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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335505 審決 特許
審判199223900 審決 特許
無効2007800196 審決 特許
無効200680021 審決 特許
無効200480075 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1156219
審判番号 無効2004-80218  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-05 
確定日 2007-04-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2848760号発明「タキソールを有効成分とする制癌剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2848760号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯・本件特許発明
本件特許第2848760号(平成5年7月15日出願、パリ条約に基づく優先権主張:1992年8月3日、米国、平成10年11月6日設定登録)の請求項1?3に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである(以下、これを「本件特許発明1」などという。なお、以下、添え字についても通常の大きさの文字で記載する。)。

「【請求項1】 固形癌、白血病または卵巣癌に罹患し、かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており、タキソールによる治療に伴う血液学的毒性を呈する恐れのある患者を治療するためのタキソールを含有する薬剤であって、約135 mg/m2 ?約275 mg/m2 のタキソールが約3時間に渡り投与されるように、非経口投与用に包装された薬剤。
【請求項2】 該患者が固形癌または白血病に罹患し、かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており、タキソールの用量が175 mg/m2より大で約275 mg/m2 以下である、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】 該患者が卵巣癌に罹患し、かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており、タキソールの用量が175 mg/m2より大で約275 mg/m2 以下である、請求項1記載の薬剤。」

2 請求人の主張する無効理由の概要
請求人は、本件特許発明1?3の特許は、以下の理由により無効とすべきである旨を主張し、以下の証拠方法を提出している。

1)本件特許発明1は、本件特許出願前に頒布された刊行物(甲第1?4号証)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するからその発明についての特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
2)本件特許発明2?3は甲第1及び5?8号証に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であって、それらの発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
3)本件特許明細書には記載不備があり、本件特許は特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:Annals of Oncology, Vol.3, No.S1(1992)p.119-120(1992年4月15日国立がんセンター図書館受け入れ)
甲第2号証:Journal of the National Cancer Institute, Vol.83, No.24(1991)p.1778-1781
甲第3号証:Contemporary Oncology, (1992年3月)p.29-36
甲第4号証:Canadian Oncology Nursing Journal, Vol.2, No.2(1992年5月)p.47-50
甲第5号証:The Lancet, Vol.339(1992年6月)p.1447-1448
甲第6号証:Seventy-sixth annual meeting of the American Association for Cancer Research, Vol.26(1985)p.169
甲第7号証:Proceedings of American Sciety of Clinical Oncology, Vol.8(1989)p.82
甲第8号証:Cancer Research, Vol.47(1987)p.2486-1493

3 被請求人の主張の概要
被請求人は、請求人の主張に対し、乙第1?5号証を示して次のように反論し、本件特許発明1?3の特許は無効とされるべきではない旨主張している。

1)甲第1?8号証には、タキソールを請求項に記載された用量で3時間注入にて予備投薬した腫瘍患者に投与するという、特定のスケジュールで用いて固形癌、白血病または卵巣癌に対して所望の効果を発揮するかどうかについて記載も示唆もなく、本件特許出願の優先日以前には、その毒性や副作用の低減された最適投与条件については未だ解明されていなかったから、甲第1?8号証は本件特許発明の新規性進歩性を否定する有効な文献とはなりえない。
2)本件特許発明は本件特許明細書に記載されている。

<証拠方法>
乙第1号証:Jpn.J.Cancer Res., Vol.86, p.1203-1209(December 1995)
乙第2号証:癌と化学療法,Vol.23, No.3, p.317-325(1996)
乙第3号証:Clinical Cancer Research, Vol.1, p.599-606(June 1995)
乙第4号証:タキソールR注の使用説明書
乙第5号証:甲第5号証の部分訳文

4 甲号証について
甲第1?8号証は、いずれも本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物であって、甲第1?4号証には以下の記載がある。

(1)甲第1号証
(1-1)「244 新しいクラスの抗癌薬タキサン類のうち最初に入手可能なタキソール
W. W. ten Bokkel Huinink,. The Netherlands Cancer Institute, Amsterdam, The Netherlands
・・・タキソールの毒性は、これまでのところ、投与量制限的な好中球減少、全身倦怠、筋痙攣、脱毛及び過敏症反応よりなるが、おそらく従来使用されてきた処方中の担体すなわちクレモホール(Cremophor)に関連したものである。これらの副作用のため、及び前臨床の抗腫瘍スクリーニングに基づいて、24時間の連続注入が、従来用いられてきた。第I相及び第II相試験が、シスプラチン抵抗性の卵巣癌、乳癌及び肺癌に対する活性を明らかにした。より短い注入時間、すなわち24時間に対して3時間、及び最大耐量175mg/m2に対してより低い135mg/m2の実行可能性を評価するための更なる試験が、カナダ及び欧州において、再発性の卵巣癌患者につき目下進行中である。すでに200名を超える患者が、この4群に分けた無作為の、NCICの指揮による国際的試験に参加している。実際、3時間という注入時間の投与スケジュールは、高投与量のデキサメサゾン、シメチジン及びジフェンヒドラミンのような予防手段が付随的に採られたならば、実行可能であることが判明した。これは、この新しいクラスの抗腫瘍剤のこの最初の入手可能となった代表的薬剤による外来治療すら可能にする。」(120頁左上欄抄録244)

