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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1157090 |
審判番号 | 不服2006-6563 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-06 |
確定日 | 2007-05-11 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 97291号「焦点検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月27日出願公開、特開平10-288735〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成9年4月15日の出願であって、平成18年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月8日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成18年5月8日付けの手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成18年5月8日付けの手続補正を却下する。 1.[理由]独立特許要件違反 (1)平成18年5月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、平成18年1月10日付けの手続補正(以下、「本件補正前補正」という。)における 「 【請求項1】 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量を選択的に検出可能な焦点検出手段と、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段と、を有し、 前記定数と、 前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて 前記選択された領域に対応するピント補正値信号を演算する補正値演算手段を有することを特徴とする焦点検出装置。 【請求項2】 前記予定焦点面の各領域に対応する位置を示す情報とは、前記2次元のセンサ上における位置であることを特徴とする請求項1の焦点検出装置。 【請求項3】 前記ピントずれ量と、前記補正値を演算して前記選択された領域の焦点状態を検出することを特徴とする請求項1または2の焦点検出装置。 【請求項4】 前記請求項1?3の焦点検出装置を有するカメラ、カメラシステム。 【請求項5】 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量を選択的に検出可能な焦点検出手段と、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段と、を有し、 前記定数と、 前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて 前記選択された領域に対応するピント補正値信号を演算する補正値演算手段を有することを特徴とする焦点検出装置を有するカメラシステム。 【請求項6】 撮影レンズを交換自在なカメラであって、 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量を選択的に検出可能な焦点検出手段と、を有し、 前記撮影レンズから取得した固有の補正特性を表す定数と、 前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて 前記選択された領域に対応するピント補正値信号を演算する補正値演算手段を有することを特徴とする焦点検出装置を有するカメラ。」 が、 「 【請求項1】 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であって、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段を有し、 前記定数と、前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて前記選択された領域に対応するピント補正値を演算する補正値演算手段を有し、前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出することを特徴とする焦点検出装置。 【請求項2】 前記予定焦点面の各領域に対応する位置を示す情報とは、前記2次元のセンサ上における位置であることを特徴とする請求項1の焦点検出装置。 【請求項3】 前記請求項1の焦点検出装置を有するカメラ、カメラシステム。 