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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1156134
審判番号 不服2006-12033  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-12 
確定日 2007-04-16 
事件の表示 特願2002-70342「多層配線板の製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-335080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年11月11日に出願した特願平4-300942号の一部を平成14年3月14日に新たな特許出願としたものであって、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年12月1日付け、平成18年3月6日付け及び平成18年7月7日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 絶縁基板に突出した配線パターンを形成してなる2枚以上の貫通孔を有する配線板の間に、粒径が隣接配線パターン間距離よりも小さな導電粒子と接着剤とよりなる厚み方向に導電性を有する接着剤層を配置し、加熱加圧により積層一体化することにより層間接続を行う多層配線板の製造法であり、絶縁基板がプラスチックフィルムまたはガラスエポキシからなり、導電粒子が高分子核体の表面に導電層を形成したものであり、層間接続部の配線パターン上の接続を必要とする部分に5個以上の導電粒子が存在し、前記接着剤は硬化性であり、その抽出水(純水で100℃、10時間抽出後)のNa及びClイオンがそれぞれ接着剤重量に対して20ppm以下であり、貫通孔を導電性接着剤またはスルーホールめっきしてなる3層以上の多層配線板の製造法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物のうちの
(1)特開昭61-278192号公報(以下、「刊行物1」という。)
(2)特開昭62-206772号公報(以下、「刊行物2」という。)
(3)特開平3-16147号公報(以下、「刊行物3」という。)
には、それぞれ、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特開昭61-278192号公報)の記載事項
刊行物1には、「多層フレキシブルプリント配線板」に関して、図面第1図?第4図とともに次の事項が記載されている。
(ア)「該多層フレキシブルプリント配線板は、両面に導電パターン11および裏面に接続用パッド12を設け、その他の部分に絶縁膜(図示せず)を設けたフレキシブルプリント配線板1と、両面に導電パターン21および表面に接続用パッド22を設け、その他の部分に絶縁膜を施したフレキシブルプリント配線板2とを、接続用パッド12,22の位置を合わせ且つ接続端子13,23の部分を残す他の全面を異方導電性接着剤4にて面接着してなるものである。
前記異方導電性接着剤4は、電気絶縁性接着剤41中へカーボン繊維等の導電性粒子42を分散状態に配合してなり、該接着剤を両プリント配線板1,2の接合面に介在させ、所定の条件で加熱プレスすることにより、接続用パッド12,22間では、接着剤41が排除されることによる導電性粒子42の分散比が増加し、該粒子42を介して上下パッド12,22間が導通すると共に、隣接する接続用パッド間では、流出した接着剤41により導電性粒子42の分散比が減少し、粒子42は接着剤41に包まれた状態となり、絶縁が保たれると同時に、両プリント配線板1,2は接着剤41により固定される。」(第2頁右上欄第6行?左下欄第9行)
(イ)「尚、上記各実施例は、4層および6層のフレキシブルプリント配線板1,2,3を示したが、かかる積層枚数は必要に応じて増減でき、また接続端子13,23,33の取出し位置も自由である。更に、接合面における絶縁膜は必要に応じて省略する。」(第2頁右下欄第1?6行)

フレキシブルプリント配線板1,2,3の絶縁基板がポリイミドやポリエステル等のプラスチックフィルムからなることは技術常識であり、図面第3図には、上記絶縁基板に導電パターン11,21及び接続用パッド12,22を突出して形成することが示されている。また、上記記載事項(ア)、図面第3図の記載及び技術常識からみて、異方導電性接着剤4は、粒径が隣接導電パターン11,21及び接続用パッド12,22間距離よりも小さな導電性粒子42と接着剤41とよりなる厚み方向に導電性を有するものであると認められる。
よって、上記記載事項(ア)(イ)及び図面第1図?第4図の記載を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「絶縁基板に突出した導電パターン11,21及び接続用パッド12,22を形成してなる2枚以上のフレキシブルプリント配線板1,2の間に、粒径が隣接導電パターン11,21及び接続用パッド12,22間距離よりも小さな導電性粒子42と接着剤41とよりなる厚み方向に導電性を有する異方導電性接着剤4を配置し、加熱プレスにより積層一体化することにより層間接続を行う多層フレキシブルプリント配線板の製造法であり、絶縁基板がプラスチックフィルムからなる、3層以上の多層フレキシブルプリント配線板の製造法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)刊行物2(特開昭62-206772号公報)の記載事項
刊行物2には、「回路の接続構造体」に関して、図面第1図?第6図とともに次の事項が記載されている。
(ウ)「まず導電性粒子1については第3?4図に代表例を示すように高分子重合体からなる核材9(以下高分子核材と称す)上のほゞ全面に金属薄層10を有するものとする。」(第3頁右上欄第8?11行)
(エ)「被覆に用いられる金属10としては導電性を有する各種の金属、金属酸化物、合金等が用いられる。」(第4頁左上欄第2?4行)

