから、引用発明は「型閉時前記成形型(埋没材109)内を外気からシール」していることは明らかといえる。また、真空引きするためにエアベントを設けることも当然のことであるから(必要であれば、特開平4-129716号公報、実願昭58-126749号(実開昭60-34416号)のマイクロフィルム等参照)、引用発明の「真空引き」も「エアベントから」真空引きするものであることは明らかである。 そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点を、本願補正発明の用語を用いて表すと、以下のとおりである。 〔一致点〕 「成形型内に樹脂を充填する医療用補綴物の製作方法において、型閉時前記成形型内を外気からシールし、その成形型内空間をエアベントから真空排気しながら樹脂を充填する医療用補綴物の製作方法。」 そして両者の相違点は以下のとおりである。 〔相違点1〕 本願発明の成形型は「石膏型」であるのに対し、引用発明の成形型は石膏であるのか否か不明な点。 〔相違点2〕 本願発明は「真空度合500Torr?0.00001Torrで」エアベントから真空排気するのに対し、引用発明はどの程度の真空度合いでエアベントから真空排気するのか不明な点。 ウ 当審の判断 〔相違点1について〕 上記相違点1について検討する。 医療用補綴物の成形において石膏型を用いることは、例えば特公昭59-10297号公報、及び実願平3-41730号(実開平4-133816号)のマイクロフィルム等に記載の如く周知である。引用発明の合成樹脂製の義歯床の成形型(埋没材109)として、上記周知の石膏型を用いることについて、これを妨げる特段の事情は認められず、これにより、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得ない格別な作用効果を奏するものとも認められない。 〔相違点2について〕 次に、上記相違点2について検討する。 真空排気するための真空度合いは、成形する物の材質や形状等に応じ、適宜調整すべきものであり、500Torr?0.00001Torrと限定することに、臨界的意義も認められない。また、成形型を石膏型としたことによって、真空引きの真空度合いを500Torr?0.00001Torrとすることに、困難性を生じたというような事情も認められない。 上記相違点1及び2を総合して判断しても、本願補正発明が引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な作用効果を奏するものとも認められない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月26日付け手続補正書により補正書された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。 「石膏型内に樹脂を充填する医療用補綴物の製作方法において、型閉時前記石膏型内を外気からシールし、その石膏型内空間をエアベントから真空排気しながら樹脂を充填することを特徴とする医療用補綴物の製作方法。」 第4 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2(3)ア」に記載したとおりである。 第5 対比 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の構成要件のうち、「真空度合500Torr?0.00001Torrでエアベントから真空排気しながら樹脂を充填する」の点を「エアベントから真空排気しながら樹脂を充填する」ものとしたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-06 |
結審通知日 | 2007-02-13 |
審決日 | 2007-02-26 |
出願番号 | 特願平6-87171 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61C)
P 1 8・ 575- Z (A61C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺澤 忠司 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
稲村 正義 一色 貞好 |
発明の名称 | 医療用補綴物の製作方法 |