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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1157854 |
審判番号 | 不服2006-15235 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-14 |
確定日 | 2007-05-18 |
事件の表示 | 特願2000- 79983「ブラシレスモータの駆動制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月28日出願公開、特開2001-268879〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年3月22日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成18年8月11日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている。 「転流時の電流変化率を制御する電流変化率制御手段を有すると共に、複数の励磁相を有するブラシレスモータの駆動制御装置において、前記電流変化率制御手段は、転流動作において相電流が過渡状態になっている時間である転流の過渡時間を、ある転流の開始時間から次の転流の開始時間までに要する時間である転流間隔時間の1/2以内に終了させることを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。」(以下「本願発明」という。) なお、平成18年8月11日付けの手続補正書による補正後の請求項1は、補正前の請求項3に対応し、その記載内容は同一である。 2.引用文献 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、特開平11-356083号公報(以下「引用文献」という。)には、モータ駆動制御装置に関する発明について以下の記載がある。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ブラシレスモータやリニアモータ等のように複数の励磁相を有するモータの駆動制御装置に関する。」 ・「【0022】 【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のモータ駆動回路による励磁電流の制御では、切替える2つの相(例えば、図16のa相とd相)の電流の立上りと立下りの変化率が異なるため、切替えられない相(例えば、図16のb相、c相、e相)の電流が変動し、それらの電流変動により過度的なトルク変動が生じてしまう。」 ・「【0026】本発明の具体的な一態様では、上記駆動手段は、励磁信号としてモータの複数の励磁コイルに供給する励磁電流を生成する駆動回路を含み、上記制御手段は、励磁電流の切替え時に励磁電流が立ち上がる励磁相と立ち下がる励磁相の電流変化率を一致させるか又は同程度にする駆動信号を上記駆動回路に供給することを特徴とする。」 ・「【0029】 【作用及び効果】本発明によれば、制御手段は、駆動手段からモータの各励磁相ごとに供給される励磁信号の方向決定及びオン・オフの切替えを行う。その切替え時に切り替えられる励磁信号の変化率を制御することにより、切替える2つの相の電流変化率を一致させる(又は同程度にする)ことができる。これにより、切り替えない相の電流変動が抑制されるので、前述のトルク変動もなくなる。」 ・「【0095】更に、この実施例2の場合、立上り相と立下り相の電流変化率を完全に一致させることは困難であるが、前記実施例1の効果を示す図9と比較すると、電流切替えの過渡時間(すなわち、切り替え開始から電流が安定するまでの時間)を短くできるという利点がある。これにより、モータが高速回転する時には、2つの電流切替え時点の間の電流安定時間が長くなり、電流変動とトルク変動の低減に寄与する。」 ・「【0105】更に、この実施例3の場合も、立上り相と立下り相の電流変化率を完全に一致させることは困難であるが、前記実施例2と同様、電流切替えの過渡時間を短くできるという利点がある。これにより、モータが高速回転する時、2つの電流切替え時点の間の電流安定時間が長くなり、電流変動とトルク変動の低減に寄与する。」 図面及び上記記載を参照すれば、引用文献には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。 「励磁電流の切替え時の電流変化率を制御する制御手段を有すると共に、複数の励磁相を有するブラシレスモータの駆動制御装置において、前記制御手段は、電流切替えの過渡時間を短くできるブラシレスモータの駆動制御装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、後者の「励磁電流の切替え時」は前者の「転流時」に相当し、以下同様に「制御手段」は「電流変化率制御手段」に、「電流切替えの過渡時間」は「転流動作において相電流が過渡状態になっている時間である転流の過渡時間」に、それぞれ相当する。 また、後者の「短くできる」と、前者の「ある転流の開始時間から次の転流の開始時間までに要する時間である転流間隔時間の1/2以内に終了させる」とは、「短くする」との概念で共通する。 したがって両者は、 [一致点] 「転流時の電流変化率を制御する電流変化率制御手段を有すると共に、複数の励磁相を有するブラシレスモータの駆動制御装置において、前記電流変化率制御手段は、転流動作において相電流が過渡状態になっている時間である転流の過渡時間を短くするブラシレスモータの駆動制御装置。」である点で一致し、 [相違点] 転流の過渡時間を短くする程度に関して、本願発明では、「ある転流の開始時間から次の転流の開始時間までに要する時間である転流間隔時間の1/2以内に終了させる」ものであるのに対し、引用発明ではこの様な特定をしていない点で相違している。 4.相違点に対する判断 モータの分野において、転流に起因して発生するトルク変動状態を早く終了させることは一般的な課題であり、そのためには、転流の過渡時間が短い方がよいことは明らかであり、引用発明においても、転流の過渡時間が短いことを利点としているものであるから、上記一般的課題の下にその過渡時間を転流間隔時間の1/2以内とすることは適宜設計し得る事項と認められる。 したがって、引用発明において、転流の過渡時間を「転流間隔時間の1/2以内に終了させる」程度に短くして、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。 また、本願発明の奏する効果は、引用発明から予測し得る程度のものと認められる。 したがって本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認められる。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-08 |
結審通知日 | 2007-03-13 |
審決日 | 2007-03-27 |
出願番号 | 特願2000-79983(P2000-79983) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 和人 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
田中 秀夫 高橋 学 |
発明の名称 | ブラシレスモータの駆動制御装置 |
代理人 | 安形 雄三 |