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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1157062
審判番号 不服2003-7101  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-25 
確定日 2007-05-11 
事件の表示 平成11年特許願第244311号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年8月31日の出願であって、平成15年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後当審において、平成18年10月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月28日付けで手続補正がなされたものであり、本願請求項1?3に係る発明は、平成18年12月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであると認められるところ、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 始動入賞口と、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動図柄を表示する図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後大当たり図柄で停止すると大当たり遊技が発生するパチンコ機において、
前記大当たり遊技を決定するために用いる大当たりカウンタと、
前記大当たり遊技の終了後における遊技で大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する確率変動モードを決定するために用いる確率変動モードカウンタと、
前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記大当たりカウンタのカウント値に基づき大当たり遊技を発生させるかどうかを決定する大当たり決定手段と、
前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記確率変動モードカウンタのカウント値に基づき確率変動モードを発生させるかどうかを決定する確率変動モード決定手段と、
前記大当たり図柄を決定するために用いる大当たり図柄カウンタと、
前記確率変動モード決定手段により確率変動モードを発生させることが決定された場合に使用され、前記大当たり図柄を前記大当たり図柄カウンタのカウント値と対応させて格納している第1大当たり図柄テーブルと、
前記確率変動モード決定手段により確率変動モードを発生させないことが決定された場合に使用され、前記大当たり図柄を前記大当たり図柄カウンタのカウント値と対応させて格納している第2大当たり図柄テーブルと、
を備え、
前記確率変動モードは一定の発生確率で発生され、
前記大当たり図柄は、一の特別大当たり図柄と、複数の非特別大当たり図柄からなり、
前記大当たり決定手段により大当たり遊技の発生が決定され、且つ、前記確率変動モード決定手段により確率変動モードの発生が決定された場合、前記特別大当たり図柄は、前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき、一の特別大当たり図柄と複数の非特別大当たり図柄とがそれぞれ選択されるように設定された前記第1大当たり図柄テーブルから第1選択確率値で選択されるとともに、前記非特別大当たり図柄は、前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき該第1大当たり図柄テーブルから第2選択確率値で選択され、
前記大当たり決定手段により大当たり遊技の発生が決定され、且つ、前記確率変動モード決定手段により確率変動モードを発生させないことが決定された場合、前記特別大当たり図柄は、前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき、一の特別大当たり図柄と複数の非特別大当たり図柄とがそれぞれ選択されるように設定された前記第2大当たり図柄テーブルから第3選択確率値で選択され、
前記第1選択確率値は、前記第2選択確率値よりも大きく設定されており、
前記第1選択確率値は、前記第3選択確率値よりも大きく設定されていることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用刊行物記載事項
当審における平成18年10月11日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平11-179008号公報(平成11年7月6日公開、以下「引用例」という。)の記載事項
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の1実施の形態である第1種始動口付きパチンコ機(以下単にパチンコ機という)を説明する。……」

「【0012】……第1種始動口18への入賞に基づいて前記表示装置15が駆動される。……」

「【0015】……図3(a)?(f)に示すように、表示画面15aには左図柄列30、中図柄列31及び右図柄列32の3つの表示列が表示される。各図柄列30,31,32は「0」から「9」までの数字図柄と2種類のキャラクターの図柄及び金貨図柄Gによって構成されており、これら図柄が各図柄列30,31,32毎にスクロールされて表示画面15aに表示される。」

「【0017】これら図柄列30,31,32の図柄変動は遊技球が第1種始動口18へ入賞することで開始する。……
【0018】……大当たり状態とは、リーチ状態を経た後に大入賞口22が開放されて入賞が格段に増える状態で多くの賞球を獲得できる状態をいう。本実施の形態では各図柄列30,31,32の停止図柄が同一種類の場合(例えば「111」、「444」等)に大当たり状態となる。……本実施の形態ではこの大当たり状態が第1の特別遊技モードに相当する。この遊技表示装置15の表示画面15aにおける図柄列30,31,32の図柄変動が第1の可変表示に相当する。」

