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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1156924
審判番号 不服2004-18309  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-03 
確定日 2007-05-07 
事件の表示 特願2000- 17189「モニタ付き光変調器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 3日出願公開、特開2001-209018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月26日の出願であって、原審において、平成15年10月17日付で最初の拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月18日付で手続補正がなされたが、平成16年2月5日付で再び拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月9日付で手続補正がなされたところ、同年7月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月4日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成16年10月4日付の手続補正は、補正前の請求項3?10および段落【0024】?【0031】を削除するものであって、適法なものである。
そして、本願の請求項1,2に係る発明は、平成16年10月4日付手続補正の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のものである。
「【請求項1】 伝搬する光波が互いに干渉するように構成された第1および第2の分岐光導波路を結合する3dB方向性結合器と、
一部が前記第1の分岐光導波路と重なるように設けられた第1の接地電極と、該第1の接地電極の外周に沿って設けられ、一部が前記第2の分岐光導波路と重なるように設けられた信号電極と、前記第1の接地電極および信号電極の外周を囲むように設けられた第2の接地電極とからなる3電極構造の進行波電極と、
前記3dB方向性結合器の光出力のうちの所望の光出力をモニタ光として検出する光検出手段とを有することを特徴とするモニタ付き光変調器。」
(以下、「本願発明」という。)

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-243217号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、
ア.「【0003】一方、高速光変調方式としては半導体レーザ光を外部で変調する外部変調方式がよく知られている。とくに、電気光学効果を有する基板上に分岐光導波路を設け、変調用駆動電極,たとえば、進行波信号電極を用いて駆動するマッハツェンダ型外部変調器が有望視されている。
【0004】図4は従来の光変調器の例を示す図(その1)で、平面に加工した電気光学効果を有する基板1,たとえば、LiNbO3基板上に、たとえば,公知のTiを拡散して光導波路2,分岐光導波路2a,2bおよび合流器,たとえば、3dBカップラを形成する。そして、分岐光導波路2a,2bの上に図示したごとく進行波型の変調用駆動電極3を形成した構成のものである。
【0005】この例の場合、接地側の電極32は高周波電気信号の伝達をよくするため、図に示したように、信号側の電極31よりも大きくしてあり,したがって、駆動信号回路6から分岐光導波路2a,2b に印加される電界分布は等しくなく、そのために、それぞれにおける光に作用する実効的な電界の大きさE31およびE32は非対称で、通常E31はE32の3?6倍程度になる。変調効率は(E31+E32)に比例するので、上記の如く、E32がE31に比較して非常に小さいために変調効率が上がらず、プッシュプル動作による駆動が困難であり,結局、変調用の駆動電圧を大きくしなければならないことになる。
【0006】さらに、信号側の電極31と接地側の電極32にかゝる電界の非対称性のために、分岐光導波路2a,2bに温度差が生じ、それに基づく歪みによって光変調特性の動作点がシフトしてしまうという欠点がある。
【0007】図5は従来の光変調器の例を示す図(その2)で、この例は変調用駆動電極3a,3bを分岐光導波路2a,2b上にバランスよく配置した,いわゆる、並列2信号電極型の場合である。
【0008】すなわち、2つの信号用の電極31a,31bが分岐光導波路2a,2b 中を伝送される光に位相差を生じさせるように配設されており、分岐光導波路2a,2bにかゝる電界E31 とE31 は等しくプッシュプル動作ができるので、前記例(その1)の非対称電極型の場合に比較して駆動電圧を60%程度に下げることができる。また、電極の対称配置により分岐光導波路2a,2bには温度差が生じないので、前記非対称電極型の場合のように光変調特性の動作点シフトも生じない。」(第1欄第3行?第2欄第21行)
イ.「【符号の説明】
1は電気光学効果を有する基板、
2は光導波路、2a,2bは分岐光導波路、
3(3a,3b)は変調用駆動電極、
4は交差路型光回路、
5は3dBカップラ、
6は駆動信号回路、
7(7a,7b)は給電端、
30(30a,30b)は信号線」(第6欄第6行?第14行)
が記載されている。

