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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1156905
審判番号 不服2004-9992  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-13 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 平成7年特許願第186794号「電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年2月7日出願公開、特開平9-36592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年7月24日の出願であって、平成16年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月11日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年6月11日付の手続補正(明細書についての手続補正であって、以下、「本件補正」ともいう。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年6月11日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「間欠的に回転駆動される回転テーブルと、前記回転テーブルの周縁に上下方向に移動可能に取り付けられた複数の吸着ノズルユニットと、前記回転テーブルと同軸に前記回転テーブルの内側に設けられ前記回転テーブルの間欠的な回転に伴って前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させる固定部・上下移動部複合カム溝を全周に亘って有する円筒カムと、前記円筒カムの上下移動部を上下方向に移動させる回転カム及びレバー機構と、前記吸着ノズルユニットに設けられ前記カム溝内を移動して前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させるカムフォロワーとを有する電子部品装着装置であって、部品の吸装着動作時に、前記円筒カムの上下移動部のカム溝内に前記カムフォロワーを前記回転テーブルの回転方向に移動させながら、前記回転カム及びレバー機構により前記円筒カムの上下移動部を先ず下方向に移動させた後上方向に移動させるように構成し、前記カムフォロワーは、前記吸着ノズルユニットに固定されて前記カム溝内を走行する第1ローラと、前記吸着ノズルユニットに上下微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えることを特徴とする電子部品装着装置。」
と補正された。
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「部品の吸装着動作時に」の構成を、願書に最初に添付された明細書または図面に記載された技術的事項によって、「部品の吸装着動作時に、前記円筒カムの上下移動部のカム溝内に前記カムフォロワーを前記回転テーブルの回転方向に移動させながら、前記回転カム及びレバー機構により前記円筒カムの上下移動部を先ず下方向に移動させた後上方向に移動させるように構成し、」と限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-8398号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電子部品装着機」に関して、第1?6図とともに次のような記載がある。
A)「本発明は、チップ状の電子部品をプリント基板の所定位置に順次装着する電子部品装着機に関するものである。」(第1頁右下欄1?3行)
B)「本発明は・・・、吸着ノズルユニットを複数個具備した回転テーブルの間欠回転運動の途中から円筒カム部材の一部であるスライダーを下降させることにより吸着ノズルユニットは下降し、又スライダーの上昇途中から回転テーブルの間欠回転運動を開始することにより、吸着ノズルユニットの上下動作と回転動作をオーバーラップすることができ電子部品装着機の高速化を実現することができる。」(第2頁右上欄18行?左下欄6行)
C)「1は間欠回転運動を駆動するインデックスユニットであり、その出力軸2に回転テーブル3が取付けられている。その回転テーブル3の周縁には、吸着ノズルユニット4が複数個等間隔で固定されている。
5は円筒カムで全周にわたってカム溝6が設けられている。7a,7bはスライダーで、前記円筒カム5の一部に切欠きが設けてあり、その中に上下動可能に案内されている。8a,8bはスライダー7a,7bの上下動を伝達するレバーであり、9a,9bはそのレバー8a,8bを駆動する板カムである。10a,10bはバネで、レバー8a,8bを板カム9a,9bのカム面に付勢するものである。
