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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1157710
審判番号 無効2004-80107  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-07-21 
確定日 2007-05-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3032862号「海苔異物除去装置」の特許無効審判事件についてされた平成17年6月22日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10592号平成17年10月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3032862号の請求項1乃至2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由

I.手続の経緯

本件特許3032862号の請求項1乃至5に係る発明は、平成4年12月28日に出願した特願平4-360312号の一部を平成9年12月22日に新たに特願平9-365852号として出願されたものであって、平成12年2月18日に特許権設定の登録がなされたところ、これに対して、渡邊機開工業株式会社より平成16年7月21日付で本件無効審判の請求がなされ、平成17年6月22日付けで本件の請求項1乃至2に係る特許を無効とする旨の審決がなされたところ、本件の被請求人から東京高等裁判所に当該審決の取消を求める訴が平成17年(行ケ)第10592号として提起されるとともに、平成17年10月13日付けで本件特許第3032862号につき訂正2004-80107号として訂正審判の請求がなされ、これに基づいて平成17年10月28日付けで東京高等裁判所にて本件を審判官に差し戻すために前記審決を取り消す旨の決定がなされ、平成17年11月21日付けで前記訂正審判の訂正明細書を援用して訂正請求がなされ、平成18年2月7日付けで請求人より審判事件弁駁書が提出されたものである。

II.訂正請求について

1.訂正の内容

(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「上方が開放している第1分離室と」の記載を、「中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と」と訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「その第1分離室に対して分離壁によって仕切られている第2分離室を設け」の記載を、「その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け」と訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「その分離壁に生海苔の通過し得る狭い幅の分離孔を設け」の記載を、「その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし」と訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「上方が開放している第1分離室に海苔混合液を供給可能な供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引して排出可能な排出手段を備え」の記載を、「上方が開放している第1分離室には、前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け」と訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「海苔混合液を分離孔に通過させて異物を上方が開放している第1分離室に残すこと」の記載を、「第1分離室の底部に、第1分離室に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すこと」と訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項4の「分離壁の分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段」の記載を、「海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段」と訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項4の「分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2又は請求項3記載の海苔異物除去装置。」の記載を、「海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴とする請求項1記載の海苔異物除去装置。」と訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項2、請求項3及び請求項5を削除する。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項4の項番を繰り上げて新たな請求項2とする。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0004】の記載を、
「【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、海苔混合液の生海苔が0.05?0.5mm程度の薄くて柔らかい小さな葉状体であることに着目し、その生海苔のみを孔幅の小さい細長い分離孔に流通させて生海苔の厚みより僅かに大きな寸法例えば0.5mm?2mm程度以上の異物を効率良く分離するようにしたもので、請求項1の発明は、海苔混合液から異物を分離除去する海苔異物除去装置において、分離槽に、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、上方が開放している第1分離室には、前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことを特徴としている。また、請求項2の発明は、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴としている。」と訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0005】の記載を、「【作用】上記請求項1の構成によれば、分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、その分離孔に海苔混合液を通過させるので、孔幅より大きな寸法の小エビや小貝等の異物を分離孔の孔縁によって係止されて第1分離室内に残され、分離孔の孔幅より大きい異物を効率良く除去でき、しかも、海苔混合液の異物を上方が大きく開放している第1分離室に残して除去できるので、第1分離室に残された異物を第1分離室外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できる。また、分離壁によって仕切られた閉鎖状態に設け、分離孔から海苔混合液を強制吸引するので、第1分離室の海苔混合液を分離孔に効率良く通すことができる。また、第1分離室の底部に開閉可能な孔を設けているので、第1分離室側に残った異物を容易に外へ除去できる。また、請求項2の構成によれば、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたので、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを常に清掃できて海苔混合液を効率良く通すことができる。」と訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0022】の記載を、「【発明の効果】以上のように、請求項1の発明にあっては、分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、その分離孔に海苔混合液を通すようにしたので、孔幅より大きな寸法の小エビや小貝等の異物を分離孔の孔縁によって係止されて第1分離室内に残され、分離孔の孔幅より大きい異物を効率良く除去でき、しかも、中に残された異物を外に容易に取出すことができるように上方が開放している第1分離室に異物を残して除去するので、第1分離室に残された異物を外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できる。また、第2分離室を閉鎖状態に設け、分離孔から海苔混合液を強制吸引でき、第1分離室の海苔混合液を分離孔に効率良く通すことができて異物除去能力を大きくできる。また、請求項2の発明にあっては、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたので、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを常に清掃できて海苔混合液を効率良く通すことができる。」と訂正する。

2.訂正の適否

(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、発明を特定する事項である「上方が開放している第1分離室」を、これに含まれる事項である「中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、訂正前の段落【0022】に、「・・・異物を上方が開放している第1分離室に残して除去するので、第1分離室に残された異物を外に容易に取出すことができる・・・」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、発明を特定する事項である「その第1分離室に対して分離壁によって仕切られている第2分離室を設け」を、これに含まれる事項である「その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、訂正前の請求項2に、「第2分離室を第1分離室に対して分離壁によって仕切られた閉鎖状態に設け・・・」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、発明を特定する事項である「その分離壁に生海苔の通過し得る狭い幅の分離孔を設け」を、これに含まれる事項である「その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、段落【0007】に、「・・・分離壁12には生海苔の厚みより僅かに大きい孔幅の細長い分離孔13が略全面に亘って多数設けられている。この分離孔13の大きさは、生海苔が一般に0.05mm?0.5mm程度の厚みで一辺が5?10mm程度の平面形状であるので、孔幅Dを約0.5mm?2mm、長さLを約10mm以上にすると良く、一例として孔幅Dを1mm程度、長さLを15mm程度にしてある。・・・」と記載され、また、段落【0020】には、「・・・このコイルスプリング92は連結ロッド95に螺合したナット96によって適当に圧縮され、各コイル部の相互間に生海苔の厚みよりも僅かに大きな寸法の隙間Dが連続的に形成され、この隙間Dが分離壁12fの分離孔13fを構成するようにしてある。なお上記隙間を全長に亘って所定の大きさに維持する為に各コイル部相互間にスペーサを介在させても良い。」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
上記訂正事項4は、発明を特定する事項である「上方が開放している第1分離室に海苔混合液を供給可能な供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引して排出可能な排出手段を備え」を、これに含まれる事項である「上方が開放している第1分離室には、前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、段落【0008】に、「15は第1分離室10内に前工程から海苔混合液を供給する供給手段で、供給ホース16と図示しない供給ポンプとで構成されている。・・・」と記載され、段落【0013】に、「・・・送給手段18の供給ポンプ23が断続運転するので、運転中の吸引によって分離孔13に付着していた生海苔が運転停止によって剥がされ、分離孔1からの生海苔の流入を良くできる。」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(5)訂正事項5について
上記訂正事項5は、発明を特定する事項である「海苔混合液を分離孔に通過させて異物を上方が開放している第1分離室に残すこと」を、これに含まれる事項である「第1分離室の底部に、第1分離室に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すこと」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、訂正前の請求項5に、「第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の海苔異物除去装置。」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(6)訂正事項6について
上記訂正事項6は、発明を特定する事項である「分離壁の分離孔」を、これに含まれる事項である「海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、段落【0015】に、「第1分離室10内には分離孔13の孔幅より大きな寸法の異物が残るので、分離孔13がこの異物によって詰まる恐れがあるが、噴射ノズル37が回転することによって噴射孔44から噴出する水が各分離孔13に当接するので、常に各分離孔13の詰まりが清掃され、その噴射孔44から噴出される水の勢いによって海苔混合液の生海苔が分離孔13から第2分離室11へ効率良く流れることができる。なお第1分離室10内に残った異物は作業終了後に孔4aの栓4bを開放して異物を除去する。」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(7)訂正事項7 について
上記訂正事項7は、発明を特定する事項である「分離孔の詰まりを防ぐようにしたこと」の記載を、これに含まれる事項である「海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたこと」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、段落【0015】に、「第1分離室10内には分離孔13の孔幅より大きな寸法の異物が残るので、分離孔13がこの異物によって詰まる恐れがあるが、噴射ノズル37が回転することによって噴射孔44から噴出する水が各分離孔13に当接するので、常に各分離孔13の詰まりが清掃され、その噴射孔44から噴出される水の勢いによって海苔混合液の生海苔が分離孔13から第2分離室11へ効率良く流れることができる。なお第1分離室10内に残った異物は作業終了後に孔4aの栓4bを開放して異物を除去する。」と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(8)訂正事項8について
上記訂正事項8は、訂正前の請求項2、請求項3、及び請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(9)訂正事項9について
上記訂正事項9は、訂正前の請求項2及び請求項3の削除に伴い、請求項4の項番を繰り上げて新たな請求項2とすると共に、引用請求項を請求項1のみに特定するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(10)訂正事項10乃至12について
上記訂正事項10乃至12は、上記訂正事項1乃至9に伴うものであり、特許請求の範囲を訂正したことに伴い発明の詳細な説明欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2ただし書き、および同条同条5項において準用する同法126条3項及、4項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.当事者の主張及び当審による無効理由通知の概要

