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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1156270
審判番号 不服2004-25119  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-04-19 
事件の表示 特願2000-261631「医療情報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月12日出願公開、特開2002- 73822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成12年8月30日の出願であって、平成16年11月5日付で拒絶査定がされ、これに対して同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年1月11日に手続補正がなされたものである。

2. 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年1月11日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「患者紹介先となる紹介先医療機関の診療科情報、医師情報、病院地図情報などを含む病院情報を蓄積する紹介先病院情報蓄積手段と、
患者紹介元となる紹介元医療機関からの患者情報を受け付ける診察情報受付手段と、
前記診察情報受付手段により受け付けた患者情報に基づいて前記紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、前記紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の病院情報を提供する紹介先病院情報提供手段と、
前記紹介元医療機関から紹介先医療機関の決定を受け付ける紹介先決定手段と、
前記診察情報受付手段により受け付けた患者情報に基づいて患者紹介情報を作成し、前記紹介先決定手段によって決定された紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報を送信するとともに、前記患者情報が前記紹介先医療機関に既に登録されている患者の情報でない場合には、前記紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報に基づいて、前記患者の電子カルテを自動的に生成させる患者紹介情報提供手段と、
を備える医療情報システム。」

上記平成17年1月11日付の手続補正書による補正は、請求項1について「前記診察情報受付手段により受け付けた診察情報に基づいて」を「前記診察情報受付手段により受け付けた患者情報に基づいて」とすること、及び「前記紹介先医療機関に対し前記患者情報に基づいて電子カルテを自動的に生成させる」を「前記紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報に基づいて、前記患者の電子カルテを自動的に生成させる」とする補正を含むものであり、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
よって、上記補正は、特許法17条の2第4項の規定に規定する要件を満たすもので適法な補正である。

3. 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平09-135816号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】医師にそれぞれ割り当てられた医師用端末と、個別に患者が使用可能な複数の患者用端末と、管理センタとが互いに通信可能に広域ネットワークで接続されてなる広域医療情報システムであって、
上記管理センタには個別の患者毎の診療履歴情報を格納するための電子カルテファイル、及び上記広域医療情報システムに登録されている複数の医師のデータを記録した医師データベース、並びに、上記ファイルおよびデータベースの管理を行なう管理サーバを備え、該管理サーバは、上記患者用端末から伝送される医師紹介の要求に応答して上記医師データベースを検索して検索結果を要求元の患者用端末に提供する第1の機能、上記患者用端末からの医師の選択情報および該選択情報で選択された医師からの許諾応答に対応して患者と医師との対応関係を登録し、対応関係が登録された医師に上記電子カルテファイル中の対応関係にある患者の診療履歴情報のファイルのアクセス権を与える第2の機能、及び、上記登録された対応関係にある医師の医師用端末と患者の患者用端末に互いに相手端末の上記ネットワーク上のアドレスを伝達し、もって上記広域ネットワークを介した端末間の相互通信による隔地からのオンライン診療を可能にせしめる第3の機能を有することを特徴とする広域医療情報システム。」

イ 「【0026】本実施例においては、患者側101は、日常的には診療所107に勤務するかかり付け医師(ホ-ムドクタ-)の診療を受けるものとする。ここで患者が著名な医師(ホームドクター以外)からの診療、あるいは専門医の診断を受けようとする場合には電子病院システムを利用する。この場合、患者101は、ホームドクターと相談して本システムに登録された医師の中から診察を受けたい医師を選択する。このとき、選択される医師は、診療科毎に行うことができる。また、診療は広域ネットワ-ク100を通して行う。さらに、選択される医師は、1名に限らずそれ以上でも可能である。
【0027】選択された医師は、自分に対する電子病院の診療部門102に登録する。図1に、異なる診療科の3名の医師が選択された例を示す。登録された診療部門102における各医師(医師X?Z)は、患者側101からアクセスがあった場合、その診療予約を受け付る。そして、予約日時にネットワ-ク100を通して患者に対する診療を行う。診療に際しては、管理センタ104において管理されている患者101の診療履歴デ-タを参照する。管理センタ104側では、患者と診療部門102との登録関係を常時管理しており、当該患者に対する電子病院の診療部門に登録されている医師のみに対し、患者の診療履歴デ-タのアクセス権を与える。このようにして患者のプライバシーを守ることができる。」

