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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
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管理番号 | 1156129 |
審判番号 | 不服2005-17455 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-12 |
確定日 | 2007-04-16 |
事件の表示 | 特願2002-198033「空気品質調節装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日出願公開、特開2003- 42493〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は,平成14年7月5日(パリ条約による優先権主張2001年7月6日,中華民国)の出願であって,平成17年6月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月12日に審判請求がなされるとともに,同日に手続補正がなされたものである。 2. 平成17年9月12日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年9月12日付け手続補正を却下する。 [理 由] (1) 補正の内容 平成17年9月12日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。 「空気中の二酸化炭素濃度を測定し,この測定された二酸化炭素濃度により,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を出力するための二酸化炭素濃度センサモジュールと, 増幅回路とフィルタと比較回路と駆動制御モジュールとを備えた空気調節制御モジュールと, 上記空気調節制御モジュールにより,外気の取り入れまたはその取り入れの終了を行うための空気調節機構と,を備え, 上記二酸化炭素濃度センサモジュールは,タイミング発生器と,赤外線光源と,赤外線センサと,を備え, 上記タイミング発生器が,上記赤外線光源を駆動するための2.84Hzの方形波信号を提供し, 上記赤外線光源が上記方形波信号の周波数の切り換えにより点滅し,また,フォーカスした後,平行に該赤外線センサに射出されることにより,該赤外線センサから二酸化炭素によって吸収され,残った光量を受け取って,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を該空気調節制御モジュールに出力し, 上記空気調節制御モジュールは,上記二酸化炭素濃度センサモジュールから出力された微小な電圧信号値を上記増幅回路で増幅して,更に,上記フィルタで濾波して,測定された二酸化炭素濃度が所定の最大値に達した場合,上記比較回路から信号を上記駆動制御モジュールに出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを行い, 上記二酸化炭素濃度が所定の最小値に達した場合,上記比較回路からの他の信号を上記駆動制御モジュールに出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを終了することを特徴とする空気品質調節装置。」 上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「二酸化炭素濃度センサモジュール」について, 「上記二酸化炭素濃度センサモジュールは,タイミング発生器と,赤外線光源と,赤外線センサと,を備え, 上記タイミング発生器が,上記赤外線光源を駆動するための2.84Hzの方形波信号を提供し, 上記赤外線光源が上記方形波信号の周波数の切り換えにより点滅し,また,フォーカスした後,平行に該赤外線センサに射出されることにより,該赤外線センサから二酸化炭素によって吸収され,残った光量を受け取って,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を該空気調節制御モジュールに出力し,」 と付加し限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2) 引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用した、特開平4-244541号公報(以下,「引用例1」という。),及び,特開平8-219507号公報(以下,「引用例2」という。),並びに,当審で新たに引用した特開平7-98273号公報(以下,「引用例3」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。 [引用例1について] 1a. 