【請求項4】 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であって、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段を有し、 前記定数と、前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて前記選択された領域に対応するピント補正値を演算する補正値演算手段を有し、前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出することを特徴とする焦点検出装置を有するカメラシステム。 【請求項5】 撮影レンズを交換自在なカメラであって、 2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であって、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段を有し、 前記定数と、前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて前記選択された領域に対応するピント補正値を演算する補正値演算手段を有し、前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出することを特徴とする焦点検出装置を有するカメラ。」 と補正された。 (2)本件補正は、 (ア)本件補正前補正の請求項1、請求項5及び請求項6について、「撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量」を「撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量」とする補正(以下、「補正a」という。)と、 (イ)本件補正前補正の請求項1、請求項5及び請求項6について、「ピント補正値信号」を「ピント補正値」とする補正(以下、「補正b」という。)と、 (ウ)本件補正前補正の請求項1、請求項5及び請求項6について、「前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出する」を付加する補正と(以下、「補正c」という。)、 (エ)本件補正前補正の請求項3を削除するとともに、それに伴い、請求項4から6の項番を3から5に繰り上げる補正(以下、「補正d」という。)と、 からなるものである。 (3)本件補正の各補正事項のうち、 (ア)補正a及びbは、特許法第17条の2第4項第3号(誤記の訂正)に該当するものといえる。 (イ)補正cは、本件補正前補正の請求項1、請求項5及び請求項6において、それぞれ、ピント補正に関する発明特定事項について「前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出する」という限定をするものであるため、同第2号(特許請求の範囲の減縮)に該当するものといえる。 (ウ)補正dは、同1号(請求項の削除)に該当するものといえる。 (4)そこで、本件補正の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 2.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-214133号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「2.特許請求の範囲 1)被写体像を基準面上に形成する撮影光学系と、 前記撮影光学系を通過する光束のうち前記基準面から光軸上で第1の距離隔たった第1の所定面上において空間的に異なる領域を通過する少なくとも一対の光束を分離して被写体像を形成する焦点検出光学系と、 複数の受光素子からなり、前記焦点検出光学系で形成された前記被写体像の強度分布に対応した被写体像信号を発生する光電変換手段と、 前記撮影光学系の絞り開放時の射出瞳Fナンバーと、前記基準面から該射出瞳までの第2の距離と、撮影光学系の周辺光量低下に関する情報とを発生する撮影系情報発生手段と、 前記第1の所定面における前記領域の大きさと、前記第1の距離と、前記焦点検出光学系の周辺光量低下に関する情報とを発生する焦点検出系情報発生手段と、 前記撮影系情報発生手段と前記焦点検出系情報発生手段からの情報に基づいて、前記撮影光学系と前記焦点検出光学系を組合せた場合の周辺光量の低下及び前記焦点検出光束のケラレによって生ずる前記光電変換手段の受光素子面上での光量低下を受光素子面上の位置に関連して光量分布情報として求める光量分布検出手段と、 前記被写体像信号に対して前記光量分布情報に応じた処理を行って前記基準面に対する現在の被写体像面のデフォーカス量を検出する焦点検出演算手段とを具備したことを特徴とする焦点検出装置。」 (第1頁左欄第4行-右欄第14行) (b)「A.産業上の利用分野 本発明はカメラ等の焦点検出装置に関するものである。」 (第2頁左上欄第11行-第13行) (c)「B.従来技術 例えば本出願人による特願昭63-331748号に開示された焦点検出装置が知られている。