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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1156288
審判番号 不服2006-471  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-06 
確定日 2007-04-19 
事件の表示 特願2003-428055「ガードを備えた画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年9月30日出願公開、特開2004-272216〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)2月20日に出願された特願2003-42687号の特許出願を基礎とする国内優先権主張に係る平成15年(2003年)12月24日出願の特願2003-428055号の特許出願であって、原審において平成17年7月1日付の拒絶理由を通知したところ、平成17年9月12日付の意見書とともに特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出され、前記拒絶理由により平成17年12月1日付で拒絶査定がなされ、その後、前記拒絶査定を不服として平成18年1月6日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求の日から30日以内の平成18年2月6日に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年2月6日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月6日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成18年2月6日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成17年9月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1についての
「【請求項1】
特定の対象物の画像を表示する表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)と、少なくとも上記表示面(S)に画像を表示させ、且つ表示面(S)に表示される表示画像を変化させる制御装置(15)と、ディスプレイユニット(1)を支持する支持体(2)とを備え、ディスプレイユニット(1)が、40インチ?70インチの大型の表示面(S)を有し、表示面(S)が、該表示面(S)に接触する所定の接触物の接触と、接触移動軌跡を検出するタッチパネル面であり、制御装置(15)に表示画像を変化させるための入力を行う入力手段が、上記タッチパネルからなる画像表示装置において、表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)からなるガード(31)をディスプレイユニット(1)側に設け、該バー(32)が、表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止するガードを備えた画像表示装置。」
の記載を、
「【請求項1】
特定の対象物の画像を表示するディスプレイ(3)が、外枠(4)にはめ込まれてなるディスプレイユニット(1)と、ディスプレイ(3)の表示面(S)に画像を表示させ、且つ表示面(S)に表示される表示画像を変化させる制御装置(15)と、ディスプレイユニット(1)を支持する支持体(2)とを備え、上記表示面(S)と外枠(4)との間には段差(Z)が形成され、ディスプレイ(3)が、40インチ?70インチの大型の表示面(S)を有し、表示面(S)の全面が、該表示面(S)に接触する所定の接触物の接触と接触移動軌跡を検出するタッチパネル面であり、制御装置(15)に表示画像を変化させるための入力を行う入力手段が、上記タッチパネルからなり、上記タッチパネルが、誤った位置への接触により本来のタッチ操作に対して反応しなくなるものである画像表示装置において、表示面(S)の略全幅に亘り、外枠(4)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)からなるガード(31)をディスプレイユニット(1)側に設けたガードを備えた画像表示装置。」
と補正することを含むものである。

2 本件補正についての検討
(1)本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号の規定によりなされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的に該当する補正であるか否かについて検討する。