「本発明は,上記のような問題を解決したもので,建屋内の一酸化炭素または二酸化炭素の濃度に応じて,換気等を確実に行うことのできる通気自動調節装置を提供することを目的とする。」(段落【0004】) 1b. 「建屋の壁部材に形成される通気孔の開閉を行う開閉手段と,この開閉手段を駆動する駆動手段と,建屋内の一酸化炭素または二酸化炭素の濃度を検出する濃度センサと,この濃度センサからの信号を入力し入力された値が予め定められた値より大きい時に前記駆動手段を作動し前記開閉手段を開とし,予め定められた値より小さい時に前記駆動手段を作動し前記開閉手段を閉とする制御手段とを有することを特徴とする通気自動調節装置。」(【請求項1】) 1c. 「図1は,本発明の通気自動調節装置の一実施例を示すもので,図において符号11は建屋の外壁を形成する壁部材を示している。この壁部材11には,通気孔13が形成され,この通気孔13には,通気孔13の開閉を行う開閉手段15が配置されている。 この実施例では,開閉手段15は,例えば,ダンパーからなり,例えば,モータからなる駆動手段17を作動することにより開閉自在とされている。・・・。図において符号21は,建屋内の二酸化炭素(CO2 )の濃度を検出する濃度センサを示している。 そして,符号23は,濃度センサ21からの信号を入力し,入力された値が予め定められた値より大きい時に駆動手段17を作動し開閉手段15を開とし,予め定められた値より小さい時に駆動手段17を作動し開閉手段15を閉とする制御手段を示している。 ・・・。 また,制御手段23には,温度センサ31からの温度信号が入力されるように構成されている。」(段落【0008】中ないし【0010】中) 1d. 「すなわち,図2は,この制御手段23のフローチャートを示すもので,この制御手段23では,先ず,ステップ1に示すように,濃度センサ21から入力されるCO2の濃度値が,予め定められた濃度値αより大きいかが判断される。 なお,制御手段23内には,建屋内のCO2の濃度として許容できない濃度値である許容上限値αと,建屋内のCO2の濃度として充分に許容できる濃度値である許容下限値βとが予め記憶されている。CO2の濃度値が,予め定められた濃度値αより大きい時には,制御手段23により駆動手段17が作動され,ステップ2に示すように,開閉手段15が開とされる。」(段落【0010】中,【0011】) 1e. 「一方,ステップ8において濃度センサ21から入力されるCO2の濃度値が,予め定められた濃度値βより小さい時には,ステップ9に示すように,開閉手段15が閉とされる。」(段落【0015】) ところで,例えば記載事項1dの「この制御手段23では,先ず,ステップ1に示すように,濃度センサ21から入力されるCO2の濃度値が,予め定められた濃度値αより大きいかが判断される。」からみて,前記制御手段23が比較回路を備えていることは明らかである。また,二酸化炭素濃度が予め定められた許容下限値βに達した場合には,予め定められた許容上限値αに達した場合に比較回路から出力される信号とは異なる信号が出力されることは、明らかである。 したがって,記載事項1aないし1e及び図1,図2から,引用例1には次の発明(以下,「引用例1の発明」という。)が記載されていると認められる。 空気中の二酸化炭素濃度を測定し,この測定された二酸化炭素濃度により,該二酸化炭素濃度に対応する信号値を出力するための濃度センサ21と, 比較回路を備えた制御手段23と, 上記制御手段23により,外気の取り入れまたはその取り入れの終了を行うための開閉手段15の駆動手段17と,を備え 上記濃度センサ21は,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する信号値を該制御手段23に出力し, 上記制御手段23は,測定された二酸化炭素濃度が予め定められた許容上限値αに達した場合,上記比較回路から信号を出力して,上記開閉手段15の駆動手段17を駆動して外気の取り入れを行い, 上記二酸化炭素濃度が予め定められた許容下限値βに達した場合,上記比較回路からの他の信号を出力して,上記開閉手段15の駆動手段17を駆動して外気の取り入れを終了する通気自動調節装置。 [引用例2について] 2a. 「次に,図3を参照して,この例の多室用換気システムの電気的構成について説明する。この例の多室用換気システムは,同図に示すように,換気すべき複数の室(寝室31,子供部屋32,和室33,リビングルーム34)にそれぞれ設けられた電動式のVAVダンパ51?54と,各室31?35の室内空気を屋外に強制的に排出するための換気扇(集中排気装置)7と,室内空気の空気質を監視し,空気質の状態に応じた検出値を出力する多機能センサ8と,VAVダンパ51?54の開度を制御するための換気コントローラ9とから概略構成されている。」(段落【0022】) 2b. 「また,上記換気コントローラ9は,CPU(中央処理装置)91と,メモリ92と,入力回路(インタフェース回路)93と,出力回路94と,これらを収納する図示せぬボックスとから構成されている。