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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1156852
審判番号 不服2006-1157  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-18 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 平成 7年特許願第235031号「像ブレ補正装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月28日出願公開、特開平 9- 80550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年9月13日の出願であって、平成17年12月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年2月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「光軸に略直交する平面内で駆動することにより、像ブレを補正する補正光学系と,
前記補正光学系を前記平面内に沿った第1の方向には移動可能に、かつ前記光軸方向への移動を規制するガイド装置と,
前記補正光学系を前記第1の方向に駆動する駆動力を発生させる駆動力発生装置とを備え、
前記ガイド装置は、前記補正光学系を含む駆動部材の前記駆動力の発生する位置から前記光軸方向に間隔を隔て、かつ、前記駆動部材の重心位置から前記光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられたガイド受け部と、
前記ガイド受け部に組合わされ、前記第1の方向に関して前記ガイド受け部の摺動を許容するとともに、前記光軸方向に関して前記ガイド受け部の移動を規制するガイド部とを有し、
前記駆動部材の前記駆動力の発生する位置及び前記重心位置と、前記ガイド受け部との前記光軸方向の間隔に起因し、前記駆動力により前記駆動部材に発生するモーメントの作用点と前記ガイド部との距離をa、前記ガイド受け部の前記摺動する範囲の長さをbとしたときに、
a≦b
の関係を有すること、および、
前記駆動力発生装置は、コイルと永久磁石とからなるヴォィスコイルモータであり、前記補正光学系を支持するとともに、前記コイル又は前記永久磁石が固定される枠体を有することを特徴とする像ブレ補正装置。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成18年11月29日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された、特開平3-186824号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平3-165376号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例
引用例1には、
「本発明は、カメラ等の機器に搭載されて1HZ乃至12HZ程度の周波数の振動(手ブレ)を検出して、これを像ブレ防止の情報として像ブレ防止を図る防振装置に関し、特にその補正光学機構の改良に関するものである。
(発明の背景)
本発明の対象となる従来技術をカメラの場合を例にして以下に説明する。
・・・(中略)・・・。
ここで、角速度計を用いた像ブレ抑制システムについて、第8図を用いてその概要を説明する。第8図の例は、図示矢印61方向のカメラ縦ブレ61p及びカメラ横ブレ61yを抑制するシステムの図である。同図中、62はレンズ鏡筒、63p、63yは各々カメラ縦ブレ角速度、カメラ横ブレ角速度を検出する角速度計で、それぞれの角速度検出方向を64p、64yで示してある。65p、65yは公知のアナログ積分回路であり、角速度計63p、 63yの信号を積分して手ブレ角変位に変換し、該信号により補正光学系66(67p、67yは各々その駆動部、68p、68yは補正光学位置検出センサ)を駆動させて像面69での安定を確保する。尚、補正光学機構自体に機械的積分作用を持たせ、上記のアナログ積分回路を省くことも出来る。
第9図(a)(b)はかかるシステムに好適に用いられる補正光学機構の構造図であり、補正レンズ52は光軸と直交する互いに直角な2方向(ピッチ方向51pとヨー方向51y)に自在に駆動可能である。以下にその構成を示す。なお、第9図(b)は第9図(a)の光軸より図中上方をA-A断面で表し、光軸より下方をC方向よりの側面を表している。又第9図(a)では第9図(b)に示すところの図中左側の第2の保持枠515、及び投光器512p、ピッチマグネット59pは図面の煩雑化を防ぐため、省略してある。
第9図(a)(b)において、補正レンズ52を保持する固定枠53はオイルレスメタル等のすべり軸受54pを介してピッチスライド軸55p上を摺動出来る様になっている。又、ピッチスライド軸55pは第1の保持枠56に取り付けられている。
固定枠53はピッチスライド軸55pと同軸のピッチコイルバネ57pに挟まれており、中立位置付近に保持される。
固定枠53にはピッチコイル58pを取り付けてある。ピッチコイル58pはピッチマグネット59pとピッチヨーク510pで構成される磁気回路中に置かれており、電流を流すことで固定枠53はピッチ方向51pに駆動される。」(1頁右欄12行?2頁右下欄7行)、

