ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
---|---|
管理番号 | 1156286 |
審判番号 | 不服2005-22167 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-17 |
確定日 | 2007-04-19 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第186335号「ブラシ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月12日出願公開、特開平11- 41852〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成9年7月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年9月15日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。) 「側面にピグテールが埋込まれたブラシと、このブラシを収納するブラシ箱と、このブラシ箱に収納し前記ブラシを付勢する弾性体とを備え、前記ブラシが前記ブラシ箱に完全に収納された時、前記ピグテールは、前記ブラシ箱のピグテールガイド溝の上面もしくは下面に設けた三角形状の突起より前記弾性体側に位置するブラシ装置。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-42020号(実開昭58-145062号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物1」という。)には、「直流モータのブラシハウジング」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「本考案に係るブラシハウジングは、 不動部材に固定されていて、ブラシを摺動自在に支持しているブラシハウジングに、ブラシの移動方向と同一方向に溝を形成するとともに、ブラシには該溝に係合する突出部を設け、さらに該溝の途中には、ブラシが逸脱される向きへの突出部の移動を阻止する段部を設け、 上記段部に上記突出部が係止された状態下にて、ブラシの先端は整流子の周面位置よりも、少なくともブラシの摩耗代分だけ内側に喰込んだ位置であって且つ、整流子の挿入に支障をきたさない位置となる様に、上記段部と上記突出部との相対的位置関係が設定されていることを特徴とする。」(明細書5頁16行?6頁8行) ・「第3図において、ブラシハウジング80にはブラシ600が摺動自在に装着されており、そのリード線110を躱すための溝120が、ブラシ600の移動方向と同一方向に形成されている。そして、この溝120の開口端近傍には、ブラシ600の後端と該ブラシハウジング80間に介在されているばね(図示されず)の伸張力により該ブラシ600が逸脱される向きに移動する時に同時に上記移動方向と同方向に移動するリード線110の移動を阻止する段部120aが形成されている。 上記リード線110の、段部120aによる阻止に伴ない、これと一体のブラシ600も当然停止され、而して、溝120からのリード線110の逸脱及びブラシハウジング80からのブラシ600の逸脱は回避される。 段部120aにリード線120aが係止された状態におけるブラシ600の先端位置は最終的な組立後の状態下における整流子4aの周面位置よりも、少なくとも予定される摩耗代分だけ内側に喰込んだ位置となっており、且つ、整流子4aの挿入がスムースに行なわれ得る程度の位置とするのがよい。」(同書6頁12行?7頁12行) ・また、第3図には、ブラシ600の側面にリード線110が設けられ、リード線110を躱すためにブラシハウジング80に設けられた溝120の下面に段部120aが形成された構成が示されている。 これらの記載事項及び第3図の図示内容によれば、引用刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「側面にリード線110が設けられたブラシ600と、このブラシ600を摺動自在に支持するブラシハウジング80と、このブラシ600の後端とブラシハウジング80間に介在されて、伸張力により前記ブラシ600が逸脱される向きに移動させるばねとを備え、前記ブラシ600が前記ブラシハウジング80の整流子4aの挿入に支障をきたさない位置に装着された時、前記リード線110は、前記ブラシハウジング80に設けられた溝120の下面に設けた段部120aに係止された状態である直流モータのブラシハウジング。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「リード線110」は、前者の「ピグテール」に相当し、以下同様に「設けられた」は「埋込まれた」に、「摺動自在に支持」は「収納」に、「ブラシハウジング80」は「ブラシ箱」に、「ブラシ600の後端とブラシハウジング80間に介在されて」は「ブラシ箱に収納し」に、「伸張力によりブラシ600が逸脱される向きに移動させる」は「ブラシを付勢する」に、「ばね」は「弾性体」に、「溝120」は「ピグテールガイド溝」に、「下面に設けた段部120aに係止された状態である」は「上面もしくは下面に設けた突起より弾性体側に位置する」に、「直流モータのブラシハウジング」は「ブラシ装置」に、それぞれ相当する。 また後者の「ブラシ600がブラシハウジング80の整流子4aの挿入に支障をきたさない位置に装着された時」と前者の「ブラシがブラシ箱に完全に収納された時」とは、「組立のためにブラシがブラシ箱に保持された時」との概念で共通する。 したがって両者は、 [一致点] 「側面にピグテールが埋込まれたブラシと、このブラシを収納するブラシ箱と、このブラシ箱に収納し前記ブラシを付勢する弾性体とを備え、組立のために前記ブラシが前記ブラシ箱に保持された時、前記ピグテールは、前記ブラシ箱のピグテールガイド溝の上面もしくは下面に設けた突起より前記弾性体側に位置するブラシ装置。」で一致し、 [相違点] (ア)「組立のためにブラシがブラシ箱に保持された時」が、本願発明では、「ブラシがブラシ箱に完全に収納された時」であるのに対して、引用発明では、「ブラシ600がブラシハウジング80の整流子4aの挿入に支障をきたさない位置に装着された時」である点、及び、 (イ)突起の形状が、本願発明は、「三角形状」であるのに対し、引用発明は、単に「段部」としている点で相違している。 4.相違点に対する判断 相違点(ア)について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-168256号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、モータのブラシ保持装置に関して、整流子配置の際のブラシ仮保持状態として図1に、ブラシがブラシ箱に完全に収納されたものが記載されている。 引用発明及び引用刊行物2に記載された発明は、いずれもブラシ装置の組立時の保持に関するものであるから、引用発明においてブラシの収納状態を引用刊行物2に記載されたような状態にすることで、相違点(ア)に係る本願発明の構成とすることは当業者に容易である。 相違点(イ)について そもそも、ピグテールを被係止部とする突起は、ピグテールを係合させることにより、ブラシを、整流子を組み込むときに邪魔にならないように収納させた状態で保持し、かつ、整流子を組み込んだ後は、整流子にブラシを接触させるように、ピグテールとの係合を外す機能を有するものであるから、ピグテールを容易に挿入、係止保持、及び係止解除ができる形状とすべきものであることは明らかである。 そして、一般に被係止部の挿入のし易さのために導入部位を緩やかな面で構成することは、周知慣用技術であり、また、被係止部を係止保持させるための係止部位の形状は、係止解除のし易さとの兼ね合いで適宜決定し得るものであることも明らかである。 したがって、ピグテールを被係止部とする突起の形状は、容易に、挿入、係止保持及び係止解除ができる範囲内のものとして適宜選択すれば足りるものであり、三角形状とすることも、任意である。 そうすると、引用発明において、相違点(イ)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。 また、本願発明の奏する効果は、引用発明、引用刊行物2の記載、及び上記周知慣用技術から予測しうる程度のものと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1,2に記載された発明および周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-15 |
結審通知日 | 2007-02-20 |
審決日 | 2007-03-05 |
出願番号 | 特願平9-186335 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶本 直樹 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
田中 秀夫 高橋 学 |
発明の名称 | ブラシ装置 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 永野 大介 |