吸着ノズルユニット4の構成を述べると、11は上下動するブロックで、カムフォロワー12が取付けてあり、カム溝6及びスライダー7a,7bに沿って上下動作可能に取付けてある。13は吸着ノズルで、部品供給ユニット14から電子部品を吸着保持し、プリント基板15に装着する。」(第2頁左下欄10行?右下欄9行)
D)「インデックスユニット1により出力軸2及び回転テーブル3は間欠回転動作を開始する。その間欠回転動作の完了前から、板カム9a,9bの変位に沿って、レバー8a,8bは揺動運動をスタートし、スライダー7a,7bのカム溝6に入っているカムフォロワー12も下降を開始する。それに伴なって、吸着ノズル13も下降を開始する。そして出力軸2,及び回転テーブル3が間欠回転動作を完了した後に吸着ノズル13は下死点に到達し、部品供給ユニット14から電子部品を吸着保持する。又、同様にしてプリント基板15に電子部品を装着する。
さらに板カム9a,9bが回転していくと、吸着ノズル13は上昇を開始し、その上昇途中で、出力軸2及び回転テーブル3が間欠回転運動を開始する。」(第2頁右下欄12行?第3頁左上欄7行)

上記A)?D)の記載からみて、上記刊行物1の電子部品装着機は、インデックスユニット1により間欠的に回転駆動される回転テーブル3と、前記回転テーブル3の周縁に上下方向に移動可能に取り付けられた複数の吸着ノズルユニット4とを有すると共に、第1図から明らかなように、前記回転テーブル3の内側に該回転テーブル3と同軸に円筒カム5が設けられ、該円筒カム5には、前記回転テーブル3の間欠的な回転に伴って前記吸着ノズルユニット4を上下方向に移動させるカム溝6が、円筒カム5の外周面と該外周面上を上下方向に移動するスライダー7a,7bの外周面の両方に亘って全周に形成され、該円筒カム5のスライダー7a,7bは、板カム9a,9b及びレバー8a,8bにより上下方向に移動すると共に、前記吸着ノズルユニット4には、該吸着ノズルユニット4に固定されて前記カム溝6内を走行(移動)し、吸着ノズルユニット4を上下方向に移動させるカムフォロワー12が設けられているものと認められ、部品の吸装着動作時には、前記吸着ノズルユニット4が前記カムフォロワー12を前記スライダー7a,7bのカム溝6内で前記回転テーブル3の回転方向に移動させながら、前記板カム9a,9b及びレバー8a,8bにより前記スライダー7a,7b上を先ず下方向に移動し、その後上方向に移動するように構成されているものと認められる。
したがって、上記刊行物1には、
「間欠的に回転駆動される回転テーブル3と、前記回転テーブル3の周縁に上下方向に移動可能に取り付けられた複数の吸着ノズルユニット4と、前記回転テーブル3と同軸に前記回転テーブル3の内側に設けられ前記回転テーブル3の間欠的な回転に伴って前記吸着ノズルユニット4を上下方向に移動させるカム溝6を全周に亘って有する円筒カム5と、前記円筒カム5のスライダー7a,7bを上下方向に移動させる板カム9a,9b及びレバー8a,8bと、前記吸着ノズルユニット4に設けられ前記カム溝6内を移動して前記吸着ノズルユニット4を上下方向に移動させるカムフォロワー12とを有する電子部品装着機であって、部品の吸装着動作時に、前記円筒カム5のスライダー7a,7bのカム溝6内に前記カムフォロワー12を前記回転テーブル3の回転方向に移動させながら、前記板カム9a,9b及びレバー8a,8bにより前記円筒カム5の上下移動部を先ず下方向に移動させた後上方向に移動させるように構成し、前記カムフォロワー12は、前記吸着ノズルユニット4に固定されて前記カム溝6内を走行する電子部品装着機。」の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているものと認める。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-26558号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「案内装置」に関して、図1?4とともに次のような記載がある。
E)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カム溝を用いた案内装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来この種の案内装置は、被案内部材を連接した円筒状のカムフォロワーをカム溝に挿入し、該カムフォロワーをカム溝に沿って移動させるもの・・・であった。」
F)「【0008】
