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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1156881
審判番号 不服2003-9438  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-26 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 特願2001-244456「対戦型ゲーム装置、対戦型ゲーム装置の制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月25日出願公開、特開2003- 53039〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成13年8月10日の出願であって、平成15年2月3日付の拒絶理由通知が通知され、平成15年4月8日付で意見および手続補正がなされ、平成15年4月18日付の拒絶査定がなされるとともに、平成15年5月26日に審判請求がなされ、平成15年6月17日付で手続補正がなされたものである。

平成15年6月17日付の手続補正は、平成15年4月8日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された発明についての誤記の訂正を目的とするものに該当するものであるから、平成15年6月17日付の手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第3号の規定に適合している。

そして、平成15年6月17日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明は、その請求項1?7に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「複数のプレイヤーが、ゲーム価値を投入することにより、複数のプレイヤーが共用可能な仮想のゲームエリア内で、互いに対戦する対戦ゲームを実行する対戦型ゲーム装置において、複数あるゲームエリアごとに、それぞれ、複数のプレイヤーが互いに対戦する対戦ゲームを進行するゲーム進行手段と、上記ゲーム進行手段により第1のゲームエリア内で進行される対戦ゲームに注ぎ込んだプレイヤーのゲーム価値の量に関連付けられたエリア進出条件であって、該プレイヤーが第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うためのエリア進出条件を満たしたか否かを判断する判断手段と、上記判断手段により上記エリア進出条件を満したと判断されたとき、該エリア進出条件を満たしたプレイヤーを特定するためのプレイヤー特定情報に関連付けられた状態で、進出情報記録媒体にエリア進出情報を記録する進出情報記録手段と、上記進出情報記録媒体に、対戦ゲームを行うことを希望するプレイヤーに対応するエリア進出情報が記録されているとき、該プレイヤーに対して、第1のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを禁止するとともに、第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを許可することで、該プレイヤーが対戦ゲームを行うゲームエリアを選別するエリア選別手段とを有することを特徴とする対戦型ゲーム装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例について
1)引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-288238号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【0005】【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、ゲームの進行に応じた遊技価値を払い出すゲームシステムにおいて、着脱可能な記録媒体の情報を読み取る読取手段(208)と、中断されたゲームの状態や履歴を個々の記録媒体と対応付けて記憶する記憶手段(105,106,207)と、ゲームを進行させるゲーム進行手段(101,201)と、ゲーム進行手段(101,201)によるゲームの進行に応じた遊技価値を払い出す払い出し手段(203)と、を備え、記録媒体には個々の記録媒体を特定する特定情報が記録され、記憶手段(105,106,207)には、特定情報と対応付けてゲームの状態や履歴が記憶されるとともに、ゲーム進行手段(101,201)は、読取手段(208)によって読み取られた特定情報に対応付けられて記憶手段(105,106,207)に記憶されたゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを継続的に進行させるようにしたことを特徴とする。」

・記載事項2
「【0028】請求項15に記載の発明は、ゲームの進行に応じた遊技価値を払い出すゲームシステムにおいて、第1のゲーム機と、第2のゲーム機と、第1のゲーム機における、中断されたゲームの状態や履歴を記憶する記憶手段と、第2のゲーム機と記憶手段とを互いに接続する通信手段と、を備え、第1および第2のゲーム機には、着脱可能な記録媒体の情報を読み取る読取手段と、ゲームを進行させるゲーム進行手段と、ゲーム進行手段によるゲームの進行に応じた遊技価値を払い出す払い出し手段と、がそれぞれ設けられ、記録媒体には個々の記録媒体を特定する特定情報が記録され、記憶手段には、特定情報と対応付けてゲームの状態や履歴が記憶されるとともに、第2のゲーム機のゲーム進行手段は、第2のゲーム機の読取手段によって読み取られた特定情報に対応付けられて記憶手段に記憶されたゲームの状態や履歴を、通信手段を介して獲得するとともに、獲得されたゲームの状態や履歴を用いて、そのゲームの続きを第2のゲーム機において継続的に進行させるようにしたことを特徴とする。」

・記載事項3
「【0036】図1に示すように、ゲーム機1は中央部分に設けられたフィールド2と、フィールド2を取り囲むように設けられた複数のステーション3とを備える。」

・記載事項4
「【0037】フィールド2には出馬ゲート21を備える競馬場の馬場22が設けられ、馬場22内で複数の模型馬(不図示)を走行させることで本物の競馬さながらのレースが展開される。フィールド2の周囲にはレースの実況コールの音声等を出力するための複数のスピーカシステム26が配置されている。」

