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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1157835
審判番号 不服2004-12855  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-23 
確定日 2007-05-18 
事件の表示 特願2000-321744「電波吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月10日出願公開、特開2002-134981〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続の経緯
本願は、平成12年10月20日の出願であって、平成16年5月19日付で拒絶査定がなされ、これを不服として、同年6月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月21日付で手続補正(前置補正)がなされたものである。

2平成16年7月21日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月21日付の手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
【請求項1】
「金属製電波反射体層(A)、2層以上のフェライト含有樹脂層を有するフェライト含有層構造体(B)、スペーサ層(C)、ならびに体積固有抵抗値が105Ω・cm以下の複数の独立したパターンを有する、パターン塗膜層及びパターン金属層から選ばれる幾何学的模様状に形成され、入射電波の一部を反射させるパターン層(D)が順次形成されてなる構造を有する電波吸収体であって、フェライト含有層構造体(B)において、各フェライト含有樹脂層が、樹脂100重量部に対してフェライトを10?1000重量部含有し、かつフェライト含有樹脂層の少なくとも1層が誘電体を含有し、しかも金属製電波反射体層(A)側のフェライト含有樹脂層の誘電率が高く、パターン層(D)側に向うに従い、順次誘電率が低下していく構成であって、該フェライト含有層構造体(B)において、少なくとも1層の誘電体を含有するフェライト含有樹脂層が、該層に重なるパターン層(D)側のフェライト含有樹脂層の樹脂100重量部に対するフェライト含有量より少ないフェライト含有量であり、該フェライト含有層構造体(B)におけるフェライト含有樹脂層の層数が2?5層であることを特徴とする電波吸収体。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フェライト含有層構造体(B)」について「該フェライト含有層構造体(B)において、少なくとも1層の誘電体を含有するフェライト含有樹脂層が、該層に重なるパターン層(D)側のフェライト含有樹脂層の樹脂100重量部に対するフェライト含有量より少ないフェライト含有量であり、該フェライト含有層構造体(B)におけるフェライト含有樹脂層の層数が2?5層である」との限定を付加し、「パターン層(D)」について「入射電波の一部を反射させる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物等とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物は、以下のとおり。
なお、下記記載中における下線は、いずれも当審で加入したもの。

[引用例1]特開平6?140787号公報
[引用例2]実願昭59?118627号
(実開昭60?48294号)のマイクロフィルム
[引用例3]特開2000?252113号公報
(拒絶査定時に提示された周知例)

[引用例1]
電波反射防止体および電波反射防止法に関する発明であって、
【特許請求の範囲】の【請求項1】には、
「金属製電波反射体層(A)、フェライト、カーボン、金属粉、導電性金属酸化物および高誘電材から選ばれた少なくとも1種の粉末を含有していてもよい有機樹脂層の一層または複層からなるスペーサー層(B)、必要ならば介在してもよい支持体層(C)、および複数の紐帯状金属製図形を互いに接触しないように組合せて形成した重層構造体を図形単位として、該図形単位を複数個配列してなる金属製パターン層(D)を順次積層してなる構造を有することを特徴とする電波反射防止体。」と記載されている。
上記「金属製電波反射体層(A)」は、本願補正発明の「金属製電波反射体層(A)」に、上記「フェライト、カーボン、金属粉、導電性金属酸化物および高誘電材から選ばれた少なくとも1種の粉末を含有していてもよい有機樹脂層の一層または複層からなるスペーサー層(B)」は、本願補正発明の「フェライト含有樹脂層を有するフェライト含有層構造体(B)」に、上記「必要ならば介在してもよい支持体層(C)」は、本願補正発明の「スペーサ層(C)」に、上記「複数の紐帯状金属製図形を互いに接触しないように組合せて形成した重層構造体を図形単位として、該図形単位を複数個配列してなる金属製パターン層(D)」は、本願補正発明の「複数の独立したパターンを有する、パターン塗膜層及びパターン金属層から選ばれる幾何学的模様状に形成され、入射電波の一部を反射させるパターン層(D)」該当する。

