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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1156416
審判番号 不服2005-15276  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2007-04-26 
事件の表示 平成7年特許願第302321号「焦点検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月16日出願公開、特開平9-127404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年10月27日に出願された特願平7-302321号の出願に係り、出願審査請求とともに平成14年10月25日付の明細書を補正する手続補正書が提出され、原審における平成17年1月25日付の拒絶理由通知に対し、平成17年4月4日付で意見書とともに明細書を補正する手続補正書が提出され、前記拒絶理由により平成17年6月2日付で拒絶査定され、その後、前記拒絶査定を不服として、平成17年7月7日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求の日から30日以内の平成17年8月8日付の明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成17年8月8日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成17年8月8日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成17年8月8日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成17年4月4日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1についての
「【請求項1】焦点検出対象物からの信号を受光し、該受光信号出力を蓄積する受光手段と、
該受光手段の蓄積状態を監視する蓄積状態監視手段と、
前記受光手段の蓄積時間を計測するタイマ手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が第1の所定値に達したか否かを判定する第1の出力判定手段と、
蓄積終了前に前記蓄積時間が所定時間に達した際、前記蓄積状態監視手段の出力が第2の所定値に達したか否かを判定する第2の出力判定手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が前記第1の所定値に達したことが前記第1の出力判定手段にて判定された場合に蓄積を終了する一方、蓄積終了前に前記蓄積時間が前記所定時間に達した際に前記蓄積状態監視手段の出力が前記第2の所定値に達していないことが前記第2の出力判定手段にて判定された場合、補助光手段により照明光を焦点検出対象物に投光して前記受光手段にて蓄積するよう制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする焦点検出装置。」
の記載を、
「【請求項1】焦点検出対象物からの信号を受光し、該受光信号出力を蓄積する受光手段と、
該受光手段の蓄積状態を監視する蓄積状態監視手段と、
前記受光手段の蓄積時間を計測するタイマ手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が第1の所定値に達したか否かを判定する第1の出力判定手段と、
蓄積終了前に前記蓄積時間が所定時間に達した際、前記蓄積状態監視手段の出力が第2の所定値に達したか否かを判定する第2の出力判定手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が前記第1の所定値に達したことが前記第1の出力判定手段にて判定された場合に蓄積を終了する一方、蓄積終了前に前記蓄積時間が前記所定時間に達した際に前記蓄積状態監視手段の出力が前記第2の所定値に達していないことが前記第2の出力判定手段にて判定された場合、補助光手段により照明光を焦点検出対象物に投光して前記受光手段にて再蓄積するために蓄積を終了するよう制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする焦点検出装置。」
と補正することを含むものである。

2 本件補正についての検討
(1)本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号の規定によりなされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的に該当する補正であるか否かについて検討する。
(2)本件補正の内容
本件補正において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(これを「旧請求項1」という。以下同じ。)に記載されてあった「前記受光手段にて蓄積するよう制御する制御手段」の発明特定事項を、「前記受光手段にて再蓄積するために蓄積を終了するよう制御する制御手段」とする、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている請求項1(これを「新請求項1」という。以下同じ。)についての補正は、新請求項1の「再蓄積するために蓄積を終了する」が、旧請求項1の「蓄積する」を限定的に減縮する下位概念の語句でもなく、旧請求項1の「蓄積する」を「再蓄積するために蓄積を終了する」とすることが、明らかな誤記の訂正に該当せず、そして明りようでない記載の釈明にも該当しないから、本件補正における請求項1についての前記補正は、旧請求項1に記載されてあった「前記受光手段にて蓄積するよう制御する制御手段」の発明特定事項を、新たな発明特定事項である「前記受光手段にて再蓄積するために蓄積を終了するよう制御する制御手段」に入れ替えることにより、発明特定事項を変更する補正である。

