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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1156156
審判番号 不服2005-3983  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-07 
確定日 2007-04-20 
事件の表示 平成 7年特許願第182258号「真空中処理における加工物の高速度移動」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月12日出願公開、特開平 8-181189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成7年6月27日(パリ条約に基づく優先権主張1994年6月30日、アメリカ合衆国)の特許出願であって、同16年1月19日付で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同16年7月27日に意見書と共に明細書について手続補正書が提出されたが、同16年11月30日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同17年3月7日に本件審判の請求がされると共に明細書について再度手続補正書が提出されたものである。

第2 平成17年3月7日付の補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月7日付の補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成17年3月7日付の補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、その請求項23について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「真空室と、ウエーハを大気圧中から前記真空室中に受け入れるための第1及び第2エアロックと、前記真空室中に設けた処理部と、前記処理部と前記第1及び第2エアロックとの間に配置した第1及び第2ロボットと、少なくとも2個のウエーハが同時に前記真空室中で移送状態に維持されるように前記第1及び第2ロボットを制御する制御手段とよりなるウエーハの移送装置。」
(2)補正後
「真空室と、ウエーハを大気圧中から前記真空室中に受け入れるための第1及び第2エアロックと、前記真空室中に設けた処理部と、前記処理部と前記第1及び第2エアロックとの間に配置した第1及び第2ロボットと、少なくとも2個のウエーハが同時に前記真空室中で移送状態に維持されるように前記第1及び第2ロボットを制御する制御手段とよりなり、前記第1及び第2ロボットはすべてのウエーハを前記第1カセットから前記処理部を通して移動させそして第1カセットへ戻し、それに続いて前記第2カセットから前記処理部を通して移動させそして第2カセットへ戻すように動作する、ウエーハの移送装置。」
2 補正の適否
上記請求項23の補正は、「前記第1及び第2ロボットはすべてのウエーハを前記第1カセットから前記処理部を通して移動させそして第1カセットへ戻し、それに続いて前記第2カセットから前記処理部を通して移動させそして第2カセットへ戻すように動作する」という事項を付加するものであり特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項23に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(なお、上記付加事項中に「前記第1カセット」及び「前記第2カセット」という記載があるが、各カセットは前記されておらず、それぞれ「前記」を除いた「第1カセット」及び「第2カセット」の明らかな誤記である。)
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、上記した明らかな誤記を除いて上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項23に記載された事項により特定されるとおりの「ウエーハの移送装置」であると認める。
(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-13549号公報(以下「引用例」という。)には以下の事項が記載されている。
ア 明細書の段落番号【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は真空搬送処理装置に関するもので、更に詳細には、例えば半導体ウエハ(以下にウエハという)等の板状の被処理体を真空雰囲気内において効率良く所定の処理部に搬送する真空搬送処理装置に関するものである。」
イ 明細書の段落番号【0014】?【0015】
「【0014】◎第一実施例
図1はこの発明の第一実施例の真空搬送処理装置を有するCVD装置の概略平面図、図2はこの発明の第一実施例の真空搬送処理装置をウエハ搬送装置に適用した場合の平断面図が示されている。