(2)本件補正の内容
ア 本件補正において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(これを「旧請求項1」という。以下同じ。)に記載されてあった「表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)」の発明特定事項を、「ディスプレイ(3)が、外枠(4)にはめ込まれてなるディスプレイユニット(1)」とする、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている請求項1(これを「新請求項1」という。以下同じ。)についての補正は、「ディスプレイ(3)が、外枠(4)にはめ込まれてなるディスプレイユニット(1)」が、「表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)」を限定的に減縮する下位概念の語句でもなく、「表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)」を「ディスプレイ(3)が、外枠(4)にはめ込まれてなるディスプレイユニット(1)」とすることが、明らかな誤記の訂正に該当せず、そして明りようでない記載の釈明にも該当しないから、新請求項1における前記補正は、旧請求項1に記載されてあった「表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)」の発明特定事項を、新たな発明特定事項である「ディスプレイ(3)が、外枠(4)にはめ込まれてなるディスプレイユニット(1)」に入れ替えることにより、発明特定事項を変更する補正である。

イ 本件補正において、旧請求項1に記載されてあった「ディスプレイユニット(1)」の発明特定事項を、「ディスプレイ(3)」とする新請求項1についての補正は、「ディスプレイ(3)」が、「ディスプレイユニット(1)」を限定的に減縮する下位概念の語句でもなく、「ディスプレイユニット(1)」を「ディスプレイ(3)」とすることが、明らかな誤記の訂正に該当せず、そして明りようでない記載の釈明にも該当しないから、新請求項1における前記補正は、旧請求項1に記載されてあった「ディスプレイユニット(1)」の発明特定事項を、新たな発明特定事項である「ディスプレイ(3)」に入れ替えることにより、発明特定事項を変更する補正である。

ウ 本件補正において、旧請求項1に記載されてあった「表示面(S)の正面側」の発明特定事項を、「外枠(4)の正面側」とする新請求項1についての補正は、「外枠(4)」が、「表示面(S)」を限定的に減縮する下位概念の語句でもなく、「表示面(S)」を「外枠(4)」とすることが、明らかな誤記の訂正に該当せず、そして明りようでない記載の釈明にも該当しないから、新請求項1における前記補正は、旧請求項1に記載されてあった「表示面(S)の正面側」の発明特定事項を、新たな発明特定事項である「外枠(4)の正面側」に入れ替えることにより、発明特定事項を変更する補正である。

エ 新請求項1についての、旧請求項1に記載されてあった「該バー(32)が、表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止する」の発明特定事項を、新請求項1においてまったく記載されていないように消去する補正は、旧請求項1に記載されてあった発明特定事項を抹消する補正である。

オ まとめ
しかして、本件補正のうちの少なくとも上記のア、イ、ウ、エの補正は、特許法第17条の2第4項の第1号、第2号、第3号及び第4号に規定されているところの、
第1号:第三十6条第5項に規定する請求項の削除
第2号:特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
第3号:誤記の訂正
第4号:明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
のいずれの目的にも該当しない補正であることが明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない補正を含むものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合していない補正を含んでいるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成18年2月6日付の手続補正が却下されたことにより、本願発明は、平成17年9月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(上記「第2」の「1 補正の内容」欄を参照)。
「特定の対象物の画像を表示する表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)と、
