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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47F
管理番号 1157908
審判番号 不服2004-17312  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-19 
確定日 2007-05-16 
事件の表示 特願2001-136407号「衣類収納ケース」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月12日出願公開、特開2002-325664号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年5月7日の出願であって、平成16年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月21日付けの手続補正の補正却下の決定について
[結論]
平成16年9月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「前面に開口部を、後方に後側面を有する内部中空のケース本体内に、衣類を載置収納するトレーが挿脱自在に保持される衣料品店での陳列用の衣類収納ケースであって、
前記ケース本体の左右両内側面の下部側に形成され前記開口部側からケース本体の後側面側に向けて延出する凹溝を有したガイドレールと、
前記開口部近傍の両ガイドレール凹溝にそれぞれ形成されたストッパーと、
前記両ガイドレールの後側面側近傍部分を他よりもそれぞれ幅狭にして形成されたトレー挿脱部と、
前記トレーの底部両側に長さ方向に沿って段差状に形成され、その外側面間の幅が前記ガイドレール相互の間隔よりも狭くされたスライド部と、
このスライド部の後端部側における左右外側面にそれぞれ外向きに突設された摺動ジョイントとを備え、
この両摺動ジョイントの先端間の間隔が前記両トレー挿脱部間の間隔より狭く、前記両ガイドレール相互の間隔より広く形成されて、トレーを引き出したときに摺動ジョイントがガイドレールに支持されるようにしてなり、
前記ケース本体の上面外周縁に周壁が形成され、
この周壁の後端部側中央の内側面から外側面に貫通する係合穴が開設され、
前記ケース本体の下面の後端部側中央に前記係合穴内側面から挿入され前記ケース本体を上下に連接可能とする係合突部が設けられ、
前記トレーが、底の浅い矩形状で、衣類を畳んだ際の肩幅サイズに形成されたことを特徴とする
衣料品店での陳列用の衣類収納ケース。」と補正された。(上記下線部分は、本件補正により補正された部分である。)

(2)補正の目的の適否
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「衣類収納ケース」について「衣料品店での陳列用の」、「前記トレーが、底の浅い矩形状で、衣類を畳んだ際の肩幅サイズに形成されたこと」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である実願昭61-139574号(実開昭63-45631号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、収納ケースに関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア-1)「本考案収納ケースAは引き出し1を出し入れ自在に装着した外箱2の上面乃至下面の一方の背部側のみに係合溝3を設けると共に他方の背部側に係合溝3に着脱自在に係合する係合突起4を設けたものであって、上述のように構成することにより従来例の欠点を解決したものである。つまり、上記のように構成したことにより、上下に収納ケースAを積み重ねたとき、外箱2の係合溝3と係合突起4とを係合させることができるものであって、引き出し1を出し入れする外力にて外箱2が動いたりしないようになり、しかも外箱2の背部側でのみ係合溝3と係合突起4とが係合しているため収納ケースAを取り出すとき収納ケースAを背方に少し移動するだけで係合溝3と係合突起4との係合を外して収納ケースAを取り出すことができるようになり、さらに収納ケースAを背方に少し動かすだけで収納ケースAを取り出すことができるため押し入れ5の奥行きが狭くても使用できると共に取り扱いがしやすいようになった。」(明細書第3頁第9行?第4頁第7行)
(ア-2)「収納ケースAは第1図に示すように外箱2に引き出し1を出し入れ自在に装着して形成されている。外箱2は一端を開口せる直方体箱状に形成され、この一端の開口を前にして開口から引き出し1を出し入れ自在にしてある。引き出し1の前端下部には取っ手部9を設けてある。本実施例の場合外箱2の他端には収納ケースAを持ち運びするとき引き出し1の他端の把持部(図示せず)を突出させることのできる把持部突出用孔10を穿孔してあり、外箱2の下面にも透孔11を穿孔してある。外箱2の上面の左右には前部から背部に至る位置決め溝6を凹設してあり、外箱2の上面の左右の背部側には位置決め溝6に連続するように係合溝3を凹設してある。この係合溝3は第3図(a)に示すように断面略L字状の溝であっても、第3図(b)に示すように断面台形状の蟻溝であっても、第3図(c)に示すように断面逆T字状の溝であってもよい。この係合溝3は上面及び背方端が開口している。外箱2の下面の左右には第2図に示すように前部から背部まで至る位置決め突起7を突設してあり、外箱2の下面の左右の背部側には位置決め突起7に連続する係合突起4を突設してある。この位置決め突起7は上記位置決め溝6に嵌まり込むようになっており、係合突起4にスライド自在に係合するようになっている。この係合突起4は係合溝3が断面略L字状の溝の場合第3図(a)に示すように断面L字状の突起であり、断面台形状の場合第3図(b)のように断面台形状の突起であり、係合溝3が断面逆T字状の場合第3図(c)に示すように断面逆T字状の突起である。また上記実施例では外箱2の上面側に係合溝3や位置決め溝6を設けると共に外箱2の下面側に係合突起4や位置決め突起7を設けたものについて述べたが、外箱2の下面側に係合溝3や位置決め溝6を設けると共に外箱2の上面側に係合突起4や位置決め突起7を設けてもよい。」(明細書第4頁第9行?第6頁第4行)
(ア-3)第1、2図から、収納ケースAは、前面に開口部が、後方に後側面を有することは明らかである。
以上の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用例には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「前面に開口部を、後方に後側面を有する内部中空の収納ケースA内に、載置収納する引き出し1が挿脱自在に保持される収納ケースA」

