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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1157776
審判番号 不服2005-2291  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-10 
確定日 2007-05-17 
事件の表示 特願2000-129800「ファクシミリ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 9日出願公開、特開2001-313795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成12年4月28日の出願であって、平成17年1月4日に拒絶査定がされ、これに対して同年2月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の発明は、平成17年3月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 親展受信機能を有するファクシミリ装置であって、
各使用者毎に割り当てられた親展受信ボックスを有し、親展受信した画像データを、対応する親展受信ボックスに記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の親展受信ボックスに記憶された画像データを記録紙等に出力する出力手段と、
前記記憶手段が現に記憶しているデータ量を前記親展受信ボックス毎に検出する検出手段と、
前記親展受信ボックスの操作権限を有する使用者によって、当該親展受信ボックスに記憶されている画像データの出力指示がなされた場合に、前記出力手段により当該親展受信ボックスに記憶されている画像データを出力させる一方、前記検出手段によって検出された当該親展受信ボックスに記憶されているデータ量が予め設定された警戒量を越えた場合には、前記出力指示がされていない場合であっても、前記出力手段により当該親展受信ボックスに記憶された画像データを出力させる出力制御手段と、
を備えたファクシミリ装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開平10-42083号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ファクシミリ受信した画情報を記憶するメモリを有するファクシミリ装置において、待機中の電力の消費を低減する省エネルギモードが設定されている場合はファクシミリ受信した画情報をメモリに記憶し、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報のページ数が予め定めたページ数以上になると、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報を印刷出力し、メモリから消去することを特徴とするファクシミリ装置。
(中略)
【請求項7】 メモリに記憶したファクシミリ受信画情報を印刷出力する際に親展画情報を除いて印刷出力する請求項1乃至6のいずれかに記載のファクシミリ装置。」

イ 「【0002】【従来の技術】(略)【0003】また、メモリ受信の際にメモリがオーバーフローして受信処理が中断するのを防止するものとしては、例えば特開平6-141159号公報に掲載されたファクシミリ装置のように、記憶手段の残量を検出し、検出した残量と予め設定した残量とを比較し、検出した残量が予め設定した残量より多いときに画情報を受信してメモリ不足が原因で受信処理が中断することを防止しているものがある。」

ウ 「【0016】【発明の実施の形態】この発明のファクシミリ装置は、例えばトナーを使用したファクシミリ装置であって、待機中の電力の消費を低減する省エネルギモードが設定されている場合はファクシミリ受信した情報をメモリに記憶して、定着部の温度を上昇することによる電力消費を低減するとともに、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報が予め定めた印刷条件を満たすと、メモリに記憶した画情報を印刷出力し、メモリから消去して、メモリがオーバフローを起こすことを防止するものである。ここで、予め定めた印刷条件には、例えばファクシミリ受信画情報のページ数を用いた条件及びメモリ残量を用いた条件がある。これらの条件は単独で用いても良いし、複合で用いても良い。
【0017】ファクシミリ装置は、例えばメモリ、印刷条件記憶部、印刷判定部、操作部、表示部、スキャナ、プロッタ及びNCUを有する。メモリは、例えばファクシミリ受信した画情報などを記憶する。印刷条件記憶部は、例えばメモリに記憶したファクシミリ受信画情報を印刷開始する条件として予め定めたページ数を記憶する。印刷判定部は、例えばメモリに記憶したファクシミリ受信画情報のページ数を調べ、調べたページ数と印刷条件記憶部に記憶したページ数とを比較して、調べたページ数が印刷条件記憶部に記憶したページ数に達すると場合は、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報をプロッタを介して印刷出力する。これにより、ファクシミリ受信するたびにトナーを定着するために定着部の温度を所定の温度にまで上昇させることによる電力の消費量を低減できる。また、予め定めたページ数のファクシミリ受信画情報を記憶すると、記憶したファクシミリ受信画情報を印刷出力するので、メモリに記憶したファクシミリ受信情報量が一定量以上に増えることを防止し、メモリがオーバーフローすることを防止できる。ここで、上記印刷条件記憶部に記憶したページ数は操作部から予め設定でき、また、任意のときに設定変更できる。また、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報のページ数を調べるには、カウンタを用い、メモリにファクシミリ受信画情報を記憶するたびに、そのページ数分をカウントアップするようにしても良い。」