1.請求人の主張

請求人は、「第3032862号の請求項1乃至5に係る発明についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第17号証及び参考資料1乃至2を提出し、その理由として、
(1)訂正前の本件請求項1乃至5に係る発明は、明細書記載の効果を奏しないことが明らかであるから、「産業上利用することができない」ものであって、特許法第29条柱書きの発明に該当せず、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである、
(2)訂正前の本件請求項1乃至5に係る発明は、甲第3乃至5号証、甲第7乃至8号証並びに甲第12乃至13号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、
(3)本件特許明細書には、訂正前の本件請求項1乃至5に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定に違反するものであるので、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである、旨主張している。

甲第1号証:特許第3032862号公報
甲第2号証:海苔養殖読本32頁、33頁
甲第3号証:特開平3-183459号公報
甲第4号証:実公昭61-44632号公報
甲第5号証:特開平2-195863号公報
甲第6号証:特許第2654510号公報
甲第7号証:実開昭49-36096号公報
甲第8号証:特開昭55-111812号公報
甲第9号証:特許第3069728号公報
甲第10号証:特許第3061181号公報
甲第11号証:特許第3422764号公報
甲第12号証:実公昭58-35037号公報
甲第13号証:実公昭61-45819号公報
甲第14号証:特許第2769593号公報
甲第15号証:無効2001-35016号における平成13年7月23日付無効理由通知
甲第16号証:無効2001-35016号の審決
甲第17号証:無効2001-35016号における平成13年9月20日付意見書
参考資料1:説明図
参考資料2:計算根拠

2.被請求人の主張

一方、被請求人は、請求人の提出した証拠方法によっては、本件特許を無効にすることができないと主張し、証拠方法として、以下の乙第1号証の1乃至4、乙第1乃至3号証、説明図1乃至2、及び乙第4乃至11号証(被請求人は「甲第1乃至8号証」として提出しているが、夫々「乙第4乃至11号証」と読み替える。)を提出している。

乙第1号証の1乃至4:「異物洗浄機スーパークリーナー」カタログ
乙第1号証:特開平3-183459号公報に関する技術のジグザグ隙間の説明図
乙第2号証:本件発明者による特許公開公報の公報テキスト検索リスト
乙第3号証:海苔異物除去に関する公報テキスト検索リスト
実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルムに関する技術の説明図1
実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルムに関する技術の説明図2
乙第4号証:遊転可能な算盤玉列による隙間の説明図
乙第5号証:特許庁電子図書館の公開特許公報の公報テキスト検索
乙第6号証:特許庁電子図書館の特許公報の公報テキスト検索
乙第7号証:特許庁電子図書館の発明者「建部司」の公報テキスト検索
乙第8号証:特開2004-52213号公報
乙第9号証:サンドセパレータの製品・サービス情報
乙第10号証:実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルムに関する考案のモデルを用いた実験映像
乙第11号証:実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルムに関する考案のモデル及び生海苔、海苔混合液を使用し、実験過程を撮影した写真

3.当審による無効理由通知の概要

平成16年11月19日付けの当審の職権審理による無効理由通知の概要は、訂正前の本件特許の請求項1乃至5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1乃至9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1乃至5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきであるとするものである、というものである。

刊行物1:特開昭61-231294号公報
刊行物1-1:実公昭63-15355号公報
刊行物1-2:特公昭33-3102号公報
刊行物2:特開平3-183459号公報
刊行物3:実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルム
刊行物4:実公昭61-44632号公報
刊行物5:特開平2-195863号公報
刊行物6:実願昭47-80881号(実開昭49-36096号)のマイクロフィルム
刊行物7:特開昭55-111812号公報
刊行物8:実公昭58-35037号公報
刊行物9:実公昭61-45819号公報

IV.本件発明

訂正後の本件請求項1乃至2に係る発明(以下、「本件発明1乃至2」という。)は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】海苔混合液から異物を分離除去する海苔異物除去装置において、分離槽に、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、上方が開放している第1分離室には、前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことを特徴とする海苔異物除去装置。
【請求項2】海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴とする請求項1記載の海苔異物除去装置。」

V.刊行物の記載事項

これに対して、平成16年11月19日付けの当審の職権審理による無効理由通知に引用された、本件出願の出願日前に頒布された上記刊行物1、1-1、2乃至3並びに刊行物6乃至7には次の事項が記載されている。

1.刊行物1:特開昭61-231294号公報
(1-1)ふるい板(スクリーン)の穴を通過できる繊維物質と、通過できない異物を形状分離する為に使用される従来のふるい分け装置は、第14図及び第15図に示すように、表面に丸又はスリット状の穴を多数持つ円筒状のスクリーンが1個又は2個あるものが多用されている。図において容器11は円筒状の内外壁を持ち、各々内外スクリーン1、2が取り付けられ、室5、6、7を分離している。また内外スクリーン1、2の間には、複数個の細長い翼12があり、同翼12は回転自由なロータ13に取り付けられて翼速度10?30m/sで動くようになっている。この装置では、濃度5%以下の繊維懸濁液が管3より流入し、環状通路4を通り、旋回しながら攪拌室7を流下する間に、良質繊維物質はスクリーン1、2の穴を通って精選室5、6に集められ管8より出て行く。一方穴を通過できない異物は、環状リジェクト室9に達し、管10より排出される。(公報第1頁左下欄下から第3行?右下欄第16行)

刊行物1-1:実公昭63-15355号公報
(1-2)紙パルプのふるい分け装置として従来良く知られている圧力式スリットスクリーン(セントリスクリーン)は、第1図、第2図に示すように細長いスリット状の孔を有する相互に同心で間隔を隔てた内側スクリーンシリンダ1及び外側スクリーンシリンダ2を備えている。ポンプによって送られてきた紙料は、入口部3から流入して外周を取りまく流路4に進み、紙料中の金属片、砂などの重量異物は、入口部3と反対の接戦方向に設けたトラップから系外に廃棄される。流路4を循環している紙料は、スクリーンシリンダ1,2により形成した環状のスクリーニング室7へ、矢印6で示す方向に上部から入り、下方に流れる過程で一部は内側スクリーンシリンダ1を通過して内側へ、他は外側スクリーンシリンダ2を通過して外側へそれぞれ濾過選別され、合流して出口部8から放出される。一方、スクリーンシリンダ1、2を通過できない大きさのプラスチック、結束繊維、木片などの異物は、スクリーニング室7を流下してテーリングガッタ9を介してリゼクト出口部10から排出される。(公報第1頁第1欄第16行?第2欄第12行)

