• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1157842
審判番号 不服2004-25521  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-15 
確定日 2007-05-18 
事件の表示 平成10年特許願第363847号「納豆容器用蓋材並びに納豆の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-184862〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月22日の出願であって、平成16年11月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年12月15日に審判請求がなされると共に、平成17年1月14日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年1月14日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年1月14日付けの手続補正を却下する。
[理由]
請求人は、平成17年1月14日付けの手続補正書によって、出願当初の明細書の段落【0012】の記載を、
「【実施例】上記工程により製造した本発明の納豆容器蓋材開孔率0.60%の容器入り納豆及び納豆容器蓋材開孔率が0.8%である従来の容器入り納豆を、財団法人日本食品分析センターに依頼し、納豆の品質の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。」と補正すると共に、同段落【0013】の表1に記載の数値を補正するものである。
上記補正の内容は、表1の本発明品の納豆容器蓋材開孔率が0.60%及び従来品の納豆容器蓋材開孔率が0.8%であることを記載すると共に、表1の従来品の欄に記載の実験結果の数値を変更するものである。
しかし、本発明品の開孔率については、当初明細書及び図面に具体的な数値は何も記載されておらず、また、表1の本発明品の蓋材の開孔率が0.60%であることは、当初明細書及び図面の記載をみても自明のことであるとは認められない。(さらに、付け加えるなら、平成16年2月16日付けで提出された手続補足書の分析試験成績書では、表1に記載のデータは本発明品の蓋材の開孔率が0.05%のときのものであると述べていた。)
また、表1の「従来品(開孔率0.8%)」の欄の数値についても、当初明細書及び図面には何も記載されておらず、また、これらの数値が自明のものとも認められない。
してみると、上記補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でしたものとは認められず、特許法第17の2、3項の規定に違反するものである。
したがって、上記補正は、特許法第159条第1項の規定により準用する
同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成17年1月14日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】微細な孔開きプラスチックフィルム、紙、織布、または不織布からなり、前記微細な孔は、径300μ以下の丸孔又は幅100?300
μ、長さ500?800μの楕円形又は矩形孔であり、且つ開孔率が0.01?0.65%であることを特徴とする納豆容器用蓋材。」

4.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3ー240458号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の(a)ないし(f)の事項が記載されている。
(a)「1.大豆を蒸す工程と、蒸した大豆に納豆菌を混入する工程と、その大豆を、溶孔有孔加工による直径が100μ乃至500μの孔を多数有する
プラスチックフィルムであって、その有孔率が0.8%乃至6.5%のもので覆った後、室に入れて発酵させる工程とからなる納豆製造方法」(特許請求の範囲の請求項1)
(b)「本発明の納豆用トップシールは、プラスチックフィルムであって、溶孔有孔加工(フィルムの所望部分を溶かして孔を有するように加工すること)による直径が100μ乃至500μの孔を多数有し、その有孔率を0.8%乃至6.5%とした。」(2頁左下欄1行?5行)
(c)「トップシールは、一般的に、紙製やプラスチック製の納豆容器の上部の縁に接着材により、あるいは、熱溶着等により定着される。」(3頁右上欄11行?13行)
(d)「本発明の製造方法は、大豆又は納豆から発する水蒸気を外部に十分に逃がすトップシールの性質を利用して、次のように実施される。すなわち、大豆を蒸した後納豆菌を混入し、しかる後、その大豆を、溶孔有孔加工による直径が100μ乃至500μの孔を多数有するプラスチックフィルムであって、その有孔率が0.8%乃至6.5%のもので覆い、次にそれを室に入れて発酵させるものである。」(3頁左下欄12行?20行)
(e)「本発明の納豆用トップシールを用いることにより、納豆へのゴミや虫の混入を防ぐことができ衛生的な製品を得ることができる。納豆から発する水蒸気を有効に外部に逃がすことによりシールの下に結露を生じることがなくおいしい納豆を提供することができる。」(3頁右下欄6行?11行)
(f)第2図には、トップシールの全面に多数の丸孔が形成されていることが示されている。

5.対比
本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、後者の「有孔率」は前者の「開孔率」に相当し、また、後者の「トップシール」は前者の「蓋材」に相当するから、両者は、「微細な孔開きプラスチックフィルムからなり、前記微細な孔は、丸孔である納豆容器用蓋材」の点で一致し、また、丸孔の径についても両者は重複している。
しかしながら、前者は、蓋材の開口率を「0.01?0.65%」と限定しているのに対して、後者では、蓋材の開口率を「0.8?6.5%」と限定している点で、両者は相違する。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。
本願明細書の記載によれば、従来の納豆容器用蓋材はその開孔率が1%以上であったために、容器入り納豆を消費者が購入し、食する頃には納豆の発酵が進み過ぎて納豆の味が低下するという欠点があったところ、本願発明は、蓋材の開口率を「0.01?0.65%」にすることにより、容器内における納豆の順調な発酵を図ると共に、市場における賞味期間の延長を図るようにしたものである。
しかし、市場に流通させる加工食品において、その賞味期間を長くすることは納豆を含め各種加工食品に共通して求められる技術的課題であること、及び納豆菌は好気性であり、納豆菌を発酵、増殖させるためには充分な空気(酸素)の供給が必要であること、逆に言えば、空気の供給(通気量)を減らすことで、納豆菌の発酵、増殖を抑制できることは、本願出願前に当業者の技術常識であった(必要なら、例えば、実願昭56-178908号
(実開昭58-82390号公報)のマイクロフイルム、実願平1-44542号(実開平2-137889号)のマイクロフイルム参照。)ことを併せ考慮すると、納豆の賞味期間を延長するという上記技術課題を解決するために、蓋材の開口率を小さくして蓋材からの空気の供給(通気量)を減らすことは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、納豆容器用蓋材の開口率を「0.8?6.5%」にすることが引用例により知られていたのであるから、この数値範囲を参考にして納豆の賞味期間の延長につながる「蓋材の開口率」の最適条件を実験により確認して、その開口率を「0.01?0.65%」に設定することは、当業者において格別困難なことではない。
また、本願発明が奏する効果についてみても、蓋材の開口率を小さくして
空気の供給(通気量)を減らせば、納豆菌の発酵、増殖を抑制でき、市場における納豆の賞味期間を延長できることは、当業者ならば容易に予測できることである。
また、本願明細書の発明の詳細な説明に記載の実験データをみても、本願発明は、引用例に記載の発明に比べて格別の効果を奏するとはいえない。
すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明の表1には、実施例として、開口率が0.05%である本発明品(平成16年2月16日付け意見書に添付された資料1の記載から、その開口率は0.05%であると認める。)が示され、比較例として、開口率が1.5%の例が示されているに過ぎないから、これらの実験データからは、開口率が「0.01?0.65%」の範囲に亘って開口率0.05%のものと同様な作用効果が奏されるのか確認できないし、また、開口率を「0.01?0.65%」にすることで、引用例に記載のもの、例えば開口率が0.8%のものに比較して優れた効果を奏することも確認できない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-05 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-28 
出願番号 特願平10-363847
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 阪野 誠司
高堀 栄二
発明の名称 納豆容器用蓋材並びに納豆の製造方法  
代理人 小田 治親  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