前掲ウの記載によると引用例には、「メモリがオーバーフローを起こすことを防止するファクシミリ装置であって、ファクシミリ受信した画情報を記憶するメモリと、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報を印刷出力するプロッタと、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報のページ数を調べ、調べたページ数と印刷条件記憶部に記憶したページ数とを比較して、調べたページ数が印刷条件記憶部に記憶したページ数に達する場合は、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報をプロッタを介して印刷出力する印刷判定部と、を備えたファクシミリ装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明と引用発明とは、いずれも「ファクシミリ装置」関するものである。
引用発明の「ファクシミリ受信した画情報を記憶するメモリ」、及び「メモリに記憶したファクシミリ受信画情報を印刷出力するプロッタ」は、本願発明の受信した画像データを記憶する「記憶手段」、及び記憶手段に記憶された「画像データを記録紙等に出力する出力手段」にそれぞれ相当する。
引用発明の「印刷判定部」における、「メモリに記憶したファクシミリ受信画情報のページ数を調べ」る処理は、本願発明の「検出手段」における「記憶手段が現に記憶しているデータ量を」「検出する」処理に相当するから、引用発明は、記憶手段が現に記憶しているデータ量を検出する検出手段を備えているといえる。
引用発明の「印刷判定部」における「調べたページ数と印刷条件記憶部に記憶したページ数とを比較して、調べたページ数が印刷条件記憶部に記憶したページ数に達する場合は、メモリに記憶したファクシミリ受信画情報をプロッタを介して印刷出力する」処理が、使用者による出力指示と無関係に行われる処理であることは当業者にとって明らかな事項であり、かつ、本願発明の「出力制御手段」における「検出手段によって検出された」「記憶されているデータ量が予め設定された警戒量を越えた場合には、」「出力手段により」「記憶された画像データを出力させる」処理に相当するから、引用発明は、検出手段によって検出された記憶されているデータ量が予め設定された警戒量を越えた場合には、出力指示がされていない場合であっても、出力手段により記憶された画像データを出力させる出力制御手段を備えているといえる。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
ファクシミリ装置であって、
受信した画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを記録紙等に出力する出力手段と、
前記記憶手段が現に記憶しているデータ量を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された記憶されているデータ量が予め設定された警戒量を越えた場合には、出力指示がされていない場合であっても、前記出力手段により記憶された画像データを出力させる出力制御手段と、
を備えたファクシミリ装置。

【相違点】
本願発明は、「親展受信機能を有する」ファクシミリ装置であり、記憶手段に「各使用者毎に割り当てられた親展受信ボックスを有し、親展受信した画像データを、対応する親展受信ボックスに記憶」し、出力手段において記憶手段の「親展受信ボックスに」記憶された画像データを記録紙等に出力し、検出手段において記憶手段が現に記憶しているデータ量を「親展受信ボックス毎に」検出し、出力制御手段において、「親展受信ボックスの操作権限を有する使用者によって、当該親展受信ボックスに記憶されている画像データの出力指示がなされた場合に、出力手段により当該親展受信ボックスに記憶されている画像データを出力させ」、検出手段によって検出された「当該親展受信ボックスに」記憶されているデータ量が予め設定された警戒量を越えた場合には、前記出力指示がされていない場合であっても、前記出力手段により「当該親展受信ボックスに」記憶された画像データを出力させるのに対して、引用発明は、「親展受信機能」及び「親展受信ボックス」を有さず、出力制御手段において、「親展受信ボックスの操作権限を有する使用者によって、当該親展受信ボックスに記憶されている画像データの出力指示がなされた場合に、出力手段により当該親展受信ボックスに記憶されている画像データを出力させ」ない点。

