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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680110 審決 特許
無効200680238 審決 特許
無効200680009 審決 特許
無効200680130 審決 特許
無効200680070 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61M
審判 全部無効 2項進歩性  A61M
管理番号 1156328
審判番号 無効2006-80187  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-20 
確定日 2007-04-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第3762290号発明「医療用ガイドワイヤ」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第3762290号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3762290号の請求項1?5に係る発明についての出願は,平成13年12月3日に出願され,平成18年1月20日にその発明について特許権の設定登録がされたものであり,これに対して,請求人は,平成18年9月20日に請求項1?5に係る発明の特許について無効審判を請求した。

II.本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明2」,「本件発明3」,「本件発明4」及び「本件発明5」という。)は,特許明細書及び図面の記載からみて,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 可撓性線条体のワイヤ主部の先端部分のコア線にコイルばねを嵌装すると共に,該コア線の前端に,該コイルばねの内側に近接または接合し,かつ該コイルばねの前端に膨隆する先導栓を備えた医療用ガイドワイヤにおいて,該先導栓の栓頭から該コイルばねの固着後端までの硬直部分の長さを概ね0.5粍以下に成すと共に,前記コイルばねのばね長方向の中間部位に,前記コア線の中間ボス部に固着した中間固定部を設け,さらに,前記先導栓と前記中間固定部の間の前記コイルばねは,弾性拡縮自在のコイル線間間隙を備えると共に,コイルばね長が概ね24粍にして,かつ,該コイル線間間隙が該コイル線の線直径の10%以上30%以下にして,血管挿入状態において,病変部との接触抵抗外力によってコイル線間間隙が弾性伸びして軟質の病変部組織を,該線間に受け入れて進退・回転操作を可能にした構造を特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】 可撓性線条体のワイヤ主部の先端部分のコア線にコイルばねを嵌装すると共に,該コア線の前端に,該コイルばねの内側に近接または接合し,かつ該コイルばねの前端に膨隆する先導栓を備えた医療用ガイドワイヤにおいて,該先導栓の栓頭から該コイルばねの固着後端までの硬直部分の長さを概ね0.5粍以下になすと共に,前記コイルばねのばね長方向の中間部位に,前記コア線の中間ボス部に固着した中間固定部を設け,さらに,前記先導栓と前記中間固定部の間の前記コイルばねは,弾性拡縮自在のコイル線間間隙を備えると共に,前記先導栓は平行1対のカット面によって外周をカットした平坦カット面を設けた構造を特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】 先導栓と中間固定部間のコイルばねは,コイルばね長が概ね24粍にしてコイル線間間隙はコイル線の線直径の10%以上30%以下である請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】 コア線が,先導栓のカット面と平行する長辺から成る矩形断面形状を有する請求項2・請求項3のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】 コイルばねの先端と先導栓が,TIG溶接またはレーザースポット溶接から成る請求項2?請求項4のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤ。」
なお,請求項4の「短形」は,「矩形」の誤記であることが明らかであるから,上記のとおり認定した。

III.請求人の主張
請求人は,本件発明1?5の特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,以下の(1)及び(2)の理由を挙げて,その特許は特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当し,無効とされるべきであると主張し,証拠方法として甲第1号証?甲第7号証を提出している。
(1)本件発明1?5に係る特許出願は,発明が明確でないから,特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていない。
(2)本件発明1?5は,甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(証拠方法)
甲第1号証:特開平4-292175号公報
甲第2号証:特開昭60-145155号公報
甲第3号証:実願昭63-148812号(実開平2-68859号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特公昭44-18710号公報
甲第5号証:特表平10-513081号公報
甲第6号証:特開平3-80873号公報
甲第7号証:特開平9-56822号公報

IV.被請求人の主張
被請求人は,平成18年12月11日付けの答弁書等において,請求人の主張はいずれも根拠がないものであり,本件審判の請求は成り立たない旨主張している。

V.当審の判断
1.理由(1)について
(1)本件発明1について
本件発明1は,先導栓の栓頭からコイルばねの固着後端までの硬直部分の長さについて,「概ね0.5粍以下に成す」こと,及び,コイルばね長について,「概ね24粍」にすることを発明特定事項とするものである。
これらの「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」という限定が,具体的にどのような数値範囲を意味しているのか,そして,どのような数値であれば,これに該当しないのかについて,本件発明の詳細な説明には,何ら記載されていない。そして,この技術分野の技術常識から,それらのことが自明であるともいえない。
よって,「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」を発明特定事項として含む本件発明1は,明確なものではないといわざるを得ない。