「【0020】第2の7セグ表示部14には大当たり状態となると同時に「-」と「7」のいずれかがセグメント表示される。「7」で停止した場合には遊技者にさらに有利な遊技状態を与える。……このような更に有利な遊技状態を与えられた状態を「普通電動役物の確率変動及び時間変動モード(以下、時短モードという)」という。……一方、「-」で停止した場合には時短モードを獲得することができない。」

「【0024】次に、図7に基づいて本実施の形態のパチンコ機の電気的構成について説明する。……
【0025】7セグ表示制御手段及び時短モード制御手段としてのCPU43は補助記憶装置としての図柄乱数バッファB1?B6及び入賞判定フラグFEを有している。図8(a)に示すように、図柄乱数バッファB1?B6は左、中、右の3つの外れ図柄乱数バッファB1?B3と、左、中、右の3つの外れリーチ図柄乱数バッファB4?B6とによって構成されている。また、CPU43は各種カウンタCを有する。カウンタCにはラウンドカウンタCRと、入賞カウンタCVと、保留カウンタCH、内部乱数カウンタCIと、外れリーチ乱数カウンタCOと、大当たり図柄乱数カウンタCBと、左、中、右の3つの図柄乱数カウンタCDL,CDC,CDR、リーチ種別決定カウンタCLと、時短モードカウンタCCと、7セグ表示決定カウンタCSとがある。
【0026】ここに、ラウンドカウンタCRはラウンド回数をカウントするためのものである。入賞カウンタCVは大入賞口22への入賞球をカウントするためのものである。保留カウンタCHは変動表示動作の保留回数をカウントするためのものであり、「0」「1」「2」「3」「4」の値を順に採る。CH=0のときは保留されていない状態、または現在変動表示動作中であることを意味する。内部乱数カウンタCIは大当たりを決定するためのものである。外れリーチ乱数カウンタCOは、外れリーチの表示をするか否かを決定するためのものである。大当たり図柄乱数カウンタCBは大当たり図柄を決定するためのものである。時短モードカウンタCCは図柄が揃って大当たりになった場合に時短モードを獲得させるか否かを決定するものである。」

「【0031】また、ROM41内部には図6に示すような大当たり以降次回の大当たりに渡って遊技状態を時短モードとする(以下、このような利益を時短モードの獲得という)か否かを決定するためのテーブルT1が記憶されている。本実施の形態ではこのテーブルT1の内容はアドレスnn?nn+4に格納されている。一方、CPU43は乱数取り出し回路を備えておりROM41内部に記憶された0?99までの数字を乱数値として任意に取り出す。アドレスnnは大当たり図柄が「7」で揃う場合に呼び出され、この目がでると0?99のいずれの乱数値が選択されても時短モードとなり100パーセントの確率、つまり常に時短モードを獲得できる。アドレスnn+1は大当たり図柄が「1」「3」「5」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?74の乱数値が選択された場合に時短モードとなるようになっており、時短モードを獲得できる確率は75パーセントである。アドレスnn+2は大当たり図柄がキャラクタ図柄、金貨図柄、「9」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?49の乱数値が選択された場合に時短モードとなるようになっており、時短モードを獲得できる確率は50パーセントである。アドレスnn+3は大当たり図柄が「2」「6」「8」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?24の乱数値が選択された場合に時短モードとなるようになっており、時短モードを獲得できる確率は25パーセントである。アドレスnn+4は大当たり図柄が「4」で揃う場合に呼び出され、この目がでると0?99のいずれの乱数値が選択されても時短モードを獲得することはできない(0パーセントの確率)。」

「【0035】次に図10に基づいてCPU43により実行される「エリア格納処理ルーチン」について説明する。同ルーチンは遊技球が第1種始動口18へ入賞する度に乱数カウンタCI,CO,CDL,CDC,CDRの乱数値を保留カウンタCHの保留数に対応した図柄エリアに格納するものである。」

「【0037】次いで、ステップS14で内部乱数カウンタCIの乱数値を内部乱数エリアR1に格納する。……」

「【0042】まず、CPU43はステップS101で内部乱数エリアR1のアドレス0における乱数値が「大当たり」の値であるか否かを判定する。ここで「大当たり」の値であると判定するとステップS102で大当たり図柄乱数カウンタCBの値に対応した図柄を停止図柄として各停止図柄エリアS1?S3に格納し、ステップS103で表示画面15aの各図柄列30,31,32のスクロールを開始させ処理を一旦終了する。」