イ.対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比すると、後者の「収納ケースA」は、その構成及び機能からみて、前者の「収納ケース」に、後者の「引き出し1」は前者の「トレー」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「前面に開口部を、後方に後側面を有する内部中空のケース本体内に、載置収納するトレーが挿脱自在に保持される収納ケース。」で一致し、下記の点で相違する。
(相違点1)
収納ケースにおいて、前者は、「衣類」を専ら入れ、「衣料品店での陳列用」であり、トレーが「衣類を畳んだ際の肩幅サイズに形成」されているのに対し、後者は、そうであるかどうか不明である点。
(相違点2)
前者は、「ケース本体の左右両内側面の下部側に形成され開口部側からケース本体の後側面側に向けて延出する凹溝を有したガイドレールと、開口部近傍の両ガイドレール凹溝にそれぞれ形成されたストッパーと、両ガイドレールの後側面側近傍部分を他よりもそれぞれ幅狭にして形成されたトレー挿脱部と、トレーの底部両側に長さ方向に沿って段差状に形成され、その外側面間の幅が前記ガイドレール相互の間隔よりも狭くされたスライド部と、このスライド部の後端部側における左右外側面にそれぞれ外向きに突設された摺動ジョイントとを備え、この両摺動ジョイントの先端間の間隔が前記両トレー挿脱部間の間隔より狭く、前記両ガイドレール相互の間隔より広く形成されて、トレーを引き出したときに摺動ジョイントがガイドレールに支持される」ようにしているのに対し、後者は、そのような構成を採っているかどうか不明である点。
(相違点3)
収納ケースにおいて、前者は、「ケース本体の上面外周縁に周壁が形成され、この周壁の後端部側中央の内側面から外側面に貫通する係合穴が開設され、前記ケース本体の下面の後端部側中央に前記係合穴内側面から挿入され前記ケース本体を上下に連接可能とする係合突部が設け」られているのに対し、後者は、係合溝3と係合突起4により多数の収納ケースAを積み重ねた点。
(相違点4)
前者は、トレーは「底の浅い矩形状」であるのに対し、後者は、トレーは底の浅い矩形状ではない点。