(2)本件発明2?5について
本件発明2?5は,少なくとも,先導栓の栓頭からコイルばねの固着後端までの硬直部分の長さについて,「概ね0.5粍以下になす」ことを発明特定事項とするものである。
よって,上記「(1)本件発明1について」で述べたのと同様の理由により,「概ね0.5粍以下」を発明特定事項として含む本件発明2?5は,明確なものではないといわざるを得ない。

理由(1)について,被請求人は答弁書において,「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」は,例示的な数値の記載である旨主張している。
しかしながら,特許法第36条第5項において,特許請求の範囲には,「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項」を記載しなければならないことが規定されているのであるから,特許請求の範囲に記載した事項を例示的なものであるとすることはできない。また,特許請求の範囲の記載は,権利範囲を定めるという意義を有しているのであるから,仮に,上記の記載が例示的なものであったとしても,その範囲が明確でなくてよいということにはならない。
よって,被請求人の上記の主張は採用することができない。

2.理由(2)について
本件発明1?5は,上記1.のとおり,明確ではないが,「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」を,発明特定事項が最も限定的になるように,それぞれ「0.5粍以下」及び「24粍」と解釈して,本件発明1?5が甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものか否か判断する。

(1)本件発明1について
イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項
(a)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には,図1?図15とともに,次の事項が記載されている。
a.「【請求項1】 カテーテルと共に使用し得るようにしたガイドワイヤーにして,その末端に設けられたヘリカルコイルと,長手方向軸線を有しかつ前記ヘリカルコイルを通って伸長するコアワイヤーとを有し,前記コアワイヤーが,テーパー付きの末端方向先端部分を有し,前記テーパー付き部分に沿って一対の対向する偏平面を備え,前記偏平面が,前記コアワイヤーの長手方向軸線に対してある角度で伸長し,偏平面と非偏平面との接続部には,鋭角な断面の遷移部分が存在しないことを特徴とするガイドワイヤー。
【請求項2】 請求項1に記載のガイドワイヤーにして,前記先端部分には,実質的に肩部分が存在しないことを更に特徴とするガイドワイヤー。
【請求項3】 請求項1に記載のガイドワイヤーにして,前記偏平面の各々が,基端と,末端とを備え,前記偏平面の基端が末端よりも幅が狭いことを更に特徴とするガイドワイヤー。」(【特許請求の範囲】)
b.「図1には,本発明を具体化し得る一型式のガイドワイヤーが示してある。該ガイドワイヤーは,ステンレス鋼のような適当な材料から成る細長い可撓性の軸10を備えている。該ガイドワイヤーは,基端(図1の左側)及び末端(図1の右側)を有すると考えることが出来る。該末端部分は,患者の体内に挿入し,その基端が患者の体外に残り,医者が操作し得るようにする。軸10の末端部分12には,テーパーが付けられている。細長い可撓性のヘリカルコイル14は,軸10の末端部分に取り付けられ,該軸10の末端部分の周りに沿って伸長する。該ヘリカルコイル14の基端は,基端方向のろう付け接続部11にて軸10に取り付けることが望ましい。又,該ヘリカルコイル14は,末端方向のろう付け接続部13にて軸10の末端部分12に取り付けることが出来る。該ヘリカルコイル14は,金-白金又は白金-タングステン合金のような適当な極めて放射線不透過性合金にて形成することが望ましい。該ヘリカルコイルは,0.051mm(0.002インチ)乃至0.076mm(0.003インチ)程度のワイヤーにて形成することが出来る。」(段落【0020】)
c.「図2乃至図4に示すように,軸の末端部分は,テーパー付きの形態で形成された最末端部分18を有するコアワイヤー17を画成し,該テーパー付き末端部分には,偏平面20,22が設けられる。」(段落【0021】)
d.「一つの寸法上の例として,本発明を具体化するガイドワイヤーは,長さ30cm程度のコイル14を有することが出来,コアワイヤー17を画成する軸の末端部分12は略同一の長さである。外径0.304mm(0.012インチ)程度のガイドワイヤーにおいて,最末端部分18は,円筒状部分28とすることの出来る,次の隣接する基端部分から伸長することが出来る。例えば,直径0.304mm(0.012インチ)のガイドワイヤーにおいて,最末端部分18の長さは5cm程度とすることが出来る。より基端方向円筒状部分28は,直径0.101mm(0.004インチ)程度とし,最末端部分18はテーパー付きとし,より細いダックビルの形状となるようにする。この例において,偏平面20,22は約4.0cmの距離を越えて伸長し,その基端にて0.025mm(0.001インチ)程度の厚さ,及びその末端26にて約0.152mm(0.006インチ)の幅を有する。最末端部分18の最先端26の厚さは(図4に図示するように),0.018mm(0.0007インチ)乃至0.020mm(0.0008インチ)程度である。ガイドワイヤーは,最末端部分18の末端方向先端30がコイルの末端方向先端にて半球状の先端溶接部32に取り付けられかつ該溶接部32に組み込まれるような構造にする。」(段落【0022】)
e.「本発明の別の利点は,末端方向のろう付け接続部13の強度が増大した先端構造が得られる点である。この末端方向のろう付け接続部13は,コアワイヤー17とヘリカルコイル14との間の付加的な接続部として機能し,典型的に,ヘリカルコイル14の末端方向先端から2乃至3cmの基端方向に配置されている。」(段落【0025】)
f.図2及び図12には,ろう付け接続部13が,ヘリカルコイル14のばね長方向の中間部位に,コアワイヤ17の中間ボス部に固着したものとして設けられること,及び,先端溶接部32とろう付け接続部13の間のヘリカルコイル14がある程度のコイル線間間隔を備えていることが示されている。
g.図4には,コアワイヤー17にヘリカルコイル14が嵌装されていること,及び,先端溶接部32はガイドワイヤーの直径と同じ直径の半球状であることが示されている。
上記の記載事項及び図示内容を総合すれば,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「細長い可撓性の軸10の末端部分のコアワイヤー17にヘリカルコイル14を嵌装すると共に,該コアワイヤー17の先端に,直径0.304mmの半球状の先端溶接部32を備えたガイドワイヤーにおいて,前記ヘリカルコイル14のばね長方向の中間部位に,前記コアワイヤ17の中間ボス部に固着したろう付け接続部13を,ヘリカルコイル14の末端方向から2乃至3cmの位置に設け,先端溶接部32とろう付け接続部13の間のヘリカルコイル14は,ある程度のコイル線間間隔を備え可撓性であるガイドワイヤー。」