ウ 「【0032】図2は、患者側101の構成例である。(b)は、(a)に示したTV電話付端末201の詳細を示す図である。まず、(a)について説明する。広域ネットワ-ク100に接続されている支線ネットワ-ク200を介してテレビ電話付端末201が備付けられている。端末201には、日常の健康管理のための血圧計202や心電計203などの体の状態を計測する機器を接続してもかまわない。他の実施例として診療の際、この機器により計測したデータを医師に伝送する構成もある。このことについては、下記に示す。」

エ 「【0035】図3は、診療部門を構成する医師側102の構成例を示すものである。広域ネットワ-ク100に接続されている支線ネットワ-ク300を通じて、ファイルサ-バ301、テレビ電話付受け付け端末302、会計端末303、診療(オ-ダ)端末304、画像表示用高精細ディスプレイ305が接続されている。ファイルサ-バ301は、会計ファイル306、およびネットワ-クを介して診療を行う担当患者の診療履歴情報を記憶するカルテファイル307、テレビ電話付受け付け端末は、担当患者の予約一覧ファイル308を持つ。診療部門の各医師は、テレビ電話付受け付け端末302を通じて患者側からの登録、及び診療の予約受け付けを行う。
【0036】登録時に患者ID等、住所、年齢、性別等の基本情報、診療予約時にはその予約日時を担当患者予約一覧ファイル308上に登録する。ファイルサ-バ301は、診療に先立ち、担当患者の診療履歴デ-タを管理センタ104からダウンロ-ドし、担当患者カルテファイルに格納する。
【0037】診療端末304は、必要に応じてファイルサ-バ301から患者の診療履歴デ-タをロ-ドしこれを表示する。医師はテレビ電話付端末204を介した患者との対話、および診療履歴デ-タを参照して診療を進める。」