「【0047】次に,大当たり処理ルーチンにおける時短モード獲得処理について説明する。時短モード獲得処理は7セグ表示制御ルーチンと時短モード制御ルーチンを有する。まず、第2の7セグ表示部14にセグメント表示させるためのCPU43により実行される7セグ表示制御ルーチンについて図14及び図15に基づいて説明する。
【0048】まず、CPU43はステップS201で大当たり図柄が特別図柄である「7」か否かを判定する。この判定条件が成立するとステップS202でテーブルT1に基づきアドレスnnの内容を実行する。すなわち、「7」であれば100パーセントの確率で時短モードを獲得できることとなる。そして、CPU43は0?99の数字から乱数取り出し回路に基づいて1つの乱数値を取り出す。これらの値はいずれも時短モードを獲得できる値であるためステップS203でCPU43は判定条件が成立したとしてステップS204で第2の7セグ表示部14に「7」の数字をセグメント表示させ一旦処理を終了する。
【0049】一方、ステップS201の判定条件が成立しない場合、CPU43はステップS205で大当たり図柄が「1」「3」「5」のいずれかであるか否かを判定する。この判定条件が成立するとステップS206でテーブルT1に基づきアドレスnn+1の内容を実行する。そして、CPU43は0?99の数字から乱数取り出し回路に基づいて1つの乱数値を取り出す。「1」「3」「5」の図柄の場合の乱数値は75パーセントの確率で時短モードを獲得できる値である。ステップS203でCPU43は時短モードを獲得できる値であるか否かを判定し、判定条件が成立するとステップS204で第2の7セグ表示部14に「7」の数字をセグメント表示させ一旦処理を終了する。一方、判定条件が成立しない場合にはステップS207で第2の7セグ表示部14に「-」の記号をセグメント表示させ一旦処理を終了する。
【0050】前記ステップS205の条件が成立しない場合、CPU43はステップS208で大当たり図柄が「9」,キャラクタ図柄,金貨図柄Gのいずれかであるか否かを判定する。この判定条件が成立するとステップS209でテーブルT1に基づきアドレスnn+2の内容を実行する。そして、CPU43は0?99の数字から乱数取り出し回路に基づいて1つの乱数値を取り出す。これらの図柄の場合の乱数値は50パーセントの確率で時短モードを獲得できる値である。ステップS203でCPU43は時短モードを獲得できる値であるか否かを判定し、判定条件が成立するとステップS204で第2の7セグ表示部14に「7」の数字をセグメント表示させ一旦処理を終了する。一方、判定条件が成立しない場合にはステップS207で第2の7セグ表示部14に「-」の記号をセグメント表示させ一旦処理を終了する。
【0051】前記ステップS208の条件が成立しない場合、CPU43はステップS210で大当たり図柄が「2」「6」「8」のいずれかであるか否かを判定する。この判定条件が成立するとステップS211でテーブルT1に基づきアドレスnn+3の内容を実行する。そして、CPU43は0?99の数字から乱数取り出し回路に基づいて1つの乱数値を取り出す。これらの図柄の場合の乱数値は25パーセントの確率で時短モードを獲得できる値である。ステップS203でCPU43は時短モードを獲得できる値であるか否かを判定し、判定条件が成立するとステップS204に移行して第2の7セグ表示部14に「7」の数字をセグメント表示させ一旦処理を終了する。一方、判定条件が成立しない場合にはステップS207で第2の7セグ表示部14に「-」の記号をセグメント表示させ一旦処理を終了する。
【0052】前記ステップS210の条件が成立しない場合、大当たり図柄は残った「4」である。そこでCPU43はステップS212でテーブルT1に基づきアドレスnn+4の内容を実行する。CPU43は0?99の数字から乱数取り出し回路に基づいて1つの乱数値を取り出す。この図柄の場合の乱数値は0パーセントの確率、すなわちどの乱数値も時短モードを獲得できない値である。ステップS203でCPU43は判定条件が成立しないとしてステップS207で第2の7セグ表示部14に第2の7セグ表示部14に「-」の記号をセグメント表示させ一旦処理を終了する。このステップS201?ステップS212の処理が7セグ表示制御手段に相当する。」