(b)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には,第1図?第3図とともに,次の事項が記載されている。
a.「1. 金属材料から形成された細長い可撓性要素であつて,前記要素が,円筒形近位部分と,テーパ付き中間部分と平坦な遠位部分とを有する,細長い可撓性要素と;
実質的に放射線を透過しない材料から形成され,前記要素とほぼ同心に前記要素と固定され,平坦部分の遠位端を超えて延びる第1コイルと;
コイルの遠位端により支持され,可撓性の細長い要素の遠位端から離間されている丸味のある金属製突起と;
第1コイル内に配設され,前記突起に固定され,可撓性の細長い要素に固定された安全ワイヤーと;
からなるフロツプなガイド ワイヤ。」(第1頁左下欄第5?18行)

(c)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には,第1図?第5図とともに,次の事項が記載されている。
a.「コイル状ガイドワイヤと,このコイル状ガイドワイヤの外周に被着されたチューブとからなるカテーテル本体を備え,上記チューブの先端から上記ガイドワイヤの先端柔軟部が突出し,この先端柔軟部は外周から薬液の吐出が可能なようにコイル間隙が広げられ,さらに先端に滑りやすい形状をなす頭部が設けられていることを特徴とするカテーテル装置。」(明細書第1頁第5?12行)
b.「また,先端柔軟部におけるコイル間の間隙は,50?200μmが好ましい。コイル間の間隙が上記よりも短いと薬液吐出が充分に確保されず,かつ,柔軟性も充分に得られなくなる。コイル間の間隙が上記よりも長いと,コイル外周が血管などの内膜に喰いつきやすくなる。」(明細書第6頁第18行?第7頁第3行)

(d)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には,第1図?第18図とともに,次の事項が記載されている。
a.「本発明は一般に新規で有益な主に内部血管の処置に使用されるスプリング案内の改良に関する。」(第1欄第30?31行)
b.「実際の使用目的には第1図および第2図に示すようなキヤツプ16をつけてスプリング案内の末端部を覆うことが望ましい。中心ワイヤ先端部19は点18に於て末端部に恆久的に固定してもよく,またそれに(またはスプリング案内に)所望により1時的に取付けたり取りはずしたりするための,かぎ部分あるいは拡大された頭部分を設けてもよい。図示のものでは,キヤツプ16と,中心ワイヤの先端部19と末端コイル17とは安全のために一体に溶接されている。」(第8欄第5?14行)
c.第1図及び第2図には,キヤツプ16がコイルの内側に接合し,かつコイルの前端に膨隆するものであることが示されている。
上記の記載事項及び図示内容を総合すれば,甲第4号証には,次の発明(以下,「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。
「コイルの内側に接合し,かつコイルの前端に膨隆するキヤツプ16と中心ワイヤの先端部19と末端コイル17とが,一体に溶接されている内部血管の処置に使用されるスプリング案内。」