そうすると、本件補正における請求項1についての前記補正は、特許法第17条の2第4項の第1号、第2号、第3号及び第4号に規定されているところの、
第1号:第三十6条第5項に規定する請求項の削除
第2号:特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
第3号:誤記の訂正
第4号:明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
のいずれの目的にも該当しない補正であることが明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない補正を含むものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合していない補正を含んでいるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成17年8月8日付の手続補正が却下されたことにより、本願発明は、平成17年4月4日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上記「第2」の「1 補正の内容」欄を参照)。
「【請求項1】焦点検出対象物からの信号を受光し、該受光信号出力を蓄積する受光手段と、
該受光手段の蓄積状態を監視する蓄積状態監視手段と、
前記受光手段の蓄積時間を計測するタイマ手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が第1の所定値に達したか否かを判定する第1の出力判定手段と、
蓄積終了前に前記蓄積時間が所定時間に達した際、前記蓄積状態監視手段の出力が第2の所定値に達したか否かを判定する第2の出力判定手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が前記第1の所定値に達したことが前記第1の出力判定手段にて判定された場合に蓄積を終了する一方、蓄積終了前に前記蓄積時間が前記所定時間に達した際に前記蓄積状態監視手段の出力が前記第2の所定値に達していないことが前記第2の出力判定手段にて判定された場合、補助光手段により照明光を焦点検出対象物に投光して前記受光手段にて蓄積するよう制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする焦点検出装置。」(以下、これを「本願発明」という。)

2 引用刊行物及びその記載事項
原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である特開平2-68511号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「補助照明装置を備えた自動焦点式カメラ」に関し、図面の記載とともに次の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1)補助照明装置を備えた自動焦点式カメラにおいて、
非破壊読み出し機能を有する光電変換素子により構成された焦点検出手段と、
被写体の輝度を向上するために投光するための補助光手段と、
前記光電変換素子の出力に基づいて、
前記補助光手段の制御を行なう補助光制御手段とにより構成され、
前記補助光制御手段は、積分動作が終了する前に
前記光電変換素子から非破壊読み出しにより読み出された
データとこのデータの読み出し時点の積分時間とより、被写体輝度を予測し、
予測した輝度が規定値以下の時に
前記補助光手段より被写体へ投光させることを特徴とする自動焦点式カメラ。
(2)補助照明装置を備えた自動焦点式カメラにおいて、
光電変換素子と光電変換素子の電荷蓄積状態をモニターするためのモニター手段を有する焦点検出手段と、
被写体の輝度を向上するために投光するための補助光手段と、
前記モニター手段の出力に基づいて、
前記補助光手段の制御を行なう補助光制御手段とにより構成され、
前記補助光制御手段は、前記光電変換素子の積分動作が終了する前に、
前記モニター手段から入力した
データとこのデータを読み出した時点の積分時間とにより、被写体輝度を予測し、
予測した輝度が規定値以下と判断される時に
前記補助光手段より被写体へ投光させることを特徴とする自動焦点式カメラ。」(1頁左欄4行?同頁右欄10行)

「(従来技術)
最近、自動焦点機能を有するカメラが普及しており、この自動焦点のための焦点検出装置が種々開発されている。従来の焦点検出装置によると、被写体輝度が低いとき、あるいは被写体コントラストが低いときに電子閃光装置、ランプ高輝度LED等の補助光源により、被写体に光を投光し、焦点検出を可能にすることが行なわれている。
CCD等の光電変換素子で構成される焦点検出装置と補助光源の組合わせにおいて、マイクロコンピュータを用いて従来おこなわれていた補助光源制御は第14図のフローチャートに従って行われている。実際のカメラに組込まれたマイクロコンピュータは、焦点検出以外に測光、絞り制御、レンズ駆動等のさまざまな制御を行なっているが、ここでは焦点検出の部分の処理のみに注目して説明する。
焦点検出のサブルーチンが呼出されると、最初に補助光フラグの有無が判断される。この補助光フラグが立っている時は、CCD等の積分の開始に先だって補助光が点灯される。この補助光フラグは、CCDのデータの状態に基づいて設定されるので、カメラの動作シーケンスにおいて、初期の焦点検出動作であれば、立っていることはない。従って、補助光有無の判断処理は、2回目以降の焦点検知動作において意味がある。
次に、CCDの信号の積分を開始させるため積分スタートが掛けられると共に積分時間の最大値を規定するためにタイマーがスタートされる。この積分時間の最大値を規定する理由は、被写体輝度が低くすぎると、CCDの電荷が徐徐にしか行われず、積分がなかなか終了しなくなるのを防止することにある。
積分が開始されると、マイクロコンピュータは、CCDから積分完了信号が出力されるかを監視し、かつ積分時間が規定値に達したかどうかをタイマーの終了信号によって判断する。積分完了信号の発生以前にタイマーが終了した時は、被写体輝度が低くて、そのままでは、焦点検出は不可能であると判断され、2回目以降は、補助光により輝度を上げる必要があり、このため、補助光フラグがセットされる。
積分完了信号が来た時は、マイクロコンピュータは、CCDのデータを受入れ、演算ルーチンの中で焦点のズレ量を計算する。この演算ルーチンにおいては、焦点検出に必要なコントラストが被写体にあるかの判断もなされる。コントラスト判断において、低コントラスト状態と判断された時は、補助光によりコントラストを上げるために補助光フラグがセットされる。コントラストがあると判断された時は、焦点検出フローから離脱した後に、算出されたズレ量に基づいて撮影レンズが制御される。
上記のような一連の焦点検出動作が終了すると、最後に、補助光が点灯していれば、補助光を消灯して焦点検出フローから離脱する。」(1頁右欄12行?2頁左下欄7行)