【作用】本発明の案内装置は、カム溝に挿入したカムフォロワーに補助軸を並立して連結し、さらに、カムフォロワーをカム溝の一方の壁面に圧接し、補助軸をカム溝の他方の壁面に圧接するバネを備えている。従って、カムフォロワーあるいはカム溝の壁面が摩耗して、カムフォロワーとカム溝とのあそび量が増加した場合にも、カムフォロワーと補助軸とが常にカム溝の壁面に接するため、バックラッシュの発生を防ぐことができる。」
G)「【0010】2は上端側に係止部2Aが形成された主軸である。主軸2の下端付近には輪帯状の止め輪10Aが固定されている。主軸2には止め輪10Aの上に重ねてベアリング3Aが挿通されている。ベアリング3Aの外径はカム溝4の溝幅(壁面4Aと壁面4Bとの間隔)より僅かに小さい程度である。さらに円筒状のカラー9Aがベアリング3Aの上に重ねて主軸2に挿通されている。主軸2と、止め輪10Aと、ベアリング3Aと、カラー9Aとでカムフォロワー8を形成している。6は上端側に係止部6Bが形成された補助軸である。主軸2と同様にして止め輪10B、ベアリング3B、カラー9Bが補助軸6に挿通されている。連結板5には主軸2と補助軸6それぞれの軸の径に応じた貫通孔が設けられている。連結板5は主軸2と補助軸6とにより係止部2A、6Bとカラー9A、9Bとの間に挿通され、主軸2と補助軸6とを並立して連結している。このときベアリング3A、3Bとが接触しないように連結板5の2つの貫通孔の位置は調整されている。また、カラー9A、9Bの全長を調整することにより、連結板5、ベアリング3A、3Bは係止部2A、6Bと止め輪10A、10Bとの間にほとんど隙間なく挿通され、上下動が抑制されている。主軸2と補助軸6の係止部2A、6Bにはつる巻きバネ7の各端が固定されている。また、主軸2の上端部には被案内物体1が連接されている。カムフォロワー8と補助軸6は図2に示すようにつる巻きバネ7をねじった状態で主軸2と補助軸6とが並立したままカム溝4に挿入される。このとき主軸2の下端および補助軸6の下端と、カム溝4の下面4Cとの間には僅かに隙間が設けられている。
【0011】上記の如く構成された案内装置において、被案内部材1とカム溝4とは相対移動し、被案内部材1はカム溝4に沿って案内される。このとき主軸2と補助軸6とは平行状態を保ったまま移動する。また、つる巻きバネ7によりベアリング3Aはカム溝4の壁面4Bに、ベアリング3Bはカム溝4の壁面4Aに圧接され、壁面4A、4Bと回転接触する。」
H)「【0012】被案内部材1の案内方向が逆転する時にもベアリング3A、3Bがつる巻きバネ7の付勢力によりカム溝4の壁面4A、4Bに接触しているため、案内方向が逆転する時のバックラッシュの発生を防ぐことができる。例えば、図3に示すような曲線状のカム溝4をカムフォロワー8と補助軸6が矢印41の方向に移動しているときにも補助軸6のベアリング3Bはバネ7の付勢力により壁面4Aに圧接されているため、矢印42の方向に移動方向が逆転する時にバックラッシュが発生しない。」

上記E)?H)の記載からみて、上記刊行物2における案内装置は、被案内部材を連接した円筒状のカムフォロワーをカム溝に挿入し、該カムフォロワーをカム溝に沿って移動させる案内装置、言い換えれば、被案内部材に設けられカム溝内を移動して前記被案内部材を移動させるカムフォロワーを有する案内装置を改良したものであって、前記カムフォロワーを、被案内部材1に固定されてカム溝4内を走行するベアリング3Aと、前記被案内部材1にその移動方向に微動可能に取り付けられ前記カム溝4内を走行するベアリング3Bと、前記ベアリング3A、3Bとをそれぞれ前記カム溝4の両側面4B、4Aに押圧するように付勢するつる巻きバネ7とを備えるように構成し、これにより、被案内部材1の案内方向が逆転する時にも、ベアリング3A、3Bがつる巻きバネ7の付勢力によりカム溝4の壁面に圧接されているようにして、バックラッシュが発生しないようにしているものと認められる。
そして、上記「ベアリング3A、3B」は、それぞれ「第1ローラ」、「第2ローラ」と言い換えることができるとともに、これらをカム溝の両側面に押圧するように付勢する「つる巻きバネ7」は、これらをカム溝の両側面に押圧するように付勢する「バネ部」であるから、上記刊行物2には、
「被案内部材に設けられカム溝内を移動して前記被案内部材を移動させるカムフォロワーを有する案内装置において、カムフォロワーを、被案内部材に固定されてカム溝内を走行する第1ローラと、前記被案内部材にその移動方向に微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えるように構成する」発明(以下、「刊行物2の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願補正発明と上記刊行物1の発明との対比
