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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F24H |
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管理番号 | 1156430 |
審判番号 | 不服2006-2004 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-06 |
確定日 | 2007-04-26 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第224290号「燃焼装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月26日出願公開、特開平11- 51490〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成9年8月6日の特許出願であって、原審において平成17年6月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成17年8月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月6日付けで審判請求がなされるとともに、平成18年3月3日付けで、この審判請求書を補正対象とする手続補正と、明細書を補正対象とする手続補正の2つの手続補正がなされ、その後、特許法第162条による審査がなされ、平成18年4月7日付けで特許庁長官への報告がなされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年3月3日付けの、明細書を補正対象とする手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の各請求項に係る発明 補正後の請求項1ないし5に係る発明は、上記平成18年3月3日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には給湯回路,暖房循環回路,風呂追焚循環回路の受熱管が配設され、各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、 上記給湯回路の受熱管の複数の直管部が最も下に位置して上記熱交換部のほぼ全領域に配置され、上記暖房循環回路,風呂追焚循環回路の受熱管の複数の直管部も、上記熱交換部のほぼ全領域にわたって配置されており、 給湯回路,暖房循環回路,風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が、この順序で下から順に重なり合うとともに互いに接していることを特徴とする燃焼装置。 【請求項2】 暖房単独実行の際に、給湯回路の滞留水の沸騰を防止するように、上記燃焼部での燃焼熱量を抑制し、 風呂追焚の単独実行の際に、給湯回路の滞留水および暖房循環回路の滞留熱媒体の沸騰を防止するように、上記燃焼部での燃焼熱量を抑制することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。 【請求項3】 1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には給湯回路,暖房循環回路,風呂追焚循環回路の受熱管が配設され、各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、 上記給湯回路の受熱管の直管部が、上下2段にわたって配置され、少なくとも下段における複数の直管部が熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、 上記暖房循環回路の受熱管の直管部が下段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接しており、 上記風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が、上段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接し、 給湯回路の受熱管の下段の直管部が最も下に配置され、風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が最も上に配置されていることを特徴とする燃焼装置。 【請求項4】 上記給湯回路の受熱管の直管部は、上下段ともに熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、上記暖房循環回路および風呂追焚循環回路の受熱管の直管部も熱交換部のほぼ全領域にわたって配置されていることを特徴とする請求項3に記載の燃焼装置。 【請求項5】 上記給湯回路の受熱管の上段の直管部と下段の直管部が上記フィンプレートの長手方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項3に記載の燃焼装置。」 2.