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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1156893
審判番号 不服2004-3738  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 平成6年特許願第5531号「フレクスリジッドプリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月11日出願公開、特開平7-212035号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年1月24日の出願であって、平成16年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において、平成18年11月16日付けで拒絶理由を通知したところ、平成19年1月22日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願の発明
本願の請求項1に係る発明は、平成15年12月26日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のもの(以下、「本願発明」という)と認められる。
「【請求項1】 フレキシブルプリント配線板表面に完成後折り曲げ加工する部分が遮光部となるように選択的に紫外線を照射した後、ローフロープリプレグを介してリジッドプリント配線板と重ね合わせ、加熱圧着することを特徴とするフレクスリジッドプリント配線板の製造方法。」

3.引用例とその記載事項
当審において通知した平成18年11月16日付けの拒絶理由で引用例1として引用した特開昭61-58294号公報(以下、「引用例」という)には、「印刷配線板の製造法」に関して、第1図?第6図(b)とともに次の事項が記載されている。
ア.「第1図及び第2図は第1の実施例を示すもので、まず、可撓部及び硬質部の内層を構成する可撓性印刷配線基板11に周知の工程によってパターン形成処理を施す。11aはパターン形成するランドを示す。次に基板11の可撓部となる部分の両面にカバーレイ材12を積層する。このカバーレイ材12は可撓部のパターン保護の見地からフィルムカバーレイが適しており、また可撓部の周辺部から少し硬質部にはみ出す大きさで形成されることが多い。尚、第1図においてA及びCで示す範囲が硬質部、Bで示す範囲が可撓部である。
次にBで示す可撓部に対応する部分のカバーレイ材12の表面に剥離用インク13を印刷する。この剥離用インク13に要求される性能は、密着力が低いこと、凝集力がないこと、耐熱性がないこと(過硬化性)等であり、比較的グレードの低い塗料が流用できるほか、印刷配線基板の製造時に用いられるエッチングレジストインクやソルダーマスクインク等を利用することができる。
次に、第1図においてB1及びB3で示す可撓部と硬質部の境界部に一部を除いて幅の狭いスリット14a及び15a,15a’を設けた接着剤またはプリプレグのシート14及び硬質印刷配線基板15,15’を両面の全面に重ね、加熱加圧して積層する。この時、境界部より内部のB2で示す範囲のシート14と基板15,15’の部分は、スリット14a,15a,15a’が途切れた部分に形成される連結部16を介して硬質部の部分と連続している。尚、基板15,15’が両面タイプの場合には、内面には予めパターン形成を行っておく。
こうして積層を終って全体が一体化された基材17は、従来の多層両面スルーホール基板と同様な工程(銅スルーホール、半田スルーホール、金スルーホール、アディティブ法等)によってスルーホールの形成、パターン形成等の処理が行われ、パターン形成の終った基材17は最後に外形打抜き加工を行う。18は可撓部基板除去用穴であり、外形打抜き加工の際に連結部16を切落とし、上記穴18と金型形状及び金型の移動効果によって可撓部の両面に存在していた接着剤またはプリプレグのシート14及び基板15,15’の除去する。こうしてBの部分は可撓性のある文字通りの可撓部となる。」(第2頁左下欄第15行?第3頁左上欄第16行)

4.発明の対比
(1)本願発明の構成事項と、引用例の記載事項とを対比する。
引用例の「可撓性印刷配線基板11」、「硬質印刷配線基板15,15’」は、それぞれ、本願発明の「フレキシブルプリント配線板」、「リジッドプリント配線板」に相当し、引用例の「印刷配線板の製造法」は、本願発明の「フレクスリジッドプリント配線板の製造方法」と同様に、可撓性印刷配線基板11(フレキシブルプリント配線板)と硬質印刷配線基板15,15’(リジッドプリント配線板)とを加熱圧着するものである。また、引用例の「接着剤またはプリプレグのシート14」は、可撓性印刷配線基板11(フレキシブルプリント配線板)と硬質印刷配線基板15,15’(リジッドプリント配線板)とを重ね合わせ接着するための「プリプレグ」である限りにおいて、本願発明の「ローフロープリプレグ」に相当する。

(2)以上の対比関係から、引用例には、次の発明が記載されているとみることができ、これは本願発明との一致点といえる。
【一致点】
「フレキシブルプリント配線板表面に、プリプレグを介してリジッドプリント配線板と重ね合わせ、加熱圧着するフレクスリジッドプリント配線板の製造方法。」
に係る発明である点。

(3)一方、引用例に記載された発明と本願発明との間に、次の相違点が認められる。
【相違点1】
プリプレグに関して、本願発明では「ローフロープリプレグ」と限定しているのに対して、引用例に記載された発明ではそのような限定がない点。

【相違点2】
本願発明では、フレキシブルプリント配線板表面に「完成後折り曲げ加工する部分が遮光部となるように選択的に紫外線を照射した後」、リジッドプリント配線板と重ね合わせるのに対して、引用例に記載された発明では、リジッドプリント配線板(硬質印刷配線基板15,15’)と重ね合わせる前にフレキシブルプリント配線板(可撓性印刷配線基板11)表面に紫外線を照射していない点。

5.当審の判断
(1)上記相違点1について検討する。
フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板とを接着するプリプレグとしてローフロープリプレグを用いることは従来周知の技術であるから(例えば、当審において通知した平成18年11月16日付けの拒絶理由で周知例1、2として示した特開平5-48268号公報、特開昭62-174996号公報参照)、引用例に記載された発明において、プリプレグとしてローフロープリプレグを用い、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることに、格別の技術的困難性があるとは認められない。

