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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1156649
審判番号 不服2004-16978  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-13 
確定日 2007-05-01 
事件の表示 特願2001-233014「尿取り介護用品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年2月12日出願公開、特開2003-38540号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月1日の出願であって、平成16年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(出願当初の特許請求の範囲)の記載、
「【請求項1】 吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形し、吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き、縫合されていない前記ダム7の内側縁7aと一体に縫合し、外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る尿取り介護用品。
【請求項2】 吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形し、吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き縫合し、外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る尿取り介護用品。
【請求項3】 綿製吸水布10と水溶性又は生分解性を有する高分子ポリマーシート11を併用しポケット8に挿入して成る請求項1又は請求項2記載の尿取り介護用品。」を、
「【請求項1】 吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形し、吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き、縫合されていない前記ダム7の内側縁7aと一体に縫合し、外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10、又は高分子ポリマーシート11を併用した綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る尿取り介護用品。
【請求項2】 吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形し、吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き縫合し、外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10、又は高分子ポリマーシート11を併用した綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る尿取り介護用品。」
(下線は補正箇所を示す。)と補正するものである。

(2)補正の目的の適否について
上記補正は、(A)補正前の請求項1及び2に記載されていた「綿製吸水布10」を「綿製吸水布10、又は高分子ポリマーシート11を併用した綿製吸水布10」とするとともに、補正前の請求項3を削除したものであると解することができる。また、上記補正は、(B)補正前の請求項1及び2を削除し、補正前の請求項3に限定したものであると解することもできる。
しかしながら、前記(A)のように解した場合、上記補正は、「又は高分子ポリマーシート11を併用した綿製吸水布10」を付加したもの、即ち、択一的記載の要素を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。また、前記(B)のように解した場合、上記補正は、補正前の請求項3に記載されていた「水溶性又は生分解性を有する」点を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえないことは明らかである。
また、上記補正は、前記(A)及び(B)のいずれの場合においても、複数の請求項のうちの一部の請求項を削除することのみを目的とした補正ではないから、請求項の削除を目的とするものにも該当しない。さらに、上記補正は、誤記の訂正、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形し、吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き縫合し、外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る尿取り介護用品。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-172322号(実開昭57-96906号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「ベビーパンツ用おしめ支持体」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「本案はベビーパンツに着脱自在に装着しておしめカバーとして使用できるように考案したおしめ支持体に係るものである。」(明細書2ページ1?3行)
(b)「吸水性生地の裏面に発泡合成樹脂薄板のような防水性生地を一体重合した素材で分銅形に形成した主持主体1の両端部に、該支持主体1と同素材にて形成した三ヶ月形の挟持片2・3を対向的に開口部4・5を形成させるように、その周縁部を縫着したものである。」(明細書2ページ16行?3ページ1行)
(c)「使用に際しては、支持主体1の上、下縁部をベビーパンツ6の内面前後に仮縫着して支持主体1と挟持片2・3間の開口部におしめ布7を介装させて用れば、便によっておしめ布7が濡れたときでも、本案の挟持片2・3の防止性生地によって他への滲透を防ぐから従来のように衣服を濡らしたりすることなく快適に使用できるものである。」(明細書3ページ2?9行)
(d)「また支持主体1の中央部に吸水性(または非吸水性)の網状生地8の両端のみを縫着すれば、おしめ布7を、該網状生地8の下を挿通させてからその両端を挟持片2・3にて挟持させれば、着用時幼児が激しく運動したときでも、おしめ布がズレるのを防止すると共に、股部をおしめ布7で密着させず、ムレたり、カブレたりするのを防止することができる利点が得られるものである。」(明細書3ページ10?17行)
(e)第1図には、両端部に挟持片2・3が配置され、中央部に網状生地8が配置された支持主体1が図示されており、挟持片2の両端、網状生地8の両端を含めて支持主体1の周縁部全周に点線が描かれている。
(f)第2図には、支持主体1と網状生地8との間におしめ布7を挿通している態様が図示されている。

これらの記載事項を総合すると、引用例には、
「吸水性生地の裏面に防水性生地を一体重合した素材で支持主体1を形成し、吸水性を有する網状生地8の両端のみを支持主体1の中央部に縫着し、支持主体1と網状生地8の間におしめ布7を挿通可能としたベビーパンツ用おしめ支持体。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「吸水性生地」は、その機能又は構造からみて、前者における「吸水性を有する内生地3」に相当し、以下同様に、「防水性生地」が「防水性を有する外生地2」に、「支持主体1」が「外側布1」に、「縫着」が「縫合」に、それぞれ相当する。
後者における「おしめ布7」と前者における「綿製吸水布10」とは、どちらも「吸水布」である点で共通し、以下同様に、「吸水性を有する網状生地8」と「メッシュ状の高吸水性を有する外生地5」とは、どちらも「メッシュ状の高吸水性を有する生地」である点で共通し、「ベビーパンツ用おしめ支持体」と「尿取り介護用品」とは、どちらも「尿取り用品」である点で共通する。
後者における「吸水性生地の裏面に防水性生地を一体重合した素材で支持主体1を形成」する点と、前者における「吸水性を有する内生地3の側縁を防水性を有する外生地2の側縁に、外生地2で形成するダム7を除いて縫合することにより外側布1を成形」する点とは、どちらも「吸水性を有する内生地を防水性を有する外生地に一体化することにより外側布を成形」する点で共通する。
また、後者における「吸水性を有する網状生地8の両端のみを支持主体1の中央部に縫着」する点と、前者における「吸水性を有する内生地6とメッシュ状の高吸水性を有する外生地5とから成形される内側布4の側縁を、外側布1の一方の端縁又は双方の端縁を除き縫合」する点とは、どちらも「メッシュ状の高吸水性を有する生地」「から成形される内側布の側縁を、外側布の双方の端縁を除き縫合」する点で共通する。
さらに、後者における「支持主体1と網状生地8の間におしめ布7を挿通可能とした」点と、前者における「外側布1と内側布4が縫合されていない開口部を綿製吸水布10を挿入するポケット8に形成して成る」点とは、「外側布と内側布が縫合されていない開口部を吸水布を挿入するポケットに形成して成る」点で共通する。

