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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1156398 |
審判番号 | 不服2004-25157 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-12-09 |
確定日 | 2007-04-26 |
事件の表示 | 特願2000-162180「データ管理装置及び版数管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開、特開2001-344297〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成12年5月31日の出願であって、平成16年11月5日付で拒絶査定がされ、これに対して同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年1月7日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年1月7日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年1月7日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項8(請求項の数は全部で12である。)は、 「テクノロジ開発の進行によって順次改版されて提供されるライブラリのライブラリ版数管理一覧表を自動で作成する工程と、前記テクノロジ開発がLSI設計と同時に進行する場合に、前記LSI設計の各処理工程で参照したライブラリの版数を集計し参照ライブラリ版数管理一覧表を作成する工程と、前記ライブラリ版数管理一覧表と前記参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかを前記LSI設計の各処理工程毎にチェックする工程と、前記チェックの結果を照合結果データとして出力する工程を有することを特徴とする版数管理方法。」と補正された。 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である「ライブラリ版数管理一覧表と参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかをチェックする工程」について具体的な限定を付加して補正後の請求項8とするものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平03-196268号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の記載がある。 ア 「この発明は、プログラム、ライブラリと言ったLSI設計支援情報の管理更新方式に関する」(2頁左上欄11行?12行) イ 「第1図及び第2図の原理説明図を参照しながら本発明の詳細な説明する。 第1図において、aはプログラム、ライブラリ管理マスタファイルであり、各プログラム、ライブラリ毎に版数、提供情報が格納されている。 そして、版数情報については、改版による更新のための編集作業が行われる度に、版数アップが行われる。 bは更新作業情報ファイルであり、ユーザ毎の更新作業情報が格納されている。 cはデータファイルであり、改版されるべきプログラム、ライブラリ等のデータが格納されている。 そして、いずれかのプログラム、ライブラリに改版が生じた場合には、前記管理情報に基いて各ユーザ毎の更新ツールdを作成する。 一方、第2図に示されるように、ユーザ側においては、前記作成されたライブラリに基いて、計算機作業により該当する提供システム(プログラム、ライブラリ)eを更新する。 このように、本発明方式は、1の提供元より複数のユーザへとLSI設計支援情報たるプログラム、ライブラリ情報を提供し、該LSI設計支援情報に基づき各ユーザにおいて自己の仕様に適合したLSIを設計させるLSI設計システムにおいて、前記1の提供元においては、最新のプログラム、ライブラリ情報とそれが提供されているユーザ情報(a)及び当該プログラム、ライブラリの改版に必要な作業情報(b)を計算機により管理し、いずれかのプログラム、ライブラリに改版が生じた場合(c)には、前記管理情報(a、b)に基いて各ユーザ毎の更新ツール(d)を計算機により作成するとともに、前記各ユーザにおいては、前記作成されたツール(d)に基いて該当するプログラム、ライブラリ(e)の更新作業を行うこと、を特徴とする。」(2頁右下欄10行?3頁右上欄6行) したがって、上記アないしイの記載及び図面から、引用例には、 「プログラム、ライブラリと言ったLSI設計支援情報の管理更新方法において、改版毎に版数アップが行われる版数情報をプログラム、ライブラリ毎に格納した管理マスタファイルに基づいて、各ユーザのプログラム、ライブラリの更新作業を行う方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 一般に、LSI設計においては、テクノロジ開発が設計と同時に進行するため、LSI設計に用いられるライブラリの内容、及び、その版数を、テクノロジ開発に伴って逐次更新することは、LSI設計において普通に行われていることである。