これは、いわゆる瞳分割方式の焦点検出光学系により撮影光学系を通過する一対の光束から一対の被写体像を光電変換素子上に形成し、光電変換素子により被写体像を光電変換することにより被写体像信号を得、この被写体像信号に対して所定の演算を行なって撮影光学系のデフォーカス量を算出するものである。 このような瞳分割方式の焦点検出装置においては、撮影光学系と焦点検出光学系の組合せによっては焦点検出に用いる光束のケラレが生ずる場合があり、そのケラレが一様でない場合は焦点検出精度に悪影響を与え、最悪時には焦点検出不能になってしまうという問題点があった。」 (第2頁左上欄第14行-右上欄第9行) (d)「第9A図に示す焦点検出光学系は、本出願人による特願昭63-331748号に開示されたいわゆる瞳分割方式の光学系である。この焦点検出光学系は、撮影光学系の第1次結像面に配置され被写界における焦点検出を行う領域を規制するための開口部300Aを有する視野マスク300と、視野マスク背後に配置されたフィールドレンズ301と、開口部300Aに形成された被写体像を第2次結像面に再結像するための2対の再結像レンズ303A、303B、303G、303Dと、これらの再結像レンズの前に配置され各々の再結像レンズに入射する光束を規制するための4つの開口部302A、302B、302C、302Dを有する絞りマスク302とから成る。再結像された各々の被写体像は、第2次結像面に配置された光電変換素子304上の受光部(例えば、CCDイメージセンサ)304A、304B、304C、304D上に投影され、各受光部から被写体像の光強度分布に対応する被写体像信号を発生する。」 (第2頁右上欄第12行-左下欄第11行) (e)「D.課題を解決するための手段 クレーム対応図である第1図により説明すると、本発明に係る焦点検出装置は、被写体像を基準面上に形成する撮影光学系1と、撮影光学系1を通過する光束のうち前記基準面から光軸上で第1の距離隔たった第1の所定面上において空間的に異なる領域を通過する少なくとも一対の光束を分離して被写体像を形成する焦点検出光学系2と、複数の受光素子からなり、被写体像の強度分布に対応した被写体像信号を発生する光電変換手段3と、撮影光学系1の絞り開放時の射出瞳Fナンバー、前記基準面から射出瞳までの第2の距離、および撮影光学系1の周辺光量低下に関する情報を発生する撮影系情報発生手段4と、前記第1の所定面における前記領域の大きさ、前記第1の距離、および焦点検出光学系2の周辺光量低下に関する情報を発生する焦点検出系情報発生手段5と、前記撮影系情報発生手段4と焦点検出系情報発生手段5からの情報に基づいて、撮影光学系1と焦点検出光学系3を組合せた場合の周辺光量の低下及び前記焦点検出光束のケラレによって生ずる、光電変換手段3の受光素子面上での光量低下を受光素子面上の位置に関連して光量分布情報として求める光量分布検出手段6と、被写体像信号に対して光量分布情報に応じた処理を行って前記基準面に対する現在の被写体像面のデフォーカス量を検出する焦点検出演算手段7とを具備する。」 (第4頁右上欄第1行-左下欄第7行) (f)「F.実施例 第2図は本発明に係る焦点検出装置を備える一眼レフカメラの全体構成を示すブロック図である。 第2図において、カメラボディ20に対して交換可能なレンズ10が着脱自在にマウンドしうるようになされている。レンズ10を装着した状態において、被写体から到来する撮影光束は、撮影レンズ11を通ってカメラボディ20に設けられているメインミラー21により一部は反射されてファインダーに導かれ、スクリーン23、ペンタプリズム24、接眼レンズ25を通ることにより、スクリーン像が撮影者により観察される。他の一部はメインミラー21を透過してサブミラー22により反射され、焦点検出用の光束として焦点検出光学系30に導かれる。」 (第4頁右下欄第4行-第18行) (g)「焦点検出光学系30は例えば第9A図に示すように構成でき、撮影レンズ11によって結像された被写体像を光電変換回路32の受光素子上に再結像させる。受光素子の受光面は焦点検出光学系30の焦点検出面(フィルム共役面)である、したがって、光電変換回路32の受光素子は、焦点検出光学系30によって再結像された被写体像を光電変換し被写体像信号を発生する。 光電変換回路32で検出された被写体像信号はカメラ本体側のマイクロコンピュータ400に入力されて、後述する各種演算に供される。機能的にマイクロコンピュータ400の構成要素を取り出すと、マイクロコンピュータ400は、焦点検出光学系の周辺光量演算部400Aと、焦点検出光学系の各種情報記憶部400Bと、光量分布演算部400Cと、焦点検出演算部400Dとを備える。各部の詳細は後述する。また、シャッター装置27や不図示の巻き上げ装置等周知のカメラ内部機構も設けられている。 AFモータ51は、マイクロコンピュータ400で演算されたデフォーカス量に基づいて回転能動され、ボディ伝達系52、クラッチ53、カップリング54,18、レンズ伝達系13を介して撮影レンズ11のフォーカシングレンズを光軸方向に移動せしめる。エンコーダ55は、AFモータ51の回転数を検出してマイクロコンピュータ400に入力する。 