上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
収納ケースにおいて、「衣類」を専ら入れ、「衣料品店での陳列用」であり、トレーが「衣類を畳んだ際の肩幅サイズに形成」されている点は、従来周知慣用の技術であるから、収納ケースに上記周知慣用の技術を適用することは、当業者が容易に想到できたものである。
(イ)相違点2について
収納ケースにおいて、トレーを摺動するために、ケース本体の左右両内側面の下部側にガイドレール等を設けるのは常套手段(実願昭47-27963号(実開昭48-104630号)のマイクロフィルム参照)であり、また、トレーの摺動機構において、「開口部側からケース本体の後側面側に向けて延出する凹溝を有したガイドレールと、開口部近傍の両ガイドレール凹溝にそれぞれ形成されたストッパーと、両ガイドレールの後側面側近傍部分を他よりもそれぞれ幅狭にして形成されたトレー挿脱部と、トレーの底部両側に長さ方向に沿って段差状に形成され、その外側面間の幅が前記ガイドレール相互の間隔よりも狭くされたスライド部と、このスライド部の後端部側における左右外側面にそれぞれ外向きに突設された摺動ジョイントとを備え、この両摺動ジョイントの先端間の間隔が前記両トレー挿脱部間の間隔より狭く、前記両ガイドレール相互の間隔より広く形成されて、トレーを引き出したときに摺動ジョイントがガイドレールに支持される」ようにすることは、従来周知の技術(特開平10-23937号公報、実願昭47-27963号(実開昭48-104630号)のマイクロフィルム参照)であるから、引用発明に上記周知の技術及び上記常套手段を適用して、本願補正発明の相違点1に係る構造とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点3について
収納ケースにおいて、「ケース本体の上面外周縁に周壁が形成され、この周壁の後部側に前記係合穴内側面から挿入され前記ケース本体を上下に連接可能とする係合突部が設」けられている点は、周知の技術(登録実用新案公報第3033325号、実願平2-47399号(実開平4-6954号)のマイクロフィルム等)であり、また、係合突部を後部「中央」とするかどうかについても、適宜なし得る程度のことであるから、引用発明の係合溝3と係合突起4に代えて、上記周知の技術及び上記常套手段を適用すれば、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ))相違点4について
トレーは「底の浅い矩形状」である点は、従来周知の技術(実願昭56-11219号(実開昭57-124224号)のマイクロフィルム、実願昭58-38893号(実開昭59-184533号)のマイクロフィルム等)であり、引用発明に上記周知の技術を適用することは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本半補正発明の作用効果をみても、引用発明、上記周知の技術及び常套手段等に基づいて当業者が容易に予測できる程度のものであって、格別のものでない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知の技術及び上記常套手段等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「前面に開口部を、後方に後側面を有する内部中空のケース本体内に、衣類を載置収納するトレーが挿脱自在に保持される衣類収納ケースであって、
前記ケース本体の左右両内側面の下部側に形成され前記開口部側からケース本体の後側面側に向けて延出する凹溝を有したガイドレールと、
前記開口部近傍の両ガイドレール凹溝にそれぞれ形成されたストッパーと、
前記両ガイドレールの後側面側近傍部分を他よりもそれぞれ幅狭にして形成されたトレー挿脱部と、
前記トレーの底部両側に長さ方向に沿って段差状に形成され、その外側面間の幅が前記ガイドレール相互の間隔よりも狭くされたスライド部と、
このスライド部の後端部側における左右外側面にそれぞれ外向きに突設された摺動ジョイントとを備え、
この両摺動ジョイントの先端間の間隔が前記両トレー挿脱部間の間隔より狭く、前記両ガイドレール相互の間隔より広く形成されて、トレーを引き出したときに摺動ジョイントがガイドレールに支持されるようにしてなり、
前記ケース本体の上面外周縁に周壁が形成され、
この周壁の後端部側中央の内側面から外側面に貫通する係合穴が開設され、
前記ケース本体の下面の後端部側中央に前記係合穴内側面から挿入され前記ケース本体を上下に連接可能とする係合突部が設けられたことを特徴とする衣類収納ケース。」

4.引用例
引用例は、前記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「衣類収納ケース」の限定事項である「衣料品店での陳列用の」、「前記トレーが、底の浅い矩形状で、衣類を畳んだ際の肩幅サイズに形成されたこと」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)イ.」に記載したとおり、引用発明、周知に技術及び常套手段等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に理由により、引用発明、周知の技術及び常套手段等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知の技術及び常套手段等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-08 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願2001-136407(P2001-136407)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦井上 哲男  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 稲村 正義
和泉 等
発明の名称 衣類収納ケース  
代理人 福島 三雄  

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