補正の概要 上記補正は、補正前の請求項1,2を統合し、補正後の請求項1とし、補正前の請求項3を繰り上げて、補正後の請求項2とすると共に、補正前の請求項4,5を統合すると共に、2箇所の「受熱管の直管部」を、「下段における・・・受熱管の直管部」あるいは「上段における・・・受熱管の直管部」とそれぞれ限定し、且つ、この統合後の項に「給湯回路の受熱管の下段の直管部が最も下に配置され、風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が最も上に配置されている」を挿入して記載を明瞭なものとし、この項を補正後の請求項3とし、さらに、この補正後の請求項3の下位に同項を引用する補正後の請求項4及び5を追加し、これらの補正と整合性をとるため、発明の詳細な説明を補正するものである。 3.特許法第17条の2第4項の規定に関する検討 本件発明の第2の実施形態(本件明細書段落【0034】参照)に関する請求項の数は、補正前では請求項4,5の2つであったが、補正後は請求項3ないし5の3つとなり、上記補正は同実施形態に関しては、請求項の数を増やす補正となっており、特許法第17条の2第4項第2号で言う「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。 特許法第17条の2第4項第2号では「特許請求の範囲の減縮」について規定するが、同号で言う「特許請求の範囲の減縮」は、補正前の請求項に記載されていた発明の特定に必要な事項を限定する減縮であり、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明確であることが要請されるものであると言うべきである。 そうであってみれば、補正によって追加された、補正後の請求項4及び5には、対応する補正前の請求項がなく、これらの請求項4及び5に関する補正が同号でいう「特許請求の範囲の減縮」に該当しないのは明白である。 また、上記補正後の請求項4及び5に関する補正は、請求項の削除、誤記の訂正、または明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもない。 4.まとめ したがって、上記補正後の請求項4及び5に関する補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号のいずれをも目的とするものではないので、上記平成18年3月3日付けの手続補正は、同項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての検討 1.本願発明 平成18年3月3日付けの、明細書を補正対象とする手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成17年8月23日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には第1,第2,第3の回路の受熱管が配設され、各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、上記第1回路の受熱管の複数の直管部が最も下に位置して上記熱交換部のほぼ全領域に配置され、 上記第2,第3回路の受熱管の複数の直管部も、上記熱交換部のほぼ全領域にわたって配置されており、第1,第2,第3回路の受熱管の直管部が、この順序で下から順に重なり合うとともに互いに接していることを特徴とする燃焼装置。 【請求項2】 上記第1回路が給湯回路であり、第2回路が暖房循環回路であり、第3回路が風呂追焚循環回路であることを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。 【請求項3】 暖房単独実行の際に、給湯回路の滞留水の沸騰を防止するように、上記燃焼部での燃焼熱量を抑制し、 風呂追焚の単独実行の際に、給湯回路の滞留水および暖房循環回路の滞留熱媒体の沸騰を防止するように、上記燃焼部での燃焼熱量を抑制することを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。 【請求項4】 1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には第1,第2,第3の回路の受熱管が配設され、各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、上記第1回路の受熱管の複数の直管部が最も下に位置して上記熱交換部のほぼ全領域に配置され、 上記第1回路の受熱管の直管部が、上下2段にわたって配置され、少なくとも下段における複数の直管部が熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、上記第2回路の受熱管の直管部が上下いずれか一方の段における第1回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接しており、上記第3回路の受熱管の直管部が、他方の段における第1回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接していることを特徴とする燃焼装置。 