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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1156988
審判番号 不服2003-22955  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-26 
確定日 2007-05-10 
事件の表示 平成11年特許願第312960号「画像形成システム、情報処理装置、画像形成方法および記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月18日出願公開、特開2001-134389〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成11年11月2日の出願であって、平成15年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月8日付で手続補正がなされ、平成15年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成15年11月26日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年12月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月26日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成15年12月26日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成15年9月8日付で手続補正された、
「ネットワークにクライアントとともに接続されたサーバと、前記ネットワークおよび前記サーバの内のいずれか一方に接続された1つ以上の画像形成装置とを含む画像形成システムにおいて、前記サーバは、前記画像形成装置に対するジョブを入力するジョブ入力手段と、前記入力されたジョブを複数のジョブに分割するジョブ分割手段と、前記分割されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し、
前記ジョブ分割手段はカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割し、前記複数のラスタライズ処理手段はそれぞれ異なるラスタライズ処理を行うことを特徴とする画像形成システム。」
から、次のとおり補正された。
「ネットワークにクライアントとともに接続されたサーバと、前記ネットワークおよび前記サーバの内のいずれか一方に接続された1つ以上の画像形成装置とを含む画像形成システムにおいて、
前記サーバは、前記画像形成装置に対するジョブを入力するジョブ入力手段と、前記入力されたジョブを複数のジョブに分割する分割手段と、前記入力されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し、
前記ジョブ分割手段は、前記入力されたジョブがカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割し、
前記複数のラスタライズ処理手段は、それぞれ異なるラスタライズ処理を行い、
前記ジョブ制御手段は、前記入力されたジョブに対してユーザにより指定された優先順に応じて前記ジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することが可能であることを特徴とする画像形成システム。」

上記補正は、以下のa)、b)の補正を含むものである。
a)「前記分割されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し」とあるのを「前記入力されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し」と補正する。
b)「前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段」について更に、「前記ジョブ制御手段は、前記入力されたジョブに対してユーザにより指定された優先順に応じて前記ジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することが可能である」との事項を付加する。

そこで、これらa)、b)の補正について検討すると、
a)について
a)の補正は、補正前には、複数のラスタライズ処理手段は分割されたジョブのラスタライズ処理を実行するものであったところ、補正後には「前記入力されたジョブ」即ち、ジョブ分割手段により分割される前の入力されたジョブのラスタライズ処理を実行することも含むものに拡張するものであって、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないから、本件補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反している。

b)について
b)の補正により請求項1には「前記ジョブ制御手段は、前記入力されたジョブに対してユーザにより指定された優先順に応じて前記ジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することが可能である」との事項が付加されたが、補正後の請求項1の記載によれば、(ジョブ)分割手段は、入力されたジョブを複数のジョブに分割するものであり、入力されたジョブがカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割するものである。
ところが、ジョブ分割手段は、入力されたジョブがカラーと白黒が混在するジョブの場合には、ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割することに加え、ジョブ制御手段が、前記入力されたジョブに対してユーザにより指定された優先順に応じてジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することについては、出願当初明細書及び図面には記載がない。
出願当初明細書の発明の詳細な説明には、実施の第1の形態?実施の第3の形態が記載されているが、実施の第2形態(明細書の段落【0161】?【0169】、図27)、実施の第3形態(明細書の段落【0170】?【0179】、図28)には、優先順については記載されているが、ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割することについては記載されていない。
また、実施の形態1(明細書の段落【0064】?【0160】)では、ジョブの制御の手順について段落【0151】?【0156】に記載がなされており、例えばジョブのプライオリティにより高速処理であるか否かが判定され(段落【0153】、図26のS2203)、高速処理であるときにはジョブをページ単位で分割し(図26、S2204)、2つのRIP(ラスタライザ)でラスタライズ処理し、高速処理でないときには、2つのRIPの内のいずれか1つでラスタライズ処理することが記載されているが、当該記載は、優先順が高い場合にジョブ分割がなされ、そうでない場合にジョブの分割がなされないことが記載されているだけであって、補正により追加された「優先順に応じてジョブ分割手段によるジョブの分割を制御」することが記載されているということはできない。
また、段落【0157】?【0159】にはクラスタリングプリントについて記載がなされ、クラスタリングプリントの例としてカラーMFP104と白黒MFP105とに一斉にプリントするような場合に、カラー/白黒が混在するジョブを分割し、それぞれカラーMFP104と白黒MFP105へとジョブが送られて出力されることが記載されているが、前記段落【0151】?【0156】に記載された優先順、分割手段について、段落【0157】?【0159】に記載された、カラー/白黒が混在するジョブを分割することを適用することについては一切記載がない。
そして、これらのことが出願当初明細書及び図面の記載をみて明らかであるということもできない。
以上のように、出願当初明細書及び図面には、補正後の請求項1に記載された、ジョブ分割手段は、入力されたジョブがカラーと白黒が混在するジョブの場合には、ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割し、ジョブ制御手段は、前記入力されたジョブに対してユーザにより指定された優先順に応じてジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することについては記載がなく、また、このことが出願当初明細書及び図面の記載をみて明らかであるということもできない。したがって、本件補正は出願当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反している。

