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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1156471
審判番号 不服2006-1956  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2007-04-27 
事件の表示 平成 9年特許願第215499号「易開封性包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月23日出願公開、特開平11- 49185〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件出願
本件出願は、平成9年7月28日に特願平9-215499号として特許出願され、平成17年12月26日付けで拒絶査定されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年2月24日付け手続補正書により補正された下記のものと認める。

「【請求項1】2軸延伸ポリエステルフィルムにアルミニウムを蒸着した蒸着フィルムとポリプロピレンの横一軸延伸フィルムと直鎖状低密度ポリエチレンの押出コ-ト層とを積層する積層フィルムを筒状に形成し、前記の積層フィルムの両端部の内面同士を合わせて合掌シールされた合掌部を有する包装袋であって、かつ、合掌部端辺に間隔を有しつつ、前記の端辺と直角方向へ容易に引裂ける易引裂処理部を2箇所設け、かつ、前記の合掌部のシール部の前記の易引裂処理部から前記の合掌部端辺と直角方向で帯状に引裂かれた時の延長部にある前記の合掌部端辺とシール部を挟んで反対側端部に近い非シール部に易切断処理部を設け、かつ、前記の易切断処理部が、前記の2軸延伸ポリエステルフィルムにアルミニウムを蒸着した蒸着フィルムを構成する2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さの中間までの深さからなる傷痕とその2軸延伸ポリエステルフィルムを貫通する傷痕とからなる微細な傷痕を形成してなり、かつ、前記の易切断処理部の面積が、前記の易引裂処理部2箇所の巾の延長巾よりもやや巾広であることを特徴とする易開封性包装袋。」

2.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定時に示した本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-104449号公報(公開日:平成9年4月22日)(以下「引用文献1」という)には、下記の事項が記載されている。

ア.「【作用】本発明の包装容器は、少なくとも基材フィルムと熱接着性樹脂フィルムとを積層してなる積層フィルムからなるシートの両側縁部を前記熱接着性フィルムを内側にして合掌状に貼り合わせて筒状の胴部を形成し、その両開口端を封止してなる包装容器において、前記の合掌状の貼り合わせ部の端縁に2つの切り込みを設けるとともに、該2つの切り込みによってできた摘み部の延長上であって前記胴部へ移行する貼り合わせ部の基端部或いはその近傍に前記切り込みと交差する方向の破断線を設けたことにより、上記摘み部を手で摘んで引き裂くと、その基端の箇所が上記破断線によって胴部から切り取られ、そのまま引き裂いていくと、胴部の周囲に沿って帯状に切れる。したがって、手でもって容易に開封できる。」(【0013】)

イ.「すなわち、上記背シール部3には引き裂き開始を容易にする摘み部6と破断線7が設けられているので、包装容器1を上記摘み部6を手で摘んで引き裂くと、その基端の箇所が上記破断線7によって胴部2から切り取られ、背シール部3においても何等不都合なく容易に引き裂くことが可能である。そして、摘み部6をそのまま引き裂いていくと、胴部2の周囲に沿って帯状に切れて、開封される。」(【0019】)

ウ.「例えば上記図4に示したような積層シート20の両側縁部を熱接着性樹脂フィルムを内側にしてヒートシールにより合掌状に貼り合わせて筒状の胴部2を形成する(図5参照)。なお、このように胴部2を形成したときに上記破断線7が背シール部3の基端部或いはその近傍に来るように位置決めされている。次いで、上記背シール部3の端縁に、上記破断線7との位置決めを行って、適当な深さの2つの切り込み5、5を設ける。」 (【0025】)

してみると、引用文献1には、下記の発明が記載されていると認められる。

「熱接着性樹脂と基材フィルムを積層した積層シートを筒状に形成し、前記の積層シートの両端部の内面同士を合わせて合掌状に貼り合わせた背シール部を有する包装容器であって、かつ、合掌状の貼り合せ部の端縁に適当な深さの2つの切り込みを設け、かつ、前記の合掌状に貼り合せた背シールの前記の切り込みから前記の合掌状の背シール部と直角方向で帯状に引裂かれた時の延長部に背シールの基端部近傍に破断線を設けたことを特徴とする容易に開封することができる包装容器。」

3.対比・判断
引用文献1に記載された発明の「積層シート」,「背シール部」,「切り込み」,「破断線」,「容易に開封することができる包装容器」が、本件請求項1に係る発明の「積層フィルム」,「合掌シールされた合掌部」の「シール部」,「易引裂処理部」,「易切断処理部」,「易開封製包装袋」にそれぞれ相当することから、両者の一致点は下記のものと認められる。