2.刊行物2:特開平3-183459号公報
(2-1)(1)海苔・水混合液の送水筒内に該筒と直交する複数の平行軸を設け、該平行軸に複数の算盤玉をそれぞれ回転方向には遊転可能に、摺動方向には固定しかつ摺動方向に互に接して設け、隣接平行軸に設けた上記算盤玉の傾斜面を間隙を介して互に平行に支持してなり、上記間隙から海苔原藻を通過させるよう形成してなる海苔洗浄用フイルター。
(2)海苔・水混合液の送水圧センサーを設け、該センサーからの信号によって動作する逆洗装置を設けてなる請求項(1)記載の海苔洗浄用フイルター。(特許請求の範囲)
(2-2)本発明は採取した海苔原藻に伴って紛れ込むわら、繊維、小動物(かに、えびその他)などの不純物を除去する海苔洗浄用フイルターに関するものである。(公報第1頁左下欄下から第2行?右下欄第2行)
(2-3)本発明は原藻中に混入する海水中の浮遊固形不純物と原藻とを充分に分離し得る海苔洗浄用フイルターを得ることを目的とする。(公報第1頁右下欄第15?17行)
(2-4)従って採取した海苔原藻6と水との混合液1を送水筒2内に圧送又は吸引によって送水すると、上記原藻6はその柔軟性及び表面潤滑性によって上記間隙tのジグザグ形状に倣い或は平行軸3、3と直角方向の原藻6は水圧によって間隙t内に進入する。そして該水圧を受けた原藻6は算盤玉4を遊転して該間隙tを通過するが固形不純物は平行軸3、3と平行又は直角にジグザグ形状の間隙tに引掛って通過することができないし、算盤玉4,4を逆転させることもなく該算盤玉4,4の一側に溜る。固形不純物が溜ると水の通過不良を生じ水圧に変動を来すため、この変動を逆水圧センサー7が感知し感知信号を発信し、その信号によってポンプ9を停止し上記圧送又は吸引は停止し、さらに逆洗装置8を自動的に動作し、間隙tに逆流水を発生させるから一側に溜っている上記固形不純物は逆流し上記装置8の排出口10から排出された後、逆洗動作は止り、上述の動作を繰返すものである。(公報第2頁左上欄第12行?右上欄第10行)
(2-5)直径150mmの塩ビ製送水筒2内に該筒2の中心線と直交する複数の平行軸3を固定して設け、該平行軸3に複数の算盤玉4をそれぞれ回転方向には遊転可能に、摺動方向には固定しかつ摺動方向に互に接して設けてなり、隣接平行軸3、3に設けた上記算盤玉4、4の傾斜面5、5を間隙tを介して互に平行に支持して上記間隙tから海苔原藻6を通過させるようにしてフイルター11を形成するものである。算盤玉4は図示するように菱形であって円錐状傾斜面5、5を有しそのため上記間隙tは平行軸3の方向にジグザグ形に形成される。送水筒2は第1図に示すように円筒形であり、第3図に示すように角筒形であっても良い。この送水筒2には海苔・水混合液1をフイルター11に向ってポンプ9で矢印a方向に圧送し、加圧側に圧力計7’による送水圧センサー7を設けたものであるが、フイルター11の出側に真空ポンプを設け、吸引側に負圧計(図示していない)を設けて送水圧センサー7となしても差支えない。(公報第2頁右上欄第12行?左下欄第11行)
(2-6)本発明は上述のように構成したので採取した海苔原藻6を上記送水筒2内で算盤玉4の遊転作用によって上記間隙tに倣って容易に通過させ、該原藻6に混合している固形不純物は該間隙tを通過し難く固形不純物と上記原藻6とを充分選別分離して該原藻6を洗浄し得る効果がある。又固形不純物の累積による送水圧力の変化を感知し得て、フィルター11を逆洗し、該不純物を排出し得る便益がある。(公報第2頁右下欄第9?14行)

3.刊行物3:実願平2-71173号(実開平4-30893号)のマイクロフィルム
(3-1)多孔仕切板を備えたホッパーと、このホッパーの下部に連結されたダクトと、このダクトに配設されて、上記多孔仕切板上に移入された生海苔を上記ダクト側へ吸引する吸引装置とから成ることを特徴とする生海苔中の異物除去装置。(実用新案登録請求の範囲)
(3-2)1はホッパーであり、その下部にはダクト2が連結されている。3はホッパー1とダクト2の境界部に配設された多孔仕切板であり、例えば細かい孔を有するメッシュにより作られている。4はダクト2に配設された吸引装置であって、パイプ5により、ダクト2に連結されている。6は吸入口に設けられたフィルター、7は生海苔吸引防止板である。ダクト2の下部には、送出パイプ8が連結されている。本装置は上記のような構成より成り、海洋で採取された生海苔10をホッパー1に移入し、吸引装置4を駆動する。すると、生海苔10は多孔仕切板3を通ってダクト2側へ吸い出され、送出パイプ8から次の工程へ送られる。また、生海苔10に混入するビニールや羽毛などの異物11は、多孔仕切板3に引っかかり、生海苔10から除去される。この異物11は、多孔仕切板3上の生海苔10がすべて吸い出された後、除去される。(明細書第3頁第9行?第4頁第7行)
(3-3)本装置は、どの工程に設置してもよいものであるが、生海苔10がミンチ状に切断されると、異物11も細かく裁断されて除去することが困難になることから、裁断工程の前に設置することが望ましい。(明細書第5頁第8?12行)

4.刊行物6:実願昭47-80881号(実開昭49-36096号)のマイクロフィルム
(4-1)・・・散水管(25)に穿設された散水口(26)、(27)より海水が回転網筒(8)及び水絞り網筒(28)上に散水され海苔による目詰りを防止している。(明細書第7頁第11?13行)

5.刊行物7:特開昭55-111812号公報
(5-1)1.円筒面を網目構造とし横向きに配置された円筒状網かご(1)を回転させ乍ら上記網かごの一側部から海苔くずを含有する排水を上記網かご内に連続的に供給し、濾別され上記網かごの底部付近に集積した海苔くずを横方向に何れかの側部に移動させ乍ら上記網かごの開口部(32)から排出させることを特徴とする排水中の海苔くずの連続的除去方法。・・・5. 円筒表面を網目構造とし、横向きに配置され且つ一側部に取付けられた駆動軸(31)により回転される円筒状網かご(1)、上記網かご内に海苔くずを含有する排水を供給するパイプ(13)、及び上記網かごをその外面から洗浄するための水を供給するパイプ(10)から主として成ることを特徴とする排水中の海苔くずの連続的除去装置。・・・(特許請求の範囲)
(5-2)上記網かごの外側に沿って上記網かごと平行にパイプ(10)が設けられ、上記パイプの上記網かごの網に面した部分には多数の小穴(18)があけられ、上記パイプの一方は、水受けタンク(7)の中の水中ポンプ(6)に接続されており、上記網かごを洗浄する水を噴射することができる。(公報第3頁右上欄第4?9行)
(5-3)水中ポンプ(6)による水はパイプ(10)を通して円周状網かご(1)に面した部分にあけた多数の小穴(18)より噴射され排水の汚れによる上記編かごの目詰りを防ぐ。(公報第4頁左上欄第14?17行)

VI.当審の判断

1.本件発明1について

本件発明1は、分離槽に、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、上方が開放している第1分離室には、前工程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことにより、分離孔より大きな異物を効率良く除去でき、しかも、海苔混合液の異物を上方が開放している第1分離室に残して除去できるので、第1分離室に残された異物を第1分離室外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できるものである。