「(発明が解決しようとする問題点)
上記のような従来の補助光制御方法によると、1回積分してデータを認識しないかぎり補助光の必要性の判断が出来ない問題がある。特に、被写体の輝度が低くてデータがとれない時にこの問題が大きな問題となる。この場合は、補助光を点灯する判断だけのために、積分を行なったことになり、この積分時間は、焦点検出にとっては殆んど意味のない時間であり、カメラの動作シーケンスのスピードを低下させることになる。
従って、この発明の目的は、無意味な積分時間を無くすことのできる、補助照明装置を備えた自動焦点式カメラを提供することにある。
(問題点を解決する手段および作用)
この発明によると、蓄積されたデータは破壊されることなく読み出し可能な(以下、非破壊読み出し)SIPT(静電誘導フォトトランジスタ)をライン状、及びエリア状に配列したSIT(静電誘導トランジスター)イメージセンサが用いられ、非破壊読み出しによりイメージセンサ-のデータ蓄積の途中経過を監視し、被写体輝度が低くて、このまま積分をしても無意味と判断される場合は積分途中から補助光の投光が開始される。また、CCD等のイメージセンサ-であっても、その電荷蓄積を監視するために設けられた受光素子の出力を積分途中で読み出すことが出来き、これにより補助光の制御を可能にする。
即ち、第1図に示すように被写体1は光学系2により非破壊読出し機能を有するCCDなどのイメージセンサを含む焦点検出手段に結像される。この焦点検出手段において光電信号が積分され、補助光制御手段4は焦点検出手段での積分動作の終了前に読出される非破壊データとこのデータの読出し時点の積分時間とにより被写体輝度を予測し、予測した輝度が規定値以下であると判断したとき、補助光手段5を作動し、補助光を被写体へ投光させる。」(2頁左下欄8行?3頁左上欄4行)

「(実施例)
第2図はに示すブロック図によりこの発明の実施例を説明する。
撮影レンズ11の射出瞳の光束は、分割光学系12によって分割され、SIT等の非破壊読み出しが可能な光電変換素子より成るラインセンサー13のA群センサー13AとB群センサー13B上にそれぞれ結像される。
インターフェース回路14はラインセンサー制御回路とA/Dコンバータ(図示せず)とを含み、マイクロコンピュータ15から制御信号が供給されると、ラインセンサー制御回路が動作し、センサー出力信号を出力する。積分信号が適正レベルに達すると、積分出力はA/Dコンバータによりデジタル値に変換され、マイクロコンピュータ15へ供給される。マイクロコンピュータが非破壊読み出しモードを要求した場合は、インターフェース回路14は積分途中のデータをデジタル値に変換し、マイクロコンピュータ15へ供給する。」(3頁左上欄5行?同頁右上欄3行)

「発光回路16は、マイクロコンピュータ15の制御信号に基づいて、ランプまたは発光ダイオード等よりなる補助光源17を制御する。」(3頁右上欄11?13行)