【0015】この発明の真空搬送処理装置は、被処理体であるウエハAを薄膜処理する複数(図面では3つの場合を示す)処理室1と、例えばモノシラン(SiH4 )等の反応性ガスをウエハAに供給するガス供給部2と、このガス供給部2から処理室1に所定のガス圧力、流量で処理ガスを供給制御する装置部分とこれらを電気的に制御する電気系統部を有する制御部3と、処理室1を大気に開放しないでウエハの搬送を行えるようにする真空のロードロック室4と、ロードロック室4にゲートバルブ6を介して連通する2つのウエハカセット室5,5とを具備しており、ロードロック室4内にウエハAの位置合わせ部20、第1及び第2のウエハ反転手段30a,30b、ウエハAの仮置き部40及び第1及び第2のウエハ搬送手段50a,50bが配設され、また、処理室1とロードロック室4とを連通する真空の搬送室7内に第3のウエハ搬送手段50cが配設されている。なお、符号8は操作盤、9はカセット室5の扉である。」
ウ 明細書の段落番号【0017】
「【0017】カセット室5は図示しない排気手段に接続されて真空状態が維持されるようになっており、また、カセット室5の正面側の壁にはカセットBの出し入れのための窓5aが開設され、この窓にゲートバルブ6が開閉可能に取り付けられている。更に、このカセット室5内にはカセット室5の外方に配設されたカセット載置台60上に載置されたカセットBを搬入・搬出するためのカセット搬入・搬出機構5bが配設されている。」
エ 明細書の段落番号【0028】
「【0028】一方、ウエハ搬送手段は、ロードロック室4内において位置合せ部20に関して左右対称位置に配設される第1及び第2のウエハ搬送手段50a及び50bと、処理室1とロードロック室4との間に位置する搬送室7内に配設される第3のウエハ搬送手段50cとで構成されている。この場合、ウエハ搬送手段50a,50b,50cは、図2に示すように、回転及び昇降可能な回転中心を有する基部アーム52の自由端部に軸54をもって第1のアーム53aを枢着すると共に、第1のアーム53aの自由端部に軸54をもって第2のアーム53bを枢着し、そして、第2のアーム53bの自由端部にウエハ把持部51を枢着した構造となっている。」
オ 明細書の段落番号【0040】?【0049】
「【0040】◎第二実施例
図9はこの発明の真空搬送処理装置の第二実施例の概略平面図が示されている。
【0041】第二実施例における真空搬送処理装置は処理室が1つで、かつ、反転手段で反転されたウエハを直接処理室内に搬送するようにした場合である。すなわち、ロードロック室4に連通する2つの窓5a,5aを介して処理室1を配設し、第1及び第2のウエハ搬送手段50a,50bにて第1又は第2の反転手段30a,30bで反転されたウエハAを直接処理室1内に搬送し、処理後のウエハAをウエハ搬送手段50a,50bにて反転手段30a,30bに搬送するようにした場合である。なお、図9において、その他の部分は上記第一実施例と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0042】次に、第二実施例の作動態様について、図9を参照して説明する。ここでは、上記第一実施例と同様に左側のカセット室7内に収容されたウエハAの搬送処理について説明する。また、各部の詳細な動作態様は上記第一実施例と同じであるので、ここでは省略して説明する。
【0043】マル1 ウエハの位置合せ部への搬送
カセット7内に鏡面を上にした状態で収容されたウエハAは第1のウエハ搬送手段50aによって保持された状態で位置合わせ部20に移動された後、ウエハAの中心位置合せ及びウエハAのオリフラの位置決めが行われる。
【0044】マル2 ウエハの反転手段への搬送
ウエハAの中心及びオリフラの位置合せが行われた後に、第2のウエハ搬送手段50bによって第2のウエハ反転手段30bに移動され、第2のウエハ反転手段30bの反転体32の回転によってウエハAは反転されて鏡面が下向きとなる。
【0045】マル3 ウエハの処理室への搬送
ウエハAの反転中に待機していた第2のウエハ搬送手段30bによってウエハAが処理室1内に搬送された後、処理室1内に供給される反応性ガスによってウエハAの成膜処理が施される。
【0046】マル4 ウエハの成膜処理後の反転手段への搬送
成膜処理後のウエハAは第1のウエハ搬送手段50aによって第1のウエハ反転手段30aに移動された後、第1のウエハ反転手段30aの反転体32の回転により反転されて鏡面が上向きとなる。
【0047】マル5 ウエハのカセットへの搬送
第1のウエハ反転手段30aによって反転されたウエハAは第1のウエハ搬送手段50aによってカセット室7内の元のカセットB内に搬入される。
【0048】以上のマル1?マル5の搬送処理が連続的に行われて元のカセットB内に処理後のウエハAが全て収容されると、カセット搬入・搬出機構5bによってカセット室7からカセット載置台60へ搬出される。
【0049】そして、上記搬送処理中に排気手段によって真空状態に維持された他方(右側)のカセット室7内のウエハAは、左側のカセット室7内のウエハAの搬送処理が完了した後に上記と同様に搬送処理がが行われる。」
カ 明細書の段落番号【0051】
「【0051】