また、【図5】からは、以下の事項が見てとれる。
ウ.「光変調器は、分岐光導波路2a近傍に設けられた接地電極32aと、該接地電極32aの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2aと重なるように設けられた変調用駆動電極31aと、前記分岐光導波路2b近傍に設けられた接地電極32bと、該接地電極32bの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2bと重なるように設けられた変調用駆動電極31bの4個の電極を有している。」
エ.「カップラ5を経由した二つの光導波路のうち、一方の光導波路から光出力Io を取り出している。」
これらア?エの記載事項によれば、引用例1には、
「光を伝送する二つの分岐光導波路2a,2bを合流する3dBカップラ5と、
前記分岐光導波路2a近傍に設けられた接地電極32aと、該接地電極32aの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2aと重なるように設けられた変調用駆動電極31aと、分岐光導波路2b近傍に設けられた接地電極32bと、該接地電極32bの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2bと重なるように設けられた変調用駆動電極31bとからなる進行波型の電極とを有し、
前記3dBカップラ5を経由した二つの光導波路のうちの一方から光出力Io を取り出すようにしたマッハツェンダ型光変調器。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-210073号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、
オ.「【産業上の利用分野】この発明は一般に変調器に関し、特に集積電気光学変調器の線形化のための方法及び装置に関する。」(段落【0001】)
カ.「マッハ・ツェンダ干渉計式変調器26を提供するための他の公知の干渉計式結合器構造が図2に示されている。干渉計式変調器26の構成と変調器2の構成との間の差異は前者が導波路結合区画28、30を備えることである。特に干渉計式変調器26の構成では、光波P0 信号が相対的にほぼ水平な平面上に存在する下側入力導波路セグメント32に供給され、光はセグメント32から上向きに傾いた導波路セグメント34を経て、更にセグメント34から結合区画28の下側の水平導波路セグメント36を経て導かれる。下側の水平導波路セグメント36を経て伝わる光の一部は、理想的には光エネルギーの半部を結合器28の上側の水平導波路セグメント38へ結合される。そして残りの光が導波路36から下向きに傾いた導波路セグメント40を経て、そしてセグメント40から下側の長手方向導波路セグメント42を経て、そして上向きに傾いた導波路セグメント44を経て第2の結合器30の水平な下側導波路セグメント46へ伝わる。第2の結合器30はまた上側の水平導波路セグメント48を備える。結合器28の下側の水平導波路セグメント36から上側の水平セグメント38へ結合された光は、セグメント38から上向きに傾いた導波路セグメント50へ、そして上側の長手方向導波路セグメント52を経て下向きに傾いた導波路セグメント54へ、そしてセグメント54から結合器46の上側の水平導波路セグメント48へ伝わり、セグメント48でこの光は結合器30の下側の水平導波路セグメント46からセグメント48へ結合された光と組み合わせられる。導波路セグメント48中で組み合わせられた光波信号の線形並びに非線形成分は、セグメント48から上向きに傾いた導波路セグメント56を経て水平導波路セグメント58へ伝わり、出力光信号P(t) としてセグメント58から出力される。」(段落【0027】)
キ.「光ファイバケーブル136は、第1の光出力信号P(t) を受け入れるために、ファイバケーブル・基板間付属品又はコネクタ110を経て出力導波路セグメント70の端部に接続されている。或る用途では、制御のためにモニタ用光出力信号として導波路セグメント58の端部から得られる第2の光出力信号を用いることが望ましいかもしれない。これを行うために別の光ファイバケーブル138がコネクタ110を経て導波路58の端部に接続されている。」(段落【0038】)
が記載されている。
また、【図5】からは、以下の事項が見てとれる。
ク.「導波路セグメント46、72,70を有する導波路に光ファイバケーブル136が接続されるとともに、導波路セグメント48、56,58を有する導波路には光ファイバケーブル138が接続されている。」

