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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1156977
審判番号 不服2003-5570  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2007-05-10 
事件の表示 特願2000-149072「携帯情報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月18日出願公開、特開2001-134618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月19日の出願(国内優先権主張、平成11年8月26日)であって、平成14年12月9日付で拒絶理由通知がなされ、これに対して、平成15年2月7日付で手続補正がなされたが、同年2月26日付で拒絶査定がなされた。これに対し、平成15年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、これに伴って平成15年4月30日付で手続補正がなされたものである。


2.平成15年4月30日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月30日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成15年4月30日付の手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲を、
補正前の
「 【請求項1】 携帯情報端末から通信ネットワークに接続して、この通信ネットワークに接続されている情報提供装置から所定の情報を取得する携帯情報システムにおいて、
前記携帯情報端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記携帯情報端末と前記通信ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備し、
前記情報提供装置が、前記情報携帯機器から受信される前記位置情報の示す位置に基づき、探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲において、少なくとも店舗や公共施設を含む施設のホームページを検索し、検索されたホームページをこの情報携帯機器へ送信する通信ネットワーク接続部を具備することを特徴とする携帯情報システム。
【請求項2】 前記情報提装置が、ターゲットである施設との距離を、携帯端末の移動速度で除算することにより、各施設の通過予想時刻を求め、この通過予想時刻を携帯端末に表示することを特徴とする請求項1記載の携帯情報システム。
【請求項3】 前記携帯情報端末が、利用者に携帯されて戸外を移動するとき、同様な機能を有する他の携帯情報端末に対して一定の距離に近づいた場合、この他の携帯情報端末の前記利用者のホームページを表示画面に表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯情報システム。
【請求項4】 前記携帯情報端末が、利用者に携帯されて少なくとも店舗及び公共施設を含む施設のある市街地を移動するとき、前記情報提供装置に登録済みの施設対して一定の距離に近づいた場合、その登録済みの施設のホームページをこの携帯情報端末の表示画面に表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯情報システム。」 から、
補正後の
「 【請求項1】 携帯情報端末から通信ネットワークに接続して、この通信ネットワークに接続されている情報提供装置から所定の情報を取得する携帯情報システムにおいて、
前記携帯情報端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記携帯情報端末と前記通信ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備し、
前記情報提供装置が、前記携帯情報機器から受信される前記位置情報の示す位置に基づき、探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲において、少なくとも店舗や公共施設を含む施設のホームページを検索し、検索されたホームページをこの携帯情報端末へ送信する通信ネットワーク接続部を具備し、
前記携帯情報端末は、ターゲットとして設定された、同様な機能を有する他の携帯情報端末が近づいた場合、前記情報提供装置からの距離情報により、複数の設定距離のどの圏内にいるかを利用者に通知することを特徴とする携帯情報システム。
【請求項2】 前記情報提供装置が、ターゲットである施設との距離を、携帯情報端末の移動速度で除算することにより、各施設の通過予想時刻を求め、この通過予想時刻を携帯情報端末に表示することを特徴とする請求項1に記載の携帯情報システム。
【請求項3】 前記携帯情報端末が、利用者に携帯されて戸外を移動するとき、同様な機能を有する他の携帯情報端末に対して一定の距離に近づいた場合、この他の携帯情報端末の前記利用者のホームページを表示画面に表示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯情報システム。
【請求項4】 前記携帯情報端末が、利用者に携帯されて少なくとも店舗及び公共施設を含む施設のある市街地を移動するとき、前記情報提供装置に登録済みの施設対して一定の距離に近づいた場合、その登録済みの施設のホームページをこの携帯情報端末の表示画面に表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯情報システム。」
とする補正を含むものである。(下線は、補正箇所を示すものとして、当審で追加した。)

(2)本件補正の適否の検討
本件補正は、審判請求時の補正であるから、その特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第3項の規定により願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないというだけでなく、同条第4項第1号?第4号に掲げる、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られる。
そこで、本件補正の特許請求の範囲についてする補正の目的の適否について検討するにあたり、まずは、本件補正の特許請求の範囲についてする補正が同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした補正であるかどうかの検討を行う。

補正前の各請求項と補正後の各請求項とを対比すると、補正前の請求項2ないし4が、それぞれ、補正されることなく補正後の請求項2ないし4にそのまま対応するから、請求項1についての本件補正は、必然的に補正前の請求項1を基礎としてなされたものということになる。