【発明の効果】以上に説明したように、この発明の真空搬送処理装置によれば、上記のように構成されているので、未処理の被処理体の位置合せ、表裏面の反転及び処理室への搬入・搬出を効率良く行うことができる。また、被処理体搬送手段を必要最小限の数によって効率良く作動させるようにしたので、装置全体を小型にすることができると共に、被処理体の搬送を迅速に行うことができる。更には、一方の被処理体収容室内の被処理体の搬送処理中に他方の被処理体収容室内を充分真空状態に維持することができるので、一方の被処理体収納室内の被処理体の搬送処理後に連続して他方の被処理体収納室内の被処理体の搬送を行うことができ、多数の被処理体の連続搬送処理及び省エネルギ化を図ることができる。」
キ ここで、段落番号【0042】及び【0047】?【0049】に「カセット室7」という記載があるが、図9に示されるどの部材にも「7」という番号は付されておらず、一方、段落番号【0014】、【0017】等には、「カセット室5」の記載があることから、これは、「カセット室5」の誤記であると認める。
以上、アないしカの記載事項、及びキの認定事項を技術常識を考慮に入れながら補正発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認める。
「真空のロードロック室4と、ウエハAを大気圧中から前記ロードロック室4中に受け入れるための2つのウエハカセット室5,5と、2つの窓5a,5aを介して前記ロードロック室4に連通する処理室1と、前記処理室1と前記2つのウエハカセット室5,5との間に配置した、回転及び昇降可能な回転中心を有する基部アーム52,52の自由端部に軸54,54をもって第1のアーム53a,53aを枢着すると共に、第1のアーム53a,53aの自由端部に軸54,54をもって第2のアーム53b,53bを枢着し、そして、第2のアーム53b,53bの自由端部にウエハ把持部51,51を枢着した構造となっている第1のウエハ搬送手段50a及び第2のウエハ搬送手段50bとよりなり、前記第1のウエハ搬送手段50a及び第2のウエハ搬送手段50bはすべてのウエハAを一方のウエハカセット室5のカセットBから前記処理室1を通して移動させそして同じウエハカセット室5の元のカセットBへ戻し、それに続いて他方のウエハカセット室5のカセットBから前記処理室1を通して移動させそして同じウエハカセット室5の元のカセットBへ戻すように動作する真空搬送処理装置。」
(3)対比
補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用例記載の「真空のロードロック室4」は、補正発明の「真空室」に相当し、以下同様に、「ウエハA」は、「ウエーハ」に、「2つのウエハカセット室5,5」は、「第1及び第2エアロック」に、「回転及び昇降可能な回転中心を有する基部アーム52,52の自由端部に軸54,54をもって第1のアーム53a,53aを枢着すると共に、第1のアーム53a,53aの自由端部に軸54,54をもって第2のアーム53b,53bを枢着し、そして、第2のアーム53b,53bの自由端部にウエハ把持部51,51を枢着した構造となっている第1のウエハ搬送手段50a及び第2のウエハ搬送手段50b」は、「第1及び第2ロボット」に、「一方のウエハカセット室5のカセットB」は、「第1カセット」に、「他方のウエハカセット室5のカセットB」は、「第2カセット」に、それぞれ相当している。
そして、引用例記載の発明の「処理室1」は、窓5a,5aを介して真空室に相当するロードロック室4と連通しており、ほぼ真空に保たれた室であることから、「処理室1」も真空室を構成するものであると見ることもでき、そうすると、引用例記載の発明の「ロードロック室4に連通する処理室1」は、補正発明の「真空室中に設けた処理部」と表現することもできる。
また、引用例記載の発明は、「真空搬送処理装置」として表現されているが、補正発明と同様に「ウエーハの移送装置」としても表現できることが明らかである。
したがって、補正発明と引用例記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。
「真空室と、ウエーハを大気圧中から前記真空室中に受け入れるための第1及び第2エアロックと、前記真空室中に設けた処理部と、前記処理部と前記第1及び第2エアロックとの間に配置した第1及び第2ロボットとよりなり、前記第1及び第2ロボットはすべてのウエーハを第1カセットから前記処理部を通して移動させそして第1カセットへ戻し、それに続いて第2カセットから前記処理部を通して移動させそして第2カセットへ戻すように動作する、ウエーハの移送装置。」
そして、補正発明と引用例記載の発明とは、以下の点で相違している。
相違点
補正発明では、少なくとも2個のウエーハが同時に前記真空室中で移送状態に維持されるように前記第1及び第2ロボットを制御する制御手段を備えているのに対して、引用例記載の発明では、そのような制御手段を備えているのかどうか明らかでない点。
(4)相違点の検討