【請求項5】上記第1回路が給湯回路であり、上記第2回路が暖房循環回路であり、上記第3回路が風呂追焚循環回路であることを特徴とする請求項4に記載の燃焼装置。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物 刊行物1:実願昭56-131884号(実開昭58-35747号) のマイクロフィルム 3.引用刊行物に記載された発明 (1)刊行物1に記載された発明 《記載事項》 刊行物1には次のa.ないしc.の記載がある。 a.「本考案は一つの缶体で風呂、給湯、暖房の3つの熱交換機能を具備させた一缶三回路熱交換器に関するものであり、以下これを図例に基づいて具体的に説明する。」(明細書第1頁12?15行) b.「図において(1)は循環パイプ(2)を有する水室(3)に連通する風呂用熱交換器、(4)は図示してはいないが放熱機に至る湯水を加熱する暖房用熱交換器である。(5)は風呂用熱交換器(1)とフイン(6)を共用する第1熱交換器(7)および暖房用熱交換器(4)とフイン(8)を共用する第2熱交換器(9)を直列的に配した給湯用熱交換器である。(10)は熱交換器の下方に設けたバーナで、それぞれ単独あるいは同時燃焼できる第1バーナ(11)および第2バーナ(12)からなる。 本考案はこのような構成からなり、風呂単独加熱時には第1バーナ(11)によって加熱する。暖房単独加熱時には第2バーナ(12)によって加熱する。給湯加熱時にはバーナ(10)を全燃焼させるかあるいは部分燃焼させればよい。風呂と暖房の同時使用を行なっても、分離加熱されるため能力が低下することはない。」(明細書第1頁16行?第2頁12行) c.図面には、風呂用熱交換器(1),暖房用熱交換器(4),給湯用熱交換器(5)およびバーナ(10)の位置関係が示されており、給湯用熱交換器(5)の第1熱交換器(7)上方に風呂用熱交換器(1)が配置され、給湯用熱交換器(5)の第2熱交換器(9)上方に暖房用熱交換器(4)が配置されていることが図示されている。 《発明の認定》 したがって、刊行物1には、 「風呂用熱交換器(1),暖房用熱交換器(4),給湯用熱交換器(5)およびバーナ(10)を有し、給湯用熱交換器(5)の第1熱交換器(7)上方に風呂用熱交換器(1)を配置し、給湯用熱交換器(5)の第2熱交換器(9)上方に暖房用熱交換器(4)を配置し、熱交換器の下方に設けたバーナ(10)を燃焼させ、 一つの缶体で風呂、給湯、暖房の3つの熱交換機能を具備する一缶三回路熱交換器。」 という発明が記載されている。 4.対比 本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明5」という。)と、刊行物1に記載された発明とを対比する。 《本願請求項5の記載形式》 本願請求項5の記載は引用形式で行われている。これを独立形式に書き改めると次のようなものになる。 「【請求項5】 1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には給湯回路,暖房循環回路,風呂追焚循環回路の受熱管が配設され、各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、上記給湯回路の受熱管の複数の直管部が最も下に位置して上記熱交換部のほぼ全領域に配置され、 上記給湯回路の受熱管の直管部が、上下2段にわたって配置され、少なくとも下段における複数の直管部が熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、上記暖房循環回路の受熱管の直管部が上下いずれか一方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接しており、上記風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が、他方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接していることを特徴とする燃焼装置。」 以下の検討では、本願の請求項5をこのようなものとして取り扱う。 《用語の対応》 刊行物1に記載された発明の「バーナ(10)」および「熱交換器」(上記3.(1)《発明の認定》参照)は、本願発明5の「燃焼部」および「熱交換部」にそれぞれ相当すると認められる。 《1つの共通フレームについて》 刊行物1に記載された発明の「一つの缶体」は、本願発明5における「1つの共通フレーム」に相当する。そして、この缶体の内部に、刊行物1に記載された発明の「風呂用熱交換器(1),暖房用熱交換器(4),給湯用熱交換器(5)およびバーナ(10)」が収容されることは自明である。 《一致点》 したがって、本願発明5と、刊行物1に記載された発明とは、 「1つの共通フレームに燃焼部と熱交換部とが収容され、この熱交換部には給湯回路,暖房回路,風呂回路の受熱部が配設され、上記給湯回路の受熱部が最も下に位置して配置される燃焼装置。」 で一致する。 《相違点》 そして、両発明は下記A及びBの2点で相違する。 相違点A:本願発明5では、熱交換部に給湯回路,暖房「循環」回路,風呂「追焚循環」回路の受熱「管」が配設され、「各回路の受熱管が、共通フレームの内部においてフィンプレートを貫通する直管部を有しており、上記給湯回路の受熱管の複数の直管部が上記熱交換部のほぼ全領域に配置され、」とされている。 