そうすると、引用発明の「管理マスタファイル」は、テクノロジ開発に伴って更新されるライブラリの版数情報を格納したものであるから、本願補正発明の「テクノロジ開発の進行によって順次改版されて提供されるライブラリのライブラリ版数管理一覧表」に相当する。 一般に、多数のプログラムやライブラリを用いるLSI設計等の業務において、管理対象となるプログラムやライブラリに応じて、該プログラムやライブラリを管理する情報を作成することは普通に行われていることであるから、引用発明の「管理マスタファイル」も、管理対象となるライブラリに応じて作成されるものといえる。 引用発明の「LSI支援設計情報の管理更新方法」は、LSI設計で用いられるライブラリの版数を管理するものであるから、本願補正発明の「版数管理方法」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「テクノロジ開発の進行によって順次改版されて提供されるライブラリのライブラリ版数管理一覧表を作成する工程を有する版数管理方法」で一致し、次の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明の「ライブラリ版数管理一覧表」は、自動で作成されるのに対し、引用発明の「管理マスタファイル」は、自動で作成されることが認められない点。 [相違点2] 本願補正発明は、「テクノロジ開発がLSI設計と同時に進行する場合に、LSI設計の各処理工程で参照したライブラリの版数を集計し参照ライブラリ版数管理一覧表を作成する工程」と「ライブラリ版数管理一覧表と参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかを前記LSI設計の各処理工程毎にチェックする工程」とを有するのに対し、引用発明は、当該工程を有していない点。 [相違点3] 本願補正発明は、「チェックの結果を照合結果データとして出力する工程」を有するのに対し、引用発明は、当該工程を有していない点。 (4)判断 [相違点1]について 一般に、設計業務において、各種データを管理するための情報を自動的に作成することは、普通に行われていることである。 そうすると、LSI設計を行う引用発明において、ライブラリを管理するための情報である「ライブラリ版数管理一覧表」を自動的に作成することは、作成する具体的態様を特許請求するものでない以上、当業者が適宜実施できた設計事項である。 [相違点2]について 実際に現場で使用したプログラムやライブラリの版数を記憶する参照ライブラリ版数管理一覧表を作成し、逐次改版されるプログラムやライブラリの版数を記憶するライブラリ版数管理一覧表と該参照ライブラリ版数管理一覧表とを照合することは、プログラムやライブラリの版数管理における周知技術である。 例えば、前記周知技術は、原査定で引用された特開平10-21061号公報に「【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態について以下に説明する。本発明は、その好ましい実施の形態において、データベースサーバ計算機(図1の1)のデータベース装置(図1のDF)上にテーブル構成(図1の3)にて格納されるマスターファイルバージョン情報(図1の32)とクライアント側のバージョン情報(図1の31)と、クライアント計算機(図1の2)のファイル装置(図1のCF)に格納されている実ファイルのファイル情報を相互にチェックすることにより、バージョンアップ処理の動作を決定するものである。」、及び、特開平03-017781号公報に「開発処理に関わるプログラム、ライブラリ等の開発情報は、機能向上、障害修正等の理由から、開発工程131?13nの途中においても修正が加えられ、それに対応してその開発情報の版数がアップされる。そして、本発明ではこのような開発情報の改版があると、その版数が最新版数登録ファイル11に更新登録される。一方、開発工程131?13nの各処理終了時には、その都度その開発工程で使用した開発情報の版数を最新版数登録ファイル11の中の同じ開発情報のものを選択して開発履歴管理ファイル12に登録する。従って、開発工程132?13nの各処理開始に先立って、前記したチェックを行なった場合、その開発工程の処理前に改版がなければ、一致の結果が得られ、改版があるときは不一致の結果が得られることになる。従って、上記のチェックにより開発期間中の版数アップを即座に検出することができる。」(3頁右上欄3行?左下欄2行)、及び、特開平11-224278号公報に「設計者が設計したマスクパターンに使用した時点のライブラリのバージョン番号がそのマスクパターンのライブラリと共に記述ファイルとして格納されている。」(3頁左欄27行?30行)、「ステップS5においては、マスクパターンから得たバージョン番号と、最新バージョン記述ファイルから得たバージョン番号を比較する。」(3頁右欄17行?19行)と記載されている。 