そこで、補正後の請求項1と補正前の請求項1とを対比すると、請求項1についての本件補正は、
(a)補正前の請求項1の発明特定事項に、「前記携帯情報端末は、ターゲットとして設定された、同様な機能を有する他の携帯情報端末が近づいた場合、前記情報提供装置からの距離情報により、複数の設定距離のどの圏内にいるかを利用者に通知する」ことを追加する補正、及び、
(b)補正前の請求項1の「前記情報携帯機器」、「この情報携帯機器」を、それぞれ「前記携帯情報機器」、「この携帯情報端末」とする補正、
を含むものである。
ここで、上記(b)の補正については、「前記・・・」、「この・・・」とあることから、「情報携帯機器」とした誤記を、本来の「携帯情報端末」と訂正する補正を意図したものであることは明らかであり、「前記情報携帯機器」を「前記携帯情報機器」と補正して重ねて誤記を犯す結果になっているものの、全体としては特許法17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的としたものといえる。
一方、上記(a)の補正については、上記追加された事項は、形式上は、「前記携帯情報端末」の機能として記載されているが、補正前の請求項1における「前記携帯情報端末」の発明特定事項である「位置情報取得手段」,「通信手段」のいずれかの手段の機能を概念的により下位に限定するものではないから、上記事項を追加するということは、実質的には、「前記携帯情報端末」に、「ターゲットとして設定された同様な機能を有する他の携帯情報端末が近づいた場合、前記情報提供装置からの距離情報により、複数の設定距離のどの圏内にいるかを利用者に通知する」手段を追加することと同等である。そして、当該手段は、補正前の請求項1における「前記携帯情報端末」の発明特定事項である「位置情報取得手段」,「通信手段」と同位にあり、かつ、補正前の請求項1に係る「携帯情報システム」を構成する「前記携帯情報端末」が具備する手段の一つとして位置づけられることは明らかである。
そうすると、上記(a)の補正は、補正前の請求項1の発明を特定する事項を概念的により下位に限定するものではないから、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。また、上記(a)の補正が、同第1号の請求項の削除、同3号の誤記の訂正、同第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)のいずれを目的とするものでもないことは、明らかである。

したがって、上記(a)の補正を含む請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものではない。

(3)むすび
以上のとおり、上記請求項1についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年4月30日付の補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年2月7日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 携帯情報端末から通信ネットワークに接続して、この通信ネットワークに接続されている情報提供装置から所定の情報を取得する携帯情報システムにおいて、
前記携帯情報端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記携帯情報端末と前記通信ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備し、
前記情報提供装置が、前記情報携帯機器から受信される前記位置情報の示す位置に基づき、探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲において、少なくとも店舗や公共施設を含む施設のホームページを検索し、検索されたホームページをこの情報携帯機器へ送信する通信ネットワーク接続部を具備することを特徴とする携帯情報システム。」
ここで、前項2.での検討のとおり、上記請求項1の記載事項における「前記情報携帯機器」及び「この情報携帯機器」は明らかな誤記であるので、それぞれ「前記携帯情報端末」、「この携帯情報端末」と読み替えるものとする。