2.周知技術について

これに対して、本件発明1と上記刊行物1乃至1-1に記載された周知技術(以下、「周知技術」という。)とを対比するが、代表例として、本件発明1と上記刊行物1に従来技術として記載された発明、即ち上記記載事項(1-1)とを対比する。
後者の「ふるい板(スクリーン)の穴を通過できない異物を含む繊維懸濁液」及び前者の「小エビや小貝等の異物を含む海苔混合液」は、いずれも分離又は除去すべき物質を含有する被処理物に相当するものであり、後者の「ふるい板(スクリーン)の穴を通過できない異物」、前者の「小エビや小貝等の異物」は何れも「分離又は除去すべき物質」に、後者の「繊維懸濁液」、前者の「海苔混合液」は何れも「被処理物」に夫々対応する。
まず、後者において、被処理物である繊維懸濁液は管3より容器11に流入するから、後者は、前者の「前工程から海苔混合液を供給可能な供給手段」に対応する「前工程から被処理物を供給可能な供給手段」を有し、後者の「容器11」は、前者の「分離槽」に相当する。
次に、後者において、被処理物である繊維懸濁液は撹拌室7を流下する間に良質繊維物質はスリット状の穴を多数持つ円筒状のスクリーン1,2のスリット状の穴を通って精選室5、6に集められ管8より出て行き、一方スリット状の穴を通過できない異物は、環状リジェクト室9に達し、管10より排出されるものであり、第15図によれば、撹拌室7の上方は開口しており、また、スクリーン1,2は撹拌室7と精選室5、6とを閉鎖状態で分離しているから、後者の「被処理物である繊維懸濁液が流入する撹拌室7」、「スリット状の穴を多数持つスクリーン1,2」、「良質繊維物質の集まる精選室5、6」、「異物が排出される管10の精選室5との接続部」は、夫々、前者の「上方が開放している第1分離室」、「被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設けた分離壁」、「第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室」、「異物を第1分離室から外に取出す為の孔」に相当する。
同様の技術は、上記刊行物1-1にも記載されており、「分離槽に、上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に、被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、上方が開放している第1分離室に被処理物を供給可能な供給手段とを備え、被処理物を分離孔に通過させ、異物を分離室の底部の穴から取り出す被処理物の異物除去装置」は、本願出願前周知のものであったといえる。

3.対比・判断

そこで、本件発明1と周知技術の異物除去装置を対比すると、両者は、「分離槽に、上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に被処理物の厚みより僅かに大きくて被処理物の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、上方が開放している第1分離室に被処理物を供給可能な供給手段とを備え、被処理物を分離孔に通過させ、異物を分離室の底部の穴から取り出す被処理物の異物除去装置」である点で一致しており、
(a)前者の被処理物は、海苔混合液であるのに対して、後者の被処理物は紙料等の繊維懸濁液である点、
(b)前者の第1分離室は、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放しているのに対して、後者にはそのような特定がない点、
(c)前者の分離孔は、生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅であり、孔幅が約0.5mm?2mmの大きさであり、孔幅が孔全長にわたり同じ大きさであるのに対して、後者にはそのような特定がない点、
(d)前者の供給手段は、前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたものであるのに対して、後者にはそのような特定がない点、
(e)前者は第2分離室から被処理物を吸引排出して第1分離室の被処理物を分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を備えたものであるの対して、後者ではそれがない点、
(f)前者は、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け、異物を上方が開放している第1分離室に残すものであるの対して、後者は、第1分離室の底部の孔から異物を連続的に取り出すものである点
で、両者は相違している。
そこで、上記相違点について検討する。

(1)相違点(a)
上記周知技術の異物除去装置も、紙料等の繊維と水から成る繊維懸濁液中の異物を除去する装置であるという点で、生海苔と水から成る海苔混合物から異物を除去する装置と共通する。
上記周知技術は紙料等の繊維懸濁液を対象とするものであるが、被処理物中の異物を分離除去することは、極めて広範な分野において適当な装置を使用して適宜なされていることであり、海苔の製造においても生海苔と水から成る海苔混合物中のわら、繊維、小動物(かに、えびその他)、ビニール、羽毛等の異物を分離除去する必要があったこと、及び生海苔混合液を、分離孔を設けたフィルター或いは細かい孔を有するメッシュにより、生海苔混合液中の生海苔のみを同分離孔を通過せしめ、異物を分離除去し、精製された海苔を得ることは上記刊行物2乃至3により本願出願前に既に知られているところである。
そして、紙料等の繊維も生海苔も、何れも柔軟性および表面潤滑性を有し、狭い孔幅を有する細長い分離孔を通過し得るというものである点でその性質が共通する。
そうすると、両者は、被処理物の性状が類似するものであるから、周知技術の異物除去装置において、被処理物として異物を含む紙料等の繊維懸濁液に代えて異物を含む海苔混合液を使用してみる程度のことは当業者ならば容易になし得ることであり、それを妨げる特段の理由も見出せない。

(2)相違点(b)
上記刊行物3には生海苔中の異物除去装置において、本件発明1の上方が開放している分離室1に相当するホッパーに上方から生海苔を供給し、強制吸引する吸引装置により生海苔を多孔仕切板に移入し、多孔仕切板上に残された異物を除去することが記載されているから、中に残された異物を外に取出すことができるように分離室の上方を解放することに格別の困難性は認められない。

(3)相違点(c)について
スリットの孔幅は、孔全長にわたり同じ大きさであることが普通であるから、上記周知技術においても、スクリーンは孔幅が孔全長にわたり同じ大きさである細長い分離孔を有するものと解される。
そして、孔幅については、処理対象物の形状に応じて当業者が適宜決定し得るものであり、上記刊行物2に記載された発明においても、上記記載事項(2-4)によれば、「・・・採取した海苔原藻6と水との混合液1を送水筒2内に圧送又は吸引によって送水すると、上記原藻6はその柔軟性及び表面潤滑性によって上記間隙tのジグザグ形状に倣い或は平行軸3、3と直角方向の原藻6は水圧によって間隙t内に進入する。そして該水圧を受けた原藻6は算盤玉4を遊転して該間隙tを通過するが固形不純物は平行軸3、3と平行又は直角にジグザグ形状の間隙tに引掛って通過することができないし、算盤玉4,4を逆転させることもなく該算盤玉4,4の一側に溜る。」とあり、本件発明の1における分離孔に相当する間隙tは固形不純物は通過させず、原藻を通過し得る狭い幅とすることが記載されており、また、間隙tの幅は全長にわたり同じ大きさであることは明らかであるから、上記刊行物2に記載された発明を勘案しつつ、周知技術の異物除去装置において、分離孔の大きさ、形状を変更し、分離孔を、生海苔原藻の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長いものとし、孔幅が約0.5mm?2mmの大きさとし、孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにすることは、当業者が適宜設計的になし得る事項であり、それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。
なお、上記刊行物2に記載された発明においても、記載事項(2-5)および第1図を参酌すると、直径150mmの塩ビ製送水筒に算盤玉4は15個並んでいるから算盤玉の厚みは1個10mm程度となることから、第1図によれば、間隙tは、本件発明1と同程度の大きさになるものと解される。

(4)相違点(d)について
上記周知技術の異物除去装置において繊維懸濁液の供給方法は必ずしも明らかではないが、上記刊行物1-2には、上記記載事項(1-2)のとおり、「ポンプによって送られてきた紙料は、入口部3から流入して外周を取りまく流路4に進み」とあり、供給手段が前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたものであるから、繊維懸濁液は、供給ポンプにより圧送されているものと解される。
また、海苔異物除去装置に関する上記刊行物2に記載された発明においても、上記記載事項(2-5)のとおり、「この送水筒2には海苔・水混合液1をフイルター11に向ってポンプ9で矢印a方向に圧送し」とあるから、上記刊行物2に記載された発明を勘案しつつ、上記周知技術の異物除去装置において、海苔混合液の供給手段を前工程から被処理物を供給可能なポンプを備えたものとすることも当業者が適宜なし得るところであり、それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。