レンズCPU12は、撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置(第12図のd1)に関する情報とを発生し、カップリング59E,19Eを介してマイクロコンピュータ400に入力する。またレンズCPU12は、撮影レンズ11のフォーカシング、ズーミングによって上記情報が変化する場合にはフォーカシング、ズーミング位置を検出するとともに検出したフォーカシング、ズーミング位置に応じて上記情報を変化させる。 例えば第4図に示すような撮影レンズ11の周辺光量の情報は、画面上での光軸からの距離dをパラメータにした関数F(d)として与えられる。例えば(1)式のように、関数F(d)をdのべき乗項で展開した近似式の係数a0・・・anによって周辺光量の情報を発生することができる。 F(d)=a0×d0+a1×d1+a2×d2+・・・+an×dn …(1) 撮影レンズ11の射出瞳形状が特殊な場合には、レンズCPU12は、絞り形状と位置に関する情報をFナンバーの代わりに発生する。例えばレフレックスレンズのような場合は、絞り形状の外接Fナンバーと内接Fナンバー及びそれぞれの瞳位置に関する情報を発生する。 焦点検出光学系の情報記憶部400Bは、焦点検出光学系30の周辺光量と、焦点検出瞳位置(第12図d0)と、焦点検出瞳絞りの形状・位置に関する情報とを予め記憶している。例えば第13図に示す焦点検出瞳絞り305Aの場合、焦点検出瞳絞りの形状・位置に関する情報は、瞳絞り外側径roと内側径r1と内側径の中心位置d2である。」 (第4頁右下欄第19行-第5頁左下欄第17行) (h)「焦点検出光学系30の周辺光量演算部400Aは、光電変換回路32の受光素子が設置された面においての周辺光量情報を、光電変換面位置を撮影画面の位置に変換して、撮影レンズ11の周辺光量に関する情報と同様な形で演算すれば良い。但し焦点検出光学系30は偏心光学系となっているので、周辺光量の情報も(1)式のように中心に対して点対称にはならない。このような場合、光軸対応点(例えば第12図の点B’、B″)を中心とした2次元の軸X、Yを用いて例えば(2)式として周辺光量情報を表すことができる。 Ga(x,y)=Ha(x)・Ia(y) Ha(x)=b0×x0+b1×x1+・・・+bn×xn Ia(y)=c0×y0+cl×y1+・・・+cn×yn …(2) 焦点検出光学系30が第9A図のように2対ある場合には、それぞれのセパレータレンズ303A,303B,303C,303Dについて周辺光量情報Ga(x,y),Gb(x,y),Gc(x,y),Gd(x,y)が必要となるが、セパレータレンズ303Aと303Bおよび303Cと303Dが光軸に対し対称な場合はGb(x,y)=Ga(-x,y)およびGd(x,y)=Gc(x,-y)となるので情報量を圧縮することができる。また、光電変換面を細かいセル(x,y)に分割しそれぞれのセルに対応する光量として周辺光量情報をあらわしてもよい。上記焦点検出光学系30の周辺光量情報は、焦点検出光学系の焦点検出面(フィルム共役面)に一様輝度の被写体像を結像させた状態での受光素子出力に基づいて決定したり、光学系設計時のデータに基づいて決定しても良い。」 (第5頁左下欄第18行-第6頁左上欄第8行) (i)「光量分布検出部400Cは、レンズCPU12、焦点検出光学系周辺光量演算部400Aからの情報に基づいて、一様照明された被写体に対する受光素子上の光量分布を検出する。この光量分布は、焦点検出光学系30により形成される像毎に求められる。すなわち、第9A図のごとき焦点検出光学系の場合は、4個の再結像レンズ303A、303B、303C、303D毎に光量分布が求められる。 ここで、光量分布演算について説明する。 撮影レンズ11の射出瞳位置がd1、開放Fナンバーがf0、周辺光量情報数がF(x,y)で、焦点検出光学系30が第9A図のような構成であり、焦点検出瞳位置がdo、焦点検出瞳面での焦点検出演算り形状が第5図に示すような中心位置(xb,0)で半径r2の円形、周辺光量情報がGb(x,y)であった場合、例えば再結像レンズ303Bによる光量分布は以下のようにして求められる。 開口部300Aの座標(x0,y0)及び再結像レンズ303Bを通る光束は、撮影レンズ11の射出瞳面において第6図のごとく座標(x1,y1)を中心とした半径r3の円Pとなる。一方、瞳面において撮影レンズ11の射出瞳の形状は中心(0,0)で半径r4の円Qとなるので、円Pと円Qの共通部分の面積A1を円Pの面積A2で割ったものが座標(x0,y0)及び再結像レンズ303Bを通る光束のケラレ情報Jb(x0,y0)となる。 Jb(x,y)=A1/A2 xl=x0+(xb-x0)・d1/d0 yl=y0-y0・d1/d0 r3=r2・d1/d0 r4=d1/(2f0) …(3) 以上のようにして任意の座標(x,y)におけるケラレ情報Jb(x,y)を求めることができる。従って最終的な光量分布情報Kb(x,y)は(4)式のように表される。 