(2)引用例に記載された発明
(2)-1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-55726号公報(公開日、平成11年2月26日)(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下(a)?(i)の事項が記載されている。
(a)【発明の属する技術分野】
本発明は、情報携帯端末が存在するサービスエリア内に複数のアクセスポイントを散在して設け、該複数のアクセスポイントをネットワークを介して情報案内サーバに接続するとともに、情報携帯端末は該端末が存在する位置に近いアクセスポイントとの無線通信により情報案内サーバに接続し、該情報案内サーバから情報携帯端末に情報を提供するモバイルユーザ向け情報案内方法および装置(中略)に関し、更に具体的には、例えばタウンガイドや観光地案内、構内施設の案内、周辺の人の状況案内(人探し、出会い、混み具合い情報)等の情報案内において情報携帯端末を持ち歩くモバイルユーザに対してユーザの位置に応じた周辺の情報、更には周辺にいる他のユーザの個人情報をユーザの要求または情報案内サーバからの提示に対して提供するモバイルユーザ向け情報案内方法および装置(中略)に関する。(同公報の段落【0001】)
(b)本発明は、(中略)その目的とするところは、ユーザの位置情報、好み情報等に応じて適切な情報を適確に提供しうるモバイルユーザ向け情報案内方法および装置(中略)を提供することにある。(同【0006】)
(c)図1は、本発明の一実施形態に係わるモバイルユーザ向け情報案内装置の構成を示す図である。同図に示すモバイルユーザ向け情報案内装置は、そのサービスエリアである位置検出可能エリア1内に散在して配置されている複数のアクセスポイント3を有し、この複数のアクセスポイント3はネットワーク5を介して情報案内サーバ7に接続されている。
位置検出可能エリア1内には複数の情報携帯端末21がユーザによって携帯されて存在し、該情報携帯端末21は近くに存在するアクセスポイント3と無線通信により通信し、更にアクセスポイント3からネットワーク5を介して情報案内サーバ7に接続され、該情報案内サーバ7から情報を提供されるようになっている。なお、複数のアクセスポイント3は位置検出可能エリア1内において一定の領域毎に設置されている。また、情報携帯端末21を携帯して移動するユーザの位置はGPSやID発信機等により検出しうるようになっている。(同【0018】?【0019】)
(d)情報案内サーバ7は、ユーザによって携帯される情報携帯端末21の位置を検出して管理するユーザ位置検出手段9、位置検出可能エリア1内の物に関する地域情報19と情報携帯端末21を携帯するユーザの位置に関するユーザ位置情報15を用いて、ユーザの位置に対応した地域情報を検索する位置対応情報検索手段13、ユーザの個人情報と個人情報へのアクセス制御情報17、ユーザ位置情報15を利用して、位置情報も検索条件に含めた個人情報検索手段11を有する。なお、地域情報19および個人情報は随時更新され、常に最新の情報を得ることができるようになっている。(同【0020】)
(e)また、図1に示すモバイルユーザ向け情報案内装置では図示されていないが、その作用を説明する図2に示すようにモバイルユーザ向け情報案内装置の情報案内サーバ7には地域情報19を管理して検索する地域情報管理手段23および個人情報を管理して検索する個人情報管理手段25も更に有する。(同【0021】)
(f)以上のように構成されるモバイルユーザ向け情報案内装置は、ユーザによって携帯される情報携帯端末21の現在位置をアクセスポイント3、ネットワーク5を介して情報案内サーバ7で監視し、該情報携帯端末21の現在位置に応じた地域情報および他のユーザの情報をユーザからの要求または情報案内サーバ7からの提示により情報携帯端末21のユーザに提供するものである。(同【0022】)
(g)情報携帯端末21を無線通信によりネットワーク5に接続するためのアクセスポイント3は、例えばGPSやID発信機等によりユーザが携帯する情報携帯端末21の位置を検出可能な位置検出可能エリア1内に設置されるが、このアクセスポイント3は位置検出可能エリア1から無線通信によりネットワーク接続可能である場合には、必ずしも位置検出可能エリア1内に配置される必要はない。(同【0023】)
(h)次に、図2(a),(b)を参照して、本実施形態の作用を説明する。まず、図2(a)を参照して、情報携帯端末21を携帯するユーザからの要求による情報案内について説明する。ユーザが情報携帯端末21からアクセスポイント3、ネットワーク5を介して情報案内サーバ7にアクセスすると、情報案内サーバ7はネットワーク5を介してアクセスポイント3からの情報により該情報携帯端末21の位置、すなわちユーザの位置をユーザ位置検出手段9から取得する(ステップS11)。情報案内サーバ7はユーザの現在位置を取得すると、該ユーザの現在位置により地域情報管理手段23および個人情報管理手段25を検索し、ユーザの現在位置に応じた地域情報や周辺の個人情報を取得し、この取得した地域情報や周辺個人情報をユーザの情報携帯端末21に提示する(ステップS13)。
このように処理することにより、ユーザは従来のようにいちいち目的の情報を検索することなく、迅速に現在位置の周辺の情報を入手することができる。また、ユーザが指定すれば、他の地域の情報や地域に関係のないような情報等も入手するこができる。
次に、図2(b)を参照して、情報案内サーバ7からの提示による情報案内について説明する。情報案内サーバ7は、そのユーザ位置検出手段9で各ユーザの情報携帯端末21の位置を定期的に監視しており、その位置に変化があるユーザのリストを作成している(ステップS21)。そして、位置に変化のあったユーザに対しては、新しい位置で地域情報管理手段23および個人情報管理手段25を検索し、この新しい位置に応じたお勧め地域情報(例えば、セール中、イベント開催中等)や、ユーザの好みの情報(例えば、探している店、人等、予めユーザが案内条件を指定しておく)を入手し、ユーザの情報携帯端末21に提示する(ステップS23)。(同【0024】?【0026】)
(i)【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アクセスポイントとの無線通信を介して情報案内サーバに接続された情報携帯端末の位置を検出し、この検出した情報携帯端末の位置に応じた地域情報を含む情報、該情報携帯端末の周辺に存在する人物に関する個人情報、該情報携帯端末を携帯するユーザの好みに合う嗜好情報を含む各種情報を該情報携帯端末に提供するので、位置情報を考慮して情報携帯端末のユーザの位置に応じた地域情報を適確かつ迅速に提供することができるだけでなく、ユーザの周辺の人物の情報や好みの情報等も適確に提供することができる。(同【0041】)