「第3図(a)に示すセンサーによると、シフトレジスター31は、読み出し回路32にサンプルホールドされたSIPT各画素の出力データを、センサー出力端子OSよりシリアルに出力するための制御信号を発生する。読み出し回路32は、SIT各画素の出力をサンプルホールドし、増幅する機能を有する。
リセット回路34は、積分開始時に、SIPTのゲートに蓄積された電荷をリセットする。モニター回路35[当審注:モニター回路34」は誤記と認める。]は、SIT各画素の最大値を検出してモニター出力端子MOSより出力する。インターフェース回路14は積分中において、モニター出力を常に監視し、モニター出力がA/Dコンバータによって変換できる最大値に達すると、センサー出力を読み出し、積分を終了する。」(3頁右下欄4?18行)

「従って、モニター出力が規定値に達する以前に途中で読み出したセンサーデータと、積分開始から途中で読み出しを行なった時点までの時間の比を算出することにより、モニターが規定値に達するまでの時間、即ち積分時間が予測できる。
この積分時間と被写体輝度は比例しているので、被写体輝度を予測することも可能となる。この予測された輝度により補助光が必要であると判断されるときは、積分途中で補助光源17を点灯する。」(5頁左上欄6?14行)

「サブルーチンのAFシングルを第7図のフローチャートで説明する。まず最初に露出許可フラグが立っているかが判断される。露出許可フラグが立っている時は、すでに一度合焦位置への焦点調整が終了していることを示めしているので、これ以上の焦点調整の必要がないのでリターンする。このフラグはレリーズスイッチの1段目がOFFしない限りリセットされないので、ユーザーがレリーズスイッチから指を離し、再度押すまでは、焦点調整は実行されない。次にマイクロコンピュータ15中のタイマーをスタートする。このタイマーは積分時間の計測のために用いられる。次にインターフェース回路14へ積分スタートの命令を出力する。するとインターフェース回路14は、センサを構成するSIPTのゲートに蓄積された電荷をリセットし、積分が開始する。
次に、補助光フラグが立っているかが判断される。このフラグは、後述する積分予測のサブルーチン中でセットされるフラグである。そしてレリーズスイッチ25がOFFしている時は、常にリセットされているので、レリーズスイッチ25の1段目がONしてはじめてAFシングルがコールされた時は、まだこのフラグは立っていない。従って、1回目の積分で投光スタートの処理へ分枝することはない。ここでこのフラグの判定をする理由は、一度補助光をつける必要ありと判断されたら、2回目以降の積分では、積分予測の処理をやめて、最初から補助光を発光させるためである。このことにより積分予測に必要であった時間も、有効な積分時間として使用でき、積分時間の短縮につながる。
補助光フラグが立っていないときは、マイクロコンピュータ15は、インターフェース14からの積分終了信号を待つとともにタイマーがTφに達したかどうかを監視し続ける。通常はタイマーがTφに達する前に積分は終了し、マイクロコンピュータ15はインターフェース回路14からセンサーのA/D変換されたデジタルデータを入力する。次にタイマーをストップする。そして得られたデータと先に述べた評価式(1)(2)を用いて焦点のズレ量の算出が行なわれる。次に合焦の判定が行なわれる。ここでは得られたズレ量がFナンバー/30〔mm〕で示めされる最小錯乱円におさまっているかが判断される。合焦と判断した時は、露出許可フラグとシングル完了フラグ1がセットされ、合焦表示をした後、AFシングルの処理からリターンする。非合焦と判断された時は、露出許可フラグとシングル完了フラグ1がリセットされ、非合焦表示行われ、そしてズレ量に基づきレンズ駆動が行なわれ、AFシングルの処理からリターンする。シングル完了フラグ1については、後述するAFサーボの処理の中で使用される。
つぎにタイマーがTφに達しても積分終了信号がインターフェース回路14から出力されない時の処理について説明する。以下に述べる処理がこの発明の重要な点となる。
マイクロコンピュータ15は、インターフェース回路14へ読み出し命令を出力する。するとインターフェース回路14は、先にセンサーの読み出し方法で説明したように、SIPTのデータを破壊することなく積分途中で読み出す。そしてA/D変換した後にマイクロコンピュータ15ヘデータ入力される。次に、積分予測サブルーチンがコールされる。
第10図のフローチャートにより積分予測について説明する。まず入力されたデータの中から最大値(DMAX)と最小値(DMIN)が検出される。次にこのデータを読み出した時の積分時間Tφと最大値DMAXより積分が終了するに必要な時間が次式により算出される。
TI=Tφ×255/DMAX
分子の値255は、8ビツトのA/Dコンバータを使用したときに、積分が通常に終了したとき、インターフェース回路14から出力されるデータの最大値を示す。次に予測される積分時間TIが最大積分時間TMAXより大きいか判断される。大きいと判断されるときは補助光により被写体輝度を上げる必要があるので、補助光フラグがセット(←1)される。そしてリターンする。最大積分時間TMAXは、SIPTが実用上問題が生じない最大積分時間と、カメラのシーケンスにおいて許される最大積分時間を考慮して定められた値である。
TMAXよりTIが小さいと判断された時は、コントラストの予測を行なう。現時点におけるセンサー上に形成された像のコントラストは、(DMAX-DMIN)/(DMAX+DMIN)で表わされる。従って、積分終了時点におけるコントラストCは、255/DMAXを現時点におけるコントラストに掛けた値であると予測できる。このコントラストが焦点ズレ量検出に必要な最小コントラストCMINより小さいと判断されるときは、被写体輝度は十分であっても、補助光により被写体のコントラストを増やす必要があるので、補助光フラグがセット(←1)される。予測される積分時間は規定値以下で、コントラストは規定値以上であれば、このまま積分を続行すれば、適正なデータを得ることが出来る。従って、補助光フラグはリセット(←φ)され、リターンする。
第7図のフローに戻り、積分予測のサブルーチンからリターンすると、補助光フラグが立っているか判断される。フラグが立っている時、マイクロコンピュータ15は、発光回路16へ発光信号を送り、投光がスタートする。つぎにインターフェース回路14から積分終了の信号が出力されるかが監視されると共にタイマーが最大積分時間を示すTMAXに達したかどうかが監視される。積分終了の信号が出力されると、データを入力し、タイマーがTMAXに達してしまったときは、インターフェース回路14へ読み出し命令を出力し、積分途中でのデータを入力することで積分は終了とする。次に、補助光を使用していれば、投光ストップの信号を発光回路16へ送り、更にタイマーの動作を停止する。この後はすでに説明した処理を実行して、AFシングルの処理からリターンする。」(6頁右下欄19行?8頁右上欄14行)