(5)相違点(e)について
上記周知技術の異物除去装置において、繊維懸濁液は、供給ポンプにより圧送されているものと考えられるが、懸濁液の送水手段として圧送または吸引何れかを採用することは当業者が必要応じて適宜選択しうるものである。
そして、生海苔と海苔原藻中の異物を効率的に分離除去するための送水手段に関しても、圧送または吸引何れかを採用することは、上記刊行物2の記載事項(2-4)に「海苔原藻6と水との混合液1を送水筒2内に圧送又は吸引によって送水する」とあるように当業者が適宜選択しうることであるし、また、例えば、上記刊行物3においても、記載事項(3-2)に「海洋で採取された生海苔10をホッパー1に移入し、吸引装置4を駆動する。すると、生海苔10は多孔仕切板3を通ってダクト2側へ吸い出され、送出パイプ8から次の工程へ送られる。」とあるように、第2分離室に相当するダクト2は閉鎖状態に設けられ、強制吸引する吸引装置により生海苔を多孔仕切板に移入することが記載されており、吸引装置として強制吸引ポンプは周知のものであるから、周知技術の異物除去装置において、上記刊行物2乃至3に記載された発明を勘案しつつ、海苔混合液の異物を除去する場合に、送水手段として、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を分離孔に強制吸引するためのポンプを採用する程度のことは、当業者が適宜設計的になし得る事柄であり、それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。

(6)相違点(f)について
異物を連続的に排出するか、ある程度異物が累積してから間歇的に排出するかは、異物の分離効率を勘案して当業者が適宜選定しうることである。
ここで、上記刊行物2に記載された発明においても、上記記載事項(2-6)のとおり、「固形不純物の累積による送水圧力の変化を感知し得て、フィルター11を逆洗し、該不純物を排出し得る」ものであり、また、上記刊行物3に記載された発明においても、上記記載事項(3-2)に「この異物11は、多孔仕切板3上の生海苔10がすべて吸い出された後、除去される。」とあるように、海苔からの異物除去においては、海苔混合液の異物が累積した時点で異物を排出することが普通である。
そして、間歇的に異物を排出する場合には、排出口を開閉可能にしなければならないことは自明のことであるから、上記刊行物2乃至3に記載された海苔混合液の異物除去技術を勘案しつつ、周知技術の異物除去装置において、第1分離室の底部に第1分離室側に残された異物を第1分離室から外に取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて異物を上方が開放している第1分離室に残すことも当業者が適宜なし得ることであり、それにより当業者が予期し得ない格別の効果を奏するものでもない。
次に、本件発明1により得られる効果について検討する。
まず、「分離孔の孔幅より大きな海苔混合液の異物を上方が開放している第1分離室に残して効率よく除去でき、第1分離室に残された異物を第1分離室外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できる」という効果については、周知技術の異物除去装置において、上記刊行物2記載のように、ある程度異物が蓄積した後に、異物を取り出すことにより生じる効果であり、周知技術および上記刊行物2乃至3の記載事項(2-6)及び(3-2)等から予期し得ない効果とはいえない。
次に、「第2分離室を閉鎖状態に設け、分離孔から海苔混合液を強制吸引でき、第1分離率の海苔混合液を分離孔に効率良く通すことができて異物除去能力を大きくできる。」という効果については、上記刊行物2乃至3の異物除去装置においても、強制吸引する吸引装置を使用して、分離孔により生海苔から異物を分離することが記載されていることから、当業者が予測し得る範囲のものにすぎない。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1記載の周知技術及び上記刊行物2乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件発明2について

本件発明2は、本件発明1において、「海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにした」ものであるが、生海苔処理装置において、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、分離孔の詰まりを防止することは周知のこと(必要なら上記刊行物4乃至5参照。)であるから、「海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにする」ことは周知技術の適用にすぎず、本件発明2も、本件発明1と同様の理由で、上記刊行物1記載の周知技術及び上記刊行物2乃至5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.被請求人の主張について

(1)周知技術について
被請求人は周知技術に関して、平成16年12月22日付意見書の第7頁第10?15行において、「スクリーニング室7は入口部3や流路4や出口部8と共に上方が閉鎖されている紙料の流路を形成するものであり、分離室1は、上方が解放しておらず、刊行物1に記載の発明は、刊行物2に記載の発明と同様に閉鎖された配管の途中に配設するものである」旨、主張している。
しかしながら、刊行物1に係る周知技術においては、第15図によれば、本件発明1の第1分離室に相当する撹拌室7は上方が開放しており、その上方から紙料が供給されていることは明らかである。確かに、第15図によれば、刊行物1に係る周知技術においては、本件発明1分離槽に相当する容器11は蓋を有するが、この蓋は第15図から明らかなように、最頂部に空気抜きを有しており、被請求人の主張するように、装置を閉鎖状態にするためのものではないから、請求人の主張は採用できない。
仮に周知技術が上方が開放していないものと解したとしても、上記刊行物3には生海苔中の異物除去装置において、本件発明1の分離室1に相当するホッパーに上方から生海苔を供給し、強制吸引する吸引装置により生海苔を多孔仕切板に移入することが記載されているから、分離室の上方を解放することに格別の困難性は認められない。
また、被請求人は、同第7頁下から7?2行において「本件発明が対象としている海苔混合液は、50cm程度の柔らかくて細長い葉状体の生海苔と海水(又は水)との混合液であって、刊行物1が対象としている繊維懸濁液や製紙原料液とば性質を大きく異にするものであり、刊行物1の繊維懸濁液や製紙原料液に代えて海苔混合液を使用したとしても、本件発明を当業者が容易に想到し得るものではない。」旨、主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0004】に「本発明は、上記課題を解決するために、海苔混合液の生海苔が0.05?0.5mm程度の薄くて柔らかい小さな葉状体であることに着目し、その生海苔のみを孔幅の小さい細長い分離孔に流通させて生海苔の厚みより僅かに大きな寸法例えば0.5mm?2mm程度以上の異物を効率良く分離するようにしたもので・・・」と、また段落【0007】に「・・・この分離孔13の大きさは、生海苔が一般に0.05mm?0.5mm程度の厚みで一辺が5?10mm程度の平面形状であるので、孔幅Dを約0.5mm?2mm、長さLを約10mm以上にすると良く、一例として孔幅Dを1mm程度、長さLを15mm程度にしてある。・・・」と記載されているとおり、本件明細書の記載によれば生海苔の異物分離で問題となる要因は、生海苔の厚みと辺の長さであるから、被請求人の主張は明細書の記載に基づかないものである。
そして、被請求人は海苔混合液は繊維懸濁液や製紙原料液と性質が大きく異なるということについて、理論的にも、具体的にも立証してもいないから、被請求人の主張は根拠がなく、採用できない。