(e)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には,図1?図3とともに,次の事項が記載されている。
a.「1.その少なくとも末端側部分に沿って延びるコイルを有した細長いワイヤからなり,前記コイルは末端コイル部分と基端コイル部分とを具備し,前記末端コイル部分は前記基端部分よりもさらに放射線不透過性であり,前記末端コイル部分の末端は前記ワイヤの末端に隣接して該ワイヤに取着され,前記基端コイル部分の基端は前記末端コイル部分から基端側へ離隔した位置で前記ワイヤに取着され,前記末端コイル部分の基端は溶接により前記基端コイル部分の末端に取着され,前記コイル内に受容された前記ワイヤは,前記末端コイル部分の前記末端と前記基端コイル部分の前記基端との間で該コイルに対し自由に浮動する,ように構成されたガイドワイヤ。」(第2頁第2?10行)
b.「本発明によれば,基端コイル部分22の末端は末端コイル部分24の基端に当接され,両コイル部分は,YAGレーザ又はエクセマ(excemer)レーザ等を用いたレーザスポット溶接により互いに固着される。レーザスポット溶接の設備は,例えばルーモニクス(Leumonics)から商業的に入手可能である。本発明の範囲内で,これらコイルをプラズマ溶接により互いに固着することができるが,これはガイドワイヤ構造に使用される幾つかの材料に対して良好に作用するとは思われない。
そのようなレーザにより,あらゆる数の巻きを一体に溶接することができるが,1巻き又は2巻き程度の少数の基端コイル部分を同数の末端コイル部分に溶接することにより,ガイドワイヤ10に認められる構造的要求に適合するに十分な程度よりも大きなこの接合部での引張強さを生むことができる。適当であると思われる一実施形態では,コイル部分22,24は,コイル20の周方向に離隔するがコイルの長さ方向へはほぼ同一位置にある4個のスポットで溶接される。そのような溶接を用いて比較的短い長さのエイ(eh)コイル(例えば3?6巻きのエイ(eh)ワイヤ)の表面積の約半分を覆うことにより,許容できる引張強さが生じることが判っている。」(第13頁第1?16行)
上記の記載事項を総合すれば,甲第5号証には,次の発明(以下,「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基端コイル部分22の末端は末端コイル部分24の基端に当接され,両コイル部分は,レーザスポット溶接により互いに固着されるガイドワイヤ。」

(f)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には,第1図?第7図とともに,次の事項が記載されている。
a.「1.身体中央に近い基端部及び柔軟な末端部を有するシャフトを有し,動脈若しくは静脈,及び特に冠状動脈閉塞の再疎通に特に用いられる探査針において,前記末端部が,すぐ後方に位置決めされた前記シャフトの直径よりも大きな最大径を有する先端部を有することを特徴とする探査針。」(第1頁左下欄第5?10行)