上記摘記事項(c)には、「該情報携帯端末21は近くに存在するアクセスポイント3と無線通信により通信し、更にアクセスポイント3からネットワーク5を介して情報案内サーバ7に接続され、該情報案内サーバ7から情報を提供されるようになっている。」との記載があり、引用例1には、情報携帯端末からネットワークに接続して、このネットワークに接続されている情報案内サーバから所定の情報を取得する情報案内装置が記載されているといえる。
また、同(c)には、前記記載に加えて「情報携帯端末21を携帯して移動するユーザの位置はGPS(中略)等により検出しうるようになっている。」と記載されており、同(d)には、「情報案内サーバ7は、ユーザによって携帯される情報携帯端末21の位置を検出して管理するユーザ位置検出手段9、位置検出可能エリア1内の物に関する地域情報19と情報携帯端末21を携帯するユーザの位置に関するユーザ位置情報15を用いて、ユーザの位置に対応した地域情報を検索する位置対応情報検索手段13、(中略)を有する。」と記載されており、さらに、同(f)には「ユーザによって携帯される情報携帯端末21の現在位置をアクセスポイント3、ネットワーク5を介して情報案内サーバ7で監視し、該情報携帯端末21の現在位置に応じた地域情報(中略)をユーザからの要求または情報案内サーバ7からの提示により情報携帯端末21のユーザに提供する」との記載があることから、これら記載を技術常識に照らしてみれば、情報携帯端末には、GPS等の自己の位置情報を取得する位置情報取得手段が備わっており、しかも、取得した位置情報を情報案内サーバに送信するとともに所定の情報を受信する構成になっていることが明らかである。そうすると、引用例1には、情報携帯端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記情報携帯端末と前記ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備する点が記載されているといえる。
同様に、前記各記載から、引用例1には、情報案内サーバが、前記情報携帯端末から受信される位置情報の示す位置に基づき、地域情報を検索し、検索された情報をこの情報携帯端末へ送信するネットワーク接続部を具備する点が記載されているといえる。

してみれば、上記(a)?(i)の記載事項及び図面の記載から、引用例1には、
「 情報携帯端末からネットワークに接続して、このネットワークに接続されている情報案内サーバから所定の情報を取得する情報案内装置において、
前記情報携帯端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記情報携帯端末と前記ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備し、
前記情報案内サーバが、前記情報携帯端末から受信される前記位置情報の示す位置に基づき、地域情報を検索し、検索された情報をこの情報携帯端末へ送信するネットワーク接続部を具備することを特徴とする情報案内装置。」
の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)-2 原査定で例示されたところの、特開平11-51666号公報(公開日、平成11年2月26日)(以下「周知例1」という。)には、図面とともに、以下(j)?(n)の事項が記載されている。
(j)【請求項2】 移動通信端末から送信される情報に基づき情報検索を行ない検索結果を配信する移動通信端末向け情報検索配信装置において、(中略)上記移動通信端末から送信された上記移動通信端末情報により情報検索範囲を決定する情報検索範囲決定手段と、上記移動通信端末より送信された情報検索項目について上記情報検索範囲決定手段において決定された情報検索範囲内の地域サービス情報を検索する情報検索手段と、上記情報検索手段において検索された地域サービス情報を上記移動通信端末に配信する通信手段を有(中略)することを特徴とする移動通信端末向け情報検索配信装置。
(k)本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、カーナビに限らず移動通信端末のもつ現在地情報等の移動通信端末情報をもとに情報検索範囲を決定し、上記移動通信端末とは独立に設置された情報検索配信装置で情報検索項目について上記検索範囲内の地域サービス情報の検索を行ない、上記移動通信端末に検索結果を配信することにより、移動通信端末のいる位置や状況に適した情報を提供する移動通信端末向け情報検索配信装置および移動通信端末を得ることを目的とする。(同公報の段落【0008】)
(l)以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は移動通信端末の1実施の形態としてカーナビゲーションシステムを用いた移動通信端末向け情報検索配信装置および移動通信端末の構成図である。(中略)カーナビ3はGPS機能を備え、GPS衛星4からの電波を受信することにより、車1の現在地(緯度、経度、標高)、現在時刻を知ることができる。(中略)
カーナビ3は従来例にあげたカーナビ機能の他に通信機能を有し、基地局2に情報検索のためのキーワード(検索項目、検索カテゴリなど)、自車に関する情報(現在地、目的地、目的地経路情報、現在時刻、進行方向、移動速度、移動形態など。自車情報。移動通信端末情報に相当する)を通知する。(同【0041】?【0042】)
(m)次に、図3の情報検索範囲設定部25における情報検索範囲の設定について説明する。(中略)
検索範囲は必ずしも円形に限るものではなく、図9、10のように扇形であってもよい。図9は現在地と目的地があまり離れていない場合の検索範囲の設定例であり、現在地を中心とし、現在地から目的地までの距離を半径とする中心角が直角未満の扇形内である。また、図10は現在地と目的地との距離が離れている場合の検索範囲の設定例であり、現在地を中心とし、現在地から目的地までの距離の1/N(N≧1)を半径とする中心角が直角未満の扇形内である。Nは例えば現在地と目的地との距離の1/Nがおよそ5km程度になるように設定する。なお、上記扇形の中心角、半径は必ずしも上記に限るものではなく、現在地周辺の情報量と自車情報によって情報サーバ5で適宜設定すればよい。(同【0048】?【0052】)
(n)検索結果の表示の一例を図27に示す。図27は、例えば、昼食時に御食事処の検索を行なった場合の検索結果の表示例であり、レストランは白丸、喫茶店は灰色の5角形のアイコンで示される。アイコンは上記のような幾何学図形に限るものではなく、どのようなマークであってよい。画面上には現在地も合せて表示され、検索結果との位置関係が分かりやすく表示される。目的地は検索範囲によっては必ずしも表示されない。つまり、検索範囲が狭い、あるいは検索結果の数が多い場合には現在地近くの検索結果が表示され、目的地は表示されない。(同【0080】)