・記載事項5
「【0038】各ステーション3には、ゲームの進行に応じたゲーム画面を表示するディスプレイ31と、ディスプレイ31の表示面に重ね合わされたタッチパネル32とが設けられている。プレイヤーがゲーム画面の指示に従いディスプレイ31に表示されたゲーム画面の所定位置に触ると、タッチパネル32によりその位置が検出され、ゲーム機1においてプレイヤーの操作内容が認識される。また、各ステーション3には、プレイヤーによって遊技価値としてのメダルが投入されるメダル投入部33、プレイヤーに向けてメダルが払い出されるメダル払い出し口34、および磁気カードを挿入するための磁気カード差込口35が設けられている。」

・記載事項6
「【0053】図4(a)はプレイヤーごとに記憶、管理されるプレイヤーデータのデータ構造を示している。プレイヤーデータにはゲームの状態や履歴の情報が含まれる。図4(a)に示すように、プレイヤーデータはプレイヤーごとに割当てられるIDコード、そのプレイヤーに関する情報である個人情報、そのプレイヤーの持ち馬に関する情報である持ち馬情報、そのプレイヤーが最後にゲームを行った日を特定するための最終プレイ日情報、データの更新を記録する書き換え情報、および磁気カードの改竄防止等を目的とするチェックコードからなる。」

・記載事項7
「【0057】持ち馬情報は、各持ち馬ごとに、持ち馬の名前を特定する名前コード、性別、成長カーブとして特定される馬タイプ情報、年齢、出走回数、スピード、スタミナ、コンディション、獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績(例えば1着、2着あるいは着外)、選択された厩舎によって決まる調教タイプ等からなる。」

・記載事項8
「【0078】ステップS115では、RAM207に記憶されている最終的なゲームの状態や履歴(プレイヤーデータ)をメイン制御装置101に向けて送信し、正しく送信できたことが確認されれば(ステップS116)、ステップS117においてRAM207のプレイヤーデータを消去して、図6の処理を終了する。ステップS115で送信されたゲームの状態や履歴(プレイヤーデータ)は、SRAM105に記憶され、次回プレイヤーがゲームを行うまで保存される。」

・記載事項9
「【0101】レース選択画面の右側には、レース名が表示される領域322と、領域322に表示された各レースについて、出場可能な持ち馬がどれであるかを表示する領域323とが設けられる。図11に示すように、領域322には、レース名とともに、各レースにおいて1着あるいは2着に入った場合の賞金や出走条件が表示される。領域323には、該当する馬が既に出馬登録済みであることを示す「登録済み」、該当する馬が出馬可能であることを示す「出馬可能」、該当する馬が出走条件に合致しないことを示す「条件不合」、および出馬登録が締め切られていることを示す「締め切り」の4種類の文言が表示される。これにより、各馬が出場可能か否かをプレイヤーが認識できる。」

・記載事項10
「【0141】このため、本実施形態では、ゲーム上の時間経過をプレイヤーごとに独立させて管理することとし、上記の場合であれば、プレイヤーがプレイを中断した弥生賞のレースと同年度のダービーのレース時にプレイを再開したものとして扱い、ゲーム上では3ヶ月間持ち馬が休養していたものとみなしている。これにより、ゲームを中断しても、プレイヤーの再来プレイにおいて持ち馬の能力を充分に発揮させることができ、プレイヤーは中央競馬のスケジュールを充分に堪能することができる。なお、ゲーム上の時間の流れを逆転させることは好ましくないため、例えばダービー(6月)のレース時にプレイを中断し、弥生賞(3月)のレース時にプレイを再開した場合には、再開時のレースは翌年度の弥生賞(3月)であるとみなしている。すなわち、持ち馬は9ヶ月休養していた扱いとなる。」

以上の記載事項1?記載事項10及び図1?図18の記載によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。