上記(1)(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)以下、念のため、この補正が特許請求の範囲を限定的に減縮するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと仮定して、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について検討すると、本願補正発明では、ジョブ分割手段によりジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割することと、補正により追加された優先順に応じてジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することがどのように関係しているのか不明であるから発明が不明確であって特許法第36条第6項2号の規定に違反している。
そして、この点について、発明の詳細な説明の実施の第2形態(明細書の段落【0161】?【0169】、図27)、実施の第3形態(明細書の段落【0170】?【0179】、図28)には、優先順について記載はあるが、入力されたジョブがカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割することについては記載がなく、また、実施の形態1にも、優先順に応じてジョブ分割手段によるジョブの分割を制御することは記載されておらず、また、優先順と、カラー/白黒が混在するジョブを分割することとの関係も不明である。よって、本願発明の詳細な説明の記載は当業者が実施することができる程度に明確に記載されておらず、特許第36条第4項の規定に違反している。
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合していない。)から、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年12月26日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年9月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ネットワークにクライアントとともに接続されたサーバと、前記ネットワークおよび前記サーバの内のいずれか一方に接続された1つ以上の画像形成装置とを含む画像形成システムにおいて、前記サーバは、前記画像形成装置に対するジョブを入力するジョブ入力手段と、前記入力されたジョブを複数のジョブに分割するジョブ分割手段と、前記分割されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し、
前記ジョブ分割手段はカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割し、前記複数のラスタライズ処理手段はそれぞれ異なるラスタライズ処理を行うことを特徴とする画像形成システム。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平9-114610号公報」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0004】ところで、ネットワークを用いた分散環境では、印刷装置を共有して使用する形態が標準になってきた。このような印刷装置は、多くのホスト装置からのプリント要求を受け付けて、ページ記述言語で記述された印刷情報の解釈、実行を行わなければならない。多くのホスト装置から同時に利用される場合、印刷装置おいて、ページ記述言語で記述された印刷情報の、解釈、実行が直列的に行われ、プリント要求をしてから結果を得るまでの待ち時間が長くなるという問題があった。
【0005】この問題を解決し、印刷情報を高速に処理するために、複数のプロセッサをバスにより密結合し、並列的に印刷情報の解釈実行を行うマルチプロセスによる印刷処理装置(例えば特開平4-128068号公報参照)や、複数のプロセッサをネットワークにより疎結合し、並列的に印刷情報を解釈実行する、ネットワーク分散による印刷処理システム(例えば、国際公開WO91/15831号公報参照)等の技術が提案されている。
【0006】しかしながら、特開平4-128068号公報に記載されている印刷処理装置では、並列的に印刷情報の解釈実行を行うための、印刷情報の分割に関し、特別な処理が施されておらず、その分割単位は単にページごとである。したがって、印刷ジョブが複数ページから構成されたいる印刷情報に対しては処理時間短縮の効果が予想されるが、印刷情報が1ページのみで構成されている印刷情報に対しては処理時間短縮の効果がない。
【0007】また、国際公開WO91/15831号公報に記載されている印刷処理システムでは、並列的に印刷情報の解釈実行を行うための印刷情報の分割に関し、画像の重なりを検出し、「切り離しても他の画像に影響を及ぼさない画像グループ」という単位で分割し、並列処理を行っている。この場合、上述した印刷ジョブが1ページから構成されている印刷情報に対しても処理時間短縮の効果は存在する。しかし、分割された画像グループ単位での処理であるため、複数の分割された画像グループの中に画像が重なり合ったような非常に複雑な画像グループがある場合、その処理時間がボトルネックになり、ページ全体の処理時間が短縮されないことも多く発生する。」(第3頁右欄第12?末行)