また、添付の第7図に、上記した摘記事項を裏付ける「AFシングルモードの動作を示すフローチャート図」が示され、第10図にも、上記した摘記事項を裏付ける「積分予測を行なう動作のフローチャート図」が示されていることが認められる。

そうしてみると、引用刊行物の上記摘記事項及び図面の図示からみて、前記引用刊行物には、次の発明(以下、これを「引用発明という。)の記載が認められる。
「CCDなどのイメージセンサ等の光電変換素子と該光電変換素子の電荷蓄積状態を監視するためのモニター回路35を有する焦点検出手段と、被写体1の輝度向上のために投光するランプまたは発光ダイオード等よりなる補助光源17と、前記モニター回路35の出力に基づいて、前記補助光源17の制御を行なう発光回路16とにより構成される補助照明装置を備えた自動焦点式カメラの焦点検出手段において、
前記発光回路16は、被写体1が光学系2によりCCDなどのイメージセンサを含む焦点検出手段に結像されると、前記焦点検出手段において光電信号を積分し、焦点検出手段での光電変換素子の積分動作が終了する前に、前記モニター回路35から入力したデータと前記データを読み出した時点の積分時間とにより、被写体輝度を予測し、予測した輝度が規定値以下であると判断したときに、前記補助光源17を作動し、補助光を被写体1へ投光させるものであって、
インターフェース回路14へ積分スタートの命令が出力されると、インターフェース回路14は、センサを構成する光電変換素子に蓄積された電荷をリセットし、積分時間の計測のためにマイクロコンピュータ15中のタイマーをスタートさせて、積分が開始し、インターフェース回路14は積分中において、モニター出力を常に監視し、モニター出力がA/Dコンバータによって変換できる最大値に達すると、センサー出力を読み出して、積分を終了させるとともに、
補助光フラグが立っていないときは、マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14からの積分終了信号を待つとともにタイマーがTφに達したかどうかを監視し続け、
タイマーがTφに達する前に積分が終了した場合には、マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14からセンサーのA/D変換されたデジタルデータを入力し、タイマーをストップし、
タイマーがTφに達しても積分終了信号がインターフェース回路14から出力されない場合には、マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14へ読み出し命令を出力するとインターフェース回路14は、光電変換素子のデータを積分途中で読み出し、A/D変換した後にマイクロコンピュータ15ヘデータ入力され、次に、積分予測サブルーチンがコールされて、積分予測されることになり、まず入力されたデータの中から最大値(DMAX)と最小値(DMIN)が検出され、次にこのデータを読み出した時の積分時間Tφと最大値DMAXから積分が終了するに必要な時間TIが、次式により算出され、
TI=Tφ×255/DMAX(但し、分子の値255は、8ビツトのA/Dコンバータを使用したときに、積分が通常に終了したとき、インターフェース回路14から出力されるデータの最大値である。)
予測される積分時間TIが最大積分時間TMAXより大きいか判断され、(但し、最大積分時間TMAXは、光電変換素子が実用上問題が生じない最大積分時間と、カメラのシーケンスにおいて許される最大積分時間を考慮して定められた値である。)
予測される積分時間TIが最大積分時間TMAXより大きいと判断されるときは補助光により被写体輝度を上げる必要があるので、補助光フラグがセットされる一方で、積分予測のサブルーチンからリターンすると、補助光フラグが立っているか判断され、フラグが立っているときには、マイクロコンピュータ15は、発光回路16へ発光信号を送り、投光をスタートさせ、つぎにインターフェース回路14から積分終了の信号が出力されるかが監視されると共にタイマーが最大積分時間TMAXに達したかどうかが監視され、積分終了の信号が出力されると、データを入力し、一方、タイマーが最大積分時間TMAXに達してしまったときは、インターフェース回路14へ読み出し命令を出力し、積分途中でのデータを入力することで積分を終了させて、補助光を使用していれば、投光ストップの信号を発光回路16へ送り、さらにタイマーの動作を停止させるようにした自動焦点式カメラの焦点検出手段」

