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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1156399
審判番号 不服2004-25284  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-04-26 
事件の表示 特願2001-105264「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月14日出願公開、特開2002-171368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成13年4月3日(優先権主張平成12年9月21日)の出願であって、平成16年11月1日付で拒絶査定がされ、これに対して同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月9日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月9日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(請求項の数は全部で2である。)は、
「原稿の画像データを記憶部に記憶し、該記憶部に記憶した画像データを読み出して、入力された初期の印刷部数分の画像形成を行う画像形成装置において、ソート印刷による画像形成中に、総印刷部数を変更するための設定値を受け付ける受付手段と、該受付手段が設定値を受け付けた場合に、画像形成処理を強制終了することなく、継続して変更後の総印刷部数について画像形成を行う画像形成手段と、該画像形成手段による印刷部数が前記総印刷部数に達するまでは、該総印刷部数を表示する第1表示手段と、前記画像形成手段による画像形成の進捗状況を示す部数を表示する第2表示手段とを備え、前記受付手段が前記設定値を受け付けた都度、変更後の総印刷部数を前記第1表示手段に表示させると共に、前記進捗状況を示す部数を前記第2表示手段に表示させることを特徴とする画像形成装置。」と補正された。

上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「画像形成の進捗状況を示す部数を表示する手段」について具体的な限定を付加して補正後の請求項1とするものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-041122号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の記載がある。

ア 「【発明の属する技術分野】本発明は、操作手段からの指示に従って、処理手段で1以上の機能を実行するデジタル処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ファクシミリ装置、デジタル複写装置、これらを統合したデジタル複合機など、様々なデジタル処理装置が開発されている。例えばデジタル複写装置やデジタル複合機における複写機能においては、電子ソートによるコピー機能が備えられている。基本的には、操作部からユーザが部数を入力する。そして自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder)や原稿台(Book Scanner)にセットされた原稿を全て読み取り、メモリに格納する。メモリに格納された原稿の画像を1頁ずつ記録出力し、これを指定された部数だけ繰り返すことによって、1部ずつにソートされた記録出力を得ることができる。」

イ 「【0026】次に、本発明のデジタル処理装置の実施の一形態における動作の一例について説明する。図3は、本発明のデジタル処理装置の実施の一形態における第1の動作例を示すフローチャートである。この第1の動作例では、電子ソートコピー機能の実行中に、部数の変更を行う場合の動作例を示している。
【0027】S31において、利用者はコピー部数を操作部1から入力しておく。そしてS32において、読取部22でコピーする原稿の画像を読み取り、画像メモリ25に蓄積する。S33において、コピーする原稿が残っているか否かを判定し、コピーすべき原稿が残っている場合はS32へ戻る。このようにしてコピーするすべての原稿を読み取るまでS32を繰り返し、画像メモリ25に蓄積してゆく。
【0028】コピーすべき原稿画像の読取が完了すると、S34において処理残部数を示すカウンタに入力されたコピー部数を格納し、読み取った原稿画像の記録動作に移る。まずS35において、操作部1でジョブ変更キーが操作されたか否かを判定する。このジョブ変更キーは、上述のように現在実行中の機能に対して、他の機能を追加したり、処理条件を変更する際に利用者が操作するキーである。このジョブ変更キーが操作されていなければ、通常の電子ソートコピーをそのまま続ける。すなわち、S36において、画像メモリ25に蓄積されている原稿画像を記録部23に転送し、記録部23で被記録媒体上に画像を形成する。この動作を読み取った原稿画像の全頁について1枚ずつ行い、1部のコピー出力を行う。そしてS37において、処理残部数のカウンタから1を減じ、残部数を減らす。S38で処理算部数が0になったか否かを判定し、0でなければS35に戻って次の1部のコピー出力動作を行う。処理残部数が0になったら電子ソートコピー機能を終了する。
【0029】このような電子ソートコピー機能の実行中に、コピー部数を変更したいという要求が発生したとする。例えば、コピー部数の設定の誤りに気がついた場合や、新たにコピーの配付先が生じた場合がこれに当たる。この場合、使用者は操作部1でジョブ変更キーを操作し、現在実行中の電子ソートコピー機能について変更指示を行うことを知らせる。このジョブ変更キーが操作された場合には、S35からS39に進む。S39において、変更後の部数を操作部1から入力する。そしてS40において、変更後の部数が最初にS31で入力された部数以上か否かを判定する。変更後の部数が最初に入力された部数以上であれば、S41において部数を増加する処理を行う。すなわち、変更後の部数と最初に入力された部数の差分を処理残部数に加え、新たな処理残部数とする。S41において処理残部数が変更された後は、新たな処理残部数に従ってS36,S37の処理が繰り返されて、変更後の部数だけのコピー出力が得られることになる。
【0030】変更後の部数が最初に入力された部数よりも少ない場合、すでに変更後の部数だけの記録出力を終了している可能性がある。そのため、S42において最初に入力された部数から処理残部数を減じ、現在までに記録出力した部数を算出して、その部数が変更後の部数以上であるか否かを判定する。現在までに記録出力した部数が変更後の部数以上であれば、変更後の部数以上の記録出力をすでに行っているので、S43で処理残部数を0としてコピー機能を終了させる。現在までに記録出力した部数が変更後の部数よりも少なければ、S41において変更後の部数から最初に入力された部数を減じ、その分だけ処理残部数を減らせばよい。
【0031】このようにして、電子ソートコピー機能による読取部22からの読み取り処理ならびに記録部23における記録出力処理を実行中でも、ジョブ変更キーを操作することによって、電子ソートコピー機能によるコピー部数を変更することができる。例えば最初に5部のコピーを使用者が指定して電子ソートコピー機能を実行している途中で、コピー部数を増やす必要が生じた場合には、原稿の読み取りまたは記録出力中にジョブ変更の操作に移り、例えば部数を10部と変更することによって、5部追加して10部の電子ソートコピーを実施することができる。また、例えば最初に5部のコピーを使用者が指定して電子ソートコピー機能を実行している途中で、コピー部数が5部も必要でないと気がついた場合には、気がついた時点でジョブ変更の操作を行って、例えば部数を3部と変更することによって、コピー部数を減らすことができる。この場合、すでに記録出力した部数が3部以下であれば、3部の記録出力を行った時点で終了する。また、すでに4部以上出力してしまっている場合には、部数の変更が指定された時点で記録出力終了する。」