してみると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致し、
<一致点>
「吸水性を有する内生地を防水性を有する外生地に一体化することにより外側布を成形し、メッシュ状の高吸水性を有する生地から成形される内側布の側縁を、外側布の双方の端縁を除き縫合し、外側布と内側布が縫合されていない開口部を吸水布を挿入するポケットに形成して成る尿取り用品。」
以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明の外側布は、内生地の側縁を外生地の側縁に、外生地で形成するダムを除いて縫合することにより成形されるのに対して、引用発明の外側布(支持主体1)は、内生地(吸水性生地)を外生地(防水性生地)に一体重合することにより成形され、外生地がダムを形成していない点。
<相違点2>
本願発明の内側布は、吸水性を有する内生地とメッシュ状の高吸水性を有する外生地とから成形されるのに対して、引用発明の内側布は、メッシュ状の高吸水性を有する生地(網状生地8)から成形されており、吸水性を有する内生地を備えていない点。
<相違点3>
本願発明の吸水布は、綿製吸水布であるのに対して、引用発明の吸水布は、おしめ布7である点。
<相違点4>
本願発明は、尿取り介護用品であるのに対して、引用発明は、ベビーパンツ用おしめ支持体である点。

6.判断
次に、各相違点について検討する。
(a)相違点1について
引用発明においては、支持主体1は「生地」同士を一体重合して成形したものであること、支持主体1に挟持片2・3及び網状生地8が「縫着」されていること(前記4.(b)(d)参照)、引用例の第1図において支持主体1の周縁部全周に点線が描かれ、挟持片2・3及び網状生地8の支持主体1への「縫着」と同様の描き方がなされていること(前記4.(e)参照)などからみて、支持主体1は「吸水性生地の周縁を防水性生地の周縁に縫着して成形したもの」と解するのが自然である。仮にそうでないとしても、生地同士を一体重合するために「縫着」を用いること、即ち「縫合」を用いることは、当業者であれば普通に採用し得ることであるから、引用発明において、内生地の側縁を外生地の側縁に縫合することにより外側布を成形することは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
一方、尿取り介護用品において、尿が外部へ漏れるのを防止するために、防水性を有する外生地でダムを形成することは、従来周知の技術である(例えば登録実用新案第3034065号公報、特開2001-137283号公報参照)から、引用発明において、尿が外部へ漏れるのをより確実に防止するために、防水性を有する外生地でダムを形成することは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。そして、引用発明において、防水性を有する外生地でダムを形成した場合、吸水性を有する内生地の側縁を防水性を有する外生地の側縁に縫合する際に、外生地で形成するダムを除いて縫合することは、ダムの尿漏れ防止機能を損なわないために、当業者であれば当然に採用することであり、設計的事項にすぎないというべきである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであるということができる。
(b)相違点2について
尿取り用品において、吸水性を有する内生地とメッシュ状の高吸水性を有する外生地とから内側布を成形することは、例えば登録実用新案第3034065号公報、特開2000-5208号公報、実願平5-73635号(実開平7-40707号)のCD-ROM、登録実用新案第3010563号公報、特開平10-113358号公報などに見られるように従来周知である。
そうすると、引用発明において、吸水性をより向上させるために、「メッシュ状の高吸水性を有する生地」(網状生地8)の内側に、さらに「吸水性を有する内生地」を設け、相違点2に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
(c)相違点3について
おしめ布としては古くから一般に綿製のものが使用されてきたことからみて、引用発明における吸水布(おしめ布7)も綿製であると解するのが自然である。仮にそうでないとしても、引用発明における吸水布(おしめ布7)を綿製とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(d)相違点4について
引用発明のベビーパンツ用おしめ支持体は、ベビーの「尿取り用品」であり、このベビー用の尿取り用品に関する技術を介護用の尿取り用品に転用又は適用することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-08 
結審通知日 2007-03-09 
審決日 2007-03-20 
出願番号 特願2001-233014(P2001-233014)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 572- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 川本 真裕
稲村 正義
発明の名称 尿取り介護用品  
代理人 築山 正由  

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