(g)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には,図1?図4とともに,次の事項が記載されている。
a.「【請求項1】 ガイドワイヤ主体の線状の芯材の先端部位に,コイルスプリングを嵌装着した医療用ガイドワイヤにおいて,前記コイルスプリングは,同一方向に長径が存在する楕円形コイルまたは長円形コイルからなると共に,コイル内周の少くとも一部が前記芯材の縁部と接合する構造を特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】 コイルスプリングを嵌装着する芯材先端部の少くとも一部を,帯状板体に形成し,前記帯状板体の側縁を,前記コイルスプリングの長径側のコイル内側に接合させた請求項1の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】 コイルスプリングの一部または芯材先端部の一部を,放射線不透過材によって形成した請求項1または請求項2の医療用ガイドワイヤ。」(【特許請求の範囲】)
b.「【産業上の利用分野】本発明は,心臓血管系内にカテーテルを導入する際に用いる医療用ガイドワイヤに関するものである。」(段落【0001】)
c.「【作用】以上の構成の本発明のガイドワイヤは,構造上ガイドワイヤの先端部位の可撓性・剛性・曲げ特性等の機械的性質を支配するコイルスプリングが楕円形コイルまたは長円形コイルからなるので,その楕円・長円の短径方向の一軸方向のみに曲げ易くして,その一軸方向以外の方向に応分の曲げ剛性が存在する特有の曲げ特性を,先端部位に必要にして充分に付与することができる。そして,その特有の曲げ特性は,楕円形コイルまたは長円形コイルの長径サイズを許容値範囲にして,コイル線材径・コイルピッチ等によって考量設定できると共に,そのコイルスプリングの中心空間に存在する芯材は,前記曲げ特性のための拘束が緩和され,有害な形状肥大化をもたらすことなく応分の垂直荷重性を有する自由な形状が採択できる。従って,先端部位の形状肥大化をもたらすことなく前記曲げ特性の付与が可能になる。
そして,血管内挿入状態では,その楕円形コイル(長円形コイル)の短径側に,血流路を確保することができるので,ガイドワイヤ挿入による血流不足を防止することができる。」(段落【0011】?【0012】)
d.「なお,図中の17は血管損傷防止のために芯材先端部6の先端に設けた丸型軟質頭である。」(段落【0015】)
e.図1及び図2には,丸型軟質頭17が,長径D1と短径D2となる楕円形状であること,及び,芯材先端部6が,丸型軟質頭17の長径方向と平行する長辺から成る矩形断面形状を有することが示されている。
上記の記載事項及び図示内容を総合すれば,甲第7号証には,次の発明(以下,「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。
「丸型軟質頭17が,長径D1と短径D2となる楕円形状であり,芯材先端部6が,丸型軟質頭17の長径方向と平行する長辺から成る矩形断面形状を有する,一軸方向のみに曲げ易くした医療用ガイドワイヤ。」

ロ.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると,その構成・機能からみて,後者における「細長い可撓性の軸10」は前者における「可撓性線条体のワイヤ主部」に相当し,以下同様に,「末端部分」は「先端部分」に,「コアワイヤー17」は「コア線」に,「ヘリカルコイル14」は「コイルばね」に,「該コアワイヤー17の先端」は「該コア線の前端」に,「先端溶接部32」は「先導栓」に,「ガイドワイヤー」は「医療用ガイドワイヤ」に,そして「ろう付け接続部13」は「中間固定部」に相当する。
また,後者において,先端溶接部32とろう付け接続部13の間のヘリカルコイル14は,ある程度のコイル線間間隔を備え可撓性であるから,弾性拡縮自在のコイル線間間隔を備えたものであることは明らかである。
してみれば,両者は
「可撓性線条体のワイヤ主部の先端部分のコア線にコイルばねを嵌装すると共に,該コア線の前端に,先導栓を備えた医療用ガイドワイヤにおいて,前記コイルばねのばね長方向の中間部位に,前記コア線の中間ボス部に固着した中間固定部を設け,さらに,前記先導栓と前記中間固定部の間の前記コイルばねは,弾性拡縮自在のコイル線間間隙を備える医療用ガイドワイヤ。」
である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点1)先導栓が,本件発明1においては,コイルばねの内側に近接または接合し,かつ該コイルばねの前端に膨隆するものであるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。
(相違点2)先導栓の栓頭からコイルばねの固着後端までの硬直部分の長さが,本件発明1においては,0.5粍以下であるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。
(相違点3)本件発明1においては,先導栓と中間固定部の間のコイルばねのコイルばね長が24粍であるのに対して,甲1発明においては,ろう付け接続部13の位置が,ヘリカルコイル14の末端方向から2乃至3cmである点。
(相違点4)コイル線間間隙が,本件発明1においては,コイル線の線直径の10%以上30%以下であるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。
(相違点5)本件発明1においては,血管挿入状態において,病変部との接触抵抗外力によってコイル線間間隙が弾性伸びして軟質の病変部組織を,該線間に受け入れて進退・回転操作を可能にした構造となっているのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。

ハ.判断
(a)相違点1について
甲4発明の「キヤツプ16」及び「コイル」は,その構成・機能からみて,それぞれ本件発明1の「先導栓」及び「コイルばね」に相当する。
してみれば,甲4発明は,先導栓が,コイルばねの内側に接合し,かつ該コイルばねの前端に膨隆するものである。そして,甲4発明における「キヤツプ16」及び「コイル」は,それぞれ甲1発明における「先端溶接部32」及び「ヘリカルコイル14」と同じ機能を有する部材であるから,甲4発明の「キヤツプ16」の構成を,甲1発明に適用して,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