4.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較する。
a.引用例1発明は、「マッハツェンダ型光変調器」であって、二つの分岐光導波路2a,2bを伝送させた光を3dBカップラ5において干渉させているのは明らかであるから、引用例1発明の「光を伝送する二つの分岐光導波路2a,2bを合流する3dBカップラ5」は、本願発明の「伝搬する光波が互いに干渉するように構成された第1および第2の分岐光導波路を結合する3dB方向性結合器」に相当し、
b.引用例1発明の「前記分岐光導波路2a近傍に設けられた接地電極32aと、該接地電極32aの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2aと重なるように設けられた変調用駆動電極31aと、前記分岐光導波路2b近傍に設けられた接地電極32bと、該接地電極32bの外周に沿って設けられ、一部が前記分岐光導波路2bと重なるように設けられた変調用駆動電極31bとからなる進行波型の電極」と、本願発明の「一部が前記第1の分岐光導波路と重なるように設けられた第1の接地電極と、該第1の接地電極の外周に沿って設けられ、一部が前記第2の分岐光導波路と重なるように設けられた信号電極と、前記第1の接地電極および信号電極の外周を囲むように設けられた第2の接地電極とからなる3電極構造の進行波電極」とは、「接地電極と信号電極とからなる進行波電極」である点で共通するから、
両発明は、
「伝搬する光波が互いに干渉するように構成された第1および第2の分岐光導波路を結合する3dB方向性結合器と、
接地電極と信号電極とからなる進行波電極とを有する光変調器。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明の光変調器が、「3dB方向性結合器の光出力のうちの所望の光出力をモニタ光として検出する光検出手段」を有する「モニタ付き」のものであるのに対し、引用例1発明の光変調器は、モニタ光を検出するための上記光検出手段を有していない点。

[相違点2]本願発明の進行波電極が「一部が前記第1の分岐光導波路と重なるように設けられた第1の接地電極と、該第1の接地電極の外周に沿って設けられ、一部が前記第2の分岐光導波路と重なるように設けられた信号電極と、前記第1の接地電極および信号電極の外周を囲むように設けられた第2の接地電極とからなる3電極構造」であるのに対し、引用例1発明の進行波電極はそのような構造となっていない点。

5.判断
[相違点1]について
上記オ?クの記載事項によれば、引用例2には、結合器を用いた光変調器において、結合器を経由した2つの光導波路からの光出力のうちの一方を、制御のためにモニタ光として使用する技術思想が記載されている。
そして、引用例1発明においては、3dBカップラ5を経由した二つの光導波路のうちの一方から光出力Io を取り出しており、他方の光導波路からの光出力は特に使用されていないのであるから、引用例2に記載された上記技術思想をこれに適用して、光出力Io を取り出していない他方の光導波路からの光出力をモニタ光として使用する程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、モニタ光を検出する光検出手段が必要なことは、当業者にとって自明である。

[相違点2]について
光変調器の進行波電極として、一部が第1の分岐光導波路と重なるように設けられた第1の接地電極と、該第1の接地電極の外周に沿って設けられ、一部が第2の分岐光導波路と重なるように設けられた信号電極と、前記第1の接地電極および信号電極の外周を囲むように設けられた第2の接地電極とからなる3電極構造のものは周知である(例えば、拒絶査定の備考の欄で例示された特開平9-304746号公報および特開平11-295674号公報を参照)。
そして、既知の種々のタイプの進行波電極からいずれのタイプのものを用いるかは、当業者が適宜選択しうる事項にすぎないので、引用例1発明の光変調器の進行波電極として、上記周知の3電極構造を採用することは、当業者の通常の設計事項の範囲を超えるものではない。

よって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明および上記周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の作用効果も、引用例1,2および上記周知技術から当業者が予測できる程度のものにすぎない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-02 
結審通知日 2007-03-07 
審決日 2007-03-22 
出願番号 特願2000-17189(P2000-17189)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 高盛早川 貴之佐藤 宙子  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 井上 博之
鈴木 俊光
発明の名称 モニタ付き光変調器  
代理人 石橋 政幸  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  

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