【0017】【0018】には、
「【0017】また上記樹脂中に分散されることができる高誘電材としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコニウム、チタン酸カリウムなどの粒子またはウィスカーなどであるチタン酸化合物、シリコンカーバイド、チッ化ケイ素などを挙げることができる。これらの高誘電材は粒子状であっても繊維状であってもよく、その粒径または繊維の直径は特に限定されるものではないが、一般に100μm以下であることが分散性などの点から好ましい。
【0018】上記樹脂中には、上記フェライト、カーボン、金属粉および導電性金属酸化物および高誘電材のうちの少なくとも1種の粉末を単独でまたは組合せて配合、分散させることができる。該樹脂100重量部に対する上記粉末の配合量は、下記範囲内にあることが好ましい。
・フェライト単独の場合、400重量部以下、・カーボン、金属粉、導電性金属酸化物のうちのいずれか単独の場合またはこれらの2種以上併用の場合、20重量部以下、・高誘電材単独の場合、200重量部以下、・フェライト/(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物の少なくとも1種)併用の場合、合計で400重量部以下であって、(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物)の合計量が20重量部未満、・フェライト/高誘電材併用の場合、合計で400重量部以下であって、高誘電材の含有量は好ましくは、これらの粉末の合計量のうち50重量%未満、・(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物のうちの少なくとも1種)/高誘電材併用の場合、合計で200重量部以下であって、(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物)の合計量が20重量部未満、・フェライト/(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物のうちの少なくとも1種)/高誘電材併用の場合、合計で400重量部以下であって、(カーボン、金属粉、導電性金属酸化物)の合計量が20重量部未満、高誘電材の含有量は好ましくは粉末の合計量のうちの50重量%未満。」と記載され、
【0039】実施例5には、
「厚さ約50μmのポリイミドフィルム上に、アクリル樹脂100部に対してバリウム系フェライト175部およびチタン酸カリウムウィスカー25部を含有する塗料を乾燥膜厚が350μmになるように塗布して、スペーサー層(B)を形成した。また別に、厚さ18μmの銅箔を接着したガラスエポキシ基板〔(C)層:膜厚120μm〕を用いて、実施例1と同様の電着レジストを用いたエッチング法によって、実施例1におけると同様の図形単位と、図2に示す図形単位様の図形単位(最外円の内径が約12mm、最内円の内径が約0.5mm、線幅300μm、スペース200μm)とを最外周の最短間隔が2mmとなるように交互に配列した銅製パターン層(D)を形成した。厚さ50μmのアルミニウム箔(A)層と得られた(B)層ならびに(B)層とその上にパターン層を形成した(C)層とを接着剤にて接着して電波反射防止体を作成した。」と記載されている。
そして、上記実施例5のチタン酸カリウムウィスカーは、上記【0017】下線部で「誘電体」の機能を有する記載があることから、上記【0018】下線部の記載と実施例5の下線部には、本願補正発明の「フェライト含有樹脂層の少なくとも1層が誘電体を含有し、」の構成が示されていることになる。
更に、上記【0018】下線部の記載と実施例5の下線部からは、同じく本願補正発明の「フェライト含有層構造体(B)において、各フェライト含有樹脂層が、樹脂100重量部に対してフェライトを10?1000重量部含有し」の構成も示されている。

図面とともにこれらの事項を参照すると、引用例1には、
『金属製電波反射体層(A)、2層以上のフェライト含有樹脂層を有するフェライト含有層構造体(B)、スペーサ層(C)、ならびに複数の独立したパターンを有する、パターン塗膜層及びパターン金属層から選ばれる幾何学的模様状に形成され、入射電波の一部を反射させるパターン層(D)が順次形成されてなる構造を有する電波吸収体であって、フェライト含有層構造体(B)において、各フェライト含有樹脂層が、樹脂100重量部に対してフェライトを10?1000重量部含有し、かつフェライト含有樹脂層の少なくとも1層が誘電体を含有する電波吸収体。』
に関する発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

[引用例2]
電波吸収板体に関する考案であって、
5頁15行?6頁13行には、
「第1図ないし第2図は、本考案の第1実施例を示す。図において、1ないし5は発泡ポリスチロール若しくは発泡ポリウレタン等の多孔質部材6からなる積層された誘電体板を示す。誘電体板1は、比誘電率が略1に等しいか或いは、比誘電率が略1に等しくかつ粒状若しくは粉末状のカーボン等の電波減衰部材7が僅かに混入されて若干の誘電体損失を有するように形成されている。誘電体板2は、その比誘電率および誘電体損失が前記誘電体板1の比誘電率および誘電体損失よりも大きくなるように形成されている。そして誘電体3?5は、前記誘電体板2に係合してその比誘電率および誘電体損失が、誘電体5の外面に向けて段階的若しくは連続的に序々に大きくなるように形成されている。これら各誘電体2?5の比誘電率および誘電体損失は、その成形前に予め混入する粒状若しくは粉末状のカーボン等の電波減衰材7の量を適当に調整することによって、所定の値に設定されている。」と記載され、
11頁6行?14行には、
「第4図は第3実施例を示す。
この実施例は、前記第1実施例の誘電体板5の外面に金属反射板9を装着したものである。その他の構成は前記第1実施例と同一にしてある。
この第3実施例によると、前記第1実施例と同一の作用効果を有するほか、入射波A,A1の入射後の伝播距離が反射板9の反射作用により略2倍近く設定されるので、前記第1?第2実施例の略1/2の厚さの電波吸収板を提供し得る。」と記載されている。