オ 「【0044】図6は、管理センタ104の構成を示すものである。ここでは、電子病院全体のモニタリング、及び地域内の住民の全ての医療機関で発生した診療履歴デ-タの統合管理が行われる。広域ネットワ-ク100に接続されている支線ネットワ-ク600を通じて、地域内医療情報統括管理サ-バ601、及び複数の電話付き予約受付端末602が接続されている。
【0045】統括管理サ-バ601は、地域内の住民の診療履歴情報を統合して管理するする患者カルテファイル603、電子病院対応に予め登録されている医師の氏名、所属、専門分野等の情報を登録した電子病院医師デ-タベ-ス604、電子病院に登録されている医師とその患者の対応関係を登録した電子病院医師患者対応ファイル605、電子病院における過去の患者の重要症例を登録した症例デ-タベ-ス606を持つ。統括管理サ-バ601は、患者から、電話付き受付端末602を通じて当該患者に対する電子病院の登録、及び診療予約の要求を受け、電子病院医師デ-タベ-ス604を検索して電子病院に登録されている医師を紹介する。医師と患者との間で登録が成立したときには、その対応関係を電子病院医師患者対応ファイル605に登録するとともに、医師に対し、患者カルテファイル603に記憶されている患者の診療履歴情報のアクセス権を与える。また、難病発生時等、必要に応じて医師からの要求により症例デ-タベ-ス606へのアクセス権を与える。
【0046】以下、電子病院を中心に行われる医療情報処理の具体的な実施例をケ-ス毎に分けて詳細に説明する。
【0047】図7に、患者側が、管理センタを通じて医師側にアクセスして、当該患者に対する電子病院の診療部門102の登録をする手順をフロ-チャ-トにより示す。患者側101、管理センタ104、医師側102の構成は、各々図2、図6、図3に示した通りである。以下、フロ-チャ-トと各々の構成図にしたがって説明する。
【0048】S701:患者側(例えば患者101と診療所107のかかり付け医師)が、自宅に据付けのテレビ電話付き端末201あるいは、携帯テレビ電話204を用いて管理センタにアクセスし、当該患者に対する電子病院の登録をしたい旨を伝える。管理センタ104側は、電話付き受付端末602を通じてこれに応対する。
【0049】S702:管理センタ104側から患者101側に対し、登録したい診療科、過去の病歴、登録する医師の選択基準等の条件を伺い、適切な医師を紹介するために必要な情報を収集する。
【0050】S703:管理センタ104側で受付端末602からファイルサ-バ601上の電子病院医師デ-タベ-ス604を検索し、患者の病歴や希望を検索条件として、診療科毎にこれにあった医師を検索する。デ-タベ-ス604の内容の一例を示したものが、図10であり、医師名、所属、科、専門病、経歴等の項目から構成されている。
【0051】704:デ-タベ-ス604の検索により、一般に診療科毎に複数の医師が抽出されるので、これらを患者に提示する。
【0052】S705:患者側が提示された複数医師の中から一名以上を選択する。
【0053】S706:管理センタ104が、患者が選択した医師に対しアクセスし、医師に対する当該患者の登録を要請する。
【0054】S707:医師側で、現在の担当患者予約一覧ファイル308を参照し、担当患者の数等を考慮して余裕がある場合には、登録の受付を了解する。そうでない場合には、これを拒否する。この場合、S704に戻る。
【0055】S7081,S7082,S7083:医師側が患者の登録を了解した場合、管理センタ104側では、電子病院医師患者対応ファイル605に医師と患者を登録する。ファイルの内容の一例を図11に示す。これとともに、管理センタ104で管理している患者の電子カルテデ-タのアクセス権を医師側に与える。
【0056】これにより、医師は患者のカルテの参照が可能となる。医師側では、担当患者予約一覧ファイル308に患者ID、住所、年齢、性別等の基本情報、及び医師側から患者に対しアクセスするためのネットワ-クアドレスを登録する。担当患者予約一覧ファイル308の内容の一例を図12に示す。
【0057】また、患者側では、電子病院医師登録ファイル209、あるいは210に、医師ID、医師名、診療科、及び患者側から医師側にアクセスするためのネットワ-クアドレスを登録する。電子病院医師登録ファイル209、あるいは210の内容の一例を図13に示す。
【0058】S703からS7081,S7082,S7083までの一連の登録処理は患者が登録を希望する診療科毎に行われ、これにより当該患者に対する電子病院の診療部門が構成される。」

カ 「【0068】S901:診療の前日、あるいは当日の朝に電子病院診療部門102の医師側から管理センタ104の統括管理サ-バ601にアクセスし、地域内患者カルテファイル603から診療を行う患者の電子カルテデ-タを広域ネットワ-ク100を通じてファイルサ-バ301上の担当患者カルテファイル307にダウンロ-ドする。」