「【0054】このように構成することにより本実施の形態1は次のような効果を奏する。
・遊技者は遊技において時短モードとなる可能性の高い図柄で大当たりすることを期待し、更に時短モードとなることそれ自体も期待するという2回もの期待を持つことができ、今まで以上にゲーム性があるおもしろいパチンコ機を提供することができる。
・第2の7セグ表示部14に対応する装置のない従来のパチンコ機では「2」「6」等の図柄で大当たりとなると時短モードを獲得できないことがわかってしまいゲーム性に欠けていた。しかし、上記実施の形態のパチンコ機ではこれら数字図柄であっても時短モード獲得の可能性があるため遊技者の期待感を大当たり状態後も維持することができゲームの興趣が増す。
・第2の7セグ表示部14に対応する装置を有するパチンコ機であったとしても従来のように大当たり図柄とは無関係に時短モードを獲得させるものであれば、例えば遊技者が過去の経験から通常時短モード獲得は当然と思っている特別図柄の「7」が揃って大当たりとなっても時短モードを獲得しない場合もある。すなわち、大当たり停止図柄として「7」のような特別な意味のある所定の停止図柄を期待する意味がなくなってしまい、遊技の興趣が極めてそがれてしまう。しかし、本発明のパチンコ機では大当たり図柄によって時短モードの確率を変更でき、上記実施の形態1では特別図柄の「7」が停止図柄の場合には確率を100パーセントに設定してあるため必ず時短モードを獲得できる。
・大当たり図柄と時短モードを獲得できる確率との関係は変更可能であるため業界の状況変化に応じて、あるいは機種に応じて確率を変更させることが可能であり汎用性が大きい。
・大当たりと同時に第2の7セグ表示部14に時短モードを獲得できたか否かが表示されるためゲームの興趣が更に増す。」

「【0061】尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態1では第2の7セグ表示部14に「7」が表示されると100パーセントの確率で時短モードを獲得でき、逆に「4」が表示されるとその確率は0パーセント(獲得できない)とされていた。これを、「7」が表示されると99パーセントの確率で、「4」が表示されると1パーセントの確率で時短モードを獲得できるように設定してもよい。このようにすれば僅かな可能性であるが、「7」が表示されても時短モードを獲得できない場合もあり、「4」が表示されてもも時短モードを獲得できる場合もあるため遊技性が増す。また、「7」、「4」の数字に限られず第2の7セグ表示部14に表示される数字の時短モードを獲得できる確率は適宜変更可能である。
【0062】・上記実施の形態では第2の特別遊技モードとして時短モードが与えられたがこれに限られるものではない。上記時短モードの定義によれば時短モード……の利益が与えられる場合であったが、例えばCR機ではこれら利益に加え大当たりの確率が高くなるという利益が与えられる。このような利益が与えられるモード(これを確変モードという)について本発明が応用されてもよい。
【0063】・上記実施の形態1では大当たりと同時に第2の7セグ表示部14に時短モード獲得の有無を表示させるようになっていた。しかし、大当たり状態中においては第2の7セグ表示部14に「0」?「9」の数字をアトランダムに次々とデモ表示させ、大当たり状態が終了すると同時に「-」と「7」のいずれかをセグメント表示させるようにしてもよい。このようにすれば、遊技者は大当たり中も終了後に行われる時短モードの抽選を待ち望むこととなり、ゲーム性が更に増す。またこの場合に、大当たり終了と同時でなくとも少し間をおいてから表示を開始するようにしてもよい。また、デモ表示は必ずしも必要ではない。また、大当たり状態ではない通常の遊技状態においてデモ表示をさせるようにしてもかまわない。また、デモ表示の方法も上記実施の形態1で説明した以外に「7」と「-」を一定時間毎に交互に表示させるようにしてもよい。
【0064】……・上記実施の形態1では第2の7セグ表示部14……によって第2の可変表示を行っていた。しかし、これらに限定されるものではない。例えば図柄列を備えた図柄変動装置によって……大当たり終了後(通常遊技)において時短モードを獲得する場合に所定の図柄を揃えるような制御をしてもよい。
・第2の可変表示を第1の可変表示を行う表示画面15a上で行うようにしてもよい。この場合に大当たり終了後に表示しても大当たり中に表示してもいずれでも構わない。また、表示画面15aに1ラウンド毎に疑似ゲーム(例えば、キャラクターがジャンケンをしたり、三目並べをしたりする)をさせて、全ラウンド終了後にゲーム結果として時短モード獲得の有無を報知してもよい。……」

