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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1156646
審判番号 不服2003-25350  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-26 
確定日 2007-05-01 
事件の表示 特願2000-102823「電子積み木」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 7日出願公開、特開2001-242783〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成12年2月28日の出願であって、平成15年12月17日付けで拒絶の査定がされた(送達は同月24日)ため、これを不服として平成16年1月5日に本件審判請求がされた(ただし、審判請求書上では、提出日が平成15年12月26日と記載されている。)ものである。

第2 当審の判断
1.拒絶査定の理由
原審では、本願明細書の記載が特許法(平成14年改正前特許法の趣旨と認める。)36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていないことを、拒絶の理由の1つとして通知し拒絶の査定をした。原審では、請求項1,2に係る発明の進歩性欠如を拒絶の理由に含めているが、以下に述べるとおり、請求項1,2の記載は著しく不明確であり、これら請求項に係る発明の要旨認定すら困難であるから、進歩性の判断は行わない。ここでは、特許請求の範囲の記載が明確になったとしたも、新規性又は進歩性欠如の蓋然性が極めて濃厚であることを指摘し、以下のとおり、頒布刊行物についての請求人の誤解を指摘するにとどめることにする。
まず請求人は、「海賊的闇文献を特許庁が認めるならば、正当な特許制度を阻害するものであり、特許庁の存在そのものを否定する事でもあます。」(平成15年3月17日提出の意見書(意見書上の提出日記載は同月15日)1頁25?26行)と主張するが、仮に海賊的闇文献であってもそれが現実に頒布されておれば、同文献記載の技術が公開されたといえるのであり、引用文献として扱うことが妥当である。ましてや、原審で引用された刊行物は「海賊的闇文献」と認められるものではない。
請求人は、「(3)に関しては私の出願が先ですので」(同書1頁28?29行)と主張するが、「(3)」とは特開平3-260688号公報であるから、明らかに本件出願前に頒布されている。
請求人は、「(4)に関しては、先願が今現在登録されているかどうかの問題です。登録されていれば、当然先願者に権利はあります。」(同書2頁1?3行)と主張するが、「(4)」とは実願昭56-17362号(実開昭57-130862号)のマイクロフィルムであり、これが登録されているか否かは、引用文献たり得るか否かとは無関係であり、登録されていなくとも引用文献となりうるのである。
最後に、請求人は「特許庁の暇な人たちが特許出願を無き物にしようと、調べた文献があるのであれば、そのコピーを送付ねがいます。」(審判請求書1頁18?20行)と主張するが、拒絶理由を発見(先行技術の調査を含む。)することは特許庁審査官本来の業務であるも、引用文献にアクセスする責任は請求人にあり、現状において特許庁はコピー送付サービスを行っていない(質問がある場合に、アクセス方法等を知らせることは行っている。)。

2.本願明細書の記載
本願においては、出願当初から明細書又は図面の補正がされておらず、特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
【請求項1】電子管時代から知られていた、画期的アイデア等を組み合わせ、ブロック化する事により、教材、研究、実験向けに製造販売する。
【請求項2】当分の間は、発明の実施形態の項で示す7ブロックのみとします。

また、発明の名称は「電子積み木」であり、発明の詳細な説明には次のような記載がある。
ア.「【発明の属する技術分野】 玩具」(段落【0001】)
イ.「【発明が解決しようとする課題】
一流会社を女で失敗土方に転落市の水洗化要員になった。
水洗化要員只の土方だと思ったら大間違い・年がら年中糞まみれ。そして、25年が過ぎた。それはそれで生活出来ていたから良いとして、その水洗化工事も残り少なくなって来た。水洗化後の生活を、どう確保すべきか・」(段落【0002】)
ウ.「【実施例】(図8、図9参照)
図8は、私が考案した、ペット用自動ドアーに応用したものです。
又、図9の様な応用も考えられます。」(段落【0013】)

3.特許法等の規定
平成14年改正前特許法36条は次のように規定している。
「(1項?3項省略)
4 前項第三号の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。
(5項省略)
6 第三項第四号の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。」
なお、上記特許法36条4項にいう「経済産業省令で定めるところ」とは、「特許法第三十6条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則24条の2)のことである。