これに対し、刊行物1に記載された発明では、このようにされていない。 相違点B:本願発明5では、給湯回路の受熱管の直管部が「上下2段にわたって配置され、少なくとも下段における複数の直管部が熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、上記暖房循環回路の受熱管の直管部が上下いずれか一方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接しており、上記風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が、他方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なるとともに互いに接している」とされている。 これに対し、刊行物1に記載された発明では、このようにされていない。 5.判断 《相違点Aについての検討》 給湯回路,暖房循環回路または風呂追焚循環回路の複数の伝熱管が、フレームの内部においてフィンを貫通する直管部を有しており、このような複数の直管部が上記熱交換部のほぼ全領域に配置されることは、周知の技術にすぎない。 (もし、周知文献が必要であれば、 ・特開平8-189791号公報 「【0003】・・・2系統の水管が上下に一対になっており、たとえば、上の水管を給湯用水管に使用し、下の水管を風呂追い焚き用水管に使用することができる。」 「【0013】・・・フレーム20の側板21、21に対して伝熱管10を移動可能に支持してなる(図1、図2)。 【0014】フレーム20は、両側の側板21、21と、側板21、21の上部に連結する燃焼室の壁板22、22と、側板21、21、壁板22、22に対応する図示しない側板、壁板により、断面箱形に形成されている。なお、フレーム20の上部には、図示しないバーナが下向きに収納されている。また、フレーム20の下部には、側板21、21を貫通して複数の伝熱管10、10…が配設されており、伝熱管10、10…には、多数の共通のフィン13、13…が付設されている。 【0015】各伝熱管10は、上下に配置する一対の水管10a、10aからなる。水管10a、10aは、ろう材を介して長手方向に一体に連結されており、瞬間湯沸器における1缶2回路型の伝熱管10を形成している。 【0016】各フィン13は、伝熱管10、10…に適合する挿通孔13a、13a…を上下交互に配列して形成する変形の板材である。・・・各挿通孔13aには、伝熱管10を挿通することができ、・・・」 ・特開平9-14759号公報 「【0008】図1において、熱交換缶体10内の上部にフィン板20が多数枚整列配置され、この整列したフィン板20を貫通して給湯回路の熱交換用パイプ31と風呂追い焚き回路の熱交換用パイプ32とが設けられている。図1においてもフィン板20は紙面に垂直方向に多数枚が整列しており、その1枚が図示されている。」 ・特開平9-203559号公報 「【0008】図1において、缶体10内の上部空間にフィン板20が多数枚整列配置され、」 「【0011】・・・バーナの燃焼により発生した燃焼排ガスが下方から多数のフィン板20間を通過する間に、前記燃焼排ガスの熱が熱交換用パイプ31、32に直接或いはフィン板20を介して吸熱される。一般に必要熱量が多い給湯回路の熱交換用パイプ31を最下段に並べることで、必要とされる瞬間給湯の温度を得ることができる。」 ・特開平9-145162号公報 「【0010】・・・この給湯装置は、1缶2水式の熱交換器1とこの熱交換器1を加熱するバーナ2とを備え、これら熱交換器1とバーナ2とは、熱交換器1を上方にバーナ2を下方に位置させて燃焼室3内に配設され、・・・第一伝熱管としての給湯用伝熱管5と第二伝熱管としての風呂用伝熱管6との2種類の伝熱管を備えている。・・・風呂用伝熱管6は、浴槽10内の湯水を追焚きするためのもので、風呂用給湯管としての追焚き管11に接続され、かつ、これら給湯用伝熱管5と風呂用伝熱管6とが、共通する複数枚の伝熱板12に挿通固着されている。 【0011】前記給水管7は、入水管13に接続され、この入水管13が、図2に示すように、燃焼室3の外周面に沿って螺旋状に配設されて、その他端が給湯用伝熱管5に接続され、この給湯用伝熱管5の他端が出湯管14を介して一般給湯用給湯管9に接続されている。」 「【0012】・・・戻り管11aに・・・追焚き用の循環ポンプ30などが・・・設けられ、・・・ 【0013】・・・この給湯用伝熱管5と風呂用伝熱管6のうち、上方に位置する風呂用伝熱管6が、図3に示すように、下方の給湯用伝熱管5の外面に沿うように湾曲変形され、この湾曲変形によって、給湯用伝熱管5と風呂用伝熱管6とが互いに面接触するように構成されて、各伝熱板12に対してロウ付けにより固着されている。」 「【0020】・・・また、第一伝熱管5の一例として給湯用伝熱管を示し、第二伝熱管6の一例として風呂用伝熱管を示したが、これら第一と第二の伝熱管5,6としては、その他に種々の伝熱管にも応用でき、例えば、第一伝熱管5を給湯用伝熱管にし、第二伝熱管6を暖房用伝熱管にすることもでき、さらには、給湯装置以外の熱交換器としても使用可能である。