「積層フィルムを筒状に形成し、前記の積層フィルムの両端部の内面同士を合わせて合掌シールされた合掌部を有する包装袋であって、かつ、合掌部端辺に間隔を有しつつ、前記の端辺と直角方向へ容易に引裂ける易引裂処理部を2箇所設け、かつ、前記の合掌部のシール部の前記の易引裂処理部から前記の合掌部端辺と直角方向で帯状に引裂かれた時の延長部にある前記の合掌部端辺とシール部を挟んで反対側端部に近い非シール部に易切断処理部を設けたことを特徴とする易開封性包装袋。」

一方、両者の相違点は、下記のものと認められる。

(a)引用文献1に記載されたものが、「2軸延伸ポリエステルフィルムにアルミニウムを蒸着した蒸着フィルムとポリプロピレンの横一軸延伸フィルムと直鎖状低密度ポリエチレンの押出コ-ト層とを積層する積層フィルム」を用いてないのに対して、本件請求項1に係る発明が上記の構成の積層フィルムを用いている点。

(b)引用文献1に記載された発明が、「易切断処理部」として積層シートに設けた「破断線」を用いているのに対して、本件請求項1に係る発明が「2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さの中間までの深さからなる傷痕とその2軸延伸ポリエステルフィルムを貫通する傷痕とからなる微細な傷痕を形成して」易切断処理部を構成した点。

(c)引用文献1に記載された発明が、「破断線」について、易引裂処理部2箇所の巾に関連づけてその形状を規定していないのに対して、本件請求項1に係る発明は「易切断処理部」について、「易切断処理部の面積が、前記の易引裂処理部2箇所の巾の延長巾よりもやや巾広であること」と規定している点。

上記相違点について検討する。
A.相違点(a)について
原査定時において指摘したように、上記相違点(a)であげた本件請求項1に係る発明に類する袋の素材は、本願出願前に周知の事項と認められる(例えば、本願出願前にすでによく知られていた技術文献である特開平9-156050号公報(公開日:平成9年6月17日)には、「また、アルミニュウム等の金属の蒸着膜を有する樹脂のフィルムにおいては、その蒸着膜の厚さとしては、300ないし1000Å位であり、また、樹脂のフィルムとしては、例えば、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム等を使用することができる。」(【0009】),「バリア-層、基材フィルム層を構成する素材に、更にその他の素材を任意に選択して使用することもできるものである。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、」,「上記のような樹脂のフィルムないしシ-トは、未延伸のもの、あるいは一軸方向ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでもよく」,「樹脂のフィルムないしシ-トとしては、例えば、押し出し成膜、コ-ティング成膜、インフレ-ション成膜等のいずれの性状の膜でもよい。」(【0011】),「ヒ-トシ-ル性を有する樹脂のフィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン」(【0014】)」と記載されている)。
してみると、引用文献1に記載された発明において、その素材を上記相違点(a)であげた本件請求項1に係る発明のように構成することは、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。

B.相違点(b)について
一般に、袋において易切断処理部として、「フィルムを貫通しない傷痕」を用いることも「貫通孔を有する易カット製部分」を用いることも共に、本件明細書中にて言及されている特開平5-16946号公報にも記載されているように、周知の事項と認められる(例えば特開平5-16946号公報「以上のように、本発明の易カット性包材は、その包材で包装袋を作る時に表面側となるプラスチックフィルムに、該フィルムを貫通しない傷痕のみ、若しくはその傷痕と貫通孔とを有する易カット性部分を設けているので、その包材で作った包装袋を易カット性部分から容易に引き裂いて開封することができ」(【0015】)参照、他にも特開平8-337251号公報「傷加工は外層14に設けるが、引き裂き性が向上するのであれば、外層14を貫通している必要はない。もちろん、外層14を貫通してさらにその下の層;例えば引き裂き性シート13に達するようにしてもよい。」(【0018】参照)と記載されている)。してみると、貫通する傷痕と貫通孔を組み合わせて易切断処理部を構成することは単なる周知技術の寄せ集めと認められる。
してみると、引用文献1に記載された発明において、易切断処理部として破断線に代えて、上記周知技術を適用して本件請求項1に係る発明のように構成することは、単なる周知技術の置換に過ぎず、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。

C.相違点(c)について
引用文献1には、「破断線」の形態について特に言及はないが、引用文献1に記載された発明において、引裂が「易引裂処理部」の延長に沿って進行することが予測される以上、「易切断処理部」について、その形状を上記相違点(c)であげた本件請求項1に係る発明のようにすることは、当業者が当然になし得たことと認められる。

4.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-28 
結審通知日 2007-03-01 
審決日 2007-03-14 
出願番号 特願平9-215499
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 関 信之
石田 宏之
発明の名称 易開封性包装袋  
代理人 金山 聡  

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