4.請求項1に関する記載不備
まずもって、請求項1の末尾が「教材、研究、実験向けに製造販売する。」となっていることもあり、請求項1に係る発明が「物の発明」であるのか「方法の発明」であるのかが不明確である。発明の名称が「電子積み木」であること、及び発明の属する技術分野が「玩具」とされていることを考慮すると、「物の発明」と解されるものの、「ブロック」が発明であるのか、それとも「ブロック」を組み合わせた何らかの装置等が発明であるのか不明確である。「発明の実施の形態」として7つのブロックが記載され、記載ウのとおり「ペット用自動ドアーに応用したもの」が「実施例」とされていることを考慮すると、どちらなのか認定することが困難である。
「ブロック」そのものであるとすると、どのようなブロックであるのかを特許請求の範囲に記載する必要があるが、「電子管時代から知られていた、画期的アイデア等」が何であるのか不明であるから、請求項1の記載は著しく不明確というべきである。
「ブロック」を組み合わせた何らかの装置等を意味するとすると、どのようなブロックをどのように組み合わせるのか記載しなければ発明を特定することができないが、これらに関する記載は皆無であるから、この場合も請求項1の記載は著しく不明確というべきである。
加えて、後者であれば、「ブロック」を組み合わせた何らかの装置等を当業者が実施できる程度に、発明の詳細な説明に記載しなければならないが、記載ウ並びに【図8】及び【図9】のみでは、十分な記載とはいえない(これら図自体も明確ではなく、特に【図9】には何の説明も付されていない。)。
以上のとおりであるから、請求項1に関しては、平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない。

5.請求項2に関する記載不備
請求項2に係る発明が「物の発明」であるのか「方法の発明」であるのかが不明確であることは、前項で述べたと同様である。
請求項2に「当分の間は、」とあるが、特許請求の範囲は、特許発明の技術的範囲を確定する機能を担っているから、技術的範囲を「当分の間は、」のように、時期的な限定を付したものとすることはできない。さらに「当分の間」がどの程度の期間なのかも不明である。
次に、「発明の実施形態の項で示す7ブロックのみとします。」とある(7つのブロックそのものなのか、これらを組み合わせた装置等なのか不明であることは、請求項1と同様。)けれども、特許請求の範囲の記載は、それ自体で発明を特定できるものでなければならず、「7ブロック」を請求するのであれば、個々のブロックの技術内容を特許請求の範囲に記載しなければならないところ、請求項2のみからはどのようなブロックなのか皆目検討がつかない。しかも、請求項2は独立形式(他の請求項の記載を援用しない形式)で記載された請求項であって、請求項1を引用するものではないから、「電子管時代から知られていた、画期的アイデア等を組み合わせ、ブロック化する事により、教材、研究、実験向けに製造販売する」ことが、請求項2を限定すると解することはできない。
以上のとおりであるから、請求項2に関しては、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

6.その他の記載不備
特許法施行規則24条の2にいう「発明が解決しようとする課題」とは、発明時点における従来技術が抱える技術的問題点のことであり、その問題点をなくしたり減少したりすることにより発明がなされる。ところが、上記記載イは、請求人(発明者)の経歴及び経済的状況を記載したにすぎず、これは「発明が解決しようとする課題」には当たらない。本願明細書(含図面)全体を精査しても、「発明が解決しようとする課題」が何であるか把握することができず、発明したとする物又は方法が従来技術に比してどのように優れているのかを理解することもできない。
したがって、発明の詳細な説明は、平成14年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。

7.記載不備の判断のまとめ
以上によれば、本願については、明細書の記載が平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は「現在までの私の手続きに誤りは無い筈。」(審判請求書2頁4行)と主張するが、手続に誤りがある場合は、補正により瑕疵が治癒しない限り不受理又は却下となり審理できないものとなるのであって、拒絶されることと手続の誤りは別問題である。むしろ、手続に誤りのない多くの出願が拒絶されていることに留意されたい。

第3 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由にあげられている記載不備の理由により拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-19 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願2000-102823(P2000-102823)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G09B)
P 1 8・ 537- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
酒井 進
発明の名称 電子積み木  

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