4 当審の判断
前記相違点について検討する。
使用可能な記憶領域をあらかじめ割り当てた「親展受信ボックスを有し、親展受信した画像データを、対応する親展受信ボックスに記憶する記憶手段」と、「記憶手段の親展受信ボックスに記憶された画像データを記録紙等に出力する出力手段」とを備え、「親展受信ボックスの操作権限を有する使用者によって、当該親展受信ボックスに記憶されている画像データの出力指示がなされた場合に、出力手段により当該親展受信ボックスに記憶されている画像データを出力させ」る「親展受信機能を有するファクシミリ装置」は、特開平10-290313号公報に示されるように周知である。
前記特開平10-290313号公報には、「【0022】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係るファクシミリ装置の実施の形態を説明する。
【0023】まず、本実施形態におけるファクシミリ装置の構成を説明する。図1に示すように、本実施形態におけるファクシミリ装置2は、ネットワーク1を介してパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと称する)3、4、5に接続されている。
【0024】ファクシミリ装置2では、その本体部2Bに、ユーザが各種動作を指示するための操作パネル21a、メッセージや後述する文書管理情報等を表示するディスプレイ21b、原稿を読み取るスキャナ22a、受信した画情報や文書をプリント出力するプリンタ23a及び公衆回線25aがそれぞれ接続されている。(中略)
【0027】ところで、ファクシミリ装置2の主記憶装置24は、図2に示すように、ファクシミリ通信で受信した文書のうちメールボックス指定のある文書やパソコン3、4、5から送信されてきた文書等を蓄積するためのメールボックス記憶領域24Bと、メールボックスとは無関係の文書や情報を記憶するための一般文書記憶領域24Aの2つの記憶領域に分割されており、このうちメールボックス記憶領域24Bには、文書の宛先別に3つのメールボックスB1、B2、B3が予め割当てられている。このようにメールボックス毎の記憶領域を予め割り当てることで、1つのメールボックスで使用可能な記憶領域を制限し、1つのメールボックスによりメールボックス記憶領域24Bが独占使用されることを回避することができる。
【0028】上記ファクシミリ装置2は、メールボックス指定の文書を、指定されたメールボックス(図2のメールボックスB1、B2、B3の何れか1つ)に蓄積する機能を有する。また、ファクシミリ装置2は、操作パネル21aからの指示又はパソコン3、4、5からの要求により、蓄積された文書をメールボックスから取り出し、取り出した文書をプリンタ23aからプリントする機能及び取り出した文書をパソコン3、4、5へネットワーク1を介して転送する機能を有する。
【0029】また、ファクシミリ装置2では、図2の各メールボックスに対して個別に、文書取出しのためのパスワードが設定されている。これにより、パスワードを認知している各メールボックスの正規のユーザのみが、各メールボックスから文書を取り出すことができ、文書のプリント出力や削除、パソコン3、4、5への転送等を要求することができる。即ち、部外者による各メールボックスからの文書の取り出しを回避できるので、各メールボックス毎のきめ細かい機密管理を実現することができる。」と記載されている。

引用例の前掲イの箇所に記載されているとおり、ファクシミリ装置においてメモリ受信の際にメモリがオーバーフローして受信処理が中断するのを防止することは周知の技術課題であり、かつ、前記周知の「親展受信機能を有するファクシミリ装置」において、メモリのオーバーフローが、使用可能な記憶領域をあらかじめ割り当てた親展受信ボックスごとに発生することは当業者にとって明らかな事項であるから、前記周知の「親展受信機能を有するファクシミリ装置」の親展受信ボックスごとに、引用発明のメモリのオーバーフローを防止するための構成を適用することは、当業者が容易に採用できることであると認められる。
なお、引用例の前掲アの【請求項7】には、メモリのオーバーフローを防止する際に親展画情報を除いて印刷出力すると記載されているが、記憶手段に記憶された親展受信した画像データを出力してメモリのオーバーフローを防止することは、特開平6-152990号公報、実願昭62-185695号(実開平1-91378号)のマイクロフィルムに示されているように慣用技術でもあるから、引用例の【請求項7】記載の事項は、一つの実施上の態様を示したものといえ、前記周知の「親展受信機能を有するファクシミリ装置」の親展受信ボックスごとに、引用発明のメモリのオーバーフローを防止するための構成を適用することを阻害する要因であるとまではいえない。
また、親展受信ボックスを各使用者ごとに割り当てることは、普通のことであるから、前記周知の「親展受信機能を有するファクシミリ装置」の親展受信ボックスを、「各使用者毎に割り当てられた親展受信ボックス」とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項であると認められる。

してみると、「各使用者毎に割り当てられた親展受信ボックスを有」する前記周知の「親展受信機能を有するファクシミリ装置」の親展受信ボックスごとに、引用発明のメモリのオーバーフローを防止するための構成を適用すること、すなわち、記憶手段が現に記憶しているデータ量を親展受信ボックスごとに検出する検出手段と、前記親展受信ボックスの操作権限を有する使用者によって、当該親展受信ボックスに記憶されている画像データの出力指示がなされた場合に、出力手段により当該親展受信ボックスに記憶されている画像データを出力させる一方、前記検出手段によって検出された当該親展受信ボックスに記憶されているデータ量があらかじめ設定された警戒量を越えた場合には、前記出力指示がされていない場合であっても、前記出力手段により当該親展受信ボックスに記憶された画像データを出力させる出力制御手段とを備えたファクシミリ装置を得ることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
そして、本願発明の奏する効果を検討してみても、引用例に記載された発明、及び周知事項から想定される範囲を越える格別なものとはいえない。

5 結論
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-14 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-03 
出願番号 特願2000-129800(P2000-129800)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣川 浩  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 脇岡 剛
松永 稔
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 伊藤 孝夫  

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