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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1156882
審判番号 不服2003-12345  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-02 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 平成 5年特許願第313677号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月27日出願公開、特開平 7-163708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月14日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許法第17条の2第4項第1号に規定する目的(請求項の削除)に適合する平成15年4月21日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「遊技球の入賞により遊技者に利益を付与する第1入賞部および第2入賞部を有し、前記第1入賞部の下流に前記第2入賞部が設けられた弾球遊技機であって、
前記第1入賞部において遊技球を保留可能な保留部と、前記保留部に保留されなかった遊技球を前記第2入賞部へ誘導する誘導路とを備え、
前記第1入賞部は、前記保留部に遊技球を保留可能な状態と、前記保留部に保留された遊技球の保留を解除する状態とを形成し、かつ前記保留部に遊技球が保留されている状態では、後続の遊技球は前記保留部に保留されないようにする構成であり、
前記第1入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益よりも、前記第2入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益の方が大きい構成であることを特徴とする弾球遊技機。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-49181号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「パチンコ機の遊技盤上にパチンコ球が入る複数の入賞口を配設し、該入賞口のうち少なくとも一つにパチンコ球の入賞を検出する入賞球検出手段を設け、該入賞球検出手段によるパチンコ球の入賞の検出によつて発生する他の入賞を検出する特定球検出手段を有する他の入賞口と、該他の入賞口の開口部をパチンコ球に対して遮断・開放する開動部材と、を有する入賞装置を設け、前記特定球検出手段によるパチンコ球の検出に関連して前記開動部材を繰返し動作させて設定される入賞条件に応じて入賞確率の増大状態を作り出す入賞確率増大化手段を設け、前記入賞条件に応じて入賞球毎に賞品球としてのパチンコ球を供給する賞球供給装置を設け、該賞球供給装置を入賞確率の増大状態に応じて前記各入賞条件毎に賞品球の数を切換え自在に制御する賞球制御手段を設けたことを特徴とするパチンコ機。」(【特許請求の範囲】請求項1)、
「第1図において、1は本発明に係るパチンコ機の遊技盤であり、・・・、遊技盤1の誘導レール2の外方部分はパチンコ球が打込まれない非遊技部3とされ、遊技盤1の誘導レール2に囲まれるその内方部分はパチンコ球が打込まれる遊技部4とされている。・・・遊技部4には、・・・、パチンコ球入賞の都度一定量の賞品球を払出すためのみの普通の入賞口8,8と、・・・ランプ付入賞口9,9と、入賞装置としてのセンター役物10と、センター役物補助ユニット11と、・・・外れ口12とが配設されている。
補助ユニット11は第1始動入賞口13,13と第2始動入賞口14とカバー15とを備えており、始動入賞口13,14は普通の入賞口としての機能の他、センター役物10に関連した特別の機能も有するものである。カバー15はケース状をなして3つの始動入賞口13,14全てにかぶさるように遊技部4上に固着されている。このカバー15の上部には各始動入賞口13,14にパチンコ球を導く球入口(図示略)が開設され、各球入口の上方には障害釘16が2本ずつ打設されている。尚、この障害釘16は遊技部4上に多数存在するもので、ここでは、図示を省略している。」(第2頁左欄下段第14行?第3頁左欄上段第6行)、
「センター役物10は第2図に示すようにそのボディ17が前板部18とケース部19とから構成されており、・・・。