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明は以上の事情を考慮してなされたものであり、密結合または疎結合された複数のプロセッサを利用して印刷情報を印刷処理する際に、印刷情報をよりきめ細かに分割し、あわせて、分割された印刷情報の処理に必要な資源情報の配分を効率的に行い、複数のプロセッサによる印刷処理の効率を向上させた印刷処理装置および方法を提供することを目的としている。」(第4頁左欄第15?23行)

「【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0019】図1はこの実施例の印刷処理システムの構成例を示し、この図において、複数のクライアント計算機(ホスト装置という)1、1’...と、ネットワーク3と、このネットワークを介してホスト装置1、1’・・・に接続された印刷処理装置2とから構成されている。
【0020】ホスト装置1、1’・・・は、パーソナルコンピュータやワークステーション等からなるものであり、この発明に関連して、図示しない文書作成プログラムを備えている。この文書作成プログラムの生成する印刷情報ファイルは、例えばポストスクリプトで記述されたものである。もちろんインタープレス等の他のページ記述言語、あるいはGDI(Graphic Device Interface 米国マイクロソフト社の商標)、Quick Draw(米国アップル社の商標)等のグラフィックコマンドであってもよい。
【0021】印刷処理装置2は、ホスト装置1、1’・・・から転送される印刷情報をラスタライズ処理して印刷出力するものであり、例えば、印刷処理受信部4と、印刷情報前処理部5と、印刷情報分配回収部6と、ラスタライズ処理部7、7’、7’’、7’’’と、共有バス8と、印刷装置9とから構成されている。これら印刷処理受信部4、印刷情報前処理部5、印刷情報分配回収部6、およびラスタライズ処理部7、7’、7’’、7’’’はいずれもソフトウェアとして実現されている。
【0022】印刷処理受信部4は、ホスト装置1、1’・・・より転送されてくる印刷情報を受信し、一般にスプールと呼ばれる一時的蓄積をするものである。
【0023】印刷情報前処理部5および印刷情報分配回収部6は、この発明の主要部を構成するものであり、印刷情報ファイル5を分割し、ラスタライズ処理を行う複数の演算処理装置(ラスタライズ処理部7、7’?7’’’)に配分するものである。
【0024】ラスタライズ処理部7?7’’’は、内部バスで連結された複数のラスタライズ処理用の演算処理装置で実現され、この実施例では少なくとも4つの演算処理装置が設けられている。ラスタライズ処理部7、?7’’’の各々は、処理実行に必要なだけのローカルメモリを備えている。このラスタライズ処理は、印刷装置9の性能(解像度、色再現性、会長度、記録サイズ等)に合わせて行われる。」(第5頁右欄第3?47行)

「【0026】なお、この実施例においてこの発明の主要部を構成する印刷情報前処理部5は、印刷処理装置2に含まれるものであるが、これに限定されるものではなく、同様の処理を行う手段がホスト装置1、1’・・・に含まれていてもよい。」(第6頁左欄第7?11行)