「複数のプレイヤーが、遊技価値としてのメダルを投入することにより、複数のプレイヤーが共用可能な仮想のレースのフィールド内で、互いに対戦するレースを実行するゲームシステムにおいて、複数あるレースのフィールドごとに、それぞれ、複数のプレイヤーが互いに対戦するゲームを進行させるゲーム進行手段と、ゲーム進行手段により弥生賞レースのフィールド内で進行されるレースのプレイヤーデータに関連付けられた次のレースに出場できる条件であって、プレイヤーが、次のレースのフィールド内でレースを行うための次のレースに出場できる条件を満たしたか否か判断し、次のレースに出場できる条件を満したと判断されたとき、次のレースに出場できる条件を満たしたプレイヤーを特定するためのプレイヤーデータに関連付けられた状態で、記録手段に次のレースに出場できる条件となる獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績等を記録する記録手段と、記録手段にレースを行うことを希望するプレイヤーに対応する次のレースに出場できる条件となる獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績等が記録されているとき、プレイヤーに対して、次のレースのフィールド内で対戦ゲームを行うことを可能とすることで、プレイヤーがレースを行うレースのフィールドを選別するゲームシステム」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

2)引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-156043号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
・記載事項1
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アミューズメントスペース等に設置される料金徴収装置を備えるゲーム機およびゲームデータ記憶媒体の技術分野に属するものである。」

・記載事項2
「【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで、前記ゲーム機のゲームプログラムは、通常、難易度の異なる複数のゲーム場面を有しており、各場面をクリアすると次の場面に進める一方、場面クリアに失敗するとその時点でゲームが終了するように構成されているが、・・・」

・記載事項3
「【0004】【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することができる料金徴収装置を備えるゲーム機およびゲームデータ記憶媒体を提供することを目的として創作されたものであって、所定の料金を徴収する料金徴収装置と、所定の料金を徴収した場合にゲームの開始を許容するゲーム開始手段と、所定の終了条件を満たした場合にゲームを終了するゲーム終了手段とを備えるゲーム機であって、該ゲーム機に、持ち運び可能なゲームデータ記憶媒体の記憶データを読み書きするリードライト装置と、ゲームの経過データをゲームデータ記憶媒体に書き込む経過データ書込手段と、ゲーム開始時にゲームデータ記憶媒体から対応する経過データを読み込む経過データ読込手段と、読み込んだ経過データに対応するコンティニュー状態からゲームを開始するコンティニュー手段とを設けたことを特徴とするものである。・・・」

・記載事項4
「【0006】また、上記のものにおいて、ゲームデータ記憶媒体から対応する成績データを読み込む成績データ読込手段と、読み込んだ成績データを成績順位表示用データに追加する成績データ追加手段とを設けたことを特徴とするものである。つまり、同一のゲーム機間で成績データを相互にやり取りすることができるため、ゲーム機毎に分散していた成績順位データを、ゲーム機同志を殊更通信回線で結ぶことなく統合することができる。」

・記載事項5
「【0007】また、上記のものにおいて、ゲームの成績が所定の条件を満たした場合に成績順位表示用名前データの入力を要求する名前入力要求手段と、予め書き込まれた名前データをゲームデータ記憶媒体から読み込んで成績順位表示用名前データとする名前入力省略手段とを設けたことを特徴とするものである。つまり、成績順位表示用名前データの入力を省くことができるため、ゲーム利用者の操作労力を軽減することができる許りでなく、入力時間を削減してゲーム機の回転率を高めることができる。」

・記載事項6
「【0009】また、上記のものにおいて、ゲームデータ記憶媒体に設けられる書換可能な表示部に、ゲームの経過データに対応する表示データを書き込む表示データ書込装置を設けたことを特徴とするものである。つまり、レースゲームの順位、ロールプレイングゲームのキャラクター、レベル、獲得アイテム等を目に見える状態でゲームデータ記憶媒体に記録することができるため、これらの確認が容易になる許りか、競争心を刺激してゲーム利用者の利用意欲を高めることができる。」

・記載事項7
「【0010】また、読み書き自在な非接触型記憶媒体の記憶領域に、ゲーム機の経過データが書き込まれる経過データ書込領域を確保したことを特徴とするものである。つまり、ゲームデータ記憶媒体を無接点で読み書きすることができるため、汚れ、静電気、磁気等による読み書き不良の発生を防止することができ、しかも、リードライト装置に対するセット位置の自由度が高いため、ゲームデータ記憶媒体のセット操作を容易にすることができる。」

・記載事項8
「【0019】・・・但し、レースゲーム機2Aにおいては、ジムカーナクラス(初級レベル)、F3000クラス(中級レベル)およびF1クラス(上級レベル)にクラス分けされると共に、レース場が複数用意されており、各クラスにおいて異なるレース場で3回以上優勝した場合にのみ一段階上のクラスを選択することができるようになっている。」