一般に、ウエーハを2つのロボットによって移送する際、その作業能率を向上させるために、少なくとも2個のウエーハが同時に移送状態に維持されるように2つのロボットを制御することは、例えば、特開平1-93043号公報(特に、第5頁左下欄第18行?同頁右下欄第9行の「尚、以上においては、-枚のウエハ10に注目してそれを大気側から搬入して処理して大気側に搬出するまでの動作を説明したが、実際は未処理のウエハ10を大気側から搬入してホルダ6に装着するローディング動作と、ホルダ6上の処理済のウエハ10を大気側に搬出するアンローディング動作とは並行して行われる。従ってこの装置によれば、ホルダ6に対するウエハ10の出し入れを同時に並行して行なえるので、ウエハ10のハンドリング時間が第6図の装置に比べて大幅に短縮でき、その結果当該装置のスループットも向上する。」参照のこと。)、特開平4-262555号公報(特に、第2頁段落番号【0007】の「かかる装置では、ピンセット2を2個設けたので、処理機構66?70のいずれかから半導体ウエハ90を搬出する際に、これと同時に、次に処理を行う半導体ウエハ90をこの処理機構に搬入して載置することができ、したがって、処理工程に要する時間を削減することができる。」参照のこと。)、特開昭63-236342号公報(特に、第2頁左上欄第3?12行の「本発明は上記構成を有するので、ローダ部から供給されたウエハをベルト搬送して予備室の中間部に位置させた状態でダブル移動アームを作動させることにより、ウエハ処理部で処理済のウエハを予備室の中間部に取り出すと同時に未処理のウエハをウエハ処理部内供給することができ、予備室の中間部に取り出した処理済ウエハをアンローダ部にベルト搬送する間に次のローダ部から供給されたウエハを中間部に搬送することができ、以上の動作を繰り返すことによりウエハ処理部に対するウエハの搬入・搬出を短時間で能率的に行うことができる。」参照のこと。)等に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して、補正発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。
ウ 補正発明の効果について
補正発明によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
エ したがって、補正発明は、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
平成17年3月7日付の補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成16年7月27日付手続補正書により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項23に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、平成16年1月19日付の拒絶の理由が通知された請求項の一つである請求項17に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下のとおりである。
「処理部を有する処理ラインを有する真空室と、
大気圧にある一組の加工物を受け入れ、減圧して前記真空室に連通する第1及び第2エアロックと、
加工物を前記第1エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第1移送機構と、
加工物を前記第2エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第2移送機構と、
加工物を前記エアロックの一方から前記処理部へ移送する間に、前記エアロックの他方が大気圧にある一組の加工物を受取るか又は放出し、前記真空室中を移送中の加工物が同時に少なくとも2個であるように前記第1及び第2移送機構を同期させる制御手段と、
よりなる、真空サイクルを減じ、加工物の処理を排気と並行して実行するようにした加工物の処理装置。」
2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2の2(2)のアないしキに摘記及び認定したとおりである。
そこで、引用例の記載事項を技術常識を考慮に入れながら改めて本件発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認める。
「処理室1と連通する真空のロードロック室4と、
大気圧にある一組の加工物であるウエハAを受け入れ、減圧して前記ロードロック室4に連通する2つのウエハカセット室5,5と、
ウエハAを前記2つのウエハカセット室5,5の一方とロードロック室4内の位置合わせ部20との間、前記位置合わせ部20と前記処理室1との間及び前記処理室1と前記2つのウエハカセット室5,5の一方との間で移動させる第1のウエハ搬送手段50aと、
ウエハAを前記2つのウエハカセット室5,5の他方と前記位置合わせ部20との間、前記位置合わせ部20と前記処理室1との間及び前記処理室1と前記2つのウエハカセット室5,5の他方との間で移動させる第2のウエハ搬送手段50bと、
ウエハAを前記ウエハカセット室5,5の一方から前記処理室1へ移送する間に、前記ウエハカセット室5,5の他方が大気圧にある一組の加工物を受取るか又は放出する手段と、
よりなる、ウエハAの処理を排気と並行して実行するようにしたウエハAの真空搬送処理装置。」
3 対比