(b)相違点2について
医療用ガイドワイヤにおいては,屈曲部へ挿入する状況等を考えれば,先導栓の離脱強度を確保できる範囲で,先端の硬直部分の長さは短い方がよいことは明らかである。そして,本件発明1においては,特許請求の範囲にはもちろん,発明の詳細な説明にも,硬直部分の長さを短くしても先導栓の離脱強度を維持するための事項は何ら記載されていないから,結局,先導栓の栓頭からコイルばねの固着後端までの硬直部分の長さを,0.5粍以下にすることは,先導栓の離脱強度を犠牲にして,医療用ガイドワイヤの柔軟性等を高めるための設計変更に過ぎない。
また,甲1発明の先端溶接部32は,直径0.304mmの半球状であるから,その軸方向の長さは,0.15mm程度であり,コイルばねの固着部分を含めて,0.5粍以下とすることを阻害する特段の事情があるともいえない。
よって,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

この点について,被請求人は答弁書において,先端の硬直部分の長さを0.5粍とすることにより,ガイドワイヤの先端位置の探知能力を発揮させることができる旨主張している。しかしながら,先端部分の硬直部分の長さを短くすることによる探知能力の向上効果も当業者が予測できる程度のものでしかなく,上記の被請求人の主張を勘案しても,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に格別の困難性があるとはいえない。

(c)相違点3について
甲1発明において,先導栓と中間固定部の間のコイルばねの長さに相当する長さは,2乃至3cmに,先端溶接部32の長さを加えたものになる。先端溶接部32の長さは,2乃至3cmと比較すれば微少なものであるから,先導栓と中間固定部の間のコイルばねの長さは20?30粍である。そして,発明を具体化する際にその長さは,ガイドワイヤを挿入する部位の状態等に応じて,20?30粍の範囲で,当業者が最適な長さを選択できるものである。
よって,それを24粍として,相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

(d)相違点4について
医療用ガイドワイヤにおいて,コイルばねのコイル線間間隔は,例えば甲第3号証にも記載されているように,諸条件を考慮して当業者が適宜最適化するものである。そして,本件発明1において,それをコイル線の線直径の10%以上30%以下とした点に臨界的意義があるともいえないから,甲1発明において,相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が通常の創作能力の範囲で行う数値の最適化の結果に過ぎず,その点に格別の困難性があるとはいえない。

この点について,被請求人は平成19年2月19日付け陳述要領書において,官能パネルテストで手元部の感触フィーリングが劣化しない範囲に限定したものである旨主張している。しかしながら,その官能パネルテストの結果は,本件発明の詳細な説明に何ら示されていない。さらに,例え官能パネルテストの結果に基づき数値範囲を限定したものであっても,医療用ガイドワイヤにおいて,手元部の感触フィーリングが重要なことは従来から知られていたことであり,それを官能パネルテストで確認することは当業者が普通に行うことである。よって,コイルばねのコイル線間間隔をコイル線の線直径の10%以上30%以下とすることにより,当業者が予測できないような顕著な効果が生ずるものでない以上,上記の被請求人の主張を勘案しても,相違点4に係る本件発明1の発明特定事項に格別の困難性があるとはいえない。

(e)相違点5について
医療用ガイドワイヤの用い方として,血管挿入時に,軟質の病変組織の中で進退・回転操作を行うことは,従来から周知の用い方である。そして,コイルばねを備えた医療用ガイドワイヤでは,そのような用い方をした際,程度の差こそあれ,コイル線間間隙が弾性伸びして軟質の病変部組織を,該線間に受け入れることは,当業者にとって明らかである。
してみれば,相違点5に係る本件発明1の発明特定事項は,コイルばねを備えた医療用ガイドワイヤに必然的にもたらされる事項であるから,本件発明1と甲1発明との実質的な相違点ではない。

そして,本件発明1により奏される効果も,甲1発明,甲4発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本件発明1は,甲1発明,甲4発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,被請求人は,平成19年2月19日付け陳述要領書において,ガイドワイヤの先端位置を術者に感触認知させるために,本件発明1の発明特定事項全部を発明の構成要件とするものであり,その点において当業者が容易に想到し得なかった旨主張している。しかしながら,上記各相違点が,それぞれ又は相乗的に,感触認知を高めるという課題に対して,当業者が予測できる程度を越えて顕著な効果を奏するものとはいえないから,上記の被請求人の主張は採用することができない。

(2)本件発明2について
イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項
甲第1号証?甲第7号証に記載された事項は,上記「(1)イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項」に記載されたとおりである。