(2)甲第2号証
(2-1)「タキソール自身か又はそのクレモフォールEL(ポリオキシエチル化ヒマシ油)及びアルコール担体の何れが過敏症反応を誘発するのかは明らかではなかったが、・・・加えて、これらの反応の発生率は、注入時間が短い方が高いように見えた。これらの臨床的観察に基づいて、第I相の研究者達及びNCIは、将来の試験は24時間注入及び、ステロイド並びにH1及びH2ヒスタミンアンタゴニストを含む予防的な抗アレルギー剤予備投薬を利用すべきであると決定した(7?9)。・・・完全には防護的でないものの、これらの手段は、過敏症反応の発生率と重症度を実質的に低下させるように見える。しかしながら、予備投薬療法を加えることとスケジュールを変更することとの両方が、同時に行われた。このため、各々の操作の相対的メリットについては、完全には分かっていない。更なる臨床試験は、予備投薬療法が施された場合に24時間注入(これは入院を余儀なくする)が必要なのか否かについて調べるべきである。このことが、卵巣癌の患者において、135と175mg/m2の投与量で、3時間注入と24時間注入とを比較している、2要因型の設計になる欧州-カナダの試験において評価されつつある問題の一つである。」(1778頁右欄12?40行)

(3)甲第3号証
(3-1)「第I相臨床試験
タキソールで直面した問題は、先に総説されている。・・・
血液学的毒性.タキソールの主たる投与量制限的な毒性である好中球減少は、スケジュール依存性でない。最も広範に研究されたスケジュール(3週間毎の24時間注入)では、好中球減少の開始は普通8日目までにあり、好中球の絶対計数値(ANC)の最下点は、8?11日目に起こり、15?21日目までには回復する。好中球減少は、蓄積性ではなく、反復するコースの間、好中球の絶対計数値の最下点は同様であり、このことは、タキソールの造血面の毒性が可逆的であることを示唆している。
好中球減少を起こし易くする主因は、骨髄毒性のある前治療の程度である。興味深いことに、血小板減少及び貧血は、高度に前治療を受けた患者においてすら、大きな問題となることはめったに無い。」(30頁中欄下から6行?右欄22行)

(3-2)「他のそれほど明確でないI型反応の兆候(例えば、発汗、腹部と四肢の疼痛、及び血管浮腫)が認められた。また、何人かの患者に僅か2?3mgの薬物が投与されたとき、過敏症反応の53%が、タキソール投与後の最初の2、3分内に起こり、そして過敏症反応の78%が、10分以内に起った。 過敏症反応が、タキソールによって引き起こされたのか、又はその賦形剤であるヒマシ油の何れによって引き起こされたのかは、明らかではないが、この油は、以前、ヒスタミン遊離に帰せられた犬での類似の反応に関わっていた。同一の過敏症反応が、シクロスポリン、テニポシド、ビタミンK、及びジデムニンBのような、ポリオキシエチレート化ヒマシ油を含む他の薬剤処方に関連しているが、タキソールの臨床用処方は、これら他の薬剤と比較して、この賦形剤の最大量を必要とする。過敏症反応の発生率はまた、タキソールの注入時間に間接的に関係しているようであった。
これらの観察に基づいて、第I相臨床家及びNCIは、将来の試験は24時間注入と、デキサメサゾン、H1-ヒスタミン拮抗薬であるジフェンヒドラミン、及びH2-ヒスタミン拮抗薬を含む、予防的な抗アレルギー予備投薬とを利用するよう推奨していた(表1)。」(30頁右欄35行?31頁左欄20行)