少なくとも上記表示面(S)に画像を表示させ、且つ表示面(S)に表示される表示画像を変化させる制御装置(15)と、
ディスプレイユニット(1)を支持する支持体(2)とを備え、
ディスプレイユニット(1)が、40インチ?70インチの大型の表示面(S)を有し、
表示面(S)が、該表示面(S)に接触する所定の接触物の接触と、接触移動軌跡を検出するタッチパネル面であり、
制御装置(15)に表示画像を変化させるための入力を行う入力手段が、上記タッチパネルからなる画像表示装置において、
表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)からなるガード(31)をディスプレイユニット(1)側に設け、
該バー(32)が、表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止するガード
を備えた画像表示装置。」(以下、これを「本願発明1」という。)

2 引用刊行物
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願の優先権主張日前に頒布された特開2002-300601号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「バーチャルリアリティ画像表示システム」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 この発明はパノラマバーチャルリアリティ(パノラマVR)やオブジェクトバーチャルリアリティ(オブジェクトVR)等により構成されるバーチャルリアリティを表示するバーチャルリアリティ画像表示システム。」
「【0009】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するための本発明のバーチャルリアリティ画像表示システムは、特定の対象物のバーチャルリアリティ画像を表示するディスプレイ1と、該ディスプレイ1に表示される対象物を二次元的又は三次元的に移動若しくは動作させるようにディスプレイ1の表示を変化せしめるコントロール手段57と、コントロール手段57側に画面表示を変化せしめるための作動制御用のデータを入力する入力手段と、上記ディスプレイ1を支持する支持体2とを備えたものにおいて、該入力手段が画面表示を変化させるためのオペレータ3の特定の動作を検出して読みとるセンサからなり、該センサを介したオペレータ3による画面表示の操作が可能なオペレータの所在位置の範囲である特定の操作可能エリアRを備え、オペレータ3によるコントロール手段57側の操作時に、前記操作可能エリア内においてディスプレイ1と対面視する観者にとって視界の略全体を覆うサイズの表示画面1Sをディスプレイ1が備えたことを第1の特徴としている。
【0010】 第2にセンサが、ディスプレイ1の表示画面1Sに接触する所定の接触物の表示画面1S上での接触と移動軌跡を検出するものであることを特徴としている。
【0011】 第3にセンサを、操作可能エリアR内でのオペレータ3の特定の動作を検知する構成とし、センサの検出データを、画面表示を変化させるための所定のデータに変換してコントロール手段側に出力するモーションセンシングシステム63を設けてなることを特徴としている。
【0012】 第4に支持体2が、ディスプレイ1の左右側方及び後方側を支持し、ディスプレイ1の前方に、支持体2に囲まれた操作可能エリアRを形成せしめたことを特徴としている。
【0013】 第5に操作可能エリアRが、少なくとも車椅子4の一部が、車椅子4上のオペレータ3が操作姿勢をとることができるように挿入可能であることを特徴としている。
【0014】 第6に支持体2がディスプレイ1を上下スライド及び前後揺動自在に支持したことを特徴としている。
【0015】 第7にディスプレイ1がウェブブラウザ59の表示が可能であり、該ウェブブラウザ59内に表示されるボタンの操作に基づいてウェブブラウザ59の表示画面内にバーチャルリアリティ画像を表示せしめることを特徴としている。
【0016】 第8にウェブブラウザ59内に表示されるボタンが、コンピュータに接続されたマウスによるシングルクリックのデータと同様のセンサからのデータによって操作されることを特徴としている。」
「【0017】【発明の実施の形態】 図1は本発明のVR(バーチャルリアリティ)画像表示システムの正面斜視図であり、比較的大型のディスプレイ1と該ディスプレイ1を支持する支持体(スタンド)2とにより構成され、VR画像の観視(視聴)をするべくシステムを操作する視聴操作者(オペレータ)がディスプレイ1上に表示される、パノラマ画像及びオブジェクト画像(従来の技術と発明が解決しようとする課題の項参照)等から構成されるVR画像を臨場感豊に見ることができるものとなっている。