・記載事項9
「【0022】・・・そして、レースが終了すると、レース順位が1位(優勝)であるか否かを判断し、該判断がNOである場合には、ゲームを終了してデモ画面表示に戻る一方、YESと判断した場合には、後述するハイスコア処理(サブルーチン)を実行した後、ジムカーナクラスのレース場選択画面に戻り、また、ジムカーナクラスの優勝回数が3回以上である場合には、一段階上のF3000クラスのレース場選択画面に進むが、何れのレースでも2位以下になった時点でゲームが終了するようになっている。」

・記載事項10
「【0025】・・・つまり、格闘ゲーム機2Bでは、所定の料金を支払った後、自己の格闘キャラクタを選択すると、対戦キャラクタが自動的に選択され、両者による格闘ゲームが開始されるようになっており、また、この格闘ゲームで負けた場合にはゲームが終了する一方、勝った場合には次の対戦キャラクタとの格闘ゲームが開始されるが、記憶媒体セット部21aに、記憶媒体4がセットされている場合には、同一格闘ゲームの経過データ(自己キャラクタデータおよび最終対戦キャラクタデータ)を読み込んで前回終了時の状態からゲームを開始すると共に、各対戦キャラクタに勝つ毎に、記憶媒体4の最終対戦キャラクタデータを書換えるようになっている。」


以上の記載事項1?記載事項10及び図1?図13の記載によれば、引用例2には次の技術事項が記載されていると認められる。

「ゲームデータ記録媒体に所定の条件を満たしたゲームの成績データが記録されているとき、ゲーム利用者に対して、初級レベルであるジムカーナクラスの異なるレース場で3回以上優勝した場合に、一段階上のF3000クラスのレースでレースを行うことを許可され、いずれかのレースにおいて2位以下になった時点でゲームを終了する格闘ゲーム機。」

(3)対比
引用例1に記載された発明と本願発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「プレイヤー」は本願発明の「プレイヤー」に相当している。以下同様に、「遊技価値としてのメダル」は「ゲーム価値」に、「レースのフィールド」は「ゲームエリア」に、「レース」は「対戦ゲーム」に、「ゲームシステム」は「対戦型ゲーム装置」に、「ゲーム進行手段」は「ゲーム進行手段」に、「弥生賞レース」は「第1のゲームエリア」に、「次のレースに出場できる条件」は「エリア進出条件」に、「プレイヤーデータ」は「プレイヤー特定情報」に、「次のレースに出場できる条件となる獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績等」は「エリア進出情報」に、「記録手段」は「進出情報記録媒体」に、「次のレースのフィールド」は「第2のゲームエリア」に、それぞれ相当している。
そして、引用例1に記載された発明は、以下の点を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項1
引用例1の記載事項7の「持ち馬情報は、各持ち馬ごとに、持ち馬の名前を特定する名前コード、性別、成長カーブとして特定される馬タイプ情報、年齢、出走回数、スピード、スタミナ、コンディション、獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績(例えば1着、2着あるいは着外)、選択された厩舎によって決まる調教タイプ等からなる。」なる記載に基づけば、次のレースのフィールドに出走できるか否かは、性別、成長カーブとして特定される馬タイプ情報、年齢、出走回数、スピード、スタミナ、コンディション、獲得賞金累積額、過去のレースごとの戦績(例えば1着、2着あるいは着外)等の各持ち馬ごとの持ち馬情報により判断していることは明らかであるから、引用例1に記載された発明が、そのような判断をする手段を有していることも明らかである。
そして、引用例1に記載された発明の「プレイヤー」「次のレースのフィールド」は、本願発明の「プレイヤー」「第2のゲームエリア」に相当していることは上記(3)対比の冒頭で示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、ゲーム進行手段により第1のゲームエリア内で進行されるプレイヤーデータに関連付けられたエリア進出条件であって、「プレイヤーが第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うためのエリア進出条件を満たしたか否かを判断する判断手段」なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項2
引用例1の上記記載事項7の記載、および記載事項9の「【0101】・・・図11に示すように、領域322には、レース名とともに、各レースにおいて1着あるいは2着に入った場合の賞金や出走条件が表示される。領域323には、該当する馬が既に出馬登録済みであることを示す「登録済み」、該当する馬が出馬可能であることを示す「出馬可能」、該当する馬が出走条件に合致しないことを示す「条件不合」、および出馬登録が締め切られていることを示す「締め切り」の4種類の文言が表示される。これにより、各馬が出場可能か否かをプレイヤーが認識できる。」なる記載に基づけば、記録手段に、次のレースを行うことを希望するプレイヤーに対応するプレイヤーデータが記録されているとき、プレイヤーに対して、次のレースのフィールド内でレースを行うことを可能とすることで、プレイヤーがレースを行うレースフィールドを選別していることは明らかであり、かつ、そのような機能を実現し得る手段を有していることも明らかである。
また、引用例1に記載された発明の「該当する馬が出馬可能であること」とは、実質的な意味から見て、出馬が許可されたことと何ら相違することがなく単なる表現上の相違に過ぎないので、引用例1に記載された発明の「可能とすること」は本願発明の「許可すること」といい換えることができる。
そして、引用例1に記載された発明の「レース」「プレイヤーデータ」「次のレースのフィールド」「可能」「レースフィールド」は、本願発明の「対戦ゲーム」「エリア進出情報」「第2のゲームエリア」「許可」「ゲームエリア」に相当していることは上記(3)対比の冒頭で示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「進出情報記録媒体に、対戦ゲームを行うことを希望するプレイヤーに対応するエリア進出情報が記録されているとき、プレイヤーに対して、第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを許可することで、プレイヤーが対戦ゲームを行うゲームエリアを選別するエリア選別手段」を実質的に具備しているということができる。