Kb(x,y)=F(x,y)・Gb(x,y)・Jb(x,y) …(4) 同様にして再結像レンズ303A、303C、303Dを通る光束のケラレ情報Ja(x,y)、Jc(x,y)、Jd(x,y)を求めることができ、焦点検出光学系30の他の周辺光量情報をGa(x,y)、Gc(x,y)、Gd(x,y)とすれば、光量分布情報Ka(x,y)、Kc(x,y)、Kd(x,y)を求めることができる。第7図に光量分布情報Ka(x,y)の様子を示す。 焦点検出演算部400Dは、光電変換回路32の出力する被写体像信号に対して周知の焦点検出演算を施して撮影レンズ11の現在の像面とフィルム面との偏差(デフォーカス量)を検出する。」 (第6頁左上欄第9行-左下欄第20行) (j)第2図 (k)第9A図 (2)これらの記載から、 (ア)引用例1は焦点検出装置に関する発明であり(上記摘記事項bより)、撮影光学系1と、焦点検出光学系2と、光電変換手段3と、撮影系情報発生手段4と、焦点検出系情報発生手段5と、光量分布検出手段6と、焦点検出演算手段7とを具備するものが開示されていること(同a、e、jより)、 (イ)そして、前記撮影光学系1は、明らかに、第2図でいうレンズ10、カメラボディ20などからなること。また、同撮影光学系1においては、交換可能なレンズ10が着脱自在にマウントしうるようになされており、同レンズ10は撮影レンズ11からなるものであること(同fより)、 (ウ)前記焦点検出光学系2ないし光電変換手段3は、第2図でいう焦点検出光学系30ないし光電変換回路32に対応するものといえること。また、、それらにおいては、受光部304A、304B、304C、304Dからなる光電変換素子304が設けられており(同d、kより)、同光電変換素子304の設けられた面が、前記撮影レンズ11によって被写体像の結像される面となるものであること(同f、g、kより)、 (エ)前記撮影系情報発生手段4は、撮影レンズ11に関する情報を発生させる手段の意味であることは明らかであることから、第2図でいうレンズCPU12に対応すること。また、同レンズCPU12は、撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報とを発生すること(同gより)、 (オ)前記光量分布検出手段6は、明らかに、第2図でいう光量分布検出部400Cに対応すること。また、同光量分布検出部400Cでは、レンズCPU12、焦点検出光学系周辺光量演算部400Aなどからの情報に基づいて、光量分布情報を求めていること(同hより)。 そして、前記周辺光量演算部400Aは、受光素子が設置された面においての周辺光量情報を、光軸対応点を中心とした2次元の座標(x,y)を用いて演算していること(同hより)、 (カ)前記焦点検出演算手段7は、明らかに、第2図でいう焦点検出演算部400Dに対応すること。また、同焦点検出演算部400Dでは、被写体像信号に対して前記光量分布情報に応じた処理を行って前記基準面に対する被写体像面のデフォーカス量を検出すること(同a、iより)、 などが認められる。 (3)してみれば、引用例1には、 「受光部304A、304B、304C、304Dからなる光電変換素子304と、 撮影レンズ11により結像される基準面に対するデフォーカス量を検出する焦点検出装置であって、 撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報と、を発生するレンズCPU12と、 レンズCPU12からの情報と、光軸対応点を中心とした2次元の座標(x,y)を用いて演算した周辺光量情報と、から光量分布情報を求め、前記光量分布情報に応じた処理を行って基準面に対する被写体像面のデフォーカス量を検出する、焦点検出装置。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていることが認められる。 3.対比 (1)本願補正発明と引用発明とを対比する。 本願補正発明の発明特定事項のうち、 (ア)「2次元のセンサ」について 引用発明の「受光部304A、304B、304C、304Dからなる光電変換素子304」は、第9A図からも明らかな通り、2次元に配列されていることから、本願補正発明の「2次元のセンサ」に相当する。 (イ)「前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であって」について 引用発明においても「2次元のセンサ」が用いられていることは、上記(ア)のとおりである。 引用発明の「撮影レンズ11により結像される基準面」は、本願補正発明の「撮影レンズの予定焦点面」に相当する。 引用発明は、前記基準面に対する被写体像面のデフォーカス量を検出するものであることから、本願補正発明と同様に、撮影レンズの予定焦点面上のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であることは明らかである。 また、引用発明においても、第9A図などから、被写体は光軸に垂直な面に平行な2次元のものを前提としていることは明らかであるから、引用発明において、ピントずれ量は、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置に対して検出可能となっているといえる。 (ウ)「前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段を有し」について 引用発明の「撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報」は、「撮影レンズの情報」であることは明らかである。 そして、引用発明では、レンズ10が交換可能となっており、前記「情報」を発生させるレンズCPU12がカップリング59E、19Eを介してマイクロコンピュータ400に入力されることから(摘記事項f、j)、引用発明の前記「情報」は、撮影レンズの「固有の」情報であり、また、同「情報」は、周辺光量情報の算出に用いられ、さらにその周辺光量情報がデフォーカス量の算出に用いられるものであるから(同a、h、i)、撮影レンズの「補正特性を表す」情報である。したがって、引用発明の前記「情報」は「撮影レンズの固有の補正特性を表す」情報であるといえる。 但し、撮影レンズ11のフォーカシング、ズーミングによって変化する場合にはそれに応じて変化するものとされている(同g)。 また、引用発明においては、前記「撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報」を発生させる手段として、「レンズCPU12」が備えられており、同「レンズCPU12」が、本願補正発明の撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する「記憶手段」に対応するといえる。 (エ)「前記定数と、前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて前記選択された領域に対応するピント補正値を演算する補正値演算手段を有し」について 「前記定数」については、上記(ウ)のとおりである。 本願補正発明の「予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報」については、引用発明の「光軸対応点を中心とした2次元の座標(x,y)」がそれに相当することは明らかである。 引用発明の光量分布情報は、それに応じた処理が行われた上で、デフォーカス量を検出するものである(摘記事項a、e、h)。このことは、デフォーカス量の算出に当たり、光量分布情報の要因が考慮されているのと同等であるから、言い換えれば、本願補正発明と同様に、光量分布情報によりデフォーカス量が補正されている、ということができる。 また、引用発明の光量分布情報は、レンズCPU12から発生する撮影レンズの情報と、光軸対応点を中心とした2次元の座標(x,y)と、を用いて演算されており、この点で、本願補正発明における、撮影レンズの固有の補正特性を表す定数と、予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて演算されるピント補正値と同様である。 してみれば、引用発明の「光量分布情報」は、本願補正発明の「ピント補正値」に相当するといえる。 また、引用発明においては、光量分布情報が「光量分布演算部400C」において演算されることから、同「光量分布演算部400C」が本願補正発明のピント補正値を演算する「補正演算手段」に相当する。 (オ)「前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出する」について 本願補正発明の「ピント補正値と…ピントずれ量とを演算して…焦点状態を検出する」との記載は、それ自体ではその技術的意義が一義的に明確に理解することはできないが、本願の発明の詳細な説明の記載(【0016】、【0049】など)を参酌すると、補正された焦点検出信号を得るために、ピントずれ量をピント補正値により補正するという内容を意味しているものと解される。 これに対して、引用発明では、上記(エ)のとおり、光量分布情報を考慮した上で、デフォーカス量を直接に算出している。 (2)してみれば、引用発明と本願補正発明とは、 「2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された 領域に対応する位置のピントずれ量を検出可能な焦点検出手段であって、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す情報を記憶する記憶手段を有し、 前記定数と、前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて前記選択された領域に対応するピント補正値を演算する補正値演算手段を有する焦点検出装置。」 である点で一致し、 [相違点1] 撮影レンズの固有の補正特性を表す情報が、本願補正発明では「定数」であるのに対して、引用発明では撮影レンズ11のフォーカシング、ズーミングによって変化する場合にはそれに応じて変化するものとされている点、 [相違点2] 本願補正発明では、ピント補正値とピントずれ量とを演算して選択された領域の焦点状態を検出するのに対して、引用発明では、光量分布情報を考慮した上でのデフォーカス量を直接に算出している点、 において相違する。 