【0018】 すなわち図2に示されるように、上記オペレータ3が車椅子4等に座って、又は起立してディスプレイ1の前に対面して位置し、ディスプレイ1から大きく離れることが無い所定の操作可能エリア内において、システムを操作することにより、オペレータ3の視界範囲が概ねディスプレイ1と一致した状態を保ってVR画像が表示され、これによりオペレータ3は臨場感豊にVR画像を見ることが可能となっている。
【0019】 上記スタンド2は図1?図6に示されるように、正面視で略中央にディスプレイ1を支持する構造となっており、左右の両脚6と、両脚6間に位置してディスプレイ1の後方に配される中央脚7とを備え、スタンド2はディスプレイ1の左右側方及び後方側を支持している。このとき中央脚7はボックス状をなしており、内部にコンピュータの本体等を備えたコントロールボックス8とメンテナンス用のキーボード9が収納されている。また中央脚7の左右両側面にはスピーカ11が配置されている。」
「【0024】 一方上記ディスプレイ1は50インチ(約幅1100mm×高さ610mm)のプラズマディスプレイとなっており、比較的高コントラストの画面(表示面)を備える。また後述するタッチパネル機能を備えたものとなっており、オペレータ3がディスプレイ1(VR画像の表示画面)を接触操作(タッチパネル操作)することにより、VRアプリケーションにVR画像を処理せしめるマウスと同様のデータをコントロールボックス8側に送り、上記VRアプリケーションを操作してVR画像を表示・変化させて、VR画像を見ることが可能となっている。
【0025】 またディスプレイ1はスタンド2に、表示面が垂直の状態において最高高さが1700mm及び最低高さが1400mmとなるように上下方向に300mmのパン移動(スライド移動)すること、及び表示面の垂直を基準として±15度のチルト移動(揺動)することが可能に支持されている。すなわち前述の支持機構17は、詳細は後述するが、ディスプレイ1を上記のように移動且つ揺動可能に支持している。
【0026】 そして本発明のVR画像表示システムは、高さが最高1700mm且つ最低1400mmであり、奥行きが1070mm,幅が1780mmのサイズに構成されている。」
「【0040】 さらに支持体2にはディスプレイ1の下方位置に両端が左右両脚6のカバー51の内側面に取り付けられて左右方向に手すり54が横設されており、車椅子4の人や子供等の身長が低い人等がオペレータ3となる場合に、手すり54に掴まることにより安定してオペレートすることができるようにも構成されている。」
「【0054】 次の本VR画像表示システムのシステム構成について説明する。図10に示されるようにタッチパネル機能を備えたディスプレイ1と、ウェブサーバ56,VRアプリケーション(ソフトウエア)57,電動シリンダ36及び電動ロッド46のモータ(図示せず)を制御するモータ制御システム(ソフトウエア)58,ウェブブラウザ59等を備えたコンピュータ61,上記モータ制御システム58により作動が制御され電動シリンダ36及び電動ロッド46のモータを作動せしめるモータコントローラ62,キーボード9等により構成されている。
【0055】 上記ディスプレイ1は前述のように、いわゆるプラズマディスプレイであり、且つ、ディスプレイ面1S上を専用の入力用のデバイス(例えばペンタイプのもの)や、人間の指等により触れ、ディスプレイ面1Sに触れた状態のまま指やデバイスをディスプレイ面1S上で移動させることにより、マウスを移動させる場合と同様のデータを出力することができるタッチパネル機構を備えたものとなっている。
【0056】 なお当該ディスプレイ1は従来公知のものであるため、詳細な説明は割愛するが、タッチパネル機能は、指又は入力デバイスの移動を赤外線又は超音波等を使用して検出し、指又は入力デバイスの移動状態をマウスの移動状態と同様にしてデータ出力する構造となっている。」

そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。
「特定の対象物のバーチャルリアリティ画像を表示する50インチ(約幅1100mm×高さ610mm)の比較的大型のディスプレイ1と、
該ディスプレイ1に表示される対象物を二次元的又は三次元的に移動若しくは動作させるようにディスプレイ1の表示を変化せしめるコントロール手段57と、
コントロール手段57側に画面表示を変化せしめるための作動制御用のデータを入力する入力手段と、
上記ディスプレイ1を支持するスタンド2とを備えたバーチャルリアリティ画像表示システムにおいて、
前記入力手段が画面表示を変化させるためのオペレータ3の特定の動作を検出して読みとるセンサからなり、
前記スタンド2は、ディスプレイ1を上下方向にパン移動(スライド移動)且つチルト移動(揺動)可能に支持する構造となっており、