以上の実質的具備事項1?2に基づけば、本願発明と引用例1に記載された発明は、

「複数のプレイヤが、ゲーム価値を投入することにより、複数のプレイヤーが共用可能な仮想のゲームエリア内で、互いに対戦する対戦ゲームを実行する対戦ゲーム型ゲーム装置において、複数あるゲームエリアごとに、それぞれ、複数のプレイヤーが互いに対戦する対戦ゲームを進行するゲーム進行手段と、ゲーム進行手段により第1のゲームエリア内で進行されるレースのプレイヤーデータに関連付けられたエリア進出条件であって、プレイヤーが第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うためのエリア進出条件を満たしたか否かを判断する判断手段と、判断手段により、エリア進出条件を満したと判断されたとき、エリア進出条件を満たしたプレイヤーを特定するためのプライヤー特定情報に関連付けられた状態で、エリア進出情報を記録する進出情報記録手段と、進出情報記録媒体に対戦ゲームを行うことを希望するプレイヤーに対応するエリア進出情報が記録されているとき、第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを許可することで、プレイヤーが対戦ゲームを行うゲームエリアを選別するエリア選別手段とを有する対戦型ゲーム装置」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

・相違点1
第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うためのエリア進出条件が、本願発明においては、ゲーム進行手段により第1のゲームエリア内で進行される対戦ゲームに注ぎ込んだプレイヤーのゲーム価値の量に関連付けられるものであるのに対して、引用例1に記載された発明においては、ゲーム進行手段により第1のゲームエリア内で進行される対戦ゲームにおけるプレイヤーの獲得賞金累積額や過去のレースごとの戦績等である点。

・相違点2
プレイヤーによって、第1のゲームエリア内で対戦ゲームを行い、第2のゲームエリアに進出する条件を満たしている場合に、第1のゲームエリア内で再度対戦ゲームを行うことを、本願発明においては禁止しているのに対して、引用例1に記載された発明においては禁止しているか否か明瞭でない点。

(4)判断
上記相違点について、検討する。
<相違点1について>
請求人が主張する、メダルの投入実績や使用実績がプレイヤーの技量を示すこととなることは、メダルを投入してプレイを多く行い、結果として、技量やスキルが向上したことを意味していると解される。
一方、ゲーム装置におけるメダルの投入実績は、ゲーム装置におけるプレイの回数とほぼ関連することは常識である上、プレイヤーがプレイ回数を重ねるにしたがって、ゲームに習熟して、プレイヤーのゲーム上の技量が向上することも常識であるから、プレイヤーのプレイ回数がプレイヤーのゲーム上の技量と関連していることも、対戦型等のゲーム装置において、周知技術にすぎない(必要であれば、特開2000-140413号公報の【0011】?【0012】、【0060】【0064】、特開平9-173635号公報の【0029】、特開2001-9149号公報の【0043】等参照されたい)。
そして、引用例1に記載された発明と上記周知技術は、対戦型ゲームにおいて共通するものであるから、相互に利用し合うことに格別の困難性を見出し得ない。
そうすると、上記周知技術を参酌して、引用例1に記載された発明において、第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うためのエリア進出条件を、ゲーム進行手段第1のゲームエリア内で進行される対戦ゲームに注ぎ込んだプレイヤーのゲーム価値の量に関連付けるようにすること、すなわち相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