(3-3)「第II相卵巣試験・・・第II 相試験は、当初、黒色腫、腎癌、及び進行した卵巣癌のような、数を限定したタイプの癌において、24時間スケジュールと予防的な抗アレルギー剤投薬とを用いて行われた。
第II相試験の第1ラウンドでタキソールで観察された最もエキサイティングな活性は、明らかに進行性の卵巣癌におけるものであった。これらの試験の結果(表2)は、それに続く広範な第II相試験の原動力であった。・・・進行した疾患を有する患者において高い応答率を示した(PR +CR =30%)ことに加えて、これらの結果は、以下の理由で、特に重要であった。
1.ほとんどの患者(応答した者を含む)が、化学療法及び放射線療法で高度に前治療が施されていた(患者あたりの化学療法の平均回数=2.7)。
2.プラチナに基づく療法に抵抗性である(プラチナ投与期間内または投与後6ヶ月未満の疾病の進行と定義される)と考えられた患者において、顕著な割合で応答があった。25例のプラチナ抵抗性患者のうち6例(24%)で、そしてプラチナに対して明確な抵抗性を示さなかった患者(プラチナ療法6ヶ月以降に疾病が進行)15例のうち6例(40%)で、応答があった。
3.ほとんどの患者に投与されたタキソールの投与量(110 mg/m2が22%、135 mg/m2が48%、170 mg/m2が22%)は、造血面での限定的な耐性のため、従前に最低限の前治療しか受けなかった若しくは治療を受けなかった患者について安全であることが示された投与量(200?250 mg/m2)よりも、実質的に低かった。
4.これらの高度に前治療を受けた患者において用いられた投与量におけるタキソールの毒性プロフィールは、全く許容できるものであった。主要な毒性である好中球減少は、比較的低投与量(110?135 mg/m2)においてさえ、大半のコースで重いものであったが、概して短期間であり、累積的でなく、そして滅多に21日目の治療を遅らせる結果とはならなかった。シスプラチンで何度も前治療を受けた患者では重い神経毒性が予期されたが、しかし、タキソールを20コースまで投与された患者でさえ、それは軽度か、若しくは無かった。」(32頁左欄15行?33頁左欄29行)

(3-4)「薬剤供給の現在の制約と、大規模臨床試験及び近い将来の広範な承認に十分な量を供給するための実用可能な半合成の工程が無いこととを考慮すると、タキソールは賢明に使用されなければならない。従って、最適のスケジュール及び投与量が確立されなければならない。目下、これらの重要な問題に取り組むために計画された、中枢的な多施設欧州-カナダ無作為試験のために患者が集められつつある。試験の設計は、卵巣癌のために先にプラチナ系の治療を受けた患者に投与される2通りの異なった投与量(135 mg/m2対175 mg/m2)及び2通りの異なったスケジュール(24時間対3時間)の、有効性及び安全性(と生活の質)の効率的な試験を許容する2要因型のものである(表3)。」(34頁右欄下から11行?36頁左欄10行)

(4)甲第4号証
(4-1)「ブリティッシュ コロンビア キャンサー エージェンシー(British Columbia Cancer Agency:BCCA)は、卵巣癌に罹患した女性の治療のための新しい薬物タキソールの国際的試験に参加しているカナダの22施設のうちの1つである。1992年3月1日時点で、合計43名の患者がBCCAでの試験に無作為に振り分けられ、合計145回の治療がなされている。・・・
試 験 この国際的な試験の目的は、タキソール(GOOVTAX, 1991)の最適投与量と最適注入時間を決定することである。適格患者は、それ故、4つの試験群(タキソール175 mg/m2又はタキソール135 mg/m2が、3時間又は24時間をかけて投与される)の一つに無作為に振り分けられる。」(47頁左欄18行?47頁右欄18行)

(4-2)「タキソールの投与 患者は、プロトコールに従って、タキソール注入の12時間および6時間前に、デキサメサゾン20 mg経口(家庭で)を、そしてタキソール注入の30分前にはジフェンヒドラジン50 mg IV及びラニチジ50 mg IVを、予備投薬される。予備投薬は、急性過敏症反応を避けようとするには必須である。タキソールは3時間に渡り5%のデキストロースまたは正常食塩水の500 mLガラスビン中の連続注入液として投与されるか、あるいは24時間注入のための各12時間に渡る500 mLガラスビン2本中の連続注入液として投与される。」(48頁右欄下から12行?下から4行)