また、第一伝熱管5と第二伝熱管6との2種類の伝熱管を備えた1缶2水式の熱交換器を例にして説明したが、3種類以上の伝熱管を備えた熱交換器にも応用できることは言うまでもない。」 ・特開平2-154942号公報 「以下図面についてこの発明の実施例を説明すると、・・・一方は水道水を水源とした給湯パイプ11と他方は浴槽又は暖房等の循環水を循環させる循環パイプ12とを接合した接合パイプ部13とを具備し、且つ接合パイプ部13に於いて多数板の第1板状フィン5,5・・・の第1小径部3,3・・・に循環パイプ12を挿入固着すると共に第1大径部2に給湯パイプ11を第1間隙14を設けて挿入し、・・・」(第2頁右上欄20行?左下欄13行) 等を参照。) したがって、この周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Aにおける本願発明5の構成に到達することは当業者であれば容易である。 《相違点Bについての検討》 2つの異なる通水回路の熱交換パイプを接触させて上下一対のパイプ対とし、かつ、バーナの火炎に近い方に必要熱量の大きい給湯用の熱交換パイプを配置し、火炎から遠い方に必要熱量の小さい暖房用または風呂追い炊き用の熱交換パイプを配置したパイプ対において、これらのパイプ対を千鳥状に上下2段とし、且つ千鳥状を、バーナの火炎に近い段のパイプ対の数の方が遠い段のものの数より多くなるように千鳥状とすることは、周知の技術にすぎない。(もし、周知文献が必要であれば、 ・特開平9-14759号公報 「【0002】【従来の技術】1缶2回路式熱交換器は、1つの缶体内に、例えば給湯回路の熱交換用パイプと、風呂追い焚き回路の熱交換用パイプとを配設し、1つのバーナで前記給湯回路の熱交換加熱と風呂追い焚き回路の熱交換加熱とを兼用して行う装置である。かかる装置は、給湯回路と温水暖房回路との組み合わせにおいても用いることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の1缶2回路式熱交換器においては、主たる通水回路、即ち必要熱量の大きい方の通水回路の単独使用時には、使用していない従たる通水回路、即ち必要熱量の小さい方の通水回路の熱交換用パイプが高温となり、突沸の問題が生じていた。 【0004】そこで本発明は、上記従来技術の問題を解消し、主たる通水回路の単独使用時にも、従たる通水回路に突沸等の生じない1缶2回路式熱交換器の提供を目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の1缶2回路式熱交換器は、2つの異なる通水回路の熱交換用パイプを上下一対のパイプ対にすると共に該パイプ対を、缶体内の上部に多数枚整列配置されたフィン板に対して、複数段で千鳥状に貫通させてなる1缶2回路式熱交換器であって、前記パイプ対は、必要熱量の大きい方の通水回路の熱交換用パイプを火炎に近い下パイプとすると共に必要熱量の小さい方の通水回路の熱交換用パイプを火炎から遠い上パイプとし、且つ全ての下パイプには、乱流コイルや切り起こし板等の水の急激な移動を阻止する部材を挿着し、上パイプについては最下段にあるパイプ対の上パイプについてのみ前記水の急激な移動を阻止する部材を装着したことを特徴としている。 【0006】 【作用】上記本発明の特徴によれば、必要熱量の大きい方の通水回路(主たる通水回路)の単独使用時には、使用されていない必要熱量の小さい方の通水回路(従たる通水回路)側の熱交換用パイプ(上パイプ)が高温となる。この場合、千鳥状に複数段に配したパイプ対の内、最も火炎に近い最下段にあるパイプ対における不使用状態の上パイプが最も加熱される。」 「【0008】図1において、熱交換缶体10内の上部にフィン板20が多数枚整列配置され、この整列したフィン板20を貫通して給湯回路の熱交換用パイプ31と風呂追い焚き回路の熱交換用パイプ32とが設けられている。図1においてもフィン板20は紙面に垂直方向に多数枚が整列しており、その1枚が図示されている。そして必要熱量の大きい通水回路(主たる通水回路)である給湯回路の熱交換用パイプを火炎に近い下パイプ31とすると共に必要熱量の小さい通水回路(従たる通水回路)である風呂追い焚き回路の熱交換用パイプを上パイプ32として、上下一対のパイプ対30としている。・・・下方のバーナからの火炎による熱量供給のアンバランスを減じるようにしている。勿論、この場合でも最下段のパイプ対30への熱量供給が大きい。」 「【0009】・・・下パイプ31は下方からの火炎によって加熱されやすい位置にあるため、前記水の急激な移動を阻止する部材が挿着される。・・・しかしながら、最下段のパイプ対30に関しては、下方の火炎に近いため、下パイプ31のみならず上パイプ32も加熱されやすい状況にある。」 ・特開平2-154942号公報 「この発明は、風呂、暖房用等の循環する温水の加熱と水道水を加熱して給湯蛇口等の給湯口やシャワーヘッドより温水を流出させることができる給湯装置に関するものである。」