(2)上記相違点2について検討する。
接着性を向上させるために接着面に紫外線を照射することは従来周知の技術であるから(例えば、当審において通知した平成18年11月16日付けの拒絶理由で周知例3、4として示した特開平5-61063号公報、特開平3-76630号公報参照)、引用例に記載された発明において、プリプレグを介してリジッドプリント配線板(硬質印刷配線基板15,15’)が重ね合わせられて接着されるフレキシブルプリント配線板(可撓性印刷配線基板11)表面の接着面に、接着性を向上させるために紫外線を照射することが、当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。
また、引用例には、可撓性を要する部分、すなわち完成後折り曲げ加工する部分には、プリプレグが接着しないような処理をする点が記載されている(剥離用インク13を参照)ことを考慮すれば、引用例に記載された発明において、接着性を向上させるために接着面に紫外線を照射するという従来周知の技術を適用するにあたり、完成後折り曲げ加工する部分では紫外線を照射せずにプリプレグとの接着性を向上させないようにすることは、当業者であれば容易になし得る設計事項と認められる。さらに、場所によって必要とされる接着性が異なることに対応した選択的な紫外線の照射を従来周知の遮光部材(例えば、上記特開平3-76630号公報(周知例4)のマスク(6)、当審において通知した平成18年11月16日付けの拒絶理由で周知例5として示した特開平4-99292号公報のマスクプレート11を参照)を用いて行うことも、当業者であれば容易になし得る設計事項と認められる。
したがって、引用例に記載された発明において、上記各周知技術(接着性を向上させるために接着面に紫外線を照射する技術、遮光部材を用いた選択的な紫外線の照射の技術)を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことというべきである。

(3)上記相違点1、2で指摘した構成を併せ備える本願発明の作用効果は、引用例の記載事項及び上記各周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。

6.請求人の主張
請求人は、周知例3、4について、平成19年1月22日付けの意見書で以下のように主張する。
「周知例3及び4には、紫外線を照射して接着性を付与することが記載されているだけで、フレキシブルプリント配線板表面に照射することについても、フレキシブルプリント配線板表面に(完成後折り曲げ加工する部分が遮光部となるように)選択的に紫外線を照射することにより、ローフロープリプレグとの接着性をコントロールして、選択的にリジッドな部分(接着した部分)とフレキシブルな部分(非接着部)として、非接着部を折り曲げ可能とすることについても、何ら示唆する記載は存在しない。」
しかしながら、周知例3、4は、接着性を向上させるために接着面に紫外線を照射することが従来周知の技術であることを示す周知例であり、このような接着性の向上に関する従来周知の技術を、引用例に記載された発明のプリプレグとの接着性が必要とされるフレキシブルプリント配線板(可撓性印刷配線基板11)表面の一部分(剥離性を有する部分以外の部分)のみに選択的に適用することを妨げる事由は見あたらず、上記5.(2)に記載したように、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことというべきである。

さらに、請求人は、本願発明の効果について、同意見書で以下のように主張する。
「本願請求項1に係る発明は、プリプレグのくり抜き加工を要せず、また、上記剥離用インク13の層、剥離部(1b)などを設けずに、ローフロープリプレグを介してリジッドプリント配線板と重ね合わせ、加熱圧着する際に、この部分に紫外線を照射しないようにして、非接着部とすることで、極めて簡単な工程で所要の箇所を折り曲げることができるフレクスリジッドプリント配線板を得ることができるという効果を奏する。この効果は、引用例1又2の記載事項及び上記周知技術から、予測できない極めて顕著な効果であり、極めて簡単な工程でフレクスリジッドプリント配線板を製造することができ、当業者が予測できる程度のものではない。」
しかしながら、本願発明には、ローフロープリプレグをくり抜き加工しないで折り曲げ加工する部分を含むフレキシブルプリント配線板の全面に重ねるという限定及び剥離用インク13の層などを設けないという限定はなされておらず、この「プリプレグのくり抜き加工を要せず、また、上記剥離用インク13の層・・・などを設けずに、・・・極めて簡単な工程で所要の箇所を折り曲げることができるフレクスリジッドプリント配線板を得ることができるという効果を奏する」という主張に根拠を見出すことはできない。
また、接着用プリプレグのくり抜き加工をしなくても所要の箇所で折り曲げることができるフレクスリジッドプリント配線板を得ることができるという効果は、プリプレグが接着しないような部分(剥離性を有する部分)をフレキシブルプリント配線板(可撓性印刷配線基板11)表面に形成する引用例に記載された発明も奏する効果であるし、周知例3、4に記載された周知技術のように紫外線照射により接着性を向上させれば、機械的又は化学的粗化のような前処理は不要であるから、本願明細書の段落【0015】に記載の本願発明の「接着用プリプレグのくり抜き加工をしなくても、所要の箇所で折り曲げることができるフレクスリジッドプリント配線板を得ることができる。またフレキシブルプリント配線板の前処理も不要である。」という効果は、上記5.(3)に記載したように、引用例の記載事項及び上記各周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-05 
結審通知日 2007-03-06 
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願平6-5531
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 永安 真
柴沼 雅樹
発明の名称 フレクスリジッドプリント配線板の製造方法  
代理人 穂高 哲夫  

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