ケース部19の正面側は開口されており、その開口部25の下部には所定の入賞口26と他の入賞口27,27とが横一列に並設されている。これらの入賞口26,27,27は、普通の入賞口としての機能を有する他、センター役物10に関連する特別の機能を有している。・・・、開口部25は、・・・(・・・球入口部33・・・。)を除いて囲繞され、その囲まれている部分からのパチンコ球の侵入が阻止されるようになっている。
各球入口部33の前方には開動部材としての案内羽根34が設けられており、各案内羽根34はそれぞれ各球入口部33を開閉するものである。」(第3頁左欄上段第7行?同頁左欄下段第10行)、
「パチンコ機は第1図に示すように遊技盤1上に遊技者がパチンコ球を打ち放つことによって、そのパチンコ球が天穴入賞口20、入賞口8,8.ランプ付入賞口9,9、第1始動入賞口13、第2始動入賞口14、入賞口26および入賞口27のいずれかに入ることによって、・・・賞品球としての所定数のパチンコ球を遊技者に供給するようになっている。」(第6頁左欄上段第7?15行)、
「第1始動入賞口13,13のいずれかに入賞球が入った時、・・・案内羽根34,34が0.5秒間開放する。これを小役という。また、第2始動入賞口14に入賞球が入った時、同じようにして、案内羽根34,34が0.75秒間の開放を2回行なう。この小役と中役とのいずれかの間において、入賞口27,27,26のいずれかに入賞球が入ることによって、この入賞球毎に7個の賞品球を供給することである。」(第6頁左欄下段第5?16行)、
「第1始動入賞口13,13、第2始動入賞口14または他の入賞口に、周知の障害釘16を操作し、入賞球が入り易くして、入賞確率を増大させる。このように入賞確率を高くして7個の賞品球の供給回数を多くし、一方、入賞確率を低くして13個の賞品球の供給を行なう。また、7個の賞品球の供給を13個よりも優先して供給したり、逆に13個を7個よりも優先して供給することができる。さらに、7個の賞品球の供給を記憶しておき、大役終了後に一括して供給することができる。」(第10頁左欄上段第8?18行)、
「(発明の効果)
・・・パチンコ機は、入賞口を遮断・開放する開動部材を備えた構造で遊技盤上に配設された複数の入賞口のうちいずれかに入る入賞球によって作り出される入賞条件に対して、供給される賞品球の数を入賞確率が高い時には少なくして供給回数を多くし、低い時には賞品球の数を多くするように賞品球の数を切り換えることができることから遊技者に新たな遊技性と遊技意欲とを提供でき、しかも遊技者側と遊技機管理者側との間の利益の調和が維持できる。」(第10頁右欄上段第1?12行)、
との記載が認められる。また、第1図より、第2始動入賞口14の側方に第1始動入賞口13,13が設けられていると認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「パチンコ球の入賞により遊技者に案内羽根34,34を開放することで役を付与する第1始動入賞口13,13および第2始動入賞口14を有し、前記第2始動入賞口14の側方に前記第1始動入賞口13,13が設けられたパチンコ機であって、
前記第2始動入賞口14にパチンコ球が入った時、案内羽根34,34が0.75秒間の開放を2回行なうことで遊技者に付与される中役という利益よりも、前記第1始動入賞口13,13にパチンコ球が入った時、案内羽根34,34が0.5秒間開放することで遊技者に付与される小役という利益の方が小さい構成であるパチンコ機。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「パチンコ球」、「案内羽根34,34を開放することで役を付与する」、「第2始動入賞口14」、「第1始動入賞口13,13」、「パチンコ機」、「第2始動入賞口14にパチンコ球が入った時、案内羽根34,34が0.75秒間の開放を2回行なうことで遊技者に付与される中役という利益」および「第1始動入賞口13,13にパチンコ球が入った時、案内羽根34,34が0.5秒間開放することで遊技者に付与される小役という利益」は、本願発明における「遊技球」、「利益を付与する」、「第1入賞部」、「第2入賞部」、「弾球遊技機」、「第1入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益」および「第2入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「側方」と、本願発明の「下流」は、「任意の位置関係」で共通し、また、引用例1発明の「小さい」と、本願発明の「大きい」は、「利益の大きさに差がある」で共通する。したがって、両者は、