5 当審の判断

(1)特許法第29条第1項第3号について

(1)-1 本件特許発明1と甲第1号証について(第29条第1項第3号) 甲第1号証には、従来、抗癌薬(制癌剤)であるタキソールは副作用のために24時間の連続注入が行われていたところ、カナダ及び欧州で、卵巣癌患者について24時間に対して3時間の注入時間、175mg/m2に対してより低い135mg/m2の用量での投与の実行可能性を評価するための4群に分けた試験が行われたことが記載されている(1-1)。この4群の試験が、1)投与時間24時間で用量175mg/m2、2)投与時間3時間で用量175mg/m2、3)投与時間24時間で用量135mg/m2、4)投与時間3時間で用量135mg/m2の4群で行われたことは明らかであるから、甲第1号証には、卵巣癌の患者に、タキソールを制癌剤として175mg/m2及び135mg/m2の用量で3時間にわたり非経口的に投与することが記載されているといえる。そして、従来、タキソールは副作用のために24時間の連続注入が行われていたが、3時間投与も高投与量のデキサメサゾン、シメチジン及びジフェンヒドラミンのような予防手段が付随的に採られたならば実行可能と判明したとの記載からみて、当該欧州-カナダ試験では、タキソールの3時間投与が予防手段を伴って、実行されたものであると理解できる。この予防手段とは、デキサメサゾン、シメチジン及びジフェンヒドラミンを投与することによって、タキソールを注入する際の過敏症反応を予防するものであって、予防手段として用いる薬剤は、前もって投与するものと解するのが自然であるから、予防手段は「予備投薬」に相当し、タキソールの毒性として好中球減少を挙げる(1-1)の記載は、タキソールを投与された患者が血液学的毒性を呈する恐れがあることを指している。
そうすると、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明と同一である。

(1)-2 本件特許発明1と甲第2号証について(第29条第1項第3号)
甲第2号証には、タキソールについて24時間注入と予備投薬療法によって過敏症反応の発生率と重症度を実質的に低下させることができたが、予備投薬療法が施された場合に24時間注入が必要なのか否か検討することを目的の一つとして、卵巣癌の患者において、135と175mg/m2の投与量で、3時間注入と24時間注入とを比較する、欧州-カナダの試験が行われている旨記載されている(2-1)。すなわち、甲第2号証には、卵巣癌の患者に、タキソールを制癌剤として175mg/m2及び135mg/m2の用量で3時間にわたり非経口的に投与することが記載されているといえる。そして、予備投薬が施された場合にも注入時間として24時間が必要があるのか検討することを目的とするものであるとの記載(2-1)からみて、この試験は、予備投薬を行った上で、3時間注入と24時間注入を比較する試験であり、甲第2号証は予備投薬を伴った3時間注入に言及していることは明らかである。また、甲第2号証には、タキソールが患者に血液学的毒性の一種である好中球減少を起こすものであることも記載されている(1779頁左欄8?11行)。
したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明と同一である。

(1)-3 本件特許発明1と甲第3号証について(第29条第1項第3号)
甲第3号証には、タキソールについての卵巣癌患者に投与される2通りの異なった投与量(135 mg/m2対175 mg/m2)及び2通りの異なったスケジュール(24時間対3時間)の2要因型欧州-カナダ試験が記載されている(3-4)。この記載からみて、この試験が、1)投与時間24時間で用量175mg/m2、2)投与時間3時間で用量175mg/m2、3)投与時間24時間で用量135mg/m2、4)投与時間3時間で用量135mg/m2の4群で行われたことは明らかであるから、甲第3号証には、卵巣癌の患者に、タキソールを制癌剤として175mg/m2及び135mg/m2の用量で3時間にわたり非経口的に投与することが記載されているといえる。
甲第3号証には、第I相臨床家及びNCIが、24時間注入と、予防的な抗アレルギー予備投薬の利用を推奨しており(3-2)、第II相試験は、24時間スケジュールと予防的な抗アレルギー剤投薬とを用いて行われ、進行性の卵巣癌について、それに続く広範な第II相試験の原動力となる高活性を示す結果が得られた旨記載されたとおり(3-3)、第II相試験においては、第I相試験で推奨された24時間注入、予備投薬による治療方法が踏襲され、実際に効果を示したことが理解できる。そして、甲第3号証には、さらに、薬剤供給が限られているタキソールを賢明に使用するために最適な投与方法・スケジュールを検討することの重要性に言及した上で、欧州-カナダ試験が効率的な試験を許容する2要因型のものである旨記載されている(3-4)。この記載から明らかなように、甲第3号証に記載の2欧州-カナダ試験は、175mg/m2及び135mg/m2の2通りの投与量と3時間及び24時間の2通りの投与時間を比較するように設計された試験であって、予備投薬の要不要を検討するものではない。そして、甲第3号証に記載の欧州-カナダ試験における注入時間の一方は、第I相試験後に推奨され、卵巣癌について高活性が示された第II相試験で踏襲された、予備投薬を伴う24時間注入と同じ24時間であるから、注入時間の比較のために行われた3時間注入においても、予備投薬を行なったものと理解できる。
また、甲第3号証には、タキソールが患者に血液学的毒性を起こすものであることも記載されている[(3-1)及び(3-2)]。
そうすると、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明と同一である。