3 当審の判断
(1)対比
本願発明と上記引用発明とを比較すると、引用発明における「CCDなどのイメージセンサ等の光電変換素子」、「光電変換素子の電荷蓄積状態を監視するためのモニター回路35」、「積分時間の計測のためにマイクロコンピュータ15中のタイマー」及び「自動焦点式カメラの焦点検出手段」のそれぞれが、本願発明の「焦点検出対象物からの信号を受光し、該受光信号出力を蓄積する受光手段」、「該受光手段の蓄積状態を監視する蓄積状態監視手段」、「前記受光手段の蓄積時間を計測するタイマ手段」及び「焦点検出装置」にそれぞれ相当することは明らかである。
しかして、引用刊行物には、「モニター回路35は、SIT各画素の最大値を検出してモニター出力端子MOSより出力する。インターフェース回路14は積分中において、モニター出力を常に監視し、モニター出力がA/Dコンバータによって変換できる最大値に達すると、センサー出力を読み出し、積分を終了する。」(3頁右下欄4?18行)と記載され、また、「従って、モニター出力が規定値に達する以前に途中で読み出したセンサーデータと、積分開始から途中で読み出しを行なった時点までの時間の比を算出することにより、モニターが規定値に達するまでの時間、即ち積分時間が予測できる。この積分時間と被写体輝度は比例しているので、被写体輝度を予測することも可能となる。この予測された輝度により補助光が必要であると判断されるときは、積分途中で補助光源17を点灯する。」(5頁左上欄6?14行)と記載されている。
引用刊行物のこれらの記載によれば、CCDなどのイメージセンサ等の光電変換素子における蓄積状態の出力は、積分開始から途中で読み出しを行なった時点までに経過した積分時間に比例する関係にあることから、被写体の輝度の判定では、直接のデータ出力を指標とする代わりに、間接的な積分時間の経過時間を指標にすることによっても、CCDなどのイメージセンサ等の光電変換素子における蓄積状態を判定することができることになる。
そして、これらのことを引用刊行物における実施例に即して検討すると、前記「モニター出力が規定値に達する以前に途中で読み出したセンサーデータ」は「最大値DMAX」の意義であり、また前記「モニター出力の規定値」は「積分が通常に終了したときの出力のデータの最大値255」の意義であり、前記「積分開始から途中で読み出しを行なった時点までの時間」は「データを読み出してから途中までの積分時間Tφ」の意義であり、そして、前記「モニターが規定値に達するまでの時間」は「積分終了までに必要と予測される積分時間TI」の意義であるから、積分終了までに必要と予測される積分時間TIは、「データを読み出してから途中までの積分時間Tφ」と「その時のデータの最大値DMAX」と、「積分が通常に終了したときの出力のデータの最大値255」との比例関係式のTI=Tφ×255/DMAXから求められることになる。
一方、データを読み出してから経過した積分時間Tφでのデータの最大値DMAXが「最大値255」に達すれば、積分が満了したことになるから、積分は通常に終了することになる。
そこで、引用発明の「データを読み出してから経過した積分時間Tφでのデータの最大値DMAXが最大値255に達したかどうかを監視し続け」る技術手段について検討すると、引用発明では、積分が通常に終了する場合に、データを読み出してから経過した積分時間Tφにおけるデータの最大値DMAXが「255」となり、このときの経過時間Tφは、TI=Tφ×255/DMAXの比例関係式から、Tφ=TIとなる。
したがって、引用発明の前記「積分が通常に終了したときの出力のデータの最大値255」が本願発明の「第1の所定値」に相当するから、引用発明の前記「データを読み出してから経過した積分時間Tφでのデータの最大値DMAXが最大値255に達したかどうかを監視し続け」る技術手段が、本願発明の「前記蓄積状態監視手段の出力が第1の所定値に達したか否かを判定する第1の出力判定手段」に相当するといえる。