この換気コントローラ9は,この例では台所35の壁面(図1参照)に設置されていて,その入力回路93には,通信線を介して多機能センサ8が接続され,また,出力回路94には,通信線を介してVAVダンパ51?54が並列接続されている。 上記入力回路93は,A/Dコンバータ,波形整形回路,フィルタ,増幅回路を有し,多機能センサ8から出力されるアナログの検出信号をデジタル信号に変換してCPU91へ供給する。また,出力回路94は,CPU91から逐次出される開度制御信号を,CPU91によって指定されたVAVダンパ51?54に選択的に供給する。」(段落【0025】,【0026】中) 2c. 「以上,この発明の実施例を図面により詳述してきたが,具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく,この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば,センサは,多機能センサに限らず,例えば,二酸化炭素センサのみ,煙センサのみ,あるいはガスセンサのみで構成しても良い。」(段落【0049】中) ところで,実施例における図4?図13のフローチャートとそれらの説明箇所には,例えば段落【0041】や【0043】中の「多機能センサ8の出力値が,予め設定された基準値以下に落ちつくと,」の如く,センサ8の出力値が予め設定された基準値等の所定値と比較判定されることが記載されているから,前記換気コントローラ9が比較回路を備えていることは明らかである。 [引用例3について] 3a. 「本発明は,このような事情に鑑みて創案されたもので,装置全体がコンパクトで且つシンプルな構造をしており,高湿度の室内雰囲気の正確な測定を長時間連続して行うことができるガス分析計を提供することを目的とする。」(段落【0006】) 3b. 「次に光源は,・・・,発熱量が極めて少ない赤外光源を選択した。尚,発熱源は光源に限らないが,検出器その他の装置や回路らかの発熱は僅かであるので,光源の発熱量を低減させることが重要である。そこで,光源は断続点灯(パルス)とし,且つ光源からの光はなるべく多く,でき得れば全量をガスセルに透過吸収させる。 ・・・。 しかし,本発明が目的とする室内特に培養室内のガス分析では,かなりの濃度(数十?数千ppm )で存在する炭酸ガスの測定が主目的である。従って,検出器の性能にもよるが,光源の消費電力は数W,特に1?5W程度で充分な目的を達する。しかも,デューテイ比(点灯時間と消灯時間の比)を20?50%程度にしているので実際の消費電力は更に低下する。 また光源断続の周期に関しては,その周期が長ければ検出感度は向上するが増幅器の安定性が損なわれ,周期が短ければ光源がほぼ常時点灯の状態となり,ゼロ点の判別が困難となる。従って,光源の点滅即ちパルスの周期は,検出器の測定精度に影響を及ぼさない範囲で,早い周期が望ましい。この観点から種々検討した結果,パルスの周期を1?3Hzとして光源を断続させるのが最も好ましいことを発見した。」(段落【0009】ないし【0011】中) 3c. 「次に,本発明を図面に示す実施例によって詳細に説明する。図1は,本発明の一例であるガス分析計1の光学系の要部縦断面図である。図に示すように,光源(タングステン電球)2からの光はその全光量がサンプルセル3へ照射され,透過吸収される。このサンプルセル3には,ガス温度を測定すべきサンプルガス7が拡散導入されている。 光学フィルタ4は,・・・測定対象のガス種の特定がなされる。炭酸ガス測定の場合は,4.3マイクロの透過特性のものを使用する。検出器5は,サンプルガス7によって吸収された光源2の赤外線の強度を検出する。・・・。 図2は,本発明分析計の機能ブロック図の一例を示す。パルス発振器8は,同期信号9を発生するためのものであって,光源2,同期整流器10,メモリ11の各々の信号を同期して処理するようにしている。 ・・・。 パルス発振器8からの同期信号9により,光源2の印加電圧はパルス状となされ,このため光源2からの放射赤外光は点滅状態の光となり,検出器5からの出力信号は交流の電気信号として得られる。」(段落【0014】ないし【0017】中) (3) 対比,一致点・相違点 本願補正発明と引用例1の発明とを対比すると,引用例1の発明の「濃度センサ21」,「制御手段23」,「開閉手段15の駆動手段17」,「予め定められた許容上限値α」,「予め定められた許容下限値β」及び「通気自動調節装置」は,それぞれ本願補正発明の「二酸化炭素濃度センサモジュール」,「空気調節制御モジュール」,「空気調節機構」,「所定の最大値」,「所定の最小値」及び「空気品質調節装置」に相当する。 