(2)-3 特開平6-294661号公報(公開日、平成6年10月21日)(以下「周知例2」という。)には、以下(o)?(r)の事項が記載されている。
(o)本発明は、車両の現在位置および進行方向を運転者に教示して車両の走行案内を行なう車載用ナビゲ-ション装置に関し、特に、車両の走行案内に際して、運転者にとって有効な案内情報を選定して提供する技術に関するものである。(同公報の段落【0001】)
(p)なお、市役所やデパ-ト等の公共施設や一般施設についての背景データについては、道路網データに関係づけない。すなわち、デパ-ト等についての背景データを指定するデータ114は特に設けない。(同【0026】)
(q)この案内情報の検索処理の処理手順を図3に示す。
図相するように、道路ネットワーク画像の表示状態で、設定入力手段3での設定入力操作によって出力案内情報の検索基準がセットされると、出力船体手段5は、案内情報の検索ステップ302に進み案内情報検索処理を実行する(ステップ30)。ここでは、出力案内情報の検索基準として、検索方向、検索距離、検索範囲、出力案内情報の指定を受け付ける。検索方向の指定とは、現在位置からどの方向の地点の案内情報を抽出するかの指定であり、走行している道路の現走行方向向きの延長方向等の方向の指定を受け付ける。検索距離の指定とは、現在位置から検索方向にどのくらい離れた地点を中心とする案内情報を抽出するかの指定である。検索範囲の指定とは、現在位置から検索方向に検索距離離れた地点である検索距離地点を中心として、どの暗いの範囲の案内情報を抽出するかの指定であり、出力案内情報の指定とは、案内情報としてどのような種類の情報を出力するかの指定であり、公共施設についての情報、一般施設についての情報、道路付属施設についての情報、行政区画、行政界についての情報、自然についての情報、道路交通情報などの指定を受け付ける。(同【0042】?【0043】)
(r)そして、ステップ403において、図3ステップ301で受け付けた出力案内情報の検索基準に従った案内情報を出力するために、受け付けた検索方向、検索距離の指定に適合した検索対象地区を推定し、その地区の道路網データおよび背景データを地図データ記憶手段2より読み込む。検索対象地区は、現在位置から検索距離地点までの経路を含む地区とする。
そして、(中略)先に予め設定された出力案内情報の指定に従って出力する案内情報を抽出する。(同【0050】?【0051】)