そして、LSI設計処理における、論理設計、レイアウト設計等の時間のかかる処理工程では、該工程中にテクノロジ開発に伴ってライブラリの版数が変わり、そのまま古い版のライブラリを用いて設計を継続すると不具合が発生する可能性があるため、該各処理工程それぞれで参照したライブラリの版数が最新の版数であるか否かを確認すべきことは、当業者にとって自明の事項である。 したがって、引用発明において「テクノロジ開発がLSI設計と同時に進行する場合に、LSI設計の各処理工程で参照したライブラリの版数を集計し参照ライブラリ版数管理一覧表を作成する工程」と「ライブラリ版数管理一覧表と参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかを前記LSI設計の各処理工程毎にチェックする工程」とを設けることは、当業者が容易に想到できたものである。 [相違点3]について プログラムやライブラリの版数管理において、版数の照合を行い、該照合結果を出力することは、周知技術である。 例えば、前記周知技術は、原査定で引用された特開平09-258966号公報に「また、上記被ソフトウェア提供装置4の処理部9を、第1の版数情報比較部8における比較の結果、最新版数情報が、現在提供されていない最新のソフトウェアに対応する版数であると判定された場合には、その旨を表示制御するとして構成することができるほか(請求項6)、上記現在提供されていない最新の版数のソフトウェアをインストールするインストール部として構成することもできる(請求項7)。」(4頁左欄42行?50行)、及び、特開平03-017781号公報に「ここでは、第2図(B)に示した改版数によってPRGBとLIBCの版数が不一致となり、開発者に対して警告が発行される。これにより、開発者が再処理の必要ありと認めた場合、フェーズAからやり直す。開発者が上記改版は処理結果に影響を与えないと判断したときはフェーズAをやり直すことなくフェースBの処理を行う。」(4頁左上欄5行?11行)、及び、特開平11-224278号公報に「【0010】更に、バージョン番号に不一致があった場合、旧バージョンでの問題点や変更理由を表示するように構成すると良い。」、「【0024】セルが一致しない場合、例えば、マスクパターンから得た”CELL_A”のバージョン番号が1であり、最新バージョン記述ファイルから得た”CELL_A”のバージョン番号が3である場合には、ステップS5において、両者のバージョン番号が一致しないと判断され、ステップS6にて、バージョン番号の一致しないセル情報の表示を行った後、ステップS7に進む。この例では、図6の一行目に示したように、「CELL_Aのバージョンは1ですが、最新バージョンは3です。」という表示を表示装置4に行う。尚、この表示は例であって限定するものではない。このようにバージョン番号を比較することにより、処理時間のかかるレイアウト比較を行わずに簡易な方法で最新のライブラリデータを使用しているかをチェックできるため、高速にチェックができる。」と記載されている。 そうすると、引用発明において「チェックの結果を照合結果データとして出力する工程」を設けることは、当業者が適宜実施できた設計事項である。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきである。 3.本願発明について 平成17年1月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年10月8日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「テクノロジ開発の進行によって順次改版されて提供されるライブラリのライブラリ版数管理一覧表を自動で作成する工程と、前記テクノロジ開発がLSI設計と同時に進行する場合に、前記LSI設計の各処理工程で参照したライブラリの版数を集計し参照ライブラリ版数管理一覧表を作成する工程と、前記ライブラリ版数管理一覧表と前記参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかをチェックする工程と、前記チェックの結果を照合結果データとして出力する工程を有することを特徴とする版数管理方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「ライブラリ版数管理一覧表と参照ライブラリ版数管理一覧表を照合してライブラリの版数の不一致がないかどうかをチェックする工程」について具体的な限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-21 |
結審通知日 | 2007-02-27 |
審決日 | 2007-03-13 |
出願番号 | 特願2000-162180(P2000-162180) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
松永 稔 脇岡 剛 |
発明の名称 | データ管理装置及び版数管理方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 谷澤 靖久 |