<相違点2について>
引用例1の上記記載事項7の記載、および同記載事項10の「・・・プレイヤーがプレイを中断した弥生賞のレースと同年度のダービーのレース時にプレイを再開したものとして扱い、ゲーム上では3ヶ月間持ち馬が休養していたものとみなしている。・・・なお、ゲーム上の時間の流れを逆転させることは好ましくないため、例えばダービー(6月)のレース時にプレイを中断し、弥生賞(3月)のレース時にプレイを再開した場合には、再開時のレースは翌年度の弥生賞(3月)であるとみなしている。すなわち、持ち馬は9ヶ月休養していた扱いとなる。」なる記載に基づけば、プレイヤーが弥生賞のレースに出走して中断した場合、再度レースを行うことを希望するプレイヤーに対応するプレイヤーデータを記録手段に記録させることができ、翌年度の弥生賞のレースに参加するように制御しているのであるから、必ずしも、再度当該年度の弥生賞に参加できない訳ではないものの、再度同じ年度の弥生賞のレースに参加できないようにすることがゲーム装置上好ましいことが示されている。
一方、引用例2に記載された技術事項の格闘ゲーム機は、ゲームデータ記録媒体に所定の条件を満たしたゲームの成績が記録されているとき、ゲーム利用者に対して、初級レベルであるジムカーナクラスの異なるレース場で3回以上優勝した場合に、一段階上のF3000クラスでレースを行うことを許可され、いずれかのレースにおいて2位以下になった時点でゲームが終了するものであり、また、引用例2に記載された技術事項の格闘ゲーム機の「格闘」は「対戦」といいかえることができることはいうまでもないことである。
そして、初級レベルのジムカーナクラスにおいては、2位以下になるとゲームが終了し、優勝するとこのクラスにおける異なるレース場に出場でき、また、このクラスの異なるレース場で合計3回以上優勝すると、上のクラスにおいてレースを行うことを許可するように制御されているのであるから、引用例2に記載された技術事項の格闘ゲーム機は、「1度出場した同じクラスの同じレース場には出場できない」なる構成を実質的に含んでいるということができる。
したがって、引用例2に記載された技術事項の格闘ゲーム機は、第1のゲームエリアである初級クラスの同一レース内で再び対戦ゲームを行うことを禁止しているといい換えることができる。したがって、引用例2は、上のクラスのレースへの出場許可と同じクラスの同じレースへの出場禁止を選別し得る機能を有する手段を実質的に備えているということができる。
さらに、引用例2に記載された技術事項の格闘ゲーム機において、ゲーム利用者が、ゲームとして過去のレースに出場してプレイした過去のレース成績、優勝したクラスおよびレース場のデータ、経過データ、およびゲームの成績をゲームデータ記録媒体に記録し、このデータを基に別の異なるレース場内でゲームを行うことがゲーム利用者に許可されるのであるから、その機能から見て、引用例2に記載された技術事項の「ゲームデータ記録媒体」「ゲームの成績」「ゲーム利用者」は、本願発明の「進出情報記録媒体」「エリア進出情報」「プレイヤー」といい換えることができる。
そうすると、引用例2に記載された技術事項には、実質的に以下の発明が記載されているということができる。
「進出情報記録媒体にエリア進出情報が記録されているとき、プレイヤーに対して、第1のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを禁止するとともに、第2のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを許可するエリア選別手段とを有する対戦型ゲーム装置」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)
そして、引用例1に記載された発明も引用例2に記載された発明も、対戦型ゲーム装置であるから、両者の間において相互に技術利用することに、格別困難であるということができない。
そうすると、引用例1に記載された発明の対戦型ゲーム装置のエリア選別手段において、進出情報記録媒体に、対戦ゲームを行うことを希望するプレイヤーに対応するエリア進出情報が記録されているときに、プレイヤーに対して、第1のゲームエリア内で対戦ゲームに参加しないことが好ましいことに代えて、引用例2に記載された発明を適用して、プレイヤーに対して、第1のゲームエリア内で対戦ゲームを行うことを禁止するようにすること、すなわち上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得ることができる程度のことにすぎない。

(5)作用効果
本願発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

(6)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-08 
結審通知日 2007-03-09 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願2001-244456(P2001-244456)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 小田倉 直人
林 晴男
発明の名称 対戦型ゲーム装置、対戦型ゲーム装置の制御方法及びプログラム  
代理人 黒田 壽  

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