(2)上記刊行物3に記載された技術について
被請求人は、上記刊行物3に記載された技術に関して、平成16年12月22日付意見書の第3頁下から5?3行において、「刊行物3の発明は、多孔仕切板上に生海苔を移入してその生海苔をダクト側に空気吸引しようとするものであるから、本件発明のように海苔混合液を第1分離室に供給するものではない」旨主張しているが、上記刊行物3の発明は、上記記載事項(3-2)のとおり、海洋で採取された生海苔をホッパーに移入し、吸引装置4を駆動し、生海苔は多孔仕切板3を通ってダクト側へ吸い出され生海苔に混入するビニールや羽毛などの異物が多孔板により除去されるものであり、吸引により羽毛等が除去できるのであるから、被処理物は液状体と解され、海苔混合液といえるものと解されるから、被請求人の主張は根拠がなく、採用できない。
また、被請求人は、同第4頁第1?13行において、「刊行物3に記載された発明は、海洋で採取される生海苔は50cm前後の細長くて平たい粘性のある葉状体(固形物)であるから、生海苔を多孔仕切板の多孔に通すことは不可能なことであり実施不能な技術である」旨、主張しているが、上記刊行物3に記載された発明は、上記記載事項(3-3)に記載されたとおり生海苔をミンチ後に処理することを排除するものではないから、上記刊行物3に記載された発明において、処理対象の生海苔が50cm前後の細長くて平たい粘性のある葉状体であることを前提とする被請求人の主張は採用できない。
更に、本件明細書の段落【0001】に「この発明は、海苔抄き作業の前工程において海苔混合液(海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等の水に混入したもの)から小エビや小貝等の異物を除去する海苔異物除去装置に関する。」と記載のとおり、本件発明1の処理対象の海苔は切断した海苔と解されるし、被請求人の提出した本件特許の実施品であるとする乙第1号証の1の「異物洗浄機スーパークリーナー」カタログによると、本件特許の実施品は、荒切りミンチ処理後、或いはミンチ処理後にスーパークリーナー処理するものであるから、この点からも本件発明1の処理対象の生海苔が50cm前後の細長くて平たい粘性のある葉状体であることを前提とする被請求人の主張は採用できない。
また、被請求人は、平成17年11月21日訂正請求書において乙第10乃至11号証を提出して、上記刊行物3に記載された発明は実施不能な技術である旨主張しているが、乙第10乃至11号証に係る実験は特定の条件下で行われた実験であるから、これにより直ちに上記刊行物3に記載された技術が実施不能な技術であるとはいえないところ、被請求人の主張は採用できない。