(2)-4 特開平8-184455号公報(公開日、平成8年7月16日)(以下「周知例3」という。)には、以下(s)?(x)の事項が記載されている。
(s)【請求項2】 音声入力装置、または地図表示装置の表示面に装着されたタッチパネル、或いはスイッチ等の入力手段を備え、この入力手段によって使用者が行う操作に関する情報が入力され、またはこの入力手段によって上記基準位置の情報或いは検索基準情報が入力されることを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
(t)現在位置検出装置20は、ナビゲーション装置を搭載した自動車(以下、自車という)の現在位置を検出するためのデータを得るための装置である。絶対方位センサ21は、例えば地磁気を検出して絶対方位となる南北方向を示すデータを出力する地磁気センサである。相対方位センサ22は、絶対方位センサ21により検出される絶対方位に対する自車の進行方向の偏差を示すデータを出力するものであり、(中略)
GPS受信装置25は、GPS(Global Positioning System )の信号を受信して位置データを出力する。(後略) (同公報の段落【0010】?【0011】)
(u) (前略)目標物は複数のジャンルに分類されており、この分類数が目標物ジャンル数データJNとして記憶されている。ジャンルは、施設や場所等の種類に分けられており、例えば、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、駐車場、ホテル、レストラン、ファミリーレストラン、そば屋、喫茶店、駅、地下鉄駅入口、病院、公園、警察、郵便局、ゴルフ場、ゴルフ練習場、寺社、化粧品店、薬局等、走行中に立ち寄る可能性のある施設や場所等の種類である。(後略) (同【0019】)
(v)8.検索基準決定処理
図7は、検索基準決定処理(ステップ102)のフローチャートである。(中略)
エリア入力処理(ステップ122)では、(中略)スピーカ13から「検索エリアを指定して下さい」という音声が発生される。なお、この音声発生の代わりに、タッチパネル34のキー入力によっても良い。そして、所定の待機時間の間に音声認識装置38から音声入力があった場合には、(中略)RAM4に記憶される。(中略)
また、上記のように、予め決められた縮尺で表示される地図画面全域を検索エリアとして指定するほかに、「半径10キロ」或いは「10キロ四方」のような音声入力によって、後述する基準位置KPを中心とする所定半径または所定距離四方の範囲を検索エリアとすることができ、この場合には、音声入力された半径データまたは辺の長さデータがエリア指定データASとして記憶される。(中略)
そして、所定の待機時間の間に音声認識装置38から音声入力があった場合には、(中略)RAM4に記憶される。(中略) 例えば、「方向」、或いは指定ジャンルがパーキングの場合には「パーキング」等を表すサブ基準データKSが記憶される。(後略) (同【0037】?【0043】)
(w)9.基準位置決定処理
(中略) 現在位置が指定された場合(ステップ132)または上記所定待機時間内に音声入力が無かった場合(ステップ130)には、現在走行中の道路情報に基づいて現在位置または現在位置から離れた位置を基準位置とする自動設定処理(ステップ142)が行われる。(後略) (同【0044】?【0047】)
(x)さらに、(中略)上記のサブ基準の他に、例えば方向、距離、料金等の「上限と下限」、市内、市外、収容台数、営業時間帯等の「指定範囲」、特定の目標物の「選択指定」、特定目標物の「除外指定」、「料金」、池の近くや港等といった「位置」、山の上や屋上といった「高度」、海の中や地下等の「深度」、或いは「大きさ」、「属性」、「特性」、「内容」、「性質」等をサブ基準KSとすることができる。(後略) (同【0068】)

