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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1157784
審判番号 不服2005-5600  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-31 
確定日 2007-05-17 
事件の表示 特願2003-114564「色差信号補正装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-319413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 手続
本願は、平成15年4月18日の出願(特願2000-356903の分割出願)であって、平成17年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 査定
査定の理由は、概略、下記のとおりである。

記(査定の理由)
本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ア.特開平02-196588号公報
イ.特開平06-292220号公報

第2 本願発明
本願の請求項1及び請求項2に係る各発明は、本願明細書及び図面(平成16年8月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載したとおりの「色差信号補正装置」であると認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである

「白文字スライスレベル信号と平均輝度レベル信号とを加算する第1の加算手段と、
輝度信号を前記第1の加算手段の出力信号のレベルでスライスするスライス手段と、
該スライス手段の出力信号と補正すべきB-Y色差信号とを加算し、該加算後の信号を補正されたB-Y色差信号として出力する第2の加算手段とを備えた、
ことを特徴とする色差信号補正装置。」

第3 当審の判断
1 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開平02-196588号公報(平成2年8月3日出願公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。

(1)「本発明は、テレビジョン受像機のCRT出力部等において、明るい白色(テロップ文字等)に対し、色温度を変える場合に用いることができる色温度補正装置に関するものである。」(1頁左下欄16行?19行)

(2)「第4図は従来の色温度補正装置のブロックを示すものである。第4図において1は、入力輝度信号を、スライスレベル電圧発生回路2からの電圧と比較し、その電圧以下の入力輝度信号があれば、これを補正信号として出力するスライス回路である。2は、スライスレベル電圧発生回路であり、輝度信号をスライスするレベルを決めるための直流電圧を発生する。この電圧は、コントラストコントロール電圧と加算したり、APL(平均映像信号レベル)電圧と加算したりする技術もある。3は、減算回路であり、補正信号と、入力色差信号を減算し、補正色差信号を出力する。
以上のように構成された色温度補正装置について、以下その動作について説明する。」(1頁右下欄7行?20行)

(3)「第5図は、従来例での信号を示す。
まず、入力輝度信号a(電圧が低いほど明るいとする。)は、スライス回路1に入力され、スライスレベル電圧発生回路2からの電圧bと比較され、この電圧bより低い輝度信号部分を補正信号cとして出力する。次に、補正信号cは、減算回路3に入力され、入力色差信号d (B-Y信号とする。)から減算され、補正色差信号eが出力される。このように、入力輝度信号の明るい部分を検出し、この部分を、色差信号に加えることで色温度が補正できる。」(2頁左上欄1行?11行)

2 対比
本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。

ア 本願発明の「白文字スライスレベル信号と平均輝度レベル信号とを加算する第1の加算手段」について
(ア-1) 本願発明の「白文字スライスレベル信号」は、本願明細書の段落【0016】、図1、図2、図4の記載を参酌すれば、その用語の意義は、その用語の表現と一致する「白文字スライスレベル信号e」であり、「補正白文字スライスレベル信号f」ではないと解釈するのが自然であるし、仮に「補正白文字スライスレベル信号f」を含む広い概念でとらえられるとしても、「白文字スライスレベル信号e」を含むことを排除するものではない。
(ア-2) 引用例の上記記載(1)によれば、引用例は、明るい白色(テロップ文字等)に対して、色温度を変える場合に用いることができる色温度補正装置であり、「明るい白色(テロップ文字等)」は、本願発明の「白文字」に相当している。
(ア-3) 引用例の上記記載(1)(2)によれば、「スライスレベル」は、明るい白色(テロップ文字等)に対するスライスレベルであるから、引用例の「スライスレベル」は、本願発明の「白文字スライスレベル信号」に相当している。
(ア-4) 引用例の上記記載(2)における「APL(平均映像信号レベル)電圧」の「映像信号」は、通常「輝度信号」を指すものといえる(本願明細書の段落【0032】においてもそのように定義している)。
(ア-5) 上記(ア-1)ないし(ア-4)を考慮すれば、引用例の上記記載(2)の「この電圧は、 (中略) APL(平均映像信号レベル)電圧と加算したりする技術もある。」の構成は、「白文字スライスレベル信号と平均輝度レベル信号とを加算する第1の加算手段」に相当する構成であるものと認められる。

イ 本願発明の「輝度信号を前記第1の加算手段の出力信号のレベルでスライスするスライス手段」について
引用例の上記記載(3)には、「入力輝度信号a(電圧が低いほど明るいとする。)は、スライス回路1に入力され、スライスレベル電圧発生回路2からの電圧bと比較され、この電圧bより低い輝度信号部分を補正信号cとして出力する。」と記載されている。
上記(ア-5)によれば、上記「電圧b」は、「第1の加算手段」の出力信号でもよいから、「輝度信号を前記第1の加算手段の出力信号のレベルでスライスするスライス手段」の構成が認められる。