したがって、上記アないしイの記載及び図面から、引用例には、
「利用者によって操作部からコピー部数を入力しておき、コピーすべき原稿画像を読取部から読み取り、画像メモリに蓄積し、該画像メモリに蓄積されている原稿画像を記録部に転送し、記録部で被記録媒体上に画像を形成する処理を、コピー部数分繰り返すデジタル処理装置において、電子ソートコピー機能による、読取部からの読み取り処理ならびに記録部における記録出力処理中でも、操作部のジョブ変更キーを操作することによって、電子ソートコピー機能によるコピー部数を変更し、現在までに記録出力した部数と変更後の部数から新たな処理残部数を算出し、該新たな処理残部数に従ってコピー出力を行う、デジタル処理装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
引用発明の「原稿画像」は、コピーすべき原稿を読取部から読み取った画像データであるから、本願補正発明の「原稿の画像データ」に相当する。
引用発明の「画像メモリ」は、「原稿画像」を蓄積するものであるから、本願補正発明の「記憶部」に相当する。
引用発明のデジタル処理装置における「電子ソートコピー機能」は、原稿を読み取り、メモリに格納された該原稿の画像を1頁ずつ記録出力し、これを指定された部数だけ繰り返すことによって、1部ずつにソートされた記録出力を得るものであるから、本願補正発明の「ソート印刷」に相当する。
引用発明の「コピー部数」は、記録部から記録出力される総部数を表すものであるから、本願補正発明の「印刷部数」に相当する。
引用発明の「利用者によって操作部からコピー部数を入力しておくこと」は、本願補正発明の「初期の印刷部数を入力すること」に相当する。
引用発明の「デジタル処理装置」は、被記録媒体上に画像を形成する処理を行うものであるから「画像形成装置」であるといえる。
引用発明の「操作部」は、読取部からの読み取り処理ならびに記録部における記録出力処理中でも、該操作部のジョブ変更キーを操作することによって、電子ソートコピー機能によるコピー部数を変更できるものであるから、本願補正発明の「ソート印刷による画像形成中に、総印刷部数を変更するための設定値を受け付ける受付手段」に相当する。
引用発明の「記録部」は、電子ソートコピー機能による処理中に、操作部からコピー部数の変更を受け付けると、現在までに記録出力した部数と変更後の部数から算出される、新たな処理残部数に従ってコピー出力を行うものである。そうすると、引用発明の「記録部」は、画像形成処理を強制終了することなく、継続して変更後のコピー部数について画像形成処理を行うものであるといえる。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「原稿の画像データを記憶部に記憶し、該記憶部に記憶した画像データを読み出して、入力された初期の印刷部数分の画像形成を行う画像形成装置において、ソート印刷による画像形成中に、総印刷部数を変更するための設定値を受け付ける受付手段と、該受付手段が設定値を受け付けた場合に、画像形成処理を強制終了することなく、継続して変更後の総印刷部数について画像形成を行う画像形成手段とを備えた画像形成装置」で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「画像形成手段による印刷部数が総印刷部数に達するまでは、該総印刷部数を表示する第1表示手段」、及び「画像形成手段による画像形成の進捗状況を示す部数を表示する第2表示手段」を備えているのに対して、引用発明は当該手段を備えていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「受付手段が前記設定値を受け付けた都度、変更後の総印刷部数を第1表示手段に表示させると共に、進捗状況を示す部数を第2表示手段に表示させる」ものであるのに対して、引用発明では、当該表示処理を行うことが認められない点。