(1)-4 本件特許発明1と甲第4号証について(第29条第1項第3号) 甲第4号証には、卵巣癌の患者を対象とした試験で、タキソールの最適投与量と最適注入時間を決定するために、用量175 mg/m2又は135 mg/m2のタキソールが、3時間又は24時間をかけて投与される4群での試験が記載されている(4-1)。すなわち、甲第4号証には、卵巣癌の患者に、タキソールを制癌剤として175mg/m2及び135mg/m2の用量で3時間にわたり非経口的に投与することが記載されているといえる。また、甲第4号証には、この試験では、過敏症反応を予防するために予備投薬が行われたこと及びタキソールが患者に血液学的毒性を起こすものであることも記載されている(4-2)。
したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明と同一である。

(1)-5 甲第1?4号証の記載事項に対する被請求人の主張について
a.被請求人は、甲第1?4号証は、本件特許発明1の新規性を否定するものとはなりえない旨主張しているが、その概要は、以下のとおりである。
被請求人は、タキソールの抗腫瘍剤としての有用性は知られていたが、タキソールを投与すると、血液学的毒性や過敏症等の強い副作用、毒作用を引き起こすため、臨床的なタキソールの使用が躊躇され、副作用、毒作用を抑えつつ、優れた抗腫瘍作用を発揮させるための望ましいタキソールの投与方法について研究が行われていたことを挙げ(答弁書2?3頁)、さらに、「留意すべきことに、甲第2号証には、そのような時点においてもなお、『最適な治療投与量及びタキソールについての投与量-応答効果の重要性に関し、依然暗闇の中にいる』として、タキソールの最適投与条件がなお不明であるとしている。」(答弁書5頁)と述べている。また、被請求人は、甲第5号証を引用して、「留意すべきことは、本件特許における優先日の直前に発表されたこの甲第5号証の時期においても、最適投与条件についてなお、不明である趣旨の記載が見られることである。すなわち、・・・『その興奮にもかかわらず、・・・好ましい結果は少ないであろう。』このように、この甲第5号証が発行された、本願の優先日(1992年)8月3日の直前・・・の段階においてさえ、タキソールが本当に有効であるかどうかはっきりせず、むしろ効果がネガティブであると考えられていたのである。」(答弁書6?7頁)と述べている。
また、被請求人は、平成17年6月24日付で上申書を提出し、甲第1?4号証に記載の欧州-カナダ試験を行った研究者の宣誓供述書を提出し、本件優先日においても、欧州-カナダ試験の総合データ及び分析結果は公表されておらず、甲第1号証の記載は、推測の域を出るものでなく、甲第2?4号証の記載も単なるプロトコールの内容紹介の域を出るものでない旨主張している。
そこで、被請求人の上記主張に関し、以下検討する。

b.本件優先日前に知られていたタキソールの卵巣癌に対する治療効果についてみると、甲第1号証には、それ以前に行われたタキソールの試験でシスプラチン抵抗性の患者で応答がみられたことが記載されている(甲第1号証119頁右下欄1?11行)。また、甲第2及び3号証には、タキソールが進行した卵巣癌に対して高い応答率が示したことが記載され(甲第2号証1778頁右欄44行?1779行左欄12行及び甲第3号証29頁左欄1?12行、32頁左欄15行?33頁左欄下から2行、34頁右欄3行?下から12行)、甲第5号証には、タキソールの投与が卵巣癌において30%の応答率を示したとのMacGuireらの1989年の報告が記載されたとおり(1447頁右欄16?21行及び1448頁左欄下から5行?下から3行)、癌に対するタキソールの治療効果に関し、甲第1?4各号証発行の時点においては、すでに多くの肯定的な報告によって、治療効果のある1回の投与量も明らかになっていた。
そして、甲第2号証の「この試験で用いられているこれら2通り投与量の違いは、高度に前治療を施され且つ全体として薬物抵抗性である患者集団において有意な投与量-応答効果を検出するには、十分な幅のものではないかも知れない。」(1779頁右欄49?53行)との記載から明らかなように、被請求人が指摘した甲第2号証の「最適な治療投与量及びタキソールについての投与量-応答効果の重要性に関し、依然暗闇の中にいる」という記載は、臨床試験において有効性を評価する上で、応答に有意な差が検出できるよう試験がデザインされているかどうかを論じたものであって、タキソールの有効性を否定するものではない。また、被請求人が指摘した甲第5号証の記載は、マスコミにより煽られて作り出される過度な期待のマイナス面を指摘したものであって、これもタキソールの癌に対する治療効果を否定するものではない。
また、被請求人の主張及び提出した乙号証を検討しても、他に本件特許出願の優先日前のタキソールの有効性を否定する根拠は見出せない。