上記記載と第2、4図を参照すると、「樹脂層を2層以上の2?5層とし、電波反射板9(金属製電波反射体層に相当)側の樹脂層の誘電率が高く、その反対側に向うに従い順次誘電率が低下していく構成」が示されている。

[引用例3] 【0001】には、
「【発明の属する技術分野】本発明は、板状の軟磁性フェライト粒子粉末及びこれを用いた軟磁性フェライト粒子複合体に関し、更に詳しくは、低周波帯において比透磁率の実数部が高いとともに、高周波帯において広い帯域にわたって電磁波を吸収することができる軟磁性フェライト粒子複合体を提供し得る板状の軟磁性フェライト粒子粉末、及び該粒子粉末を用いた軟磁性フェライト粒子複合体に関するものである。」と記載され、
【0018】には、
「尚、本発明に係る軟磁性フェライト粒子複合体には、誘電率や導電率を制御したり、樹脂への練り込み性や複合体の柔軟性を改善する等の目的で、カーボン粒子粉末、SiC 粒子粉末等の公知の添加物を板状の軟磁性フェライト粒子粉末とともに混合分散することができる。」と記載されている。

上記記載には、電波吸収体において、フェライト含有層構造体の誘電率の調整が行われることが示されている。

[周知例1] 特開平6?152178号公報
電波反射防止体および電波反射防止法に関する発明であって、
【特許請求の範囲】の【請求項1】には、
「金属製電波反射体層(A)、必要ならば介在してもよい支持体層(B)、フェライト、カーボンおよび導電性金属酸化物から選ばれた少なくとも1種の粉末および必要に応じて高誘電材を含有する樹脂層(C)、必要ならば介在してもよい支持フィルム層(D)および複数の紐帯状図形を互いに接触しないように組合せて形成した重層構造体を図形単位として、該図形単位を複数個配列した模様に形成された、金属粉末を含有する体積固有抵抗値が10-3?106 Ω・cmのパターン塗膜層(E)を順次積層してなる構造を有することを特徴とする電波反射防止体。」と記載され、
【0018】前段には、
「本発明の電波反射防止体においては、上記樹脂層(C)上に、支持フィルム層(D)を介して、または介さずに、パターン塗膜層(E)が積層されている。パターン塗膜層(E)は、金属粉末を含有する模様塗膜であって体積固有抵抗値10-3?106Ω・cm、好ましくは10-3?102Ω・cmを有する。」と記載されている。

上記下線部分には、電波反射防止体パターンの体積固有抵抗値が通常105Ω・cm以下である点が示されている。

[周知例2] 特開2000?261180号公報
電波吸収体に関する発明であって、
【要約】【課題】には、
「外部の空気中からの電波を吸収しやすくするための整合層と、整合層を通過した電波を吸収するための吸収層と、吸収層を通過した電波を吸収層側へ反射するための反射層とを備える積層構造を有する、電波吸収体において、その厚みを増すことなく、電波の吸収効率を高めるようにする。」と記載され、
【0016】?【0018】には、
「【発明の実施の形態】図1は、この発明の第1の実施形態による電波吸収体11の断面構造を示している。
【0017】電波吸収体11は、整合層12と吸収層13と反射層14とが順次積層された積層構造を有している。
【0018】整合層12は、空気の比誘電率に近い3以下の比誘電率を有し、外部の空気中からの電波15の入射を受けたとき、この電波15を吸収しやすくするためのものである。一例として、整合層12は、比誘電率が2.0程度のポリプロピレンのような樹脂から構成され、その厚みは、0.2?0.9mm程度とされる。」と記載されている。

上記下線部には、表面の誘電率を空気の比誘電率(εr =1)に近づけ(3以下)、界面での反射を防止しようとすることが示されている。

(3)判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「金属製電波反射体層(A)、2層以上のフェライト含有樹脂層を有するフェライト含有層構造体(B)、スペーサ層(C)、ならびに複数の独立したパターンを有する、パターン塗膜層及びパターン金属層から選ばれる幾何学的模様状に形成され、入射電波の一部を反射させるパターン層(D)が順次形成されてなる構造を有する電波吸収体であって、フェライト含有層構造体(B)において、各フェライト含有樹脂層が、樹脂100重量部に対してフェライトを10?1000重量部含有し、かつフェライト含有樹脂層の少なくとも1層が誘電体を含有する電波吸収体。」の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点1>
本願補正発明では、「複数の独立したパターン」の体積固有抵抗値が105Ω・cm以下であるのに対して、引用発明では、金属製パターンの体積固有抵抗値に関する言及がない点
<相違点2>
本願補正発明では、フェライト含有樹脂層を2層以上の2?5層とし、金属製電波反射体層(A)側の樹脂層の誘電率が高く、パターン層(D)側に向うに従い、順次誘電率が低下していく構成で、あるのに対し、引用発明では、該構成に関する言及がない点
<相違点3>
本願補正発明では、「フェライト含有層構造体(B)において、少なくとも1層の誘電体を含有するフェライト含有樹脂層が、該層に重なるパターン層(D)側のフェライト含有樹脂層の樹脂100重量部に対するフェライト含有量より少ないフェライト含有量」であるのに対し、引用発明では、該構成に関する言及がない点