さらに前記スタンド2は、ディスプレイ1の下方位置に両端が左右両脚6のカバー51の内側面に取り付けられて左右方向にスタンド2に横設された手すり54を有し、該手すり54が、車椅子4の人や子供等の身長が低い人等がオペレータ3となる場合に、手すり54に掴まることにより安定してオペレートすることができるように構成されており、
前記ディスプレイ1は、オペレータ3が、ディスプレイ面1S上を専用の入力用のデバイス(例えばペンタイプのもの)や、人間の指等により触れ、ディスプレイ面1Sに触れた状態のまま指やデバイスをディスプレイ面1S上で接触操作(タッチパネル操作)することにより、VRアプリケーションにVR画像を処理せしめるデータをコントロールボックス8側に送り、上記VRアプリケーションを操作してVR画像を表示・変化させて、オペレータ3によるコントロール手段57側の操作時に、VR画像を見ることが可能タッチパネル機能を備えたバーチャルリアリティ画像表示システム」

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願の優先権主張日前に頒布された特開平11-272185号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「映像情報表示装置」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、車椅子からでも容易に操作ができる公共施設の受付業務等を行う映像情報表示装置に関する。
【0002】【従来の技術】 市役所や病院等の公共施設の受付業務等を、人手を煩わせずに迅速的確に行う装置として、利用者がPDP(プラズマディスプレイパネル)等からなる表示部に表示された案内に従って入力して、表示又は印刷出力等により行き先部署等の案内や、その他の情報を提供する映像情報装置が有用である。このような映像情報表示装置では、車椅子等で来訪する人にも容易に対応できるものでなけらばならない。また、このような映像情報表示装置を設ける施設によっては、設置場所が限定される場合も多く、その場合でも車椅子等でも容易に操作できるものでなけらばならない。
【0003】【発明が解決しようとする課題】 本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、情報表示装置の機器の配置を、車椅子等からも容易に操作できるように設置できる手段を提供することを目的とする。」
「【0016】【発明の実施の形態】 以下に、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。図1は本発明による映像情報表示装置の1実施例の(A)左型、(B)右型の正面図である。入力部と情報表示部からなる表示ユニット1を横棒4に懸装し、横棒4を制御部2の筐体と支脚3で支承して、映像情報表示装置を構成する。そして、制御部2で制御する情報表示部に、市役所等の施設の受付情報等を表示し、利用者がその表示に従って、入力部から来訪目的等の必要な情報を指示して入力することで、受付業務を遂行する。支脚3と制御ユニット2の筐体は、床上等に載置する床板5に着座させる。支脚3と制御ユニット2の筐体には、左右の双方に横棒4を支承する支承部を設けるとともに、床板5には支脚3と制御ユニット2を左右何れにも着座させる着座部を設けて、支柱3と制御ユニット2を表示ユニット1の左右何れにも配置できるようにし、同一の構成要素で、表示ユニット1を制御ユニット2の左側に配置した左型と、右側に配置した右型のとちらでも構成できるようにする。
【0017】 図2は、本発明による映像情報表示装置の1実施例の左型の(A)左側面図、(B)正面図、(C)右側面図である。表示ユニット1の中に収納する表示部は、パネルタイプのPDP(プラズマディスプレイパネル)から構成し、薄型の表示部として、上記表示ユニットの左右の置き換えが容易に行えるようにする。また同様の理由から、入力指示部は、指先で指示して入力できるタッチパネル1bから構成する。入力指示部をタッチパネル1bとすることで、操作性も向上する。表示ユニット1の表示面の横部には、略コ字状のアングルからなる把手1cを設けて、タッチパネル1bから入力する際の手の位置を安定に保てるようにする。制御ユニット2の扉2aの内部には、汎用のパソコンからなる制御部を設けて、表示ユニット2等の制御を行って受付業務を遂行するようにすると、保守性が良く、安価な制御部が得られる。制御ユニット2の上部の扉2bの内側にはプリンタを設けて、受付案内情報等を印刷出力口2cから印刷出力するようにすることもできる。表示ユニット2と支脚3には、左右の両方に横棒3の支承部を設け、使用しない側の横棒3の支承部には、カバー板2d、3dを装着する。