したがって,両発明は, 空気中の二酸化炭素濃度を測定し,この測定された二酸化炭素濃度により,該二酸化炭素濃度に対応する信号値を出力するための二酸化炭素濃度センサモジュールと, 比較回路を備えた空気調節制御モジュールと, 上記空気調節制御モジュールにより,外気の取り入れまたはその取り入れの終了を行うための空気調節機構と,を備え, 上記二酸化炭素濃度センサモジュールは,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する信号値を該空気調節制御モジュールに出力し, 上記空気調節制御モジュールは,測定された二酸化炭素濃度が所定の最大値に達した場合,上記比較回路から信号を出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを行い, 上記二酸化炭素濃度が所定の最小値に達した場合,上記比較回路からの他の信号を出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを終了する空気品質調節装置の点で一致し,次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明では, 上記二酸化炭素濃度センサモジュールは,タイミング発生器と,赤外線光源と,赤外線センサと,を備え, 上記タイミング発生器が,上記赤外線光源を駆動するための2.84Hzの方形波信号を提供し, 上記赤外線光源が上記方形波信号の周波数の切り換えにより点滅し,また,フォーカスした後,平行に該赤外線センサに射出されることにより,該赤外線センサから二酸化炭素によって吸収され,残った光量を受け取って,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を該空気調節制御モジュールに出力するのに対して, 引用例1の発明では, 二酸化炭素濃度センサモジュールは,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する信号値を該空気調節制御モジュールに出力する点。 [相違点2] 本願補正発明では, 上記空気調節制御モジュールは,増幅回路とフィルタと比較回路と駆動制御モジュールとを備え,上記二酸化炭素濃度センサモジュールから出力された微小な電圧信号値を上記増幅回路で増幅して,更に,上記フィルタで濾波して,上記比較回路から信号を上記駆動制御モジュールに出力するのに対して, 引用例1の発明では, 上記空気調節制御モジュールが比較回路を備え,上記二酸化炭素濃度センサモジュールから出力された信号を比較回路から出力する点。 (4) 相違点についての検討 [相違点1について] 引用例3には,パルス発振器8と,赤外線光源2と,検出器5とを備えた二酸化炭素濃度分析計であって,上記パルス発振器8が上記赤外線光源2を駆動するための1?3Hzのパルス信号を提供し,上記赤外線光源2が,上記パルス信号の周波数で断続駆動されて点滅してその全光量がサンプルセル3へ照射され,透過吸収され,検出器5はサンプルガスである二酸化炭素によって吸収された光源2の赤外線の強度を検出して,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する信号を出力する二酸化炭素濃度分析計が記載されている。 ここで,引用例3の「パルス発振器8」,「検出器5」及び「二酸化炭素濃度分析計」は,それぞれ本願補正発明の「タイミング発生器」,「赤外線センサ」及び「二酸化炭素濃度センサモジュール」に相当する。 そして,引用例3において,上記パルス発振器8が上記赤外線光源2を駆動するための1?3Hzのパルス信号を提供するのは,光源の消費電力の低減化のもとに検出感度等を考慮したためである(記載事項3b参照)。 これに対して,本願補正発明において,タイミング発生器が,上記赤外線光源を駆動するための2.84Hzの方形波信号を提供するのは,本願明細書中の段落【0012】等の記載をみても,省電化や蛍光燈の60Hzとの区分け程度のためであって,格別なものでなく,また,2.84Hzと限定することに臨界的意義は認められない。 更に,パルス信号として方形波信号を用いることは,文献を挙げるまでもなく従来周知の技術である。 加えて,二酸化炭素等の濃度を測定する赤外線ガスセンサ装置において,測定した二酸化炭素濃度に対応して,微小な電圧信号値を出力することは従来周知の技術である(例えば,特開昭51-88291号公報,特開平7-280730号公報,特表2000-510950号公報参照。)。 したがって,引用例1の発明において,引用例3に記載された二酸化炭素濃度分析計を用い,その際,赤外線をフォーカスした後、平行に射出するようにして,相違点1における本願補正発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2について] 引用例2には,二酸化炭素濃度に対応する信号値を出力するための二酸化炭素センサ8と,換気コントローラ9と,上記換気コントローラ9によりその開度を制御され,外気の取り入れの調節を行うための電動式のダンパと,を備えた空気質を調節制御する換気システムにおいて, 上記換気コントローラ9は,フィルタ,増幅回路及び比較回路を有し,二酸化炭素センサ8から出力される信号を処理して開度制御信号を電動式のダンパに供給することが記載されている。 