ロ.対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると,その作用・機能からみて,後者における「細長い可撓性の軸10」は前者における「可撓性線条体のワイヤ主部」に相当し,以下同様に,「末端部分」は「先端部分」に,「コアワイヤー17」は「コア線」に,「ヘリカルコイル14」は「コイルばね」に,「該コアワイヤー17の先端」は「該コア線の前端」に,「先端溶接部32」は「先導栓」に,「ガイドワイヤー」は「医療用ガイドワイヤ」に,そして「ろう付け接続部13」は「中間固定部」に相当する。
また,後者において,先端溶接部32とろう付け接続部13の間のヘリカルコイル14は,ある程度のコイル線間間隔を備え可撓性であるから,弾性拡縮自在のコイル線間間隔を備えたものであることは明らかである。
してみれば,両者は
「可撓性線条体のワイヤ主部の先端部分のコア線にコイルばねを嵌装すると共に,該コア線の前端に,先導栓を備えた医療用ガイドワイヤにおいて,前記コイルばねのばね長方向の中間部位に,前記コア線の中間ボス部に固着した中間固定部を設け,さらに,前記先導栓と前記中間固定部の間の前記コイルばねは,弾性拡縮自在のコイル線間間隙を備える医療用ガイドワイヤ。」
である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点6)先導栓が,本件発明2においては,コイルばねの内側に近接または接合し,かつ該コイルばねの前端に膨隆するものであるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。
(相違点7)先導栓の栓頭からコイルばねの固着後端までの硬直部分の長さが,本件発明2においては,0.5粍以下であるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。
(相違点8)先導栓が,本件発明2においては,平行1対のカット面によって外周をカットした平坦カット面を設けた構造となっているのに対して,甲1発明においては,そのようになっていない点。

ハ.判断
(a)相違点6について
本件発明1の相違点1についての判断で述べたのと同様の理由により,相違点6に係る本件発明2の発明特定事項のようにすることに格別の困難性があるとはいえない。
(b)相違点7について
本件発明1の相違点2についての判断で述べたのと同様の理由により,相違点7に係る本件発明2の発明特定事項のようにすることに格別の困難性があるとはいえない。
(c)相違点8について
甲7発明の「丸型軟質頭17」は,その構成・機能からみて,本件発明2の「先導栓」に相当する。
してみれば,甲7発明は,先導栓が,楕円形状となっているものである。そして,甲7発明は,先導栓を正面からみたときの縦方向の長さと横方向の長さに差を設けることにより,医療用ガイドワイヤを一軸方向のみに曲げ易くしたものである。正面からみたときの縦方向の長さと横方向の長さに差を設けるためには,先導栓が円形ではなく扁平形状であればよいのであるから,それを平坦カット面を設けた構造とするか楕円形状とするかは設計的事項に過ぎない。
一方,甲1発明においても,医療用ガイドワイヤを一軸方向のみに曲げ易くして,方向制御性を高めた方がよいことは明らかであるから,そのような扁平形状の先導栓を甲1発明に適用して,相違点8に係る本件発明2の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

この点について,被請求人は平成19年2月19日付け陳述要領書において,先導栓が楕円形状等の他の形状では進退時の圧力抵抗低減効果は少ない旨主張している。しかしながら,平坦カット面を設けた構造のものと楕円形状とでどちらが圧力抵抗低減効果が大きいかは,その扁平率等によって変わってくるものであって平坦カット面を設けた構造のものの方が効果が大きいとはいえない。してみれば,上記の被請求人の主張は,特許請求の範囲に基づかないものであり,採用することができない。
そして,本件発明2により奏される効果も,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本件発明2は,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項
甲第1号証?甲第7号証に記載された事項は,上記「(1)イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項」に記載されたとおりである。

ロ.対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると,上記の本件発明2と甲1発明との対比と同様の点で一致し,相違点6?8に加え,次の点で相違する。
(相違点9)本件発明3においては,先導栓と中間固定部の間のコイルばねのコイルばね長が24粍であるのに対して,甲1発明においては,ろう付け接続部13の位置が,ヘリカルコイル14の末端方向から2乃至3cmである点。
(相違点10)コイル線間間隙が,本件発明3においては,コイル線の線直径の10%以上30%以下であるのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。

ハ.判断
相違点6?8に,格別の困難性がないことは本件発明2の判断のところで述べたとおりである。
(d)相違点9について
本件発明1の相違点3についての判断で述べたのと同様の理由により,相違点9に係る本件発明3の発明特定事項のようにすることに格別の困難性があるとはいえない。
(e)相違点10について
本件発明1の相違点4についての判断で述べたのと同様の理由により,相違点10に係る本件発明3の発明特定事項のようにすることに格別の困難性があるとはいえない。

