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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1156233
審判番号 不服2003-24610  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-18 
確定日 2007-05-08 
事件の表示 平成 9年特許願第 11481号「知識情報提示装置および知識情報出力方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-207893、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年1月24日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年1月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「共有される複数の知識情報の中から利用者の要求に合致する知識情報を選出して提示する知識情報提示装置において、
各個人の前記知識情報を蓄積する知識情報蓄積手段と、
各個人の専門性を記述したプロファイルを蓄積するプロファイル蓄積手段と、
前記プロファイル蓄積手段に蓄積されたプロファイルに基づき、前記知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報に詳しい人物の候補を選出するとともに、各候補と前記利用者との対人関係を評価して前記利用者と所定の関係をもつ人物を前記候補の中から選出し、前記知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報を前記選出した人物に関連づけて提示する提示手段と
を具備してなることを特徴とする知識情報提示装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-255150号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、個人の所有するデータを他人に公開する情報公開装置及びマルチモーダル情報入出力システムに関する。」

B.「【0390】(4)(第6の実施例)
次に、第6の実施例について説明する。
【0391】図113に、本実施例の情報公開装置の構成を示す。
【0392】情報提供者の所有する種々の形式・内容のデータは、データ記憶部613に格納されている。このデータ記憶部613は複数存在する。データ検索提示部612は、各データ記憶部613に対応して設けられ、受け持っているデータ記憶部613に格納されているデータを検索・提示するために用いられる。
【0393】情報公開装置は、データ検索提示部612の1つまたは複数を選択して、各データ記憶部613に格納されているデータを検索し提示するものである。
【0394】この情報公開装置600は、入力部601、出力部601、応答生成部603、ユーザ情報管理部604、ユーザ情報記憶部605、データ情報管理部606、データ情報記憶部607、応答履歴管理部608、応答履歴記憶部609を備えている。
【0395】入力部601は、情報要求者および情報提供者の入力を受け付ける。
【0396】出力部602は、情報要求者および情報提供者への応答を出力する。
【0397】応答生成部603は、情報要求者および情報提供者からの要求を解釈して、複数存在する各データ検索提示部612のうちから適切なものを選択し、これを利用して各データ記憶部613から適切なデータを検索し提示する。また、応答生成部603は、必要に応じて情報要求者や情報提供者への応答を生成し、出力部602を用いて情報要求者や情報提供者へ出力する処理も行う。応答生成部603が用いる情報は、情報要求者および情報提供者に関するユーザ情報と、提示するデータに関するデータ情報であり、それぞれ、ユーザ情報記憶部605と、データ情報記憶部607に格納されている。」

C.「【0440】図136は、情報公開装置における情報公開装置と情報要求者ならびに情報提供者との間の対話の別の例を示したものである。情報提供者、および情報要求者は、図129の例の場合と同様である。
【0441】この対話例では、まず、情報要求者(高橋)が「知識処理のプログラムについて書いた本を探しているんだけど」(メッセージ2102)という文章で、情報公開装置に要求を入力する。情報公開装置は、この文章を解析することにより、要求者(高橋)の要求する情報が「知識処理」カテゴリと「書籍」カテゴリに関係する情報データであることを理解する。さらに、「知識処理」カテゴリに属するデータは「C++言語」カテゴリ、「Lisp言語」カテゴリという2種類のカテゴリにより詳細化されるので、「Lispの本がいいですか?」(メッセージ2103)と問い返すことによって検索対象のデータを詳細化する。要求者(高橋)の返答(メッセージ2104)により、検索対象となるデータは「知識処理」カテゴリと「C++言語」カテゴリに関係するものであると同定できる。(ステップS102?S105)。このカテゴリに関係するデータを検索した結果の例が、図137、図138である。このデータ群のうち、情報公開装置は意味カテゴリ「知識処理」ならびに「C++」の難易度の値を、ユーザ情報記憶部605に記憶された情報要求者(高橋)のユーザ情報データ1201(図128)の熟知度の値と比較し、データ情報の前記2つのカテゴリに対応する難易度の値がデータ1201の熟知度と一致するかあるいはデータ1201のものより大きいものを取り出して提示する。この例では要求者(高橋)のデータ1201の熟知度が0.5であるため、難易度が0.5であるようなデータ201(図138(a))を提示する。しかし、ここで提示されたデータ201は既に要求者(高橋)が所有しているものであったため、要求者(高橋)は「もっと詳しいやつはないかな?」(メッセージ2106)と入力することにより、難易度の値が提示されたデータより高いものを要求する。そこで、情報公開装置は、提示の基準となる難易度を0.5より0.6に上げて検索を再実行し、結果として得られたデータ202(図138(b))を提示する(ステップS1019?S1021、メッセージ2107)。しかし、これも要求者(高橋)を満足させることはできなかった(メッセージ2108)ため、情報公開装置はさらに難易度を上げて検索を再実行するが、指定された難易度を満足するデータは存在しないため、検索は失敗する。情報公開装置は要求者(高橋)が不満な状態にあると認識し、提供者(青木)に対話に介入するかどうかの確認メッセージを送る(ステップS106)。図129の対話例と同様に、提供者(青木)は介入して直接要求者(高橋)との対話を行なうか、要求者の要求したデータを提示するための指示を情報公開装置に与えることができる。この対話の例においては、要求者(高橋)の要求を満足するデータ情報がデータ記憶部613の中に存在しない。この場合、情報公開装置は、要求者により要求された難易度のデータ情報を提示する代わりに、ユーザ情報記憶部605内に記憶されたユーザ情報の中で、要求された難易度を満足する熟知度をもつユーザ情報を検索し、該当するユーザ情報の中で、情報要求者に近い関係にあるユーザ情報を情報要求者に提示することにより、情報要求者の要求を満足させるデータを所有している可能性のある他のユーザを紹介することができる。」