「しかしながら、上記従来の補正光学機構において、駆動をスムーズに行わせる為には、すべり軸受54p、54yとピッチ、ヨースライド軸55p、55yの間にはある程度の隙間が必要であり、その隙間の為に次に示す問題点を生じていた。
第11図(a)において、固定枠53上のピッチコイル58pに電流を流すと、推力520pが生じ、固定枠53は紙面上向きに駆動される。しかしこの時、2本のピッチスライド軸55pR,55pLのどちらかの摩擦が僅かでも大きい場合、例えばピッチスライド軸55pRとすべり軸受54pの摩擦がピッチスライド軸55pLのそれに比べて大きいと、固定枠53は矢印522方向に回転する。そして、ピッチスライド軸55pRとすべり軸受54pの間にこじりが生じ、駆動がスムーズに行えなくなるばかりでなく、ピッチスライド55pRの矢印Aで示す部分に傷が付いてしまう。そして、その傷が拡大していくに従い、こじりが大きくなり、遂には駆動不能になる。
又、駆動が行われない場合、例えばピッチコイル58pの電流を断った直後、固定枠53は重力とピッチコイルバネ57pの釣り合う位置まで戻ろうとする(矢印51pd方向)。この時、ピッチスライド軸55pRとすべり軸受54p間の摩擦がピッチスライド軸55pLのそれに比べて大きいと、固定枠53は矢印522と逆方向に回転し、ピッチスライド軸55pRの矢印Bに傷が生じる。
同様な事は防振システムを全く使わない時も起きている。固定枠53はピッチコイル58pの非通電時にはピッチコイルバネ57pに支えられており、外部入力(手ブレやカメラを持ち歩く時の振動)で自由振動を行っている。そしてその間も上述したこじりが常に起きており、ピッチスライド軸55pは傷つけられてゆく。
また、第11図(b)の固定枠53の断面図に示すように、該固定枠53に回転523が生じ、スムーズな駆動を妨げる。」(3頁右上欄11行?右下欄8行)、

「(発明の目的)
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、第1のスライド軸上をスムーズに被駆動部材がスライドできるようにすると共に、前記第1のスライド軸の傷つきを防止することのできる防振装置を提供することである。
(発明の特徴)
上記目的を達成するために、本発明は、第1の駆動手段により駆動される、補正レンズ、固定枠を含む被駆動部材の合計の質量の重心と前記第1の駆動手段の推力中心を、第1のスライド軸の軸心に一致させるようにし、以て、前記第1のスライド軸と前記被駆動部材との接触面において、一方の端部に過度な摩擦が加わることのない(こじりのない)ようにしたことを特徴とする。
(発明の実施例)
第1図は本発明の第1の実施例を示すものであり、従来例と同一要素は同一符号を付しである。
第1図と第6図従来例の異なる点は、ピッチスライド軸55p、ヨースライド軸55yとも1本になった事であり、スライド軸上に中心をもつボビンに巻かれたボイスコイル状のピッチコイル58p、ヨーコイル58yが設けられている。又、ピッチコイル58p、ヨーコイル58yがボイスコイル状になった事により、各ボイスコイルには矢印の様に反発する極性のピッチマグネット59p、ヨーマグネット59yを対向して配置している。
この様な構成の場合、固定枠53はピッチスライド軸55pまわりに回転可能(矢印13p)になるため、第1の保持枠56との間にストッパ11を設けて該回転を防いでいる。
同様に、第1の保持枠56には凸部12を設け、不図示の第2の保持枠と当接させて第1の保持枠のヨースライド軸55yまわりの回転(矢印13y)を防いでいる。
ハウジング514及びピッチ、ヨーマグネット59p、59y、投光器512p、512y、受光器513p、513yは不図示の第2の保持枠に固定されている。
この様な構成にすると、第2図(a)、(b)に示す様に、固定枠53及び補正レンズ52等の合計の重心とピッチコイル58pの推力中心がピッチスライド軸55p上に並び、上述従来例の固定枠53の回転が生じない為、こじりがなくスムーズな駆動が行え、スライド軸55pの傷つきも無くなる。その上、ボイスコイル状のピッチコイル58pのボビン内にピッチスライド軸55pのすべり軸受54pが設けられる為、極めてコンパストにする事が出来る。尚、ヨー方向51yに関しては、重心を一致させることは不能であるが、ヨーコイル58yの推力中心はヨースライド軸55y上に一致させるようにしている。」(3頁右下欄13行?4頁左下欄5行)
との記載が認められ、ピッチスライド軸55pと前記ピッチスライド軸55p上を摺動出来る様になっているすべり軸受54pとにより案内装置を構成することは自明であり、さらに、前記従来例及び第1の実施例における、ピッチコイル58p、ピッチマグネット59p、ピッチヨーク510pからなる駆動部は、ヴォイスコイルモータであることも自明であるから、これらの記載によれば、引用例1には、
「像ブレ防止を図る補正レンズ52が光軸と直交する互いに直角な2方向に自在に駆動可能である補正光学系66と、
前記補正光学系66をピッチ方向51pに摺動させる案内装置と、
前記補正光学系66をピッチ方向51pに駆動する駆動部を備え、
前記案内装置は、ピッチスライド軸55pと前記ピッチスライド軸55p上を摺動出来る様になっているすべり軸受54pとからなり、
前記駆動部は、ピッチコイル58p、ピッチマグネット59p、ピッチヨーク510pとからなるヴォイスコイルモータで構成され、前記補正レンズ52を保持するとともに、前記ピッチコイル58p又は前記ピッチマグネット59pが固定される固定枠53を有することを特徴とする像ブレ防止を図る防振装置。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