VII.むすび

以上のとおり、本件請求項1乃至2に係る発明の特許は、本件出願の出願日前に頒布された上記刊行物1記載の周知技術及び上記刊行物2乃至5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、他の理由については判断するまでもなく、本件請求項1乃至2に係る発明の特許は、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
海苔異物除去装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】海苔混合液から異物を分離除去する海苔異物除去装置において、分離槽に、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、上方が開放している第1分離室には、前行程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことを特徴とする海苔異物除去装置。
【請求項2】海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴とする請求項1記載の海苔異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、海苔抄き作業の前工程において海苔混合液(海苔原藻を切断した生海苔を海水又は真水等の水に混入したもの)から小エビや小貝等の異物を除去する海苔異物除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】味付け海苔や板海苔等の製品になる乾燥海苔は、一般に近海にて養殖した海苔原藻を粗く切断採取して水にて洗浄し、その海苔原藻を脱水した後細かく切断すると共に水に混合して海苔混合液とし、その海苔混合液を洗浄、脱水した後再び水に混入して熟生し、その海苔混合液を脱水した後適当な水と調合して海苔原料液(海苔混合液でもある)とし、その海苔原料液を抄造、脱水、乾燥して製造している。この場合海苔原料液の中に小エビや小貝等の異物が含まれていると、その異物が乾燥海苔に含まれることになり、その異物が肉眼で気になる程度以上の大きさ例えば2mm程度以上の場合にはその乾燥海苔の品質を悪くしたり商品価値を無くすることになるので、海苔製造業者からこれらの0.5mm?2mm程度以上の大きさの異物を除去する装置が要望されており、これまでにも種々の海苔異物分離装置が提案されている。従来の海苔異物分離装置としては、分離タンクを上縁の高さが順に低くなっている区画板にて区画して複数の沈殿槽を設け、その最上位の沈殿槽に海苔混合液を供給し、各沈殿槽において生海苔より重い異物を沈殿させて除去するようにしたものや、乾燥海苔を電気的に検査し、異物の混入している乾燥海苔を分離排除するようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前者の従来装置にあっては、海苔混合液が生海苔より重い異物を沈殿槽にて沈殿させて除去するようになっているので、小エビや小貝等が生海苔にもぐり込んでいるときには沈殿することなく生海苔と共に浮遊するので、小エビや小貝等の異物を確実に除去することができず、相当数の異物が乾燥海苔に混じり込んで商品価値を無くしたり低下させたりしているのが実状である。特に寒さが緩む3月ごろや暖冬のときには、生きている小エビや小貝等が海苔原藻にもぐり込む習性があるので、特にこのシーズンに製造する乾燥海苔に多くの異物が混入する問題があった。また後者の従来装置にあっては、電気的に小さな異物を検出することが困難であり、その検出感度を高くすると良質の乾燥海苔までも除去してしまう問題があり、検出感度を低くすると除去すべき異物を検出できなくなって乾燥海苔の中に異物が混入する問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、海苔混合液の生海苔が0.05?0.5mm程度の薄くて柔らかい小さな葉状体であることに着目し、その生海苔のみを孔幅の小さい細長い分離孔に流通させて生海苔の厚みより僅かに大きな寸法例えば0.5mm?2mm程度以上の異物を効率良く分離するようにしたもので、請求項1の発明は、海苔混合液から異物を分離除去する海苔異物除去装置において、分離槽に、中に残された異物を外に取出すことができるように上方が開放している第1分離室と、その第1分離室に対して分離壁によって閉鎖状態に仕切られている第2分離室を設け、その分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、上方が開放している第1分離室には、前行程から海苔混合液を供給可能なポンプを備えた供給手段と、第2分離室から海苔混合液を吸引排出して第1分離室の海苔混合液を細長い分離孔に強制吸引するためのポンプを備えた排出手段を設け、第1分離室の底部に、第1分離室側に残された異物を取出す為の開閉可能な孔を設け、海苔混合液を細長い分離孔に通過させて上方が開放している第1分離室に異物を残すことを特徴としている。また、請求項2の発明は、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射可能な水噴射手段を設け、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔が詰まらないように水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたことを特徴としている。
【0005】
【作用】上記請求項1の構成によれば、分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、その分離孔に海苔混合液を通過させるので、孔幅より大きな寸法の小エビや小貝等の異物を分離孔の孔縁によって係止されて第1分離室内に残され、分離孔の孔幅より大きな異物を効率良く除去でき、しかも、海苔混合液の異物を上方が大きく開放している第1分離室に残して除去できるので、第1分離室に残された異物を第1分離室外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できる。また、分離壁によって仕切られた閉鎖状態に設け、分離孔から海苔混合液を強制吸引するので、第1分離室の海苔混合液を分離孔に効率良く通すことができる。また、第1分離室の底部に開閉可能な孔を設けているので、第1分離室側に残った異物を容易に外へ除去できる。また、請求項2の構成によれば、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたようにしたので、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを常に清掃できて海苔混合液を効率良く通すことができる。
【0006】
【実施例】図1?図5は海苔異物除去装置の第1実施例を示し、1は上方が開放している直方体形状の大きなタンクで、自体の内部に溶着されている2枚の平行な仕切板2、3と共同して異物分離槽4と貯留槽5と還流槽6を構成している。仕切板2、3には図2、図3に示すように海苔混合液の生海苔は通さないが水は通す大きさ例えば直径1mm程度の多数の小さな連通孔2a、3aが略全面に亘って形成されている。異物分離槽4と貯留槽5と還流槽6の底板には夫々孔4a、5a、6aが設けられ、通常は栓4b、5b、6bによって閉じられ、清掃時に開放される。
【0007】
異物分離槽4内には上端部が開放されている円筒状の分離ドラム8が軸線が上下方向になるように位置され、その下端部が底板に溶着されている。分離ドラム8の周壁8aは異物分離槽4内を第1分離室10と第2分離室11に区分する分離壁12を構成している。分離壁12には生海苔の厚みより僅かに大きい孔幅の細長い分離孔13が略全面に亘って多数設けられている。この分離孔13の大きさは、生海苔が一般に0.05mm?0.5mm程度の厚みで一辺が5?10mm程度の平面形状であるので、孔幅Dを約0.5mm?2mm、長さLを約10mm以上にすると良く、一例として孔幅Dを1mm程度、長さLを15mm程度にしてある。なおこの分離孔13の大きさは上記の数値に限定されるものではなく、孔幅を2mmより僅かに大きくしたり、長さを20mm以上にしても良い。生海苔は柔らかくて変形するので、分離孔13の形状は直線状に限定されるものではなく、波形に湾曲していても良い。分離孔13はそれらの全体の開口面積が大きくなるように多数設けることが好ましい。
【0008】
15は第1分離室10内に前工程から海苔混合液を供給する供給手段で、供給ホース16と図示しない供給ポンプとで構成されている。18は第2分離室11内の海苔混合液を貯留槽5内に供給する送給手段で、第2分離室11から海苔混合液を排出する排出手段を構成し、第2分離室11の底板に設けた排出孔19と、底板に固着した排出管20と、貯留槽5内の仕切板3に取付具21によって取付けられている噴射管22と、タンク1に取付けられている供給ポンプ23と、供給ポンプ23と排出管20を連結しているホース24と、供給ポンプ23と噴射管22の一端部を連結しているホース25とで構成してある。噴射管22は仕切板3に向かう斜め下向きの噴射孔22aを多数有し、仕切板3の連通孔3aに向けて海苔混合液を噴射し、生海苔による連通孔3aの詰まりを防いで貯留槽5内の水が還流槽6に流れるようにしてある。供給ポンプ23は例えば10秒運転して0.1秒停止する断続運転を行うようにしてある。27は貯留槽5内の海苔混合液を次工程に排出する排出手段で、貯留槽5の側壁下部に設けた排出孔28と、排出孔28に連通させてタンク1に取付けられている排出ポンプ29と、排出ポンプ29に連結されている排出ホース30とで構成してある。
【0009】
32は貯留槽5内の水を第1分離室10に還流する水還流手段で、還流槽6と、還流槽6内に設置されている供給ポンプ(水中ポンプ)33と、タンク1に固着されている支持枠34に軸受35を介して支承されている中空の回転軸36と、その回転軸36に固着されている4本の噴射ノズル37と、回転軸36に相対回転自在に嵌合されている管継手38と、管継手38と供給ポンプ33を連結している供給ホース39とで構成してある。この水還流手段32は、分離壁12の分離孔13に向けて第2分離室11方向へ水を噴射する水噴射手段40を兼ねている。回転軸36にはスプロケット41が固着され、これに後述の駆動モータ55によって回動される回動チェーン42が捲回され、上方から見て右回りに低速回転されるようにしてある。噴射ノズル37は、放射方向へ延びる水平部37aと下方へ延びて分離ドラム8の分離壁12の側方に位置する垂直部37bからなり、その中空孔が回転軸36の中空孔に連通されている。垂直部37bには分離ドラム8の分離壁12に向けて開口する複数の噴射孔44と分離ドラム8側とは反対側に開口する複数の噴射孔45とを有している。分離ドラム8側の噴射孔44は図2に示すように分離ドラム8の中心方向に対して噴射ノズル37の回転後方側へ傾いた方向に向くように開口されている。上記水噴射手段40は分離壁12の分離孔13が生海苔によって詰まるのを防止する清掃手段を兼ねている。上記分離ドラム8側と反対側の噴射孔45は、仕切板2の連通孔2aに向けて水を噴射して生海苔による連通孔2aの詰まりを防ぎ、異物分離槽4と還流槽6の間で水が流通するようにしてある。
【0010】
50は貯留槽5に設置されている撹拌手段で、支持枠34に軸受51を介して回転自在に支承されている撹拌軸52と、撹拌軸52の下端部に固着されている撹拌翼53と、撹拌軸52の上端部に固着されているスプロケット54と、タンク1に取着されている駆動モータ55と、駆動モータ55の駆動軸に固着されているスプロケット56と、スプロケット54、56に捲回されている回動チェーン57とで構成してある。撹拌軸52には別のスプロケット58が固着され、このスプロケット58に噴射ノズル37回転用の回動チェーン42が捲回されている。60は液面を示し、この液面60はフロートスイッチ等によって供給手段又は排出手段を制御して高さ位置を維持するようにしても良い。なお第2分離室11の上部を閉鎖して液面60を第2分離室11の上部より高くしても良い。
【0011】