「遊技球の入賞により遊技者に利益を付与する第1入賞部および第2入賞部を有し、前記第1入賞部に対する任意の位置関係に前記第2入賞部が設けられた弾球遊技機であって、
前記第1入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益よりも、前記第2入賞部に遊技球が入賞した場合に遊技者に付与される利益の方が利益の大きさに差がある構成である弾球遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1、第1入賞部と第2入賞部との位置関係において、本願発明では、第1入賞部の「下流」に第2入賞部を設けているのに対して、引用例1発明では第2始動入賞口14の「側方」に第1始動入賞口13,13を設けている点、および、第1入賞部と第2入賞部との遊技者に付与される利益の大きさの差において、利益が大となる方である本願発明の第2入賞部と引用例1発明の第2始動入賞口とでは、第2入賞部が第1入賞部の下流側であるのに対して、第2始動入賞口が第1始動入賞口の中央側である点、

相違点2、遊技球の落下規制において、本願発明は、「第1入賞部において遊技球を保留可能な保留部と、前記保留部に保留されなかった遊技球を第2入賞部へ誘導する誘導路とを備え、前記第1入賞部は、前記保留部に遊技球を保留可能な状態と、前記保留部に保留された遊技球の保留を解除する状態とを形成し、かつ前記保留部に遊技球が保留されている状態では、後続の遊技球は前記保留部に保留されないようにする構成」であるのに対して、引用例1発明の第2始動入賞口は、そのような構成となっていない点、

4.判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、弾球遊技機分野において、弾球の落下を利用して、遊技領域の上部位置の入賞口の下流である下部位置の入賞口を設けることが普通に行われている常套手段(例えば、特開平3-29677号公報(第2頁左欄下段第10?14行等、第1図)、特開昭55-58183号公報(第2頁左欄下段第6行等、第1図)参照。)であり、第1入賞部と第2入賞部の位置関係において、引用例1発明の第2始動入賞口の「側方」に第1始動入賞口を設けるようにするのに代え、前記周知技術を採用して、本願発明のように、第1入賞部の「下流」に第2入賞部が設けられるようにすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。そしてまた、本願発明の第2入賞部と引用例1発明の第2始動入賞口とでは、第2入賞部が遊技面中央線から離れる外側であるのに対して、第2始動入賞口が遊技面中央線上の内側であり、内外の位置関係が逆になっているが、利益の大きさの差の大小関係において、利益の大きい方を上流側にするか下流側にするか、または、側方側にするか中央側にするかは、遊技者または遊技店にとって任意に配置された入賞口をどのような利益配分に設定するかの違いであり、入賞しやすいか否か、および、入賞球の払い出し数に差をつけるか否か等に基づいて、遊技店側で適宜選択できるものであり、その選択に当たり、格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。

相違点2について、弾球遊技機分野において、始動入賞装置上で打球を待機させて、次の打球が始動入賞装置に流入することがないようにすることが周知(例えば、特開平5-200145号公報(段落【0028】等、第1図等)、特開平4-244179号公報(段落【0015】、【0024】等、第1・2図等)参照。)であり、引用例1発明の第2始動入賞口に代えて、前記周知技術を採用して、本願発明のように構成することは、格別の創意工夫を要したものとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。またその際に、待機する打球に阻まれた次の打球が下流に落下する場合について検討すると、従来、遊技領域を落下する打球が下流の入賞部に入りやすくするため誘導手段を設けることが周知(例えば、特開平5-7645号公報(段落【0022】等、第1.3図等)、特開昭63-194684号公報(第4頁右欄下段第14?17行、第5頁左欄上段第13?18行等、第6図等)参照。)であり、本願発明の「保留部に保留されなかった遊技球を第2入賞部へ誘導する誘導路を備え」るような構成とすることは、前記周知技術を適用すれば、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。そしてまた、この分野においては、一般的に、入賞装置の取付基板の前面上部に、ほぼ円形の囲枠を突設し、該囲枠内に回転体を収納し、囲枠の上部に、打球を受け入れるための侵入口を開設し、一方、回転体に、打球を1個受け入れる大きさの受入凹部を形成して、常時回転している回転体の受入凹部が侵入口と合致したときに侵入口から侵入する打球を受入凹部に受け入れ、取付基板に形成された通過穴を通過させて取付基板の後方へ誘導するようにし、受入凹部が侵入口と合致していないときに打球が侵入口に到達した場合には、打球を、回転体の外周側部に当接した状態で侵入口部分で待機した状態として、受入凹部が上部位置に来たときに受入凹部内に落入するようにすることが周知(一例として、特開平4-244179号公報(段落【0011】、【0015】等、第1・2図等)参照。)であり、引用例1発明の第2始動入賞口に代えて、前記周知技術を採用して、本願発明のように「保留部に遊技球を保留可能な状態と、前記保留部に保留された遊技球の保留を解除する状態とを形成し、かつ前記保留部に遊技球が保留されている状態では、後続の遊技球は前記保留部に保留されないようにする」構成とすることは、格別の発明力を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および引用例1に記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-23 
結審通知日 2007-02-26 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願平5-313677
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明一宮 誠  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 小田倉 直人
林 晴男
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 池田 敏行  
代理人 岩田 哲幸  

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