また、引用発明の「マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14からの積分終了信号を待つとともにタイマーがTφに達したかどうかを監視し続け」る技術手段について検討すると、引用発明における「Tφ」は、前述のように、時間に比例する蓄積状態の出力を途中までの積分時間の経過時間で判定する場合の判定基準の役割を担っていることからみて、前記比例関係式における「最大値DMAX」に対応比例する「Tφ」としての「最大積分時間TMAX」が、積分終了前での積分開始からの蓄積状態の出力「最大値DMAX」に対応することになるから、引用発明の「最大積分時間TMAX」が、本願発明の「所定時間」に相当し、また、引用発明の蓄積状態の出力「最大値DMAX」が、本願発明の蓄積状態監視手段の出力の「第2の所定値」に相当することになるので、引用発明の「マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14からの積分終了信号を待つとともにタイマーがTφに達したかどうかを監視し続け」る技術手段が、本願発明の「蓄積終了前に前記蓄積時間が所定時間に達した際、前記蓄積状態監視手段の出力が第2の所定値に達したか否かを判定する第2の出力判定手段」に相当するといえる。
そして、引用発明における上述の事柄から、引用発明の「インターフェース回路14は積分中において、モニター出力を常に監視し、モニター出力がA/Dコンバータによって変換できる最大値に達すると、センサー出力を読み出して、積分を終了させる」ようにする制御手段が、本願発明の「前記蓄積状態監視手段の出力が前記第1の所定値に達したことが前記第1の出力判定手段にて判定された場合に蓄積を終了する制御手段」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「タイマーがTφに達しても積分終了信号がインターフェース回路14から出力されない場合には、マイクロコンピュータ15が、インターフェース回路14へ読み出し命令を出力するとインターフェース回路14は、光電変換素子のデータを積分途中で読み出し、A/D変換した後にマイクロコンピュータ15ヘデータ入力され、次に、積分予測サブルーチンがコールされて、積分予測されることになり、まず入力されたデータの中から最大値(DMAX)と最小値(DMIN)が検出され、次にこのデータを読み出した時の積分時間Tφと最大値DMAXから積分が終了するに必要な時間TIが、次式により算出され、
TI=Tφ×255/DMAX(但し、分子の値255は、8ビツトのA/Dコンバータを使用したときに、積分が通常に終了したとき、インターフェース回路14から出力されるデータの最大値である。)
予測される積分時間TIが最大積分時間TMAXより大きいか判断され(但し、最大積分時間TMAXは、光電変換素子が実用上問題が生じない最大積分時間と、カメラのシーケンスにおいて許される最大積分時間を考慮して定められた値である。)、予測される積分時間TIが最大積分時間TMAXより大きいと判断されるときは補助光により被写体輝度を上げる必要があるので、補助光フラグがセットされる」ようにする制御手段が、本願発明の「蓄積終了前に前記蓄積時間が前記所定時間に達した際に前記蓄積状態監視手段の出力が前記第2の所定値に達していないことが前記第2の出力判定手段にて判定された場合、補助光手段により照明光を焦点検出対象物に投光するよう制御する制御手段」に相当するといえる。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「焦点検出対象物からの信号を受光し、該受光信号出力を蓄積する受光手段と、
該受光手段の蓄積状態を監視する蓄積状態監視手段と、
前記受光手段の蓄積時間を計測するタイマ手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が第1の所定値に達したか否かを判定する第1の出力判定手段と、
蓄積終了前に前記蓄積時間が所定時間に達した際、前記蓄積状態監視手段の出力が第2の所定値に達したか否かを判定する第2の出力判定手段と、
前記蓄積状態監視手段の出力が前記第1の所定値に達したことが前記第1の出力判定手段にて判定された場合に蓄積を終了する一方、蓄積終了前に前記蓄積時間が前記所定時間に達した際に前記蓄積状態監視手段の出力が前記第2の所定値に達していないことが前記第2の出力判定手段にて判定された場合、補助光手段により照明光を焦点検出対象物に投光してするよう制御する制御手段とを備えた焦点検出装置」
である点で一致し、次の点で構成が相違する。
相違点1:出力判定手段に関して、本願発明が「蓄積状態監視手段の出力」を判定するのに対し、引用発明は、積分時間と被写体輝度が比例することに基いて、規定値に達するまでの積分時間を予測することにより、被写体輝度としての蓄積状態の出力を判定する点。
相違点2:本願発明の制御手段が「前記受光手段にて蓄積するよう制御する」のに対し、引用発明では、積分を終了させる点。