そこで、本願補正発明と上記刊行物1の発明とを対比すれば、上記刊行物1の発明の「カム溝6」は、固定部である円筒カム5の外周面と、該外周面上を上下方向に移動する上下移動部であるスライダー7a,7bの外周面の両方に亘って全周に形成されたカム溝であるから本願補正発明の「固定部・上下移動部複合カム溝」に相当し、以下同様に「板カム9a,9b」は「回転カム」に、「レバー8a,8b」は「レバー機構」に、「電子部品装着機」は「電子部品装着装置」に、それぞれ相当している。
したがって、本願補正発明は上記刊行物1の発明と、
「間欠的に回転駆動される回転テーブルと、前記回転テーブルの周縁に上下方向に移動可能に取り付けられた複数の吸着ノズルユニットと、前記回転テーブルと同軸に前記回転テーブルの内側に設けられ前記回転テーブルの間欠的な回転に伴って前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させる固定部・上下移動部複合カム溝を全周に亘って有する円筒カムと、前記円筒カムの上下移動部を上下方向に移動させる回転カム及びレバー機構と、前記吸着ノズルユニットに設けられ前記カム溝内を移動して前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させるカムフォロワーとを有する電子部品装着装置であって、部品の吸装着動作時に、前記円筒カムの上下移動部のカム溝内に前記カムフォロワーを前記回転テーブルの回転方向に移動させながら、前記回転カム及びレバー機構により前記円筒カムの上下移動部を先ず下方向に移動させた後上方向に移動させるように構成し、前記カムフォロワーは、前記吸着ノズルユニットに固定されて前記カム溝内を走行する電子部品装着装置。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
本願補正発明におけるカムフォロワーは、吸着ノズルユニットに固定されて前記カム溝内を走行する第1ローラと、前記吸着ノズルユニットに上下微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えているのに対し、上記刊行物1の発明におけるカムフォロワー12は、そのようには構成されていない点。

4.判断
刊行物2には、被案内部材に設けられカム溝内を移動して前記被案内部材を移動させるカムフォロワーを有する案内装置において、被案内部材の案内方向が逆転する時にもバックラッシュが発生しないように、カムフォロワーを、被案内部材に固定されてカム溝内を走行する第1ローラと、前記被案内部材に微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えるように構成する発明が記載されている。そして、バックラッシュが発生しないということは、カムフォロワーのローラとカム溝の非接触側の側面とが相互の相対移動により衝突しないということでもある。
してみれば、刊行物1の発明において、吸着ノズルユニットが移動方向を変える際、カムフォロワーのローラとカム溝の非接触側のカム溝面とが相対移動して衝突しないようにするために、カムフォロワーを、被案内部材である吸着ノズルユニットに固定されてカム溝内を走行する第1ローラと、前記吸着ノズルユニットに、その移動方向である上下方向に微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えるように構成することは、上記刊行物1の発明に上記刊行物2の発明を適用することにより、当業者が容易に行うことができたものである。
(請求人は、審判請求書の手続補正書で、「引用文献1記載の発明においては、・・・円筒カムの上下移動部が下降動から上昇動に方向を変える際に、カムフォロワーのローラとカム溝との間に存在するギャップのため、カムフォロワーのローラとカム溝の側面とが衝突し、この衝突によって生ずる衝撃的振動が吸着ノズルに伝わり、上記問題点が生じたのであります。・・・
本願発明は、・・・部品吸装着動作時に、カムフォロワーの第1ローラ、第2ローラがカム溝の側面に衝突することが無く、衝突による振動発生を未然に防止できることにより部品実装精度を維持できるようしたものですので、真に高速実装を可能にしうるという格別の効果を奏しうるのであります。
・・・引用文献2記載の発明には、部品実装機における高速実装の実現という課題は全く存在しません。また円筒カムの上下移動部の上下動が吸着ノズルに与える振動の問題についての課題認識も全く存在しません。