4.判断 (1)相違点1について 引用発明においては、「撮影レンズの固有の補正特性を表す情報」である、撮影レンズ11の周辺光量、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報などは、撮影レンズ11のフォーカシング、ズーミングによって変化する場合にはそれに応じて変化するように設計されている。 しかし、焦点状態の補正に用いられる情報で、撮影レンズ本体に設けられた記憶装置に記憶される、撮影レンズに関する情報については、予め定められた一定の値を記憶しておくことは、カメラのなどの焦点検出装置に関する分野においては周知の技術であることが認められる(例えば、特開平6-331886号公報を参照)。 そして、引用発明において、撮影レンズ11の周辺光量と、絞り開放時の射出瞳のFナンバー(f0)と、射出瞳のフィルム面基準の位置に関する情報などについて、撮影レンズ11のフォーカシング、ズーミングなどを考慮することなく、上記周知の技術のように、一定の値とすることには、何らの困難性や阻害要因があるともいえない。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は容易に想到できたといえる。 (2)相違点2について 本願補正発明において、ピント補正値とピントずれ量とを演算して選択された領域の焦点状態を検出しているのは、3.(1)(オ)のとおり、ピントずれ量をピント補正値により補正して、焦点検出信号を得るという点に技術的意義があるものであり、ピント補正値を独立して算出すること自体には格別な意義はないと解される。 それに対して、引用発明も、最終的には、(本願補正発明のピント補正値に相当する)光量分布情報を考慮した上でデフォーカス量を算出しているものである。 してみれば、両者の相違は単に演算過程における相違にすぎず、格別な意義があるものではない。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は容易に想到できたといえる。 また、本願補正発明の作用効果も、引用例1や周知の技術から当業者が予測しうる範囲のものである。 (3)してみれば、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.結び 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.平成18年5月8日付けの手続補正について 本件補正は、上記「II.平成18年5月8日付けの手続補正について」のとおり、却下された。 2.本願発明について したがって、本願の請求項1に係る発明は、本件補正前補正(平成18年1月10日付けの手続補正)の特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものと認める。 「2次元のセンサと、 前記2次元のセンサを用いて、撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量を選択的に検出可能な焦点検出手段と、 前記撮影レンズの固有の補正特性を表す定数を記憶する記憶手段と、を有し、 前記定数と、 前記予定焦点面の選択された領域に対応する位置を示す情報と、に基いて 前記選択された領域に対応するピント補正値信号を演算する補正値演算手段を有することを特徴とする焦点検出装置。」 (以下、「本願発明」という。) 3.引用例 引用例1(特開平3-214133号公報)に記載された発明は、上記「II.2.引用例」のとおりである。 4.対比・判断 (1)本願発明は、本願補正発明の発明特定事項のうち、「撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域から選択された領域に対応する位置のピントずれ量」、「ピント補正値」を、それぞれ、「撮影レンズの予定焦点面上の複数の領域の各領域に対応する位置のピントずれ量」、「ピント補正値信号」とし、また、「前記補正値演算手段により演算されたピント補正値と、前記選択された領域の検出されたピントずれ量とを演算して前記選択された領域の焦点状態を検出する」という限定を省いたものである。 (2)してみれば、本願発明は、上記「II.4.判断」と同様の理由により、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到できたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-07 |
結審通知日 | 2007-03-13 |
審決日 | 2007-03-26 |
出願番号 | 特願平9-97291 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
濱田 聖司 森内 正明 |
発明の名称 | 焦点検知装置 |
代理人 | 西山 恵三 |
代理人 | 内尾 裕一 |