引用例2には、
「本発明は光学又は/そして磁気ヘッド駆動装置の構造並びにその駆動力源となるリニアモートルの構造に関する。」(1頁左欄18行?20行)、

「第5図において光学ヘッド1の移動軸2は装置のユニットベース3にねじ等で固定されてい、光学ヘッド1に具備されたすべり軸受(1)5とすきまばめで係合されている光学ヘッド移動軸2の長手方向に光学ヘッド1は移動するようになっている。さらに移動方向を軸とする上下方向は光学ヘッド1の端に具備された別の軸受(2)6と同様にねじ4等でユニットベース3に固定されたレール7とすきまばめで係合されている。
さらにすベリ軸受(2)6は図中矢印8方向に隙間を設けすべり軸受(1)5と移動軸2、すべり軸受(2)6とレール7の摺動時の焼つきを防止している。また光学ヘッド1の駆動力源となるリニアモートル9の駆動軸10は光学ヘッド移動軸2の中心より距離xはなれて光学ヘッド1に設けられている。
上記構造を有する光学ヘッド駆動装置は駆動時リニアモートル9の駆動軸10に矢印(イ)方向の駆動力F0を受け移動し光学ヘッド移動軸2と距離xはなれているため第3図にその略図を示すよう抗力P、Q、に対し摩擦力μP、μQの和Uにうちかち移動することとなる。従ってUを式で表わすと下記のようになる。
U=μ×(P+Q)・・・(1)
またリニアモートルの実効駆動力FRはその出力をF0とすると下記のようになる。
FR=F0-μ×(P+Q)・・・ (2)
モーメントのつりあいよりP、Qを第3図に示すF0、x、a、bにおきかえ整理すると下記のようになる。
FR≦F0〔(b2-2×b×x×μ)/b2-μ2×a2)〕・・・(3)
(3)式より実効駆動力FRはxが大きくなるほど小さくなりaが大きくなるほど大きくなることがわかる。」(1頁右欄14?2頁右上欄8行)、
が記載されている。