(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明では、引用発明の「Tφ」が、時間に比例する蓄積状態の出力を積分時間の経過時間で判定する場合の判定基準の役割を担っており、そして、引用発明の前記「積分が通常に終了したときの出力のデータの最大値255」が、本願発明の出力判定手段における判定基準となる「第1の所定値」に相当していることは、前述したとおりである。そして、かかる引用発明が採用する積分時間の経過時間により蓄積状態を判定する方式は、CCDなどのイメージセンサ等の光電変換素子における蓄積状態の出力が積分時間に比例するという、技術常識に基づくものである。
してみれば、蓄積状態の出力を判定するときの判定対象として、蓄積状態の出力に比例する積分時間の経過時間を監視することにより、時間に比例する蓄積状態の出力を予測し判定する引用発明の方式から、蓄積状態の出力を直接監視する方式に変更することは、当業者が技術常識に基いて、何らの困難を伴うことなく、容易に想到できる程度のものである。

イ 相違点2について
引用発明における積分を終了させる制御方法を、積分を終了させないでそのまま積分を継続させるように変更することに、何らかの技術的な工夫を必要とするものと認めることができない。
そして、引用発明における積分を終了させる制御方法を、受光手段にて蓄積するような制御方法とすることにより、本願発明の相違点2に係る前記「前記受光手段にて蓄積するよう制御する制御手段」の構成に変更することは、当業者が発揮する通常の能力の範囲内のものといえ、当業者が何らの困難を伴うことなく、容易に想到できる程度のものである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-20 
結審通知日 2007-02-27 
審決日 2007-03-12 
出願番号 特願平7-302321
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 57- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 末政 清滋
森内 正明
発明の名称 焦点検出装置  
代理人 中村 稔  

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