したがって、上記アないしカの記載及び図面から、引用例には、「医師側と患者側と管理センタとが互いに通信可能に広域ネットワークで接続された広域医療情報システムであって、
患者側は、TV電話付端末等から構成され、患者と診療所のかかり付け医師が、前記TV電話付端末を用いて管理センタにアクセスして、医師紹介の要求を行い、
管理センタは、個別の患者毎の診療履歴情報を格納するための電子カルテファイル、及び、医師名、所属、科、専門病、経歴等の項目から構成される医師データベース等の管理を行なう管理サーバを備え、患者側に対して、登録したい診療科、過去の病歴、登録する医師の選択基準等の条件を伺い、適切な医師を紹介するために必要な情報を収集し、患者の病歴や希望を検索条件として医師データベースを検索して、抽出された複数の医師を患者側に提供し、患者側からの医師の選択情報、及び該選択情報で選択された医師側からの許諾応答に対応して前記患者の電子カルテデータのアクセス権を医師側に与え、
医師側は、テレビ電話付き受け付け端末とファイルサーバ等から構成され、前記テレビ電話付受け付け端末は、患者側からの登録、及び診療の予約受け付け、前記ファイルサーバは、診療に先立ち、担当患者の電子カルテを管理センタからダウンロードし、担当患者カルテファイルに格納する、広域医療情報システム」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4. 対比
引用発明の「広域医療情報システム」は、本願発明の「医療情報システム」に相当する。
引用発明の「患者側」は、診療所で診療を受けている患者と、その診療所のかかり付け医師を主体とするものであるから、本願発明の「患者の紹介元となる紹介元医療機関」に相当する。
引用発明の医師データベースに蓄積された「医師」は、紹介先となる医療機関であるから、本願発明の「紹介先医療機関」に相当する。
引用発明の「医師名、所属、科、専門病、経歴等の項目から構成される医師データベース」は、紹介先となる医療機関に関する情報を蓄積するものであるから、本願発明の「紹介先医療機関の情報を記憶する紹介先病院情報蓄積手段」に相当する。
引用発明の、患者側の「登録したい診療科、過去の病歴、登録する医師の選択基準等の条件」、及び、管理センタが患者側から前記条件を収集することは、本願発明の「紹介元医療機関からの患者情報」、及び「紹介元医療機関からの患者情報を受け付ける」ことに相当する。
引用発明の「患者の病歴や希望を検索条件として医師データベースを検索して、抽出された複数の医師を患者側に提供する」ことは、本願発明の「患者情報に基づいて紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の情報を提供する」ことに相当する。
引用発明における、医師側のファイルサーバの「担当患者カルテファイル」は、紹介先医療機関で用いられる電子カルテであるから、本願発明の「電子カルテ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、「患者紹介先となる紹介先医療機関の情報を蓄積する紹介先病院情報蓄積手段を備える医療情報システムであって、患者紹介元となる紹介元医療機関からの患者情報を受け付け、該受け付けた患者情報に基づいて前記紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、前記紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の情報を提供する、医療情報システム」で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]本願発明は、「紹介先病院情報蓄積手段」において「病院情報」を蓄積し、該「紹介先病院情報蓄積手段」を検索することで、紹介先の病院情報を提供するのに対して、引用発明は、「医師データベース」において医師の情報を蓄積し、該「医師データベース」を検索することで、紹介先の医師情報を提供する点。

[相違点2]本願発明は、「患者紹介元となる紹介元医療機関からの患者情報を受け付ける診察情報受付手段」をを有しているのに対し、引用発明は当該手段を有していない点。

[相違点3]本願発明は、「紹介元医療機関からの紹介先医療機関の決定を受け付ける紹介先決定手段」を有しているのに対し、引用発明は当該手段を有してない点。

[相違点4]本願発明は、「診察情報受付手段により受け付けた患者情報に基づいて前記紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、前記紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の病院情報を提供する紹介先病院情報提供手段」を有しているのに対し、引用発明は当該手段を有していない点。

[相違点5]本願発明は、「患者情報に基づいて患者紹介情報を作成し、前記紹介先決定手段によって決定された紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報を送信するとともに、前記患者情報が前記紹介先医療機関に既に登録されている患者の情報でない場合には、前記紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報に基づいて、前記患者の電子カルテを自動的に生成させる患者紹介情報提供手段」を有しているのに対して、引用発明は当該手段を有していない点。