ウ 本願発明の「該スライス手段の出力信号と補正すべきB-Y色差信号とを加算し、該加算後の信号を補正されたB-Y色差信号として出力する第2の加算手段」について
引用例の上記記載(3)には、「補正信号cは、減算回路3に入力され、入力色差信号d(B-Y信号とする。)から減算され、補正色差信号eが出力される。」と記載されている。
引用例の「補正信号c」「入力色差信号d(B-Y信号とする。)」「補正色差信号e」は、本願発明の「スライス手段の出力信号」「補正すべきB-Y色差信号」「補正されたB-Y色差信号」に相当しているから、「該スライス手段の出力信号と補正すべきB-Y色差信号とを減算し、該減算後の信号を補正された補正色差信号eとして出力する減算回路」の構成が認められる。
もっとも、本願発明では、「スライス手段の出力信号」と「補正すべきB-Y色差信号」を加算しているのに対し、引用例では、「スライス手段の出力信号」と「補正すべきB-Y色差信号」を減算している。相違が認められる。

エ 本願発明の「色差信号補正装置」について
引用例の上記記載(1)によれば、引用例は「色温度補正装置」であり、引用例の上記記載(3)によれば、色差信号を補正しているから、「色差信号補正装置」の構成が認められる。

上記アないしエの対比結果によれば、両者は、
「白文字スライスレベル信号と平均輝度レベル信号とを加算する第1の加算手段と、
輝度信号を前記第1の加算手段の出力信号のレベルでスライスするスライス手段と、
該スライス手段の出力信号と補正すべきB-Y色差信号とを演算し、該演算後の信号を補正されたB-Y色差信号として出力する演算手段とを備えた、
ことを特徴とする色差信号補正装置。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

「スライス手段の出力信号」と「補正すべきB-Y色差信号」を演算する演算手段が、本願発明では、加算手段であるのに対し、引用発明では、減算手段である点で相違する。


3 判断
(1) 容易想到性
上記相違点について検討する。
引用例の上記記載(3)によれば、入力輝度信号aは、電圧が低いほど明るくなるように設定されている。一方、本願明細書の段落【0016】には、「輝度信号gは図示しない色復調回路等から入力され、ここでは信号レベルが高いほど明るいものとする。」と記載されている。
よって、本願発明と引用例とでは、輝度信号の明暗と、そのときの電圧の設定の仕方(正負の向き)が逆であるといえる。
また、引用例の減算回路3の入力である補正信号cは、反転された後、色差信号B-Yと加算しているといえる。
引用例において、本願発明と同様に、輝度信号レベル高いほど明るくなるように設定した場合に、同様の色差信号補正を実現するために、引用例の減算回路を、本願発明のような「第2の加算手段」にすることは、単なる等価な演算手段への置き換えに過ぎないから、当業者が容易に想到できたものである。
また、相違点に係る構成による効果も予測される範囲を超えるものではない。

(2) 請求人の主張
ア 請求人は、「請求項1に記載の発明は、上記のように構成することで、肌色のような輝度レベルが高く、薄い色の部分に対しては白文字補正をかけず、色成分のない白文字のみに白文字補正を行うことができるものであります。」(平成17年4月28日付け手続補正書(方式)の(3)本願発明が特許されるべき理由 (a)本発明の説明)と主張するので、これについて検討する。

上記のような作用効果は、本願明細書及び図面に記載の「全波整流回路12、13」「色補正ゲインコントロール回路3」等のような構成によって生じるものであり(本願明細書の段落【0025】【0026】を参照。)、そのような構成が、本願発明に記載されていない以上、請求人の主張は採用できない。

イ 請求人は、「しかしながら、この加算の意図および加算した信号の利用法等の詳細な説明は上記引用文献1では特になされておらず、上述のように引用文献1と本件とはその目的(効果),構成が明確に異なるものである以上、本願の請求項1に記載の発明は上記引用文献1に基づいても容易に得られるものではありません。」(平成17年4月28日付け手続補正書(方式)の(3)本願発明が特許されるべき理由 (c)本願発明と引用例との対比)と主張するので、これについて検討する。

引用例のスライスレベル電圧は、APL(平均映像信号レベル)電圧と加算していることから、この構成は、平均映像信号レベルの高低の性質を、スライスレベルに反映させるためのものであることは明らかであるから、その目的(効果)は格別なものではなく、請求人の主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-14 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-04 
出願番号 特願2003-114564(P2003-114564)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 直樹  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 北岡 浩
松永 隆志
発明の名称 色差信号補正装置  
代理人 早瀬 憲一  

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