また,引用例2には,前記換気コントローラ9が,駆動制御モジュールを備えることは明記されていないが,「開度制御信号を電動式のダンパに供給すること」が記載されており,かかる機能をなす構成として駆動制御モジュールを備えることは,単なる設計事項にすぎない。 更に,フィルタ,増幅回路及び比較回路を備えた前記換気コントローラ9において,二酸化炭素センサ8から出力された微小な電圧信号値を上記増幅回路で増幅して,更に,上記フィルタで濾波して,比較回路から駆動制御モジュールに出力することは,当業者が普通に行うことである。 したがって,引用例1の発明において,相違点2における本願補正発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願補正発明の効果は,引用例1ないし3の発明及び従来周知の技術から予測し得る程度のものであって,格別なものでない。 (5) むすび 以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用例1ないし3の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3. 本願発明について (1) 本願の請求項1に係る発明 本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成17年4月11日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである(以下、「本願発明」という。)。 「空気中の二酸化炭素濃度を測定し,この測定された二酸化炭素濃度により,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を出力するための二酸化炭素濃度センサモジュールと, 増幅回路とフィルタと比較回路と駆動制御モジュールとを備えた空気調節制御モジュールと, 上記空気調節制御モジュールにより,外気の取り入れまたはその取り入れの終了を行うための空気調節機構と,を備え, 上記空気調節制御モジュールは,上記二酸化炭素濃度センサモジュールから出力された微小な電圧信号値を上記増幅回路で増幅して,更に,上記フィルタで濾波して,測定された二酸化炭素濃度が所定の最大値に達した場合,上記比較回路から信号を上記駆動制御モジュールに出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを行い, 上記二酸化炭素濃度が所定の最小値に達した場合,上記比較回路からの他の信号を上記駆動制御モジュールに出力して,上記空気調節機構を駆動して外気の取り入れを終了することを特徴とする空気品質調節装置。」 (2) 引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用した引用例1及び2に記載された事項,及び,引用例1に記載された「引用例1の発明」は,上記「2.」の「(2)引用例に記載された事項」に記載したとおりである。 (3) 対比,一致点・相違点 本願発明は,本願補正発明の構成から, 「上記二酸化炭素濃度センサモジュールは,タイミング発生器と,赤外線光源と,赤外線センサと,を備え, 上記タイミング発生器が,上記赤外線光源を駆動するための2.84Hzの方形波信号を提供し, 上記赤外線光源が上記方形波信号の周波数の切り換えにより点滅し,また,フォーカスした後,平行に該赤外線センサに射出されることにより,該赤外線センサから二酸化炭素によって吸収され,残った光量を受け取って,二酸化炭素濃度を測定し,該二酸化炭素濃度に対応する微小な電圧信号値を該空気調節制御モジュールに出力し,」 との構成,即ち上記相違点1における本願補正発明の構成を除いたものである。 したがって,本願発明と引用例1の発明とを対比すると,本願補正発明と引用例1との発明の上記一致点で一致し,上記相違点2で相違する。 そうすると,本願発明は,原査定の拒絶の理由に引用した引用例1及び2に記載された発明,並びに,従来周知の技術に基づいて,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) まとめ したがって,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-06 |
結審通知日 | 2006-11-14 |
審決日 | 2006-11-27 |
出願番号 | 特願2002-198033(P2002-198033) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大熊 雄治、岩本 正義 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
今井 義男 長浜 義憲 |
発明の名称 | 空気品質調節装置 |
代理人 | 平山 一幸 |