【0018】 図3は、本発明による映像情報表示装置の1実施例の分解部分図の(A)左側面図、(B)正面図、(C)平断面(同図c1-c1断面)、(D)横棒正面図、(E)横棒側面図、(F)表示ユニット支承部側面図、(G)同拡大図である。表示ユニットを横棒に懸装する懸装部には、表示ユニット1の表示面の仰角を変えて設置する仰角調整機構を設け、表示ユニット1の表示面の仰角を設置目的に合わせて変えられるようにする。床板5と制御ユニット2及び支脚3を螺着する螺着部5a、5a、・・は、それぞれ左右で同一形状として、制御ユニット2及び支柱3は床板5の左右の何れにも螺着できるようにする。なお、床板5には、アンカーボルト用の透孔5b、5b、・・を設けて、透孔5b、5b、・・からアンカーボルトを嵌入して床等に螺着して、装置の安定な設置を図る。」

(3)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願の優先権主張日前に頒布された特開2000-181364号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、「情報検索表示装置」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は表示装置に表示されている表示情報にタッチ操作することにより表示情報を選択して情報検索を行う情報検索表示装置に係わり、特に車椅子利用者が使用するのに適した情報検索表示装置に関する。」
「【0014】 図1において、コ字型形状の支持筐体(支持部材)4の上脚4aに平面型表示装置1がその表示画面1aの傾斜角を傾動自在に取り付けられている。平面型表示装置1は上脚4aの開放端ほぼ先端部に取り付けられ、その設置角度(傾斜角度)は角度調整機構5により変えられる。支持筐体4の上脚4a内に表示制御装置2が収納されている。表示制御装置2は車椅子10の利用者(操作者)11が指11aで平面型表示装置1の表示画面1aに触れた位置つまりタッチ位置情報を入力して平面型表示装置1に表示する表示情報(表示内容)を作成する。表示制御装置2は図示しないメモリに記憶されているイメージ情報とデータを用いて表示情報を作成する。下脚4bには重心が中央に来るように調整し、かつ重心を低くして安定させるための重りが設けられている。支持筐体4の上脚4aと下脚4bの間は車椅子利用者11の足の膝11bから車椅子10の足踏み板10aまでを収容できる距離を有する。また、上脚4aの先端部にタッチ操作時に掴む補助レバー7が設けられている。
【0015】 この構成において、支持筐体4の上脚4aと下脚4bの間は車椅子利用11の足の膝から車椅子10の足踏み板10aまでを収容できる空間を有する。車椅子10を利用する車椅子利用者11は、その胸部を平面型表示装置1に十分近づくことが可能になるので平面型表示装置1の表示画面1aを見ることができ、一方の手で補助レバー7を掴み体を固定しながら表示画面1aへのタッチ操作を行える。」

3 対比
本願発明1と前記引用発明とを対比すると、引用発明における「ディスプレイ1」、「該ディスプレイ1に表示される対象物を二次元的又は三次元的に移動若しくは動作させるようにディスプレイ1の表示を変化せしめるコントロール手段57」、「上記ディスプレイ1を支持するスタンド2」及び「バーチャルリアリティ画像表示システム」のそれぞれが、本願発明1の「ディスプレイユニット(1)」、「少なくとも上記表示面(S)に画像を表示させ、且つ表示面(S)に表示される表示画像を変化させる制御装置(15)」、「ディスプレイユニット(1)を支持する支持体(2)」及び「画像表示装置」のそれぞれに相当することは明らかである。
また、引用発明の「特定の対象物のバーチャルリアリティ画像を表示する50インチ(約幅1100mm×高さ610mm)の比較的大型のディスプレイ面1S」が、本願発明1の「特定の対象物の画像を表示する表示面(S)」及び「40インチ?70インチの大型の表示面(S)」に相当するといえる。
さらに、引用発明の「コントロール手段57側に画面表示を変化せしめるための作動制御用のデータを入力する入力手段が、画面表示を変化させるためのオペレータ3の特定の動作を検出して読みとるセンサからなり、オペレータ3が、ディスプレイ面1S上を専用の入力用のデバイス(例えばペンタイプのもの)や、人間の指等により触れ、ディスプレイ面1Sに触れた状態のまま指やデバイスをディスプレイ面1S上で接触操作(タッチパネル操作)することにより、VRアプリケーションにVR画像を処理せしめるデータをコントロールボックス8側に送り、上記VRアプリケーションを操作してVR画像を表示・変化させて、オペレータ3によるコントロール手段57側の操作時に、VR画像を見ることが可能タッチパネル機能を備えた」が、本願発明1の「表示面(S)が、該表示面(S)に接触する所定の接触物の接触と、接触移動軌跡を検出するタッチパネル面であり、制御装置(15)に表示画像を変化させるための入力を行う入力手段が、上記タッチパネルからなる」に相当するといえる。