c.上記b.からみれば、甲第1号証に記載の試験が行われた時点では、主に副作用低減の観点から実用化に向けた臨床試験が行われていたことが理解され、甲第1号証に記載された3時間注入の薬剤が卵巣癌に対する治療効果のある薬剤として投与されたことを理解することができる。
また、甲第1号証に記載の3時間注入についての欧州-カナダ試験は、タキソールの投与時に注意すべき副作用として過敏症反応等があることが当業者の常識であった状況下で、予備投薬を行った場合に3時間投与の実行可能性を検討するために行われ、当然に過敏症反応等について観察しながら行われたものである。その上で、甲第1号証に「実際、3時間という注入時間の投与スケジュールは、高投与量のデキサメサゾン、シメチジン及びジフェンヒドラミンのような予防手段が付随的に採られたならば、実行可能であることが判明した。」(1-1)と記載されているとおり、甲第1号証には、予備投薬によって、3時間投与においても許容範囲にまで副作用が低減されたことが記載されている。
そうすると、甲第1号証に記載された欧州-カナダ試験について、試験結果が正式なものとして公表されていなかったとしても、本件特許出願の優先日前の当業者の技術常識を考慮すれば、甲第1号証に記載された薬剤が、卵巣癌の治療に使うための薬剤として記載されていることを理解することができるのであるから、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明ではない旨の被請求人の上記主張は採用することができない。

d.すでに上記b.で述べたとおり、タキソールの治療効果に関し、甲第2号証発行の時点では、多くの肯定的な報告によって、治療効果のある1回の投与量も明らかになっていた。
そして、甲第2号証には、従来、注入時間を24時間とし、予備投薬を行うことによって、過敏症反応が低減されることが知られていたが、注入時間の変更と予備投薬を加えることが同時に行われたため、予備投薬を行った場合に、24時間注入が本当に必要であるのかどうかを評価すべき問題として欧州-カナダ試験が行われていることが記載されていることからみて、甲第2号証に記載の3時間注入についての欧州-カナダ試験は、当然に過敏症反応等について観察されているものである。タキソールに限らず、重大な副作用があることが知られている薬剤の投与中に、その兆候が見られれば、直ちに投与が中止されることは医療上の常識であるところ、甲第2号証には、この試験が実行されていることが記載されており、甲第2号証に記載の欧州-カナダ試験における3時間投与は副作用の点においても許容範囲内のものであることを理解することができる。
そうすると、甲第2号証に記載された欧州-カナダ試験について、試験結果が正式なものとして公表されていなかったとしても、本件特許出願の優先日前の当業者の技術常識を考慮すれば、甲第2号証に記載された薬剤が、卵巣癌の治療に使うための薬剤として記載されていることを理解することができるのであるから、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明ではない旨の被請求人の上記主張は採用することができない。

e.すでに上記b.で述べたとおり、タキソールの治療効果に関し、甲第3号証発行の時点においては、すでに多くの肯定的な報告によって、治療効果のある1回の投与量も明らかになっていた。そして、甲第3号証には、それ以前の試験がタキソールは有効かつ毒性の点で許容できるものであることを報告している旨記載しており(3-3)、3時間注入についての欧州-カナダ試験は、投与時間と投与量の最適化の点から効率的な評価を行うために設計されたものである旨記載されている(3-4)。このように、甲第3号証には、3時間注入についての欧州-カナダ試験における薬剤が卵巣癌に対する治療効果を有し及び過敏症反応についても許容可能なものとして記載されていることを理解することができる。
そうすると、甲第3号証に記載された欧州-カナダ試験について、試験結果が正式なものとして公表されていなかったとしても、本件特許出願の優先日前の当業者の技術常識を考慮すれば、甲第3号証に記載された薬剤が、卵巣癌の治療に使うための薬剤として記載されていることを理解することができるのであるから、本件特許発明1は甲第3号証に記載された発明ではない旨の被請求人の主張は採用することができない。

f.すでに上記b.で述べたとおり、タキソールの治療効果に関し、甲第4号証発行の時点においては、すでに多くの肯定的な報告によって、治療効果のある1回の投与量も明らかになっていた。甲第4号証には、予備投薬を施した上で、135mg/m2及び175mg/m2の用量のタキソールを3時間に渡って投与した際に経験した副作用について詳細な報告があり(甲第4号証49頁?50頁)、この投与方法では許容できないような重篤な副作用は見られなかったことが理解できる。
そうすると、甲第4号証に記載された欧州-カナダ試験について、試験結果が正式なものとして公表されていなかったとしても、本件特許出願の優先日前の当業者の技術常識を考慮すれば、甲第4号証に記載された薬剤が、卵巣癌の治療に使うための薬剤として記載されていることを理解することができるのであるから、本件特許発明1は甲第4号証に記載された発明ではない旨の被請求人の主張は採用することができない。