(4)判断
[相違点1]について
一般に、ファクシミリ装置、デジタル複写装置等のデジタル処理装置において、総印刷部数を表示する表示手段、及び、画像形成の進捗状況を表示する表示手段を設けることは、周知技術である。
例えば、前記周知技術は、特開平04-085271号公報に「複写の必要部数はテンキー212aで設定し、設定数はSET表示部214aで表示される。複写動作が開始されると、出来上がった部数がCOUNT表示部214bに順次表示されていく。SET部数とCOUNT部数とが一致したところで、機械は停止し、SETカウンタがリセットされてSET表示部214aは”0表示”に戻る。」(8頁左下欄3行?10行)、及び、特開昭63-044666号公報に「符号260は、表示部を示し、その詳細を第1図に示す。第1図において、セグメントによる「セット枚数」表示部には、オペレータによりキー入力された指定のコピー枚数もしくはコピー部数が表示される。また、「コピー枚数」表示部には、処理済みのコピー枚数もしくはコピー部数が逐次表示される。」(5頁左上欄18行?右上欄4行)と記載されている。
したがって、引用発明において「画像形成手段による印刷部数が総印刷部数に達するまでは、該総印刷部数を表示する第1表示手段」、及び「画像形成手段による画像形成の進捗状況を示す部数を表示する第2表示手段」を設けることは、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点2]について
一般に、所定の値を表示する表示手段を備えた装置において、利用者に対して、該値が変更された場合の確認や、処理の進行に伴う値の変化を提示するために、表示の基になる値が変更された場合には、表示もそれに応じて変更することは、普通に行われていることである。
そうすると、引用発明において、総印刷部数と、画像形成の進捗状況を示す部数とを表示する手段を設けた際に、それぞれの値が変更された場合には、該変更に応じて逐次表示内容を変更することは、当業者が適宜実施できた設計的事項である。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきである。

3.本願発明について
平成16年12月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年9月29日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「原稿の画像データを記憶部に記憶し、該記憶部に記憶した画像データを読み出して、入力された初期の印刷部数分の画像形成を行う画像形成装置において、ソート印刷による画像形成中に、総印刷部数を変更するための設定値を受け付ける受付手段と、該受付手段が設定値を受け付けた場合に、画像形成処理を強制終了することなく、継続して変更後の総印刷部数について画像形成を行う画像形成手段と、該画像形成手段による印刷部数が前記総印刷部数に達するまでは、変更後の総印刷部数を表示する手段とを備え、前記受付手段が前記設定値を受け付けた都度、総印刷部数の変更を行うように構成してあることを特徴とする画像形成装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「画像形成手段による画像形成の進捗状況を示す部数を表示する第2表示手段」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-21 
結審通知日 2007-02-27 
審決日 2007-03-14 
出願番号 特願2001-105264(P2001-105264)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 雅宏  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 鈴木 明
脇岡 剛
発明の名称 画像形成装置  
代理人 河野 登夫  

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