上記構成の海苔異物除去装置は、図6に示すように海苔製造工程における原藻切断洗浄工程と海苔切断洗浄脱水工程の間D、海苔切断洗浄脱水工程と海苔熟生脱水工程の間A、海苔熟生脱水工程と海苔調合工程の間B又は海苔調合工程と海苔抄造工程との間Cの何れの箇所に組み込んで使用しても良く、またそれらの複数箇所に組み込んで使用しても良い。
【0012】
使用に際しては、供給ホース16によって前工程から海苔混合液を分離槽4の第1分離室10に供給すると、その海苔混合液の生海苔の一部と水の一部は分離壁12の分離孔13を通して第2分離室11に入り、また海苔混合液の水の一部は仕切板2、3の連通孔2a、3aを通して還流槽6と貯留槽5に入る。また駆動モータ55を駆動させて撹拌軸52と回転軸36を夫々矢印方向へ回転させると、撹拌翼53が貯留槽5内の液体を撹拌し、噴射ノズル37が分離ドラム8の周囲を矢印方向へ回動される。この状態で送給手段18の供給ポンプ23を作動させると、第2分離室11内の海苔混合液を排出孔19からホース24、供給ポンプ23、ホース25を介して噴射管22に供給し、この噴射管22の噴射孔22aから海苔混合液を貯留槽5内に供給する。この噴射孔22aから噴射される液は仕切板3に当接して仕切板3に沿って下方へ流れるので、仕切板3の連通孔3aの詰まりが噴射液によって清掃され、連通孔3aによる水の流通が良くなる。また海苔混合液が仕切板3に当接されるので、生海苔が洗浄され、生海苔の品質が良くなる。
【0013】
次に水還流手段32の供給ポンプ33を作動させると、還流槽6内の水が供給ポンプ33、ホース39、回転軸36の中空孔を介して各噴射ノズル37の中空孔に供給され、噴射ノズル37の噴射孔44、45から水が噴出される。この噴射孔44から噴射される水は噴射ノズル37の回動に伴って分離ドラム8の分離壁12に向けて連続的に噴射され、その分離壁12の周囲付近に存在する第1分離室10内の海苔混合液を分離壁12に噴き付け、その結果海苔混合液が分離壁12の分離孔13に送り込まれる。この分離孔13は、生海苔の厚みより僅かに大きな寸法の孔幅を有する細長い形状に設けてあるので、海苔混合液の生海苔は水と共に分離孔13から第2分離室11内に流入するが、分離孔13の孔幅より大きな寸法の小エビや小貝等の異物は分離孔13の孔縁によって係止されて第1分離室10内に残される。分離孔13の孔幅は生海苔の厚みより僅かに大きな大きさ例えば1mm程度に形成してあるので、第2分離室11内に入った海苔混合液の中には分離孔13の孔幅である1mm程度以上の異物が全く無くなる。送給手段18の供給ポンプ23が断続運転するので、運転中の吸引によって分離孔13に付着していた生海苔が運転停止によって剥がされ、分離孔1からの生海苔の流入を良くできる。
【0014】
上記噴射孔44から噴射される水は、図5に示すように分離壁12に直角な方向に対して分離壁12(周壁8a)に対する噴射ノズル37の相対的回動の後方側へ傾いた斜め方向へ噴射するので、その噴射孔44から噴射された水が分離壁12の周囲付近に存在する海苔混合液を分離壁から遠ざけることなく分離壁12に強制的に噴き付けることができ、分離壁12の周囲に付着している生海苔や分離壁12付近に存在する海苔混合液を分離孔13に効率良く送給でき、その結果第1分離室10内の生海苔が分離孔13に詰まることなく水と共に効率良く第2分離室11に供給される。また図5では、噴射水が排出孔19からの海苔混合液の排出によって生じる渦流Qに逆らう方向へ噴射されるので、渦流の成長を阻止して排出孔19からの空気の吸引を防ぐことができる。
【0015】
第1分離室10内には分離孔13の孔幅より大きな寸法の異物が残るので、分離孔13がこの異物によって詰まる恐れがあるが、噴射ノズル37が回転することによって噴射孔44から噴出する水が各分離孔13に当接するので、常に各分離孔13の詰まりが清掃され、その噴射孔44から噴出される水の勢いによって海苔混合液の生海苔が分離孔13から第2分離室11へ効率良く流れることができる。なお第1分離室10内に残った異物は作業終了後に孔4aの栓4bを開放して異物を除去する。
【0016】
貯留槽5内には送給手段18によって第2分離室11から新たな海苔混合液が供給されると同時に貯留槽5内の海苔混合液の水が水還流手段32によって第1分離室10に還流されるので、貯留槽5内の海苔混合液の濃度が短時間で濃くなる。そしてこの海苔混合液の濃度が所望の濃度になった時点で、排出手段27の排出ポンプ29を作動させると、貯留槽5内の海苔混合液が排出ポンプ29、排出ホース30を介して次工程に排出される。この海苔混合液は異物が除去されているので抄造後の海苔製品の品質を良くできる。
【0017】
図7は第2実施例を示すもので、噴射ノズル37eをタンク1eと仕切板3eに固着し、分離ドラム8eを回動可能に設けたこと、第1分離室10e内の海苔混合液を噴射ノズル37eに供給すること、貯留槽5eから排出した海苔混合液を海苔脱水手段70に供給し、その海苔脱水手段70の排水を第1分離室10eに還流することを特徴としている。分離ドラム8eの下端面中央には回転支軸72が固着され、その回転支軸72がタンク1eの底に設けた軸受73に支承されている。分離ドラム8eの上端面中央には中空回転軸74が固着され、その中空回転軸74が軸受35eによって支承され、この中空回転軸74にスプロケット41eが固着されている。この中空回転軸74による分離ドラム8eの回転方向は上方から見て左回りになるようにしてある。中空回転軸74の中空孔74aには下端部が開口している吸引管75が挿通され、支持枠34eに固着されている支持腕77によって支持されている。吸引管75の上端部はホース24eを介して供給ポンプ23eに連結されている。
【0018】
上記2本の噴射ノズル37eは夫々支持具78によってタンク1eと仕切板3eに固着され、上端部が夫々途中で分岐している供給ホース79に連通されている。噴射ノズル37eの噴射孔44eは分離壁12eに対して直角な方向より分離ドラム8eの回転方向へ傾いた斜め方向へ向けられている。海苔脱水装置70は公知の回転篭式のものを示してあり、タンク1eに固着されている支柱80によって支持されている洗浄タンク81と、洗浄タンク81に回転自在に支持され、図示しない駆動装置によって回転される筒状の回転篭82と、回転篭82の下側を覆うように洗浄タンク81に固着されている回収タンク83とを備えている。洗浄タンク81の上部には排出ホース30eが連結され、回収タンク83には第1分離室10eに水を還流する為の供給ホース39eが連結されている。
【0019】
この第2実施例にあっては、噴射ノズル37eの噴射孔44eから海苔混合液を噴射した状態で分離ドラム8eが回動されると、その噴射液が回動する分離壁12eに当接すると共に分離ドラム8eの外周付近に位置する海苔混合液を分離壁12eに当接させ、その結果分離ドラム8eの外周に付着している生海苔や外周付近に位置する海苔混合液を分離孔13eに押し流して第2分離室11eに供給する。この場合噴射液の噴射方向が分離ドラム8eの回動方向へ傾いているので、生海苔を分離孔13eへ効率良く送り込むことができる。排出ホース30eから排出された海苔混合液は洗浄タンク81に供給され、この洗浄タンク81から回転篭82内に流れて脱水され、脱水後の生海苔は回転篭82の先端から落下して次工程に供給される。脱水による水は供給ホース39eによって第2分離室11eに還流される。タンク1e内の水が増大するので、貯留槽5e内の海苔混合液の余分な水が図示しない連通孔を介して排水されるようにしてある。なお上記脱水による水を別途設けたタンクに貯蔵し、そのタンク内の水を水噴射手段32eの供給ポンプ33eで噴射ノズル37eに供給するようにしても良い。第1実施例と実質的に同一な部分には同じ符号にアルファベットのeを付して重複説明を省略する。第3実施例についても同様にfを付して重複説明を省略する。
【0020】
図8は第3実施例を示すもので、分離ドラム8fを、分離壁12fを構成するコイルスプリング92とそのコイルスプリング92の両端に当接させてある一対の側壁93と両側壁93を連結している複数の連結ロッド95とで構成してある。このコイルスプリング92は連結ロッド95に螺合したナット96によって適当に圧縮され、各コイル部の相互間に生海苔の厚みよりも僅かに大きな寸法の隙間Dが連続的に形成され、この隙間Dが分離壁12fの分離孔13fを構成するようにしてある。なお上記隙間を全長に亘って所定の大きさに維持する為に各コイル部相互間にスペーサを介在させても良い。
【0021】
この実施例では分離壁12fをコイルスプリング92によって構成しているので、分離壁12fの分離孔13fを容易に設けることができて製造コストを低くでき、またコイル部の断面が円形であるから分離孔13fの出入口部分が丸い曲面によって広く形成され、その結果分離孔13fへの生海苔の引っ掛かりをなくして円滑に流通させることができる。また第2分離室11fを水中に位置させているので、供給ポンプの吸引力によって海苔混合液を分離孔13fから吸引できて異物分離効率を良くできる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明にあっては、分離壁に生海苔の厚みより僅かに大きくて生海苔の通過し得る狭い孔幅を有する細長い分離孔を設け、その細長い分離孔の孔幅を約0.5mm?2mmの大きさにし、その分離孔の孔幅を孔全長にわたり同じ大きさにし、その分離孔に海苔混合液を通すようにしたので、孔幅より大きな寸法の小エビや小貝等の異物を分離孔の孔縁によって係止されて第1分離室内に残され、分離孔の孔幅より大きな異物を効率良く除去でき、しかも、中に残された異物を外に容易に取出すことができるように上方が開放している第1分離室に異物を残して除去するので、第1分離室に残された異物を外に容易に取出すことができると共に第1分離室を容易に清掃できる。また、第2分離室を閉鎖状態に設け、分離孔から海苔混合液を強制吸引でき、第1分離室の海苔混合液を分離孔に効率良く通すことができて異物除去能力を大きくできる。また、請求項2の発明にあっては、海苔混合液を吸引する箇所の分離壁の細長い分離孔に向けて水を噴射して海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを防ぐようにしたので、海苔混合液が吸引される箇所の細長い分離孔の詰まりを常に清掃できて分離孔に海苔混合液を効率良く通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は本発明の第1実施例を示す断面図である。
【図2】
図2は図1の平面図である。
【図3】
図3は図1のX-X線断面図である。
【図4】
図4は図1のY-Y線断面図である。
【図5】
図5は本発明の作用説明図である。
【図6】
図6は海苔製造工程を示す説明図である。
【図7】
図7は本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図8】
図8は本発明の第3実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
4 異物分離槽、4a 孔、4b 栓、5 貯留槽、10 第1分離室、11 第2分離室、12 分離壁、13 分離孔、15 供給手段、18 送給手段、27 排出手段、
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-05-25 
結審通知日 2005-05-30 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願平9-365852
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種村 慈樹鈴木 恵理子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
田中 久直
登録日 2000-02-18 
登録番号 特許第3032862号(P3032862)
発明の名称 海苔異物除去装置  
代理人 塩見 渉  
代理人 竹中 一宣  
代理人 鈴木 正次  
代理人 涌井 謙一  
代理人 竹中 一宣  

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