本願発明は上述のように、引用文献1記載の発明の問題点の認識、その原因究明があってはじめて成立するものです・・・」と主張しているが、刊行物1の発明において、吸着ノズルユニットが移動方向を変える際、カムフォロワーのローラとカム溝との間にギャップが存在する場合には、該ギャップに起因するローラとカム溝の相対移動によりローラがカム溝の非接触側の側面に衝突することは当業者において自明であり、この衝突によって生ずる衝撃的振動が吸着ノズルに伝わり部品実装精度に悪影響を与えるであろうことは当業者が容易に想到しうるところである。そして、このような衝突が、ローラとカム溝との間にギャップが存在するという、部品実装機特有でない原因に起因するものであることは当業者において自明であるところ、上記刊行物2には、被案内部材の案内方向が逆転する時に、カムフォロワーのローラと該ローラに接触していなかった側のカム溝の側面とが相互の相対移動により衝突しないように、カムフォロワーを、被案内部材に固定されてカム溝内を走行する第1ローラと、前記被案内部材に微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えるように構成する発明が記載されているのであるから、この発明を刊行物1の発明のカムフォロワーに適用すれば、吸着ノズルユニットの逆転に伴うローラとカム溝の相対移動による衝突が避けられることは当業者が容易に予測しうるところというべきである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。)

そして、本願補正発明が奏する作用効果は、上記刊行物1,2に記載された発明に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願補正発明は、上記刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、上記刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
平成16年6月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年3月22日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認められる。
「間欠的に回転駆動される回転テーブルと、前記回転テーブルの周縁に上下方向に移動可能に取り付けられた複数の吸着ノズルユニットと、前記回転テーブルと同軸に前記回転テーブルの内側に設けられ前記回転テーブルの間欠的な回転に伴って前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させる固定部・上下移動部複合カム溝を全周に亘って有する円筒カムと、前記円筒カムの上下移動部を部品の吸装着動作時に上下方向に移動させる回転カム及びレバー機構と、前記吸着ノズルユニットに設けられ前記カム溝内を移動して前記吸着ノズルユニットを上下方向に移動させるカムフォロワーとを有する電子部品装着装置であって、前記カムフォロワーは、前記吸着ノズルユニットに固定されて前記カム溝内を走行する第1ローラと、前記吸着ノズルユニットに上下微動可能に取り付けられ前記カム溝内を走行する第2ローラと、前記第1、第2ローラとをそれぞれ前記カム溝の両側面に押圧するように付勢するバネ部とを備えることを特徴とする電子部品装着装置。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「【2】2.」に記載したとおりである。

2.本願発明と刊行物1との対比・判断
本願発明は、前記「【2】」で検討した本願補正発明から、部品の吸装着動作時における、「前記円筒カムの上下移動部のカム溝内に前記カムフォロワーを前記回転テーブルの回転方向に移動させながら、前記回転カム及びレバー機構により前記円筒カムの上下移動部を先ず下方向に移動させた後上方向に移動させるように構成し、」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものである本願補正発明が、前記「【2】4.」に記載したとおり、刊行物1,2の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明より上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、刊行物1,2の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。 よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-28 
結審通知日 2007-03-06 
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願平7-186794
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 ぬで島 慎二
山内 康明
発明の名称 電子部品装着装置  
代理人 石原 勝  

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