そして、引用発明の「ディスプレイ1の下方位置に両端がスタンド2の左右両脚6のカバー51の内側面に取り付けられて左右方向に横設された手すり54」と、本願発明1の「表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿いディスプレイユニット(1)側に設けられるバー(32)」とにおける、手すり54とバー(32)とがそれぞれ設けられる対象を除外して考えると、引用発明の「ディスプレイ1の下方位置に両端が取り付けられて左右方向に横設された手すり54」が、本願発明1の「表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「特定の対象物の画像を表示する表示面(S)を備えたディスプレイユニット(1)と、
少なくとも上記表示面(S)に画像を表示させ、且つ表示面(S)に表示される表示画像を変化させる制御装置(15)と、
ディスプレイユニット(1)を支持する支持体(2)とを備え、
ディスプレイユニット(1)が、40インチ?70インチの大型の表示面(S)を有し、
表示面(S)が、該表示面(S)に接触する所定の接触物の接触と、接触移動軌跡を検出するタッチパネル面であり、
制御装置(15)に表示画像を変化させるための入力を行う入力手段が、上記タッチパネルからなる画像表示装置において、
表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)を備えた画像表示装置」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)が、本願発明1では「ディスプレイユニット(1)側に設け」られるのに対し、引用発明では、「スタンド2に横設され」る点。
相違点2:本願発明1が、「ガード(31)がバー(32)からなり、該バー(32)が、表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止するガード」であるのに対し、引用発明は、手すり54が前記ガードの機能を有しているか否かが明確でない点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
上記引用刊行物2には、「利用者がパネルタイプのPDP(プラズマディスプレイパネル)等からなる薄型の表示部に表示された案内に従って指先で指示して入力できるタッチパネル1bから構成され、車椅子からでも容易に操作ができる公共施設の受付業務等を行う映像情報表示装置に関して、入力部と情報表示部からなる表示ユニット1を横棒4に懸装し、横棒4を制御部2の筐体と支脚3で支承して、映像情報表示装置を構成し、支脚3と制御ユニット2の筐体には、左右の双方に横棒4を支承する支承部を設けるとともに、表示ユニットを横棒に懸装する懸装部には、表示ユニット1の表示面の仰角を設置目的に合わせて変えられるように表示ユニット1の表示面の仰角を変えて設置する仰角調整機構を設け、入力指示部は、指先で指示して入力できるタッチパネル1bから構成されており、タッチパネル1bから入力する際の手の位置を安定に保てるように、表示ユニット1の表示面の横部に、略コ字状のアングルからなる把手1cを設けた映像情報表示装置」が開示されている。
このように、前記引用刊行物2には、前記把手1cを表示ユニット1の表示面に設けることが記載されている。
そうすると、引用発明の「手すり54をスタンド2に横設する」ことに代えて、「把手1cを表示ユニット1の表示面に設ける」という引用刊行物2に記載された公知技術を適用することにより、表示面(S)の略全幅に亘り、表示面(S)の正面側に突出し、表示面(S)の下端に沿うバー(32)を、本願発明1の相違点1に係る「ディスプレイユニット(1)側に設け」る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。

(2)相違点2について
前記「(1)相違点1について」欄において前述した引用刊行物2の「把手1cを表示ユニット1の表示面に設けた映像情報表示装置」の例に加えて、上記引用刊行物3にも、「表示装置に表示されている表示情報にタッチ操作することにより表示情報を選択して情報検索を行う、特に車椅子利用者が使用するのに適した情報検索表示装置に関し、コ字型形状の支持筐体(支持部材)4の上脚4aに表示画面1aの傾斜角を傾動自在に取り付けられている平面型表示装置1の設置角度(傾斜角度)が、角度調整機構5により変えられるようになっており、前記表示制御装置2は、車椅子10の利用者(操作者)11が指11aで平面型表示装置1の表示画面1aに触れた位置つまりタッチ位置情報を入力して平面型表示装置1に表示する表示情報(表示内容)を作成するものであり、上脚4aの先端部にタッチ操作時に掴む補助レバー7が設けられていて、車椅子10を利用する車椅子利用者11は、その胸部を平面型表示装置1に十分近づいて平面型表示装置1の表示画面1aを見ることができ、一方の手で補助レバー7を掴み体を固定しながら表示画面1aへのタッチ操作を行える情報検索表示装置」が開示されている。