4.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「光軸と直交する互いに直角な2方向に自在に駆動」は、本願発明の「光軸に略直交する平面内で駆動」に相当し、以下同様に、「ピッチ方向51p」は「第1の方向」に、「案内装置」は「ガイド装置」に、「駆動部」は「駆動力発生装置」に、「すべり軸受54p」は「ガイド受け部」に、「ピッチスライド軸55p」は「ガイド部」に、それぞれ相当し、さらに、引用例1発明の「案内装置」が、補正光学系66の光軸方向への移動を規制すること及び引用例1発明の「ピッチスライド軸55p」が、ピッチ方向51pに関してすべり軸受54pの摺動を許容するとともに、補正光学系66の光軸方向に関して前記すべり軸受54pの移動を規制することは自明であるから、両者は、
「光軸に略直交する平面内で駆動することにより、像ブレを補正する補正光学系と,
前記補正光学系を前記平面内に沿った第1の方向には移動可能に、かつ前記光軸方向への移動を規制するガイド装置と,
前記補正光学系を前記第1の方向に駆動する駆動力を発生させる駆動力発生装置とを備え、
前記ガイド装置は、駆動部材と一体的に備えられたガイド受け部と、前記ガイド受け部に組合わされ、前記第1の方向に関して前記ガイド受け部の摺動を許容するとともに、前記光軸方向に関して前記ガイド受け部の移動を規制するガイド部とを有し、
前記駆動力発生装置は、コイルと永久磁石とからなるヴォィスコイルモータであり、前記補正光学系を支持するとともに、前記コイル又は前記永久磁石が固定される枠体を有することを特徴とする像ブレ補正装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
ガイド受け部が、本願発明では、「補正光学系を含む駆動部材の駆動力の発生する位置から光軸方向に間隔を隔て、かつ、前記駆動部材の重心位置から前記光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられたガイド受け部」というものであるのに対し、引用例1発明は、かかる限定が付されていない点。

[相違点2]
本願発明は、「駆動部材の駆動力の発生する位置及び重心位置と、ガイド受け部との光軸方向の間隔に起因し、前記駆動力により前記駆動部材に発生するモーメントの作用点と前記ガイド部との距離をa、前記ガイド受け部の前記摺動する範囲の長さをbとしたときに、a≦bの関係を有する」というものであるのに対し、引用例1発明は、かかる限定が付されていない点。

次に、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用例1の第11図(b)において、G、Sが、各々、固定枠53及び補正レンズ52等の合計の重心とピッチコイル58pの推力中心を表すことは、引用例1の「第2図(a)、(b)に示す様に、固定枠53及び補正レンズ52等の合計の重心とピッチコイル58pの推力中心がピッチスライド軸55p上に並び、」(4頁右上欄13行?16行)という記載により自明であるから、引用例1発明は、本願発明のガイド受け部の「補正光学系を含む駆動部材の重心位置から光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられた」に対応する構成を備えていると認められるが、本願発明のガイド受け部の「補正光学系を含む駆動部材の駆動力の発生する位置から光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられた」に対応する構成を備えてはいない。
しかしながら、引用例1発明と同じ技術分野において、本願発明のガイド受け部の「補正光学系を含む駆動部材の駆動力の発生する位置から光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられた」に対応する構成を備えることは周知(例えば、特開平7-191361号公報等を参照)であるから、当業者が、前記周知技術を引用例1発明に適用してこの相違点に係る本願発明のように構成することは容易に想到しえたものと認められる