これらの相違点について検討する。
<相違点1>について
「体積固有抵抗値が105Ω・cm以下である」点に関しては、該体積固有抵抗値は、周知例1に示されているとおり、電波反射防止体パターンの通常の体積固有抵抗値を示したに過ぎない。
<相違点2>について
樹脂層を2層以上の2?5層とし、金属製電波反射体層側の樹脂層の誘電率が高く、その反対側に向うに従い、順次誘電率が低下していく構成が引用例2に示されている。
また電波吸収体では、引用例3に示されているように、フェライト含有層構造体の誘電率の調整も普通に行われている。
よって、引用発明のスペーサー層(B)(フェライト含有層構造体)を引用例2のような「2層以上の2?5層とし、金属製電波反射体層側の樹脂層の誘電率が高く、その反対側のパターン層側に向うに従い、順次誘電率が低下していく構成」にすることは、当業者なら容易に想到し得た程度のものである。
<相違点3>について
「誘電体を含有するフェライト含有樹脂層のフェライト含有量を少なくする点に関しては、軽量化の為に重量配分を変えただけであるから、単なる設計上の事項に過ぎない。

そして、上記相違点1?3で指摘した構成を併せ備える本願補正発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明及び引用例2,3に記載の技術事項並びに周知例1に記載の技術事項から当業者であれば予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、「本願請求項1の電波吸収体は、最表面にパターン層(D)である高誘電体が設けられており、最表面の誘電率が1である引用文献2の積層誘電体板とはその技術思想が全く異なるものである。」と主張しているが、引用例2において比誘電率を1にすることは、周知例2に示されているように、表面の誘電率を空気の比誘電率(εr =1)に近づけ(3以下)、界面での反射を防止しようとするものであるから、本願発明の課題及び作用効果「表面における電波の反射を極めて少なくでき、効果的に電波の反射を防止できる」(本願明細書【0006】参照)と同じ技術思想である。
よって、本願請求項1の電波吸収体と引用例2の積層誘電体板とはその技術思想が全く異なるとする請求人の主張は採用できない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2,3に記載の技術事項並びに周知例1に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3本願の発明について
(1) 本願発明
平成16年7月21日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるが、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。
【請求項1】
「金属製電波反射体層(A)、2層以上のフェライト含有樹脂層を有するフェライト含有層構造体(B)、スペーサ層(C)、ならびに体積固有抵抗値が105Ω・cm以下の複数の独立したパターンを有する、パターン塗膜層及びパターン金属層から選ばれる幾何学的模様状に形成されたパターン層(D)が順次形成されてなる構造を有する電波吸収体であって、フェライト含有層構造体(B)において、各フェライト含有樹脂層が、樹脂100重量部に対してフェライトを10?1000重量部含有し、かつフェライト含有樹脂層の少なくとも1層が誘電体を含有し、しかも金属製電波反射体層(A)側のフェライト含有樹脂層の誘電率が高く、パターン層(D)側に向うに従い、順次誘電率が低下していく構成であることを特徴とする電波吸収体。」

(2) 引用刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(3) 判断
本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「フェライト含有層構造体(B)」の限定事項である「該フェライト含有層構造体(B)において、少なくとも1層の誘電体を含有するフェライト含有樹脂層が、該層に重なるパターン層(D)側のフェライト含有樹脂層の樹脂100重量部に対するフェライト含有量より少ないフェライト含有量であり、該フェライト含有層構造体(B)におけるフェライト含有樹脂層の層数が2?5層である」との構成を省き、「パターン層(D)」の限定事項である「入射電波の一部を反射させる」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に上記した構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(3) 」に記載したとおり、引用発明及び引用例2,3に記載の技術事項並びに周知例1に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により引用発明及び引用例2,3に記載の技術事項並びに周知例1に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4) むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の2?8に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-12 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-03-29 
出願番号 特願2000-321744(P2000-321744)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 ぬで島 慎二
山内 康明
発明の名称 電波吸収体  
代理人 片桐 光治  

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