このように、引用刊行物2及び引用刊行物3の記載事項からみて、指先で指示して入力できるタッチパネルから構成される表示装置において、表示装置の表示画面が傾動自在に取り付けられ、利用者が入力する際に、タッチパネルから入力する際の手の位置を安定に保てるように、そして一方の手で体を固定しながら表示画面へのタッチ操作を行えるように、把手又は補助レバーを設けることは、本件特許出願の優先権主張日前の公知技術である。
そして、引用刊行物2に記載された把手1cは、利用者がパネルタイプのPDP(プラズマディスプレイパネル)等からなる薄型の表示部に表示された案内に従って、指先で指示してタッチパネル1bに入力する際には、表示ユニット1の表示面の横部に設けられた略コ字状のアングルからなる前記把手1cが、タッチパネル1bから入力する際の利用者の手の位置を安定に保つのであり、利用者の手の位置を安定に保つ前記把手1cは、とりもなおさず、利用者がパネルタイプのPDP(プラズマディスプレイパネル)等からなる薄型の表示部に表示された案内に従って指先で指示してタッチパネル1bに入力する際に、正しく入力をすることができるようにすることに寄与しているといえる。
そうすると、上記「(1)相違点1について」欄において前述したところの、引用発明に引用刊行物2に記載された公知技術を適用した結果としてもたらされる「ディスプレイ1に取り付けられて左右方向に横設された手すり54」は、ディスプレイ1のディスプレイ面1Sの略全幅に亘り、ディスプレイ面1Sの正面側に突出し、ディスプレイ面1Sの下端に沿う左右方向に横設されてディスプレイ1側に設けられていることにより、ディスプレイ1のディスプレイ面1Sが揺動して傾斜した場合であっても、利用者がディスプレイ1に一体に取り付けられている手すり54を把持することにより、利用者が一方の手で体を固定しながら他方の手でディスプレイ面1Sへのタッチ操作を正しく行えるように、その傾斜角度に関わりなくディスプレイ面1Sの正面側に突出して設けられる前記手すり54の一定位置に、ディスプレイ面1Sに入力する側の手の指以外の他方側の手を、ディスプレイ面1Sから隔離させることになるから、前記手すり54がディスプレイ面1Sにおける誤入力操作を未然に回避する防護(ガード)の役割、すなわち、本願発明1のバー(32)と同様の「表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止するガード」の機能を果たしているといえる。
したがって、引用刊行物2及び引用刊行物3に記載されている「利用者が入力する際に、タッチパネルから入力する際の手の位置を安定に保てるように、そして一方の手で体を固定しながら表示画面へのタッチ操作を行えるようにするために設けられる把手又は補助レバー」の役割からみて、引用発明に引用刊行物2に記載された公知技術を適用した結果としてもたらされる「ディスプレイ1に取り付けられて左右方向に横設された手すり54」が、本願発明1のガード(31)と同様に、「該バー(32)が、表示面(S)の略全幅に亘り、ディスプレイユニット(1)側に向かう人体の表示面(S)への接触前に、該人体と当接することによって、前記人体の表示面(S)への接触を防止するガード」の作用を果たすことになるのは当然である。
そうしてみると、相違点2に係る本願発明1の前記構成は、引用発明に引用刊行物2及び引用刊行物3に記載された発明を適用することにより、当然の結果としてもたらされる手すり54のガード作用を、単に特筆して記載したものにすぎない。

そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明、引用刊行物2及び引用刊行物3に記載された発明から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、上記引用発明、引用刊行物2及び引用刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、上記引用発明、引用刊行物2及び引用刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-14 
結審通知日 2007-02-20 
審決日 2007-03-05 
出願番号 特願2003-428055(P2003-428055)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 柏崎 正男
森口 良子
発明の名称 ガードを備えた画像表示装置  
代理人 河野 誠  

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