上記記載事項及び図面によれば、引用例には以下の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。
「第1種始動口18と、第1種始動口18への入賞に基づいて変動が開始される図柄を表示する表示装置15を備え、停止図柄が同一種類の場合に大当たり状態となるパチンコ機において、
大当たりを決定するための内部乱数カウンタCIと、
大当たり図柄を決定するための大当たり図柄乱数カウンタCBと、
0?99までの数字を乱数値として任意に取り出す乱数取り出し回路と、
大当たり図柄に応じて使用され、遊技状態を時短モードとするか否かを乱数取り出し回路の乱数値と対応させて格納しているテーブルT1と、
を備え、
遊技球が第1種始動口18へ入賞する度に内部乱数カウンタCIの乱数値を格納し、CPU43は格納した乱数値が「大当たり」の値であるか否かを判定し、
ここで「大当たり」の値であると判定すると大当たり図柄乱数カウンタCBの値に対応した図柄を停止図柄として格納し、
テーブルT1に基づき、
大当たり図柄が「7」で揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?99のいずれの乱数値が選択された場合でも時短モードとなり(時短モードを獲得できる確率は100パーセント)、
大当たり図柄が「1」「3」「5」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?74の乱数値が選択された場合に時短モードとなり(時短モードを獲得できる確率は75パーセント)、
大当たり図柄が「9」「キャラクタ」「金貨」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?49の乱数値が選択された場合に時短モードとなり(時短モードを獲得できる確率は50パーセント)、
大当たり図柄が「2」「6」「8」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?24の乱数値が選択された場合に時短モードとなり(時短モードを獲得できる確率は25パーセント)、
大当たり図柄が「4」で揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?99のいずれの乱数値が選択された場合でも時短モードを獲得することはできない(時短モードを獲得できる確率は0パーセント)ようになっているパチンコ機。」

3.対比
引用発明における「第1種始動口18」は本願発明の「始動入賞口」に相当し、以下同様に、「表示装置15」は「図柄表示装置」に、「大当たり状態」は「大当たり遊技」に、「内部乱数カウンタCI」は「大当たりカウンタ」に、「大当たり図柄乱数カウンタCB」は「大当たり図柄カウンタ」に相当する。

また、引用発明の「時短モード」と、本願発明の「確率変動モード」は、「(大当たり遊技の終了後における遊技で有利な遊技状態である)特別遊技モード」である点で共通する。

そして、引用発明の乱数取り出し回路は0?99までの数字を乱数値として任意に取り出し、その値により、時短モードを獲得するようになっていることから、引用発明と本願発明とは、大当たり遊技の終了後における遊技で有利な遊技状態である特別遊技モードを決定するために用いる特別遊技モードカウンタを備える点で共通する。

さらに、引用発明は、大当たり図柄乱数カウンタCBにより大当たり図柄を決定し、その大当たり図柄に応じて、乱数取り出し回路から取り出す乱数値と対応させて格納しているテーブルT1に基づき、特別遊技の発生を決定していることから、特別遊技モードを発生させるかどうかを決定する特別遊技モード決定手段を備え、特別遊技モードは一定の発生確率で発生されるといえる。

そのうえ、引用発明は、大当たり図柄のうち、特別大当たり図柄を「7」とし、それ以外の大当たり図柄を非特別大当たり図柄とすると、大当たり図柄は、一の特別大当たり図柄(「7」)と、複数の非特別大当たり図柄(「1」?「6」、「8」、「9」、「キャラクタ」、「金貨」)からなるものといえる。