(2)-5 原査定の拒絶の理由に引用されたところの、「長尾確,エージェント拡張現実感-エージェントによる実世界と情報世界の統合,情報処理,日本,社団法人 情報処理学会,1997年 4月15日,第38巻第4号,第257頁乃至第266頁」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下(イ)?(ホ)の事項が記載されている。
(イ)6.2.ウォークナビ
ウォークナビは、GPSを使って、ユーザの現実位置を認識して、音声などから認識されたユーザの意図に従って、位置に関連する情報をWWW(World Wide Web)から検索し、ナビゲーションや情報案内を行うシステムである。
図-3はこのシステムの使用風景を、図-4はナビゲーションのための地図と写真によるランドマークが示された状態を示している。 (上記文献第263頁右欄)
(ロ)6.2.1 ウォークナビの構成
ウォークナビは、位置認識、音声対話、情報表示、移動体通信を行う携帯型システムと、位置情報(緯度/経度)とWWWのURL(Uniform Resource Locator)を関連づけるWWW地理情報サーバ(Geographic WWW Server)から構成される。 (同第263頁右欄-第264頁左欄)
(ハ) 位置認識 GPSによって得られた緯度/経度情報から、自分が現在いるエリアを計算する。(後略) (同第264頁左欄)
(ニ) WWW地理情報サーバ WWW地理情報サーバは、緯度/経度(あるいは住所)とURLを関連づけることができる。携帯型システムは、移動体通信を使って、この地理情報サーバにアクセスし、位置情報に依存して、関連URLを検索することができる。URLを登録するとき、何らかの索引(カテゴリ情報)をつけることができ、それを用いて検索効率を上げることもできる。
WWW地理情報サーバは、任意のユーザが自発的に地理情報とWeb情報を関連づけて登録できるものであり、また緯度/経度情報が与えられれば、誰でも自由にその周辺位置に関係のあるWeb情報を検索し、アクセスできるというものである。
WWWのオープン性は大きなポテンシャルを秘めている。たとえば、特定地域のローカルな情報はその地域の住人によって発信されるものの方が、情報提供を行う組織が収集して公開する情報よりも、概して信頼性が高く、速報性もある。また、イエローページのような静的な情報と比較して、WWW上の情報は常に変化するのが特徴である。つまり、イベント情報など、時間とともに変化する情報をうまく提供することができる。したがって、WWW地理情報サーバは、オープンで動的な知識源であるWWWと実世界を結びつけるために、実世界における位置(緯度/経度)と情報世界における位置(URL)を関連づける重要な役割を果たす。 (同第264頁左欄-右欄)
(ホ)6.2.2 ウォークナビの機能
(前略)ウォークナビの情報案内は、WWW上の情報検索を、位置情報と音声入力を考慮して行い、検索結果を解析して、音声とイメージを使って提示することによって行われる。まず、GPSからの位置情報とWWW地理情報サーバを使って、関連するURLを絞り込む。次に、URLの指すページの内容を自然言語処理の技術を用いて解析して、ユーザの意図に合う情報が載っているかどうか調べる。このとき、地理情報サーバにおいてURLに添付した索引情報が利用可能な場合は、それも用いる。たとえば、「この近くに、花屋はありますか?」のような質問がなされたとき、地理情報サーバで調べたURLのうち、花屋を示しているものがみつかったときは、それに関する情報を提示する。(後略) (同第264頁右欄-第265頁左欄)

(3)本願発明と引用例1発明との対比
そこで、本願発明(以下「前者」という。)と引用例1発明(以下「後者」という。)とを対比すると、後者の「情報携帯端末」は前者の「携帯情報端末」に相当し、同様に、後者の「ネットワーク」、「情報案内サーバ」、「ネットワーク接続部」は、前者の「通信ネットワーク」、「情報提供装置」、「通信ネットワーク接続部」に相当する。
また、後者の「情報案内装置」は、以下の相違点があるものの、前者の「携帯情報システム」に対応する。
そうすると、両者は、
「 携帯情報端末から通信ネットワークに接続して、この通信ネットワークに接続されている情報提供装置から所定の情報を取得する携帯情報システムにおいて、
前記携帯情報端末が、自己の位置情報を取得する位置情報取得手段と、アクセスポイントを経由して、前記携帯情報端末と前記通信ネットワークとの通信回線を形成し、前記位置情報及び所定の情報の送受信を行う通信手段とを具備し、
前記情報提供装置が、前記携帯情報端末から受信される前記位置情報の示す位置に基づき、情報を検索し、検索された情報をこの携帯情報端末へ送信する通信ネットワーク接続部を具備することを特徴とする携帯情報システム。」
である点で一致し、以下の[相違点1]及び[相違点2]で相違する。
[相違点1]
位置情報の示す位置に基づき行われる情報の検索について、前者では「探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲において」行われるのに対して、後者では、探索範囲については明記されていない点。
[相違点2]
前者では、検索の対象となる情報が「少なくとも店舗や公共施設を含む施設のホームページ」であり、検索されたホームページが送信されるのに対して、後者では、検索の対象となる情報が「地域情報」であり、検索された情報が送信される点。

(4)当審の判断
[相違点1]について
後者、即ち引用例1発明では、情報携帯端末(前者、即ち本願発明の「携帯情報端末」に相当。)から受信される位置情報の示す位置に基づいた情報の検索に際しての検索範囲について明記はされていないが、「ユーザーの位置に応じた周辺の情報」を提供する(上記摘記事項(a))ものであるから、検索分野の技術常識からすれば、情報案内サーバ(前者の「情報提供装置」に相当。)が、位置情報の示す位置に基づいて何らかの形で検索範囲を決定し、その検索範囲において検索していることは明らかである。
ところで、上記周知例1(特に、上記摘記事項(m)及び図10参照)には、移動通信端末向け情報検索配信装置において、現在地を中心として半径が適宜設定され、かつ、現在地から目的地方向に沿って中心角が適宜設定された扇形が、検索範囲として決定され、その検索範囲において地域サービス情報を検索する技術が開示されている。ここで、現在地から目的地方向に沿って中心角が適宜設定されるということは、現在地を中心とした扇形の検索範囲の方向が設定されることに他ならない。また、上記周知例2(特に、上記摘記事項(q)及び(r)参照)には、受け付けた現在位置からの検索方向、現在位置からの検索距離の指定に適合した検索対象地区が推定され、案内情報を抽出する技術が開示されている。また、上記周知例3には、現在位置を基準位置として距離及び方向が指定されて検索エリアが決定され、地域情報等の目標物が検索される技術が開示されている。そうすると、地域情報案内システムの技術分野においては、位置情報の示す位置に基づき、距離及び方向が設定されて検索範囲が決定され、その検索範囲において地域情報を検索することは、本願出願時点において既に周知の技術であったと認められる。
しかも、現在位置などを基準として地域情報を検索しようとするにあたって、どのような範囲について検索するかを考えた場合に、距離及び方向の設定というのは、誰しもが最も想起しやすい範囲決定要素の例であるといえる。