「【0027】つぎに、図2を参照して、この発明の主要部である印刷処理システムの印刷情報前処理部5を詳細に説明する。図2において、ホスト装置1、1’・・・から送られてくるソースファイルは、ホスト装置1、1’・・・の文書処理アプリケーション・ソフトウェア(あるいはビルト・イン・ドライバ)によって生成された、ページ記述言語(以下、PDLという)のソースコードである。この実施例では、代表的なPDLの一つであるゼロックス社のInterpressを用いている。」(第6頁左欄第12?21行)

「[印刷情報分割部]文書構造解析部23および資源従属性解析部24で得られた情報を元に、クライアントから送信された、単一の印刷情報は印刷情報分割部25によって複数の部分的な、それでいて独立実行が可能な、部分印刷情報の一群(以下、部分印刷情報を単にジョブと呼ぶ)に分けられる。ジョブは描画コンテンツおよびその実行に必要な環境コンテンツから構成されている。したがって、各コンテンツを分割したコマンド・シーケンスでジョブが構成されることはない。
【0028】印刷情報分割部25で分割・構成されたジョブ群は、複数のラスタライズ処理部7?7’’’のいずれかに配分され、並行実行される。この配分処理は、基本的に、最後のジョブができるだけ早く回収されるようになされるべきである。しかしながら、この要請は処理制御に不向きな表現であるため、後に詳説するように、ヒューリスティックな基準が採用される。」(第6頁右欄第28?43行)

「[印刷情報分割部25の動作]図7は、印刷情報分割部25の概略構成を示すものである。印刷情報分割部25は、資源従属性リストにおける描画コンテンツをひとつずつ読み込み、各描画コンテンツの実行に必要な環境コンテンツのコピーを付加した上で、複数のラスタライズ処理装置のいずれかに配分するものである。その動作を図7を用いて以下に順を追って説明する。
【0042】まず、資源従属性リスト70における描画コンテンツが、コンテンツ・ツリー・シーケンス番号順に読み込まれる(71)。これは、資源従属性リスト70の木構造におけるリーフ部分だけをコンテンツ・シーケンスのオーダで線形リストにしたものを保持することによって簡便に実現できる。
【0043】つぎに、環境コンテンツ付加部72において、読み込まれた描画コンテンツの実行に必要とされる環境情報が、資源従属性リスト70の中から読み込まれて構成される。こらは描画コンテンツの位置からルートに向かってパスを張り、そのパス上の環境コンテンツを網羅することにより、もれなく抽出される。ここで構成された描画コンテンツと環境コンテンツの集合を以下ではコンテンツ・クラスタと呼ぶ。構成されたコンテンツ・クラスタは、負荷予測部73においてその処理時間が予測される。コンテンツ配分部74は、負荷予測の値に応じて、各コンテンツ・クラスタを最良なラスタライズ処理部(PE、プロセッシング・エレメント)75へと転送する。」(第8頁左欄第10?35行)

「【0049】以上のように、処理時間予測されたコンテンツ・クラスタは、(図1における)印刷情報分配回収部6において、複数のラスタライズ処理部7?7’’’のいずれかに配分・転送される。図9は、この印刷情報分配回収部6における配分処理の制御則を示した概念図である。以下に図9を参照しながら、印刷情報分配回収部6の動作を説明する。」(第8頁右欄第21?27行)