したがって、両者は
「始動入賞口と、始動入賞口への遊技球の入賞に基づき変動図柄を表示する図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後大当たり図柄で停止すると大当たり遊技が発生するパチンコ機において、
前記大当たり遊技を決定するために用いる大当たりカウンタと、
前記大当たり遊技の終了後における遊技で有利な遊技状態である特別遊技モードを決定するために用いる特別遊技モードカウンタと、
前記始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記大当たりカウンタのカウント値に基づき大当たり遊技を発生させるかどうかを決定する大当たり決定手段と、
前記特別遊技モードを発生させるかどうかを決定する特別遊技モード決定手段と、
前記大当たり図柄を決定するために用いる大当たり図柄カウンタと、
を備え、
前記特別遊技モードは一定の発生確率で発生され、
前記大当たり図柄は、一の特別大当たり図柄と、複数の非特別大当たり図柄からなるパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
大当たり遊技の終了後における遊技で有利な遊技状態である特別遊技モードが、本願発明は「確率変動モード」であるのに対して、引用発明は「時短モード」である点。

<相違点2>
本願発明は
「始動入賞口へ遊技球が入賞した時における前記特別遊技モードカウンタのカウント値に基づき特別遊技モードを発生させるかどうかを決定する特別遊技モード決定手段と、
特別遊技モード決定手段により特別遊技モードを発生させることが決定された場合に使用され、大当たり図柄を大当たり図柄カウンタのカウント値と対応させて格納している第1大当たり図柄テーブルと、
特別遊技モード決定手段により特別遊技モードを発生させないことが決定された場合に使用され、大当たり図柄を大当たり図柄カウンタのカウント値と対応させて格納している第2大当たり図柄テーブルと、
を備え、
大当たり決定手段により大当たり遊技の発生が決定され、且つ、特別遊技モード決定手段により特別遊技モードの発生が決定された場合、特別大当たり図柄は、始動入賞口へ遊技球が入賞した時における大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき、一の特別大当たり図柄と複数の非特別大当たり図柄とがそれぞれ選択されるように設定された第1大当たり図柄テーブルから第1選択確率値で選択されるとともに、非特別大当たり図柄は、始動入賞口へ遊技球が入賞した時における大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき第1大当たり図柄テーブルから第2選択確率値で選択され、
大当たり決定手段により大当たり遊技の発生が決定され、且つ、特別遊技モード決定手段により特別遊技モードを発生させないことが決定された場合、特別大当たり図柄は、始動入賞口へ遊技球が入賞した時における大当たり図柄カウンタのカウント値に基づき、一の特別大当たり図柄と複数の非特別大当たり図柄とがそれぞれ選択されるように設定された第2大当たり図柄テーブルから第3選択確率値で選択され、
第1選択確率値は、第2選択確率値よりも大きく設定されており、
第1選択確率値は、第3選択確率値よりも大きく設定されている」
ものであるのに対して、引用発明は
「大当たり図柄を決定するための大当たり図柄乱数カウンタCBと、
0?99までの数字を乱数値として任意に取り出す乱数取り出し回路と、
大当たり図柄に応じて使用され、遊技状態を時短モードとするか否かを乱数取り出し回路の乱数値と対応させて格納しているテーブルT1と、
を備え、
遊技球が第1種始動口18へ入賞する度に内部乱数カウンタCIの乱数値を格納し、CPU43は格納した乱数値が「大当たり」の値であるか否かを判定し、
ここで「大当たり」の値であると判定すると大当たり図柄乱数カウンタCBの値に対応した図柄を停止図柄として格納し、
テーブルT1に基づき、
大当たり図柄が「7」で揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?99のいずれの乱数値が選択された場合でも特別遊技モードとなり(特別遊技モードを獲得できる確率は100パーセント)、
大当たり図柄が「1」「3」「5」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?74の乱数値が選択された場合に特別遊技モードとなり(特別遊技モードを獲得できる確率は75パーセント)、
大当たり図柄が「9」「キャラクタ」「金貨」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?49の乱数値が選択された場合に時短モードとなり(特別遊技モードを獲得できる確率は50パーセント)、
大当たり図柄が「2」「6」「8」のいずれかの図柄が揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?24の乱数値が選択された場合に時短モードとなり(特別遊技モードを獲得できる確率は25パーセント)、
大当たり図柄が「4」で揃う場合に、乱数取り出し回路に基づいて、0?99のいずれの乱数値が選択された場合でも特別遊技モードを獲得することはできない(特別遊技モードを獲得できる確率は0パーセント)ようになっている」
ものである点。