5. 当審の判断
[相違点1]について
診療所等の医師が患者に対して、より専門的な診療を行う他の医療機関を紹介する際に、該診療を得意とする特定の医師を紹介すること、あるいは、該治療を得意とする病院の診療科を紹介することは、普通に行われていることである。
してみれば、引用発明において、医者に換えて紹介先病院を提供するために、病院情報を蓄積し、患者情報に応じた病院情報を検索することは、当業者が適宜実施できた設計事項にすぎない。

[相違点2]について
情報の受け取り処理等の所定の処理を「手段」を用いて行うことは、業務の自動化において普通に行われていることである。
したがって、引用発明の管理センタにおいて、患者側から患者情報である「登録したい診療科、過去の病歴、登録する医師の選択基準等の条件を伺う」という受け取り処理を「受付手段」を設けて行うことは、当業者が適宜実施できた設計的事項である。

[相違点3]について
引用発明の「医師の選択情報」は、紹介先として抽出された複数の医師の中から患者側が選択して決定した情報であるから、「紹介先医療機関の決定」の情報であるといえる。そうすると、引用発明において、患者側から「医師の選択情報」を、管理センタが受け取ることは、「紹介元医療機関からの紹介先医療機関の決定を受け付ける」ことに相当する。
そして、「決定を受け付ける」等の所定の処理を「手段」を用いて行うことは、業務の自動化において普通に行われていることである。
したがって、引用発明において「紹介元医療機関からの紹介先医療機関の決定を受け付ける紹介先決定手段」を設けることは、当業者が適宜実施できた設計的事項にすぎない。

[相違点4]について
選択処理や提供処理等の所定の処理を「手段」を用いて行うことは、業務の自動化において普通に行われていることである。
したがって、引用発明において「患者情報に基づいて前記紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、前記紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の情報を提供する」ために、「診察情報受付手段により受け付けた患者情報に基づいて前記紹介先病院情報蓄積手段内から適切な紹介先医療機関を選択し、前記紹介元医療機関に対して選択した紹介先医療機関の病院情報を提供する紹介先病院情報提供手段」を設けることは、当業者が適宜実施できた設計的事項にすぎない。

[相違点5]について
引用発明において、管理センタの「患者の電子カルテ」は、紹介先医療機関での診療に用いられるものであって、管理センタが患者側から受け取った「適切な医師を紹介するために必要な情報」、つまり「患者情報」から作成されたものであることは、当業者にとって自明の事項である。すると、該「患者の電子カルテ」は、本願発明の「患者紹介情報」に相当し、そして、引用発明の、医師側が「診療に先立ち、担当患者の電子カルテを管理センタからダウンロードする」ことは、「患者情報に基づいて作成された患者紹介情報を紹介先医療機関へ送信する」ことであるといえる。
また、病院等の一般の医療機関において、紹介状の有無にかかわらず、該医療機関にカルテの存在しない新規患者の場合に当該患者のカルテを作成することは、当然の業務として普通に行われていることであるから、引用発明の、医師側の電子カルテを扱うファイルサーバにおいても、送られてきた「患者紹介情報」が新規の患者のものであった場合には、当該患者の電子カルテを作成していることは明らかである。
さらに、「手段」を用いることで、所定の業務を自動化することは、病院業務等において普通に行われていることである。
そうすると、引用発明において、該普通に行われているカルテ作成等の業務を自動化するために、「患者情報に基づいて患者紹介情報を作成し、前記紹介先決定手段によって決定された紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報を送信するとともに、前記患者情報が前記紹介先医療機関に既に登録されている患者の情報でない場合には、前記紹介先医療機関に対し、前記患者紹介情報に基づいて、前記患者の電子カルテを自動的に生成させる患者紹介情報提供手段」を設けることは、当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-14 
結審通知日 2007-02-20 
審決日 2007-03-05 
出願番号 特願2000-261631(P2000-261631)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 聡石川 正二菅原 浩二  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
脇岡 剛
発明の名称 医療情報システム  
代理人 小野 由己男  

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