ここで、審判請求人は、審判請求書において、上記周知例1には、「進行方向を考慮して、探索方向を目的地方向とすることが記載されているが、本願発明のように、任意に探索方向を設定できるわけではなく、進行方向が求められれば、一方的にこの進行方向に探索範囲が設定されてしまい、利用者の探索範囲の自由度が無い構成となっており、本願発明と異なった機能である」と主張しているので、これを検討しておく。
請求項1には、上記のとおり、「探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲において」と記載されており、本願発明の探索方向及び探索距離の設定について、利用者が携帯情報端末で入力して探索方向及び探索距離を設定し情報提供装置に送信したものであるというところまで特定されているわけではない。
したがって、本願発明の探索方向及び探索距離ならびに探索範囲については、請求項1の記載のとおりに、何らかの形で探索方向及び探索距離が設定されることで決定される探索範囲と解するのが相当であって、上記審判請求人が主張する探索方向ならびに探索範囲の設定の態様に限定して解釈する根拠は、請求項1の記載にはないので、上記審判請求人の主張は当を得ないものである。

してみれば、後者、即ち引用例1発明において、どの程度の範囲について検索をするかという検索範囲を決定するにあたり、地域情報案内システムの技術分野における周知技術であるところの、位置情報の示す位置に基づき、距離及び方向が設定されて検索範囲が決定され、その検索範囲において地域情報を検索する技術を採用し、相違点1に係る前者の構成を得ることは、当業者が容易に想到できた事項である。

[相違点2]について
上記引用例2には、上記摘記事項(イ)?(ホ)からすると、WWW地理情報サーバが、携帯型システムから移動体通信を介して受信された位置情報に基づき、その位置に関連する情報をWWWから検索し、Web情報を前記携帯型システムに提供して情報案内を行うシステムが開示されていると認められる。ここで、WWW上で検索され提供されるWeb情報と、上記相違点2に係るホームページとが実質的に同等の意味であることは、技術常識に照らしてみれば明らかである。
また、引用例1では、ユーザの情報携帯端末に提示される地域情報について、タウンガイドや店が例示されているが、社会常識に照らしてみれば、ユーザが求める地域情報として、店舗に関する情報や公共施設を含む施設に関する情報は、それぞれ典型的な例であり、本願出願時点では、WWWが、こうした店舗に関する情報や公共施設を含む施設に関する情報の情報源として、既に広く知られていたと認められる。
そして、後者、即ち引用例1発明と、上記引用例2とは、地域情報案内システムという技術分野において共通するから、後者において上記引用例2記載の技術を適用し、検索の対象となる情報を「少なくとも店舗や公共施設を含む施設のホームページ」として、検索されたホームページを情報携帯機器へ送信するようにすることは、当業者が容易に想到できた事項である。
してみれば、本願発明の上記相違点2に係る構成を得ることは、上記引用例1及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到できた事項である。

そして、本願明細書の段落【0114】に記載された本願発明の効果も、引用例1(特に上記摘記事項(i)参照)に記載された発明の効果、及び、引用例2(特に上記摘記事項(ニ)参照)に記載された発明の効果から、当業者が容易に予測し得た程度のものである。

したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2記載の技術事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)むすび
請求項1に係る発明である本願発明については以上のとおりであるので、この出願の発明は、他の請求項の発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-09 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願2000-149072(P2000-149072)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨高瀬 勤平井 誠  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 坂庭 剛史
齋藤 哲
発明の名称 携帯情報システム  
代理人 村山 靖彦  
代理人 高橋 詔男  
代理人 青山 正和  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 鈴木 三義  
代理人 渡邊 隆  

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