4.当審の判断
<相違点1について>
引用例の段落【0062】には、大当たりの確率が高くなるという利益が与えられる確変モードについて応用してもよい旨、開示されているから、大当たり遊技の終了後における遊技で有利な状態である特別遊技モードとして、引用発明の時短モードに代えて、大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する確率変動モードを適用することに格別の困難性は認められない。

<相違点2について>
引用例の段落【0061】には、「「7」が表示されると100パーセントの確率で時短モードを獲得でき、逆に「4」が表示されるとその確率は0パーセント(獲得できない)とされていた。これを、「7」が表示されると99パーセントの確率で、「4」が表示されると1パーセントの確率で時短モードを獲得できるように設定してもよい。このようにすれば僅かな可能性であるが、「7」が表示されても時短モードを獲得できない場合もあり、「4」が表示されてもも時短モードを獲得できる場合もあるため遊技性が増す。」と記載されているから、引用発明において、大当たり図柄「7」で揃う場合に特別遊技モードを獲得できる確率を99パーセントと変更し、大当たり図柄が「4」で揃う場合に特別遊技モードを獲得できる確率を1パーセントと変更することは、当業者なら容易になし得るものである。
そして、そのように構成すれば、第1選択確率値(一の特別大当たり図柄(「7」)の場合の特別遊技モードが発生する確率:99%)は、第2選択確率値(複数の非特別大当たり図柄(「1」?「6」、「8」、「9」、「キャラクタ」、「金貨」)の場合の特別遊技モードが発生する確率:75?1%)よりも大きく設定され、第1選択確率値(特別大当たり図柄(「7」)の場合の特別遊技モードが発生する確率:99%)は、第3選択確率値(特別大当たり図柄(「7」)の場合の特別遊技モードが発生しない確率:1%)より大きく設定されていることになる。

また、引用発明のように、決定した大当たり図柄に対応して、特別遊技モードの発生・不発生を決定するように構成するか、本願発明のように、決定した特別遊技モードの発生・不発生に対応して、大当たり図柄を決定するように構成するかは、各大当たり図柄と特別遊技モードの発生・不発生を関連づける際の決定手順が相違するのみであり、その相違に基づく作用効果に格別の差異が生じないのであるから、当業者が適宜選択できる設計的事項と認められる。
ここで、請求人は、平成18年12月28日付けの意見書において、本願発明の作用効果として、確変大当たり図柄データテーブル52と通常大当たり図柄データテーブル51の各「カウント値」を変更するだけで、各「確変大当たり図柄」の出現頻度と、各「通常大当たり図柄」の出現頻度とを容易に変更することができると共に、各出現頻度を変更しても確率変動モードの発生確率が変更されてしまうという問題も発生しないため、修正を容易に行うことができる旨、主張している。しかしながら、本願発明のように、決定した特別遊技モードの発生・不発生に対応して、大当たり図柄を決定するように構成すれば、大当たり図柄を決定するテーブルを変更しても特別遊技モードの発生・不発生の確率に影響しないが、特別遊技モードの発生・不発生の確率を変更すれば各大当たり図柄の出現頻度が変更されること、及び、引用発明のように、決定した大当たり図柄に対応して、特別遊技モードの発生・不発生を決定するように構成すれば、特別遊技モードの発生・不発生の確変を変更しても各大当たり図柄の出現頻度に影響しないが、大当たり図柄を決定するテーブルを変更すれば特別遊技モードの発生・不発生の確率が変更されることは当然であって、請求人が主張する作用効果は、当業者の予測の範囲を超えるものとはいえず、本願発明が引用例に記載された発明に比して格別の作用効果を有するものとは認められない。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-26 
結審通知日 2007-02-20 
審決日 2007-03-06 
出願番号 特願平11-244311
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 川島 陵司
藤田 年彦
発明の名称 パチンコ機  
代理人 富澤 孝  
代理人 山中 郁生  
代理人 岡戸 昭佳  

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