そして,本件発明3により奏される効果も,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本件発明3は,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項
甲第1号証?甲第7号証に記載された事項は,上記「(1)イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項」に記載されたとおりである。

ロ.対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると,上記の本件発明2と甲1発明との対比と同様の点で一致し,相違点6?8に加え,次の点で相違する。
(相違点11)コア線が,本件発明4においては,先導栓のカット面と平行する長辺から成る矩形断面形状を有するのに対して,甲1発明においては,そのようになっていない点。

ハ.判断
相違点6?8に,格別の困難性がないことは本件発明2の判断のところで述べたとおりである。
(f)相違点11について
甲7発明の「丸型軟質頭17」及び「芯材先端部6」は,その構成・機能からみて,それぞれ本件発明4の「先導栓」及び「コア線」に相当する。
してみれば,甲7発明は,コア線が,先導栓の長径方向と平行する長辺から成る矩形断面形状を有するものである。一方,先導栓を平坦カット面を設けた構造とするか楕円形状とするかは設計的事項に過ぎないことは上述のとおりであり,楕円形状を平坦カット面を設けた構造に設計変更すれば,扁平形状における長軸方向となる楕円の長径方向は,平坦カット面を設けた構造のカット面方向であることは当業者にとって明らかである。
そして,甲1発明においても,医療用ガイドワイヤの方向制御性は高い方がよいことは明らかであるから,甲7発明の芯材の構成を甲1発明に適用して,相違点11に係る本件発明4の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとはいえない。

そして,本件発明4により奏される効果も,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本件発明4は,甲1発明,甲4発明,甲7発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項
甲第1号証?甲第7号証に記載された事項は,上記「(1)イ.甲第1号証?甲第7号証に記載された事項」に記載されたとおりである。

ロ.対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると,上記の本件発明2と甲1発明との対比と同様の点で一致し,相違点6?8に加え,次の点で相違する。
(相違点12)コイルばねの先端と先導栓が,本件発明5においては,TIG溶接またはレーザースポット溶接から成るのに対して,甲1発明においては,そのようになっているかどうか不明である点。

ハ.判断
相違点6?8に,格別の困難性がないことは本件発明2の判断のところで述べたとおりである。
(g)相違点12について
甲4発明の「キヤツプ16」及び「末端コイル17」は,その構成・機能からみて,それぞれ本件発明5の「先導栓」及び「コイルばねの先端」に相当する。
してみれば,甲4発明は,コイルばねの先端と先導栓を溶接するものである。そして,甲4発明における「キヤツプ16」及び「コイル」は,それぞれ甲1発明における「先端溶接部32」及び「ヘリカルコイル14」と同じ機能を有する部材であるから,甲4発明の「キヤツプ16」及び「コイル」の構成を,甲1発明に適用して,「ヘリカルコイル14」の先端と「先端溶接部32」を溶接するようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに,甲5発明は,医療用ガイドワイヤの部品の接続をレーザースポット溶接で行うものであるから,甲1発明において,「ヘリカルコイル14」の先端と「先端溶接部32」を溶接するようにした際,その溶接をレーザースポット溶接とすることも当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点12に係る本件発明5の発明特定事項にすることに格別の困難性があるとはいえない。

そして,本件発明5により奏される効果も,甲1発明,甲4発明,甲5発明,甲7発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本件発明5は,甲1発明,甲4発明,甲5発明,甲7発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

上述のとおり,本件発明1?5は「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」を,発明特定事項が最も限定的になるように,それぞれ「0.5粍以下」及び「24粍」と解釈しても,甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,「概ね0.5粍以下」及び「概ね24粍」をどのように解釈しても,同様に甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから,本件発明1?5に係る特許出願は,請求人の主張する理由(1)のとおり,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,また,本件発明1?5は,請求人の主張する理由(2)のとおり,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。したがって,本件発明1?5に係る特許は,特許第123条第1項第2号及び第4号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-03-13 
出願番号 特願2001-368039(P2001-368039)
審決分類 P 1 113・ 537- Z (A61M)
P 1 113・ 121- Z (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高田 元樹  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 山本 信平
森川 元嗣
登録日 2006-01-20 
登録番号 特許第3762290号(P3762290)
発明の名称 医療用ガイドワイヤ  
代理人 石黒 健二  

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