(3)刊行物3(特開平3-16147号公報)の記載事項
刊行物3には、「回路の接続方法及びそれに用いる接着剤フィルム」に関して、図面第1図?第8図とともに次の事項が記載されている。
(オ)「本発明になる接着剤フィルムを硬化した後で純水中に浸漬し、100℃で10時間処理後の抽出水をイオンクロマトグラフで分析した時の塩素イオンの濃度(加水分解性・塩素イオン濃度)は、20ppm以下……とすることが、接続回路の腐食を防止し接続信頼性を向上できることや、接着剤フィルムの硬化時における反応速度が向上し、接続温度の低下や短時間接続が可能となり、接続作業性も向上できるので好ましい。
本発明に用いる接着剤の硬化後のその他の特性として不純物イオン(Na+、K+、SO4--の各々について)20ppm以下……が好ましい。」(第6頁左下欄第10行?右下欄第4行)

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「導電パターン11,21及び接続用パッド12,22」、「導電性粒子42」、「異方導電性接着剤4」、「加熱プレス」は、それぞれ、本願発明の「配線パターン」、「導電粒子」、「接着剤層」、「加熱加圧」に相当し、また、引用発明の「フレキシブルプリント配線板1,2」は、本願発明の「配線板」の一種であるから、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「絶縁基板に突出した配線パターンを形成してなる2枚以上の配線板の間に、粒径が隣接配線パターン間距離よりも小さな導電粒子と接着剤とよりなる厚み方向に導電性を有する接着剤層を配置し、加熱加圧により積層一体化することにより層間接続を行う多層配線板の製造法であり、絶縁基板がプラスチックフィルムからなる、3層以上の多層配線板の製造法」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
導電粒子に関し、本願発明では、導電粒子が「高分子核体の表面に導電層を形成したもの」と限定されているのに対して、引用発明では、導電性粒子42(導電粒子)についてそのような限定がない点。
[相違点2]
導電粒子の個数に関し、本願発明では、「層間接続部の配線パターン上の接続を必要とする部分に5個以上の導電粒子が存在し」と限定されているのに対して、引用発明では、導電性粒子42(導電粒子)の個数についてそのような限定がない点。
[相違点3]
接着剤に関し、本願発明では、「前記接着剤は硬化性であり、その抽出水(純水で100℃、10時間抽出後)のNa及びClイオンがそれぞれ接着剤重量に対して20ppm以下であり」と限定されているのに対して、引用発明では、異方導電性接着剤4(接着剤)についてそのような限定がない点。
[相違点4]
本願発明では、「貫通孔を有する」配線板と限定されているとともに、「貫通孔を導電性接着剤またはスルーホールめっきしてなる」と限定されているのに対して、引用発明では、そのような貫通孔に関する限定がない点。

4.当審の判断
そこで、前記各相違点について以下で検討する。
(1)[相違点1]について
前記のとおり刊行物2には、導電性粒子1については高分子核材9上のほゞ全面に導電性を有する金属薄層10を有するものとする旨が記載されており(記載事項(ウ)(エ)、参照)、刊行物2の当該記載事項は、前記相違点1でいう本願発明の、導電粒子が「高分子核体の表面に導電層を形成したもの」という限定事項に相当する。
そして、引用発明の導電性粒子42(導電粒子)に前記刊行物2に記載の事項を適用することを妨げる特段の事情はみあたらないから、前記相違点1でいう本願発明の限定事項は、前記刊行物2に記載の事項から、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

(2)[相違点2]について
層間接続部の配線パターン上の接続を必要とする部分の導電粒子の個数は、必要とする接続信頼性に応じて当業者が適宜その数値範囲を最適化、好適化するものであり、また、導電粒子の個数を5個以上と限定したことに臨界的意義があるとも認められないから、前記相違点2でいう数値範囲の値(5個以上)に限定することは、当業者であれば通常の創作能力の発揮によりなし得たものである。

(3)[相違点3]について
前記のとおり刊行物3には、接着剤フィルムを硬化した後で純水中に浸漬し、100℃で10時間処理後の抽出水の塩素イオンの濃度が20ppm以下とすることが好ましい旨、及び、接着剤の硬化後のNa+は20ppm以下が好ましい旨が記載されている(記載事項(オ)、参照)。
そうすると、引用発明の異方導電性接着剤4(接着剤)を硬化性のものとするとともに、抽出水のNa及びClイオンを前記刊行物3に記載の好ましいとされる数値範囲の値(20ppm以下)とすることによって、前記相違点3でいう本願発明の限定事項と同様なものとすることは、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

(4)[相違点4]について
多層配線板の技術分野においては、配線板が貫通孔を有するものとするとともに、当該貫通孔を導電性接着剤で充填またはスルーホールめっきすることは周知の技術(例えば、特開昭62-23198号公報の第1頁左下欄第4?6行及び図面第1図、参照)であるから、引用発明のフレキシブルプリント配線板1,2を、前記相違点4でいう本願発明の貫通孔に関する限定事項と同様なものとすることは、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

また、本願発明により得られる効果も、引用発明、刊行物2,3に記載の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、刊行物2,3に記載の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-20 
結審通知日 2007-02-22 
審決日 2007-03-06 
出願番号 特願2002-70342(P2002-70342)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志中村 一雄  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
ぬで島 慎二
発明の名称 多層配線板の製造法  

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