本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用例記載の発明の「ウエハA」は、本件発明の「加工物」に相当し、同様に、「2つのウエハカセット室5,5」は、本件発明の「第1及び第2エアロック」に相当することが明らかである。
また、引用例記載の発明における真空のロードロック室4内の位置合わせ部20を含む加工物の移動経路は、「処理ライン」ということができるものであり、引用例記載の発明の「処理室1と連通する真空のロードロック室4」は、本件発明の「処理部を有する処理ラインを有する真空室」に相当する。
そして、引用例記載の発明の「ウエハAを前記2つのウエハカセット室5,5の一方とロードロック室4内の位置合わせ部20との間、前記位置合わせ部20と前記処理室1との間及び前記処理室1と前記2つのウエハカセット室5,5の一方との間で移動させる第1のウエハ搬送手段50a」及び「ウエハAを前記2つのウエハカセット室5,5の他方と前記位置合わせ部20との間、前記位置合わせ部20と前記処理室1との間及び前記処理室1と前記2つのウエハカセット室5,5の他方との間で移動させる第2のウエハ搬送手段50b」は、それぞれ本件発明の「加工物を前記第1エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第1移送機構」及び「加工物を前記第2エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第2移送機構」に相当する。
また、引用例記載の発明は、「ウエハAの真空搬送処理装置」として表現されているが、本件発明と同様に「加工物の処理装置」としても表現できることが明らかである。
したがって、本件発明と引用例記載の発明とは、以下の一致点及び相違点を有しているということができる。
(1)一致点
「処理部を有する処理ラインを有する真空室と、
大気圧にある一組の加工物を受け入れ、減圧して前記真空室に連通する第1及び第2エアロックと、
加工物を前記第1エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第1移送機構と、
加工物を前記第2エアロックと前記処理ラインとの間で移動させる第2移送機構と、
加工物を前記エアロックの一方から前記処理部へ移送する間に、前記エアロックの他方が大気圧にある一組の加工物を受取るか又は放出させる手段と、
よりなる、加工物の処理を排気と並行して実行するようにした加工物の処理装置。」
(2)相違点
本件発明では、真空室中を移送中の加工物が同時に少なくとも2個であるように第1及び第2移送機構を同期させる制御手段を有し、真空サイクルを減じるのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっているのかどうか明らかでない点。
4 相違点の検討
上記第2の2(4)イでその旨指摘したように、ウエーハ、すなわち加工物を2つのロボット、すなわち移送機構によって移送する際、その作業能率を向上させるために、移送中の加工物が同時に少なくとも2個であるように各移送機構を同期させることは、特開平1-93043号公報、特開平4-262555号公報、特開昭63-236342号公報等に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して、真空室中を移送中の加工物が同時に少なくとも2個であるように第1及び第2移送機構を同期させる制御手段を有すように構成することに格別の困難性は見当たらない。そして、このように構成することにより真空サイクルを減じることになる。
5 むすび
したがって、本件発明は、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

なお、本件出願の平成16年7月27日付手続補正書で補正された請求項23に係る発明は、上記第2の2で検討した補正発明から「前記第1及び第2ロボットはすべてのウエーハを前記第1カセットから前記処理部を通して移動させそして第1カセットへ戻し、それに続いて前記第2カセットから前記処理部を通して移動させそして第2カセットへ戻すように動作する」という事項を削除したものであるところ、上記請求項23に係る発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記第2の2(4)エで示したとおり、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項23に係る発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
 
審理終結日 2006-10-31 
結審通知日 2006-11-02 
審決日 2006-12-11 
出願番号 特願平7-182258
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴沼 雅樹伊藤 元人  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 中島 昭浩
鈴木 孝幸
発明の名称 真空中処理における加工物の高速度移動  
代理人 風間 弘志  
代理人 倉内 基弘  

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