上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「情報提供者の所有する複数のデータの中から情報要求者の要求に合致するデータを選出して提示する情報公開装置において、
前記データを格納するデータ記憶部と、
情報要求者および情報提供者に関する、データの熟知度を含むユーザ情報を格納するユーザ情報記憶部と、
前記ユーザ情報記憶部に格納されたユーザ情報に基づき、要求されたデータの難易度を満足する熟知度をもつユーザ情報を検索し、該当するユーザ情報の中で、情報要求者に近い関係にあるユーザ情報を情報要求者に提示する提示手段と
を具備してなる情報公開装置。」

3.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、まず、引用例記載の発明における「データ」、「情報要求者」、「情報公開装置」、「データを格納するデータ記憶部」、「情報要求者および情報提供者に関する、データの熟知度を含むユーザ情報を格納するユーザ情報記憶部」は、それぞれ、本願発明における「知識情報」、「利用者」、「知識情報提示装置」、「知識情報を蓄積する知識情報蓄積手段」、「各個人の専門性を記述したプロファイルを蓄積するプロファイル蓄積手段」に相当する。
また、引用例記載の発明において「ユーザ情報記憶部に格納されたユーザ情報に基づき、要求されたデータの難易度を満足する熟知度をもつユーザ情報を検索し、該当するユーザ情報の中で、情報要求者に近い関係にあるユーザ情報を情報要求者に提示する」ことは、本願発明において「プロファイル蓄積手段に蓄積されたプロファイルに基づき、前記知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報に詳しい人物の候補を選出するとともに、各候補と前記利用者との対人関係を評価して前記利用者と所定の関係をもつ人物を前記候補の中から選出して提示する」ことに対応する事項である。

よって、本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「複数の知識情報の中から利用者の要求に合致する知識情報を選出して提示する知識情報提示装置において、
前記知識情報を蓄積する知識情報蓄積手段と、
各個人の専門性を記述したプロファイルを蓄積するプロファイル蓄積手段と、
前記プロファイル蓄積手段に蓄積されたプロファイルに基づき、前記知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報に詳しい人物の候補を選出するとともに、各候補と前記利用者との対人関係を評価して前記利用者と所定の関係をもつ人物を前記候補の中から選出して提示する提示手段と
を具備してなる知識情報提示装置。」
である点で一致し、少なくとも、次の点で相違する。

相違点:本願発明においては、「知識情報蓄積手段」が、「各個人」の知識情報を蓄積するものであるとともに、「提示手段」が、利用者と所定の関係をもつ人物を候補の中から選出した後に、「知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報を選出した人物に関連づけて」提示するものであるのに対し、引用例記載の発明においては、「知識情報蓄積手段」に相当する「データ記憶部」が、「情報提供者」の所有するデータを格納するものであり、「提示手段」が、利用者(情報要求者)と所定の関係をもつ人物を候補の中から選出した後に、単に「選出した人物」を提示するものである点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用例記載の発明は、もともと「個人の所有するデータを他人に公開する情報公開装置」(上記A.の記載参照)であり、上記「データ記憶部」に格納されるデータは、「情報提供者」の所有するデータである。
そして、引用例記載の発明において、「情報要求者に近い関係にあるユーザ情報を情報要求者に提示する」のは、情報要求者の要求するデータが「情報提供者」の所有するデータ中にない場合である。
よって、引用例記載の発明において、「提示手段」が、利用者(情報要求者)と所定の関係をもつ人物を候補の中から選出した後に、「選出した人物」に関連づけて知識情報(データ)を提示しようとしても、情報要求者の要求するデータは「情報提供者」の所有するデータ中にないのであるから、存在しないデータを提示することは不可能である。
仮に、引用例記載の発明において、情報要求者の要求する知識情報(データ)が存在するとしたら、今度は、そもそも、要求されたデータの難易度を満足する熟知度をもち、かつ情報要求者に近い関係にあるユーザ情報をわざわざ提示することはしなくなるものと解される。
さらに、仮に、情報要求者の要求する知識情報(データ)と人物とを関連づけて提示することができたとしても、引用例記載の発明のもともとの前提や、「情報要求者の要求を満足させるデータを所有している可能性のある他のユーザを紹介する」(上記C.の記載参照)との記載からみて、引用例記載の発明において知識情報(データ)と関連づけられる人物は、常に当該データの所有者であって固定的なものであり、本願発明のように、同じ知識情報に関連づけられる人物が、利用者との対人関係に応じて変わり得るものではないと解される。
そして、本願発明は、その請求項1に記載された構成を備えることにより、明細書記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、引用例記載の発明において、「知識情報蓄積手段」を「各個人」の知識情報を蓄積するものとし、かつ「提示手段」を、利用者と所定の関係をもつ人物を候補の中から選出した後に、「知識情報蓄積手段に蓄積された知識情報を選出した人物に関連づけて」提示するものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととは認められないから、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
さらに、本願の特許請求の範囲の請求項2乃至6に係る発明は、本願発明(請求項1に係る発明)を限定したものであり、また、請求項7に係る発明は、実質的に、本願発明を「方法」により表現したものであるから、同様に、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-04-18 
出願番号 特願平9-11481
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 紀田 馨平井 誠野崎 大進  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 多賀 実
手島 聖治
発明の名称 知識情報提示装置および知識情報出力方法  
代理人 堀口 浩  

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