[相違点2について]
この相違点において、本願発明では、「駆動部材の駆動力の発生する位置及び重心位置と、ガイド受け部との光軸方向の間隔に起因し、前記駆動力により前記駆動部材に発生するモーメント」と記載されているが、示されている式は「駆動力により前記駆動部材に発生するモーメントの作用点と前記ガイド部との距離をa、前記ガイド受け部の前記摺動する範囲の長さをbとしたときに、a≦bの関係を有する」と表現されているにとどまり、重心位置とガイド受け部との光軸方向の間隔に起因した場合の式は示されていない。
他方、引用例1の「同様な事は防振システムを全く使わない時も起きている。固定枠53はピッチコイル58pの非通電時にはピッチコイルバネ57pに支えられており、外部入力(手ブレやカメラを持ち歩く時の振動)で自由振動を行っている。そしてその間も上述したこじりが常に起きており、ピッチスライド軸55pは傷つけられてゆく。また、第11図(b)の固定枠53の断面図に示すように、該固定枠53に回転523が生じ、スムーズな駆動を妨げる。」(3頁左下欄下から2行?右下欄8行)という記載からも明らかなように、重心位置とピッチスライド軸55pが光軸方向に間隔がある場合にも、発生したモーメントに起因して、すべり軸受54pとピッチスライド軸55pとの間に摩擦が発生することが窺える。
そうすると、本願発明におけるa≦bなる式で表される大小関係は、駆動部材の駆動力の発生する位置や重心位置をそれぞれ具体的に限定した場合に特有のものではなく、両者に共通の技術的事項である、ガイド部に対するモーメントの作用点の位置に起因したものであると認めるのが妥当である。
また、本願の願書に最初に添付した明細書において、a≦bの関係は、
b2+D2=μ(2aD+D2)η ・・・・・・・2(丸数字の2)
という式から求められたものであり、そしてこの式は、力FによるC点回りのモーメントと、力fAと力fBとの偶力によるモーメントが等しいことより、次の1(丸数字の1)式を変形して求めたものである。
F=μ(fA+fB)η ・・・・・・・1(丸数字の1)
しかしながら、請求人も認めるように(請求人が平成18年11月14日に送付した説明書類のファックスの内容を記した応対記録参照)、2(丸数字の2)式は、誤りであることが明らかであるところ、2(丸数字の2)式に対して、具体的数値を代入することによって求めた本願発明のa≦bなる式のa=bという限定には臨界的意義を認めることができない。結局、本願発明のaとbとの関係を表す式は、力FによるC点回りのモーメントと、力fAと力fBとの偶力によるモーメントが等しいことに基づいて、1(丸数字の1)式から、a≦bなる大小関係を適宜定めたものと認められる。
ところで、モーメントの作用点とすべり軸受けの軸から離れている例として、光学ヘッドとその駆動用リニアモートルが示される引用例2には、
「光学ヘッド駆動装置は駆動時リニアモートル9の駆動軸10に矢印(イ)方向の駆動力F0を受け移動し光学ヘッド移動軸2と距離xはなれているため第3図にその略図を示すよう抗力P、Q、に対し摩擦力μP、μQの和Uにうちかち移動することとなる。従ってUを式で表わすと下記のようになる。
U=μ×(P+Q)・・・(1)
またリニアモートルの実効駆動力FRはその出力をF0とすると下記のようになる。
FR=F0-μ×(P+Q)・・・ (2)
モーメントのつりあいよりP、Qを第3図に示すF0、x、a、bにおきかえ整理すると下記のようになる。
FR≦F0〔(b2-2×b×x×μ)/b2-μ2×a2)〕・・・(3)
(3)式より実効駆動力FRはxが大きくなるほど小さくなりaが大きくなるほど大きくなることがわかる。」(2頁左上欄10行?右上欄8行)
と記載されており、リニアモートルの駆動力F0と抗力P、Qとのモーメントがつりあうことから、(2)式をF0、x、a、bにおきかえ整理するが示されている。
そして、実効駆動力FRが大きくなるためには、光学ヘッド移動軸2の中心からの距離xについては大きく、軸受の長さbについては大きくすればよいことがわかるから、設計に際して、光学ヘッド移動軸2の中心からの距離xと軸受の長さbとの関係を、例えば、x≦bのように適宜定めることは格別困難であるとは認められない。
以上のとおりであるから、前記引用例2に示される技術的思想を[相違点1について]で検討した、「補正光学系を含む駆動部材の駆動力の発生する位置から光軸方向に間隔を隔て、かつ、前記駆動部材の重心位置から前記光軸方向に間隔を隔てて前記駆動部材と一体的に備えられたガイド受け部」に適用し、本願発明のように構成することは当業者が容易に想到しえたものと認められる。
結局、この相違点も格別なものではない。

また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は当業者が当然予測できる範囲内のものと認められる。
そして、本願発明の奏する効果も、引用例1、2に記載の各技術事項及び前記周知技術が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-28 
結審通知日 2007-03-06 
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願平7-235031
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 青木 和夫
森内 正明
発明の名称 像ブレ補正装置  
代理人 鎌田 久男  

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