(2)特許法第29条第2項について

(2)-1 本件特許発明2について(第29条第2項)
すでに(1)で述べたように、甲第1?4号証には、卵巣癌の患者に、過敏症反応を防止するための予備投薬を伴って、タキソールを制癌剤として175mg/m2及び135mg/m2の用量で3時間にわたり非経口的に投与する欧州-カナダ試験が記載されている。また、たとえば甲第5号証に、タキソールの投与が卵巣癌において30%の応答率を示したとのMacGuireらの1989年の報告が記載されている(1447頁右欄16?21行及び1448頁左欄下から5行?下から3行)ように、本件特許出願の優先日においても、甲第1?4号証に記載された上記欧州-カナダ試験の薬剤が卵巣癌に対する治療効果を有し、副作用の点でも許容可能なものであると理解できることは、すでに(1)で述べたとおりである。平成17年6月10日の口頭審理の調書によれば、甲第1?4号証に記載された欧州-カナダ試験は、同じ試験をさすことは、両当事者が認めているので、甲第1号証に記載された欧州-カナダ試験の薬剤と、本件特許発明2を対比すると、甲第1号証の薬剤の治療対象疾患である卵巣癌は固形癌の一種であるから、両発明は、「固形癌に罹患し、かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており、タキソールによる治療に伴う血液学的毒性を呈する恐れのある患者を治療するためのタキソールを含有する薬剤であって、タキソールが約3時間に渡り投与されるように、非経口投与用に包装された上記薬剤。」である点において一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件特許発明2においては、タキソールの用量が175 mg/m2より大で約275 mg/m2 以下であるのに対し、甲第1号証に記載された欧州-カナダ試験においては、175mg/m2及び135mg/m2である点。

上記相違点につき、検討する。
タキソールの許容投与量に関し、本件特許出願の優先日前の刊行物である甲第6号証には、先に化学療法を受けた11人を含む12人の固形癌患者を対象に行った第I相試験において、3時間注入で160mg/m2まで安全に投与でき、更なる投与量の増加が予定されている旨記載されている(169頁右下欄)。甲第6号証の後に発行された、甲第1号証には、24時間注入については265mg/m2が最大許容投与量であることが記載されている(甲第1号証119頁左下欄)。また、24時間よりも短い、6時間注入についても、275mg/m2が最大許容投与量であり(甲第7号証82頁左下欄1?23行及び31?35行)、第II相臨床試験の推奨投与量は250mg/m2であること(甲第8号証2486頁左欄30?31行)が本件特許出願の優先日前の刊行物に記載されている。このように、すでに本件特許出願の優先日前に、24時間注入と、これより短い6時間注入のいずれにおいても、最大許容投与量が175mg/m2を超えて約275mg/m2まで達することが当業者に知られていたといえる(なお、特に化学療法の影響をあまり受けていない患者では、より多い用量で投与可能なことが周知であることは、たとえば、甲第2号証1778頁右欄44行?1779頁左欄12行及び(3-3)の24時間注入において未治療か最小限の前治療のみを受けた患者では、200?250mg/m2まで安全に投与できるとの記載からも明らかである。)。
このような状況下において、甲第1号証に記載された欧州-カナダ試験の3時間注入で用いる薬剤についても、甲第5?8号証の記載に基づき、卵巣癌等の固形癌に対し、より有効性を高めるために、或いは未治療か最小限の前治療のみを受けた患者について上記試験で実施された175mg/m2及び135mg/m2に代えて、175mg/m2を超える用量とすること、より具体的には、24時間注入及び6時間注入において確認されている最大投与量まで投与量を増加してみることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件特許発明2は、本件特許出願の優先日前に、甲第1号証及び甲第5?8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)-2 本件特許発明3について(第29条第2項)
本件特許発明3は、本件特許発明2において、患者が卵巣癌に罹患している場合に相当するものである。そして、甲第1号証に記載された欧州-カナダ試験は、卵巣癌に対するものであるから、上記本件特許発明2について述べたのと同様の理由で、本件特許発明3は、本件特許出願の優先日前に、甲第1号証及び甲第5?8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)特許法第36条第5項について