(第1頁右下欄5?8行) 「以下図面についてこの発明の実施例を説明すると、・・・給湯パイプ11と他方は浴槽又は暖房等の循環水を循環させる循環パイプ12とを接合した接合パイプ部13とを具備し、・・・」(第2頁右上欄20行?左下欄9行) 「・・・装着位置は第4図、第5図に示めしたように用途に伴う給湯能力に応じ例えば給湯30,000Kcal/h、風呂10,0OOKcal/hとなるように取付けるものである。」(第2頁右下欄16?19行) 「・・・更に接合パイプ部13と第1板状フィン5と第2板状フィン10との取付時には・・・棒状ロー(図示せず)を挿入し、この状態で電気炉又はガス炉に入れ加熱し棒状ローを溶融し、第2図、第3図に図示したようにロー付け固着部45,45を形成したものである。 よって接合パイプ部13に於ける給湯パイプ11と循環パイプ12との接合を強固にし、・・・」(第3頁左上欄13行?右上3行) 「・・・燃焼バーナー22が作動し熱交換部16を加熱すると共に給湯パイプ11内を温水が流動するものであり、又浴槽39に流入されている浴槽水は・・・循環ポンプ40並びに燃焼バーナー22の作動で浴槽水を循環パイプ12を介して循環して浴槽水の昇温を行うことができるものである。」(第3頁右下欄1?7行) 「・・・一方は水道水を水源とした給湯パイプ11と他方は浴槽又は暖房等の循環水を循環させる循環パイプ12とを接合した接合パイプ部13とを具備したことにより・・・給湯パイプ11と循環パイプ12とは互いに接合した状態で保持されて・・・互いに熱が直接伝導して両パイプとの間に極端な温度差が生ぜずに温度差に伴う熱膨張の差によって・・・両パイプと第1板状フィン5・・・、第2板状フィン10・・・との接合が外れて熱交換が十分に行なわれず、・・・となるようなことがない。」(第4頁左上欄2?18行) 等を参照。) そうすると、刊行物1に記載された発明における「給湯用熱交換器(5)の第1熱交換器(7)上方に風呂用熱交換器(1)を配置」した組、及び「給湯用熱交換器(5)の第2熱交換器(9)上方に暖房用熱交換器(4)を配置」した組をそれぞれ、上記周知技術にそって、互いに接触した、給湯用と風呂追い炊き用の熱交換パイプの対、及び給湯用と暖房用の熱交換パイプの対とすると共に、これら2種類のパイプ対を上下2段に配置することは、当業者であれば容易である。 また、相違点Bにおける本願発明5の構成では、「少なくとも下段における複数の直管部が熱交換部のほぼ全領域にわたって配置され、」とされているが、上記の周知技術では、バーナの火炎に近い段のパイプ対の方が、数が多くなるように上下2段の千鳥状としているのであるから、この周知技術にそって上記のように2種類のパイプ対を上下2段に配置するにあたって、バーナに近い下段のパイプ対の数を多くし、必然的に下段のほうが、より一層、熱交換部のほぼ全領域にわたって配置されるようにすることに格別の困難性は認められない。 さらに、相違点Bにおける本願発明5の構成では、「上記暖房循環回路の受熱管の直管部が上下いずれか一方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重な・・・り、上記風呂追焚循環回路の受熱管の直管部が、他方の段における給湯回路の受熱管の直管部の上に重なる・・・」とされている。しかし、上記の周知技術において、火炎に近い段でより多くの熱量が供給されるのは当然であるから、この周知技術にそって上記のように2種類のパイプ対を上下2段に配置するにあたって、これらのパイプ対で上パイプとなる暖房用熱交換パイプまたは風呂追い炊き用熱交換パイプとをその必要熱量の大小により、適宜上段あるいは下段に配置することに格別の困難性は認められない。(なお、受熱管の直管部については《相違点Aについての検討》で検討した。) したがって、上記の周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点Bにおける本願発明5の構成に到達することは当業者であれば容易である。 《発明の効果についての検討》 本願発明5の効果は、刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者により容易に推測されたものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明5は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願の請求項1ないし4に係る発明については検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-21 |
結審通知日 | 2007-02-27 |
審決日 | 2007-03-14 |
出願番号 | 特願平9-224290 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(F24H)
P 1 8・ 121- Z (F24H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長清 吉範 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 会田 博行 |
発明の名称 | 燃焼装置 |
代理人 | 渡辺 昇 |
代理人 | 原田 三十義 |