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ネットワークにクライアントとともに接続されクライアントより転送されてくる印刷情報を受信して、印刷装置において印刷を行う印刷処理装置であって、印刷処理装置は、クライアントより転送されてくる印刷情報を受信する印刷処理受信部と、印刷情報を部分印刷情報の一群に順次分割する印刷情報分割手段と、分割された印刷情報をそれぞれ複数のラスタライズ処理部のいずれかに配分する印刷情報分配回収部と、1つの印刷装置とを有する印刷処理装置。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「印刷装置」、「印刷情報」、「印刷処理受信部」、「印刷情報分割手段」、及び「ライスタライズ処理部」は、それぞれ、本願発明の「画像形成装置」、「ジョブ」、「ジョブ入力手段」、「ジョブ分割手段」、及び「ラスタライズ処理手段」に相当する。
引用発明の「印刷処理装置」は、ネットワークに接続され、クライアントからの画像形成装置(印刷装置)に対するジョブが入力されるから、本願発明の「サーバ」に相当する「装置」ということができる。
また、引用発明の「印刷情報分配回収部」は、分割された印刷ジョブをそれぞれ複数のラスタライズ処理手段のいずれかに配分するものであるから、本願発明の、複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与える「ジョブ制御手段」に相当する。
そして、引用発明の「ネットワークにクライアントとともに接続された装置(印刷処理装置)と画像形成装置(印刷装置)」は、本願発明と同様に、装置に画像形成装置に対するジョブが入力され、分割されたジョブがラスタライズされるから、本願発明の「画像形成システム」に相当する。

したがって、両者は
「ネットワークにクライアントとともに接続された装置と、画像形成装置とを含む画像形成システムにおいて、前記装置は、前記画像形成装置に対するジョブを入力するジョブ入力手段と、前記入力されたジョブを複数のジョブに分割するジョブ分割手段と、前記分割されたジョブのラスタライズ処理を実行するための複数のラスタライズ処理手段と、前記複数のラスタライズ処理手段にそれぞれ対応する分割されたジョブを与えるジョブ制御手段とを有し、
前記複数のラスタライズ処理手段はそれぞれ異なるラスタライズ処理を行うことを特徴とする画像形成システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願発明の画像形成システムはネットワークにサーバが接続され、ネットワークおよびサーバの内のいずれか一方に接続された1つ以上の画像形成装置を有しているのに対して、引用発明の画像形成システムは、ネットワークに装置が接続され、装置は1つの画像形成装置を有している点。

相違点2
本願発明のジョブ分割手段はカラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割しているのに対して、引用発明のジョブ分割手段はこのことが記載されていない点。

(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

相違点1について
画像形成システムにおいて、ネットワークにサーバを接続し、ネットワークあるいはサーバに1つ以上の画像形成装置を接続した構成とすることは、特開平9-185471号公報(第2頁左欄、【請求項1】、図4)、特開平6-266517号公報(段落【0061】、【0066】、図1)に記載されているように周知であって格別のことではないから、引用発明の画像形成システムを、ネットワークにサーバが接続され、ネットワークおよびサーバの内のいずれか一方に接続された1つ以上の画像形成装置を有する構成とすることは当業者が周知技術に基づいて適宜になし得ることである。

相違点2について
画像形成システムのジョブ分割手段において、カラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割することは、原査定において周知例として引用された、特開平8-335150号公報(第4頁左欄第37行?右欄第22行、図5,図6)、特開平10-187393号公報(第2頁左欄第26?36行、図3)及び、特開平10-198533号公報(第8頁右欄第33行?第9頁左欄第31行、同欄第44行?右欄第15行、図10,図11には各ページをビットマップに展開する際にカラー画素を含むかどうか判断し、白黒プリンタ、あるいはカラープリンタに画像データを送信することが記載されている。)に記載されているように周知であるから、引用発明のジョブ分割手段に周知技術を適用して、引用発明のジョブ分割手段で、カラーと白黒が混在するジョブの場合には、該ジョブをカラーと白黒のそれぞれに分割を行うようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-27 
結審通知日 2007-03-06 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願平11-312960
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 聡内田 正和  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 山崎 慎一
重田 尚郎
発明の名称 画像形成システム、情報処理装置、画像形成方法および記憶媒体  
代理人 池田 浩  
代理人 別役 重尚  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 二宮 浩康  
代理人 村松 聡  

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