本件特許発明2及び3は、3時間投与である本件特許発明1において、タキソールの用量が175 mg/m2より大で約275 mg/m2 以下に限定されたものである。

被請求人は、明細書【0012】の「好ましい態様において、タキソールの注入は6時間未満の期間、好ましくは約3時間に渡り行われ、その際の投与量は約135 mg/m2 ?約275 mg/m2、好ましくは約135 mg/m2 ?約175 mg/m2・・・丸塊注入または短時間(1?3時間)の注入がアナフィラキシー反応または他の過敏症反応を誘発するという、また6-24時間までの注入時間の延長とを組み合わせた予備投薬のみがもっとも重度のアレルギー反応を低減または排除するであろうという従来の理解を勘案すると、これらの結果は驚くべきものである。」との記載及び【0041】の「より高投与量のタキソールで治療しうる患者には、約275mg/m2までのタキソールが投与でき」との記載を根拠に、3時間投与で175mg/m2より高用量でタキソールを投与することが明細書に記載されていた旨主張している。

被請求人の上記主張に関し、本件特許明細書中の記載を検討すると、「本発明は、癌に罹患した患者に、24時間を越えない期間に渡り、分割して、又は逐次的に、又は同時に、投与されるように配合され、包装された、抗-腫瘍的に有効な量のタキソールと、致命的なアナフィラキシー-様反応を防止するのに十分な薬物とを含む制癌剤である。」(【0011】)、「もう一つの態様においては、予備治療後に135mg/m2のタキソールを24-時間の注入により投与する。」(【0012】)、「また、低タキソール投与量、例えば約135mg/m2を約3時間?約28時間の注入により投与することができ、この場合にも依然として抗-腫瘍的に有効である。」(【0014】)との記載があり、A:24時間 175mg/m2、B:3時間 175mg/m2、C:24時間 135mg/m2、D:3時間 135mg/m2の4群に分け175名の患者で試験した結果について「本発明のタキソールの投与法の利用により、157 名の患者に対して少なくとも14% の全体としての目標応答率が得られる。」などの記載がある(【0016】、【0023】、【0025】)。これらの記載から、本件特許明細書には、3時間の投与期間だけでなく、24時間投与を含め、約3時間?約28時間の投与期間の発明が記載されていると理解することができる。
そして、被請求人が指摘する【0041】の「更に、より高投与量・・・」という記載は、「本発明のプロトコールに従ったタキソールによる治療中に患者中に見られた諸毒性に依存して、注入期間を延長もしくは短縮でき、あるいはタキソールの投与量を減少もしくは増大でき、結果としてタキソールでの癌の治療におけるより高い寛容度を得ることができる。」という記載に続けられており、この部分に投与期間に関する説明は特に加えられていないことからみれば、「より高投与量で治療しうる・・・」との【0041】の記載は何も3時間投与に限定して記載されたものではないと解される。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、他に175mg/m2より大で275mg/m2以下の用量を3時間に渡り投与することについて記載されていない。
そうすると、明細書中の実施例(試験)における用量を含まず、また、明細書中に3時間投与についての好ましい用量の範囲と全く重複しない範囲である「175mg/m2より大で約275mg/m2以下」の範囲に敢えて限定した3時間投与が明細書に記載されているということはできない。
したがって、本件特許明細書には、約175mg/m2より大で約275mg/m2以下のタキソールが約3時間に渡り投与される発明が記載されているとはいえないから、本件特許発明2及び3は、明細書に記載された発明であるとはいえない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物(甲第1?4号証)に記載された発明と同一であるので特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許発明1?3は、本件特許出願の優先日前に甲第1号証及び甲第5?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、これらの発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。したがって、本件特許発明1?3についての特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
また、本件特許は、明細書の記載が特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第123条第1項第3号の規定により無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-30 
結審通知日 2005-07-04 
審決日 2005-07-28 
出願番号 特願平5-174994
審決分類 P 1 113・ 113- Z (A61K)
P 1 113・ 121- Z (A61K)
P 1 113・ 534- Z (A61K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 齋藤 恵
谷口 博
登録日 1998-11-06 
登録番号 特許第2848760号(P2848760)
発明の名称 タキソールを有効成分とする制癌剤  
代理人 田村 恭生  
代理人 品川 永敏  
代理人 青山 葆  
代理人 山本 佳希  
代理人 早坂 巧  

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