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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1158065
審判番号 不服2004-9685  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-10 
確定日 2007-05-22 
事件の表示 平成6年特許願第126818号「複合脊髄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年12月20日出願公開、特開平6-343652号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月16日(パリ条約による優先権主張1993年5月14日、米国)の出願であって、その請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許出願時の明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項14に記載された次のとおりのものと認める。
「(a)患者の骨組織に外科的に移植されるよう形成された末端部分を有する少なくとも1つの骨取り付け手段、
(b)長手方向に延び、負荷伝達面が形成された骨取り付け手段の一部分、
(c)上面および下面と、平行で外向きに対向する両端部を有する周縁部分に囲まれた細長いスロットを有する外向きに対向する両端部とを備え、スロットが骨取り付け手段を受け止める大きさに作られた複合骨プレート部材、
(d)延出する突出部を有する下面部分を備えた座金からなり、かつ
(e)前記プレート部材は、調節手段を有しそれぞれの突出部は前記調節手段から選択されたものと適合する大きさ及び形状を有することからなる複合骨プレートシステム。」

第2 引用例の記載事項
1.原査定の拒絶の理由に引用された特表平4-506923号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「1.肉茎ネジを有する背柱のオステオシンセシス用の装置であって、螺状の尖頭アーチ状のポイント(1)とネジ付きヘッド(3)からなり、両者は六辺体(2)により分離され、前記ネジは結合部材(5、6)により結合されており、前記装置は前記ヘッド(3)上に固定部(7、8)と結合部材(5、6)からなるアセンブリをロッキングするためにナット(4、4′)が螺合される前記ネジ付きヘッド用の通過穴(9)を備えた固定部(7、8)からなり、固定部又は結合部材の何れかは前記六辺体(2)の回転に対してロックし、且つ受けるための孔(17、21)を備えるよう形成されたその内面を有することを特徴とするオステオシンセシス用の装置。」(請求の範囲の1.)
(2)「3.特に肉茎ネジヘッドを通すための開口を備えた長形板(6)として形成された結合部材の固定を意図した装置であって、前記固定部はU字形部分(8)であり、上記板(6)の上面をオーバーラップし、前記望ましくは長形の通し穴(9)を備え、且つ2つの横方向の突出部(22)により側腹をつけられ、前記板(6)は長形穴(19)を有し、その上面には横断方向の溝(20)が設けられ、その底面には六辺体(2)を受けロックするための前記孔(21)を備えており、前記部分(8)は又前記板(6)と対向する面に溝を備えていることを特徴とする請求項1記載のオステオシンセシス用の装置。」(請求の範囲の3.)
(3)「本発明は、充填物により背部から背柱のオステオシンセシス(Osteosynthesis)を許す装置に関する。その一部は背柱の肉茎内に骨の係留をするものであり、他の部分はネジを係合するために板又はロッドのいずれかを利用するものである。」(2頁左上欄3?7行)
(4)「本発明の目的は単純な設計の道具を提供して、背柱のオステオシンセシスを行うために、板及びロッドの信頼性ある位置決めとロッキングを亀背、背柱側曲、又は背柱亀背により解剖学上の条件と変形にかかわらずに特に精密に行うものである。」(2頁左上欄10?14行)
(5)「本発明の装置は公知の一般型式の肉茎ネジからなり、3部からなる、ポイント1、ボディ2、ヘッド3である。
ネジは生体両用できる外科用として認められ、それが背柱体に入ったときに材の破断を排するものである材料から作られる。
ネジポイント1はネジが切られ尖頭アーチ(ogival)形状にしてあり、且つねじの底部と頂部の円錐性が異なっているのが利点である。
ネジ3のヘッドはその中央部にて滑らかな穴9を備え且つヘッド3上に螺合された1つの補助部(7又は8)により、ロッド5(図1)又は板6(図3)のいずれかのためのロッキングナット(4、4′)用に両用のネジを備えた円筒状形状にしてある。
ナット(4、4′)は、ナットがロックされうるようなスロット11を備えた円筒状管状部10の形状の頂部に延長部を有し、対向部10は補助部7、8内にネジヘッド3を挿入する前にプライヤにより互いに僅かに近くに動かされる。
更に、補助部のみ又は肉茎ネジ用の結合部材のいずれかに手段を設けである。それは受用のシートを、且つ前記結合部材に関してネジのボディ2の回転に対してロッキング手段を設けるためである。」(2頁右上欄23行?左下欄20行)
(6)「図3の実施例において、唯一の中間部8は一般にU字型に設計されて仙骨腰椎板18を予め曲げた矩形断面とオーバーラップさせており、且つ楕円状の穴19からなりネジ3のヘッドを受ける。
板18の上面は横断方向の溝20を備え、底面は部分7の孔13と同様な孔21を備えており、ネジ2のボディを受けロックするように設計してある。
中間部8は穴9を有する中央部を有し、望ましくはネジヘッド3を容易に導入するために楕円状が良く、板18上部の溝付き面に沿って部分8を案内しウェッジするために2つの横方向の突出部22により側面づけされる。他方溝20に対向する部分8の面はマッチする溝を有する。
溝はナット4′がクランプされると、楕円状穴19内にネジヘッド3を動かす必要がない。」(2頁右下欄14行?3頁左上欄3行)
(7)図3には、長形穴(19)が示されているが、この穴(19)は平行で対向する側部を有する周縁部分に囲まれているといえる。また、ネジポイント(1)、ボディ(2)、ヘッド(3)からなる肉茎ネジは長手方向に延びているといえる。
(8)肉茎ネジ及びロッキングナット(4’)は背柱に板(6)を固定する手段であるから、骨取り付け手段といえる。そして、肉茎ネジのボディ(2)及びロッキングナット(4’)は板(6)及び中間部(8)からの負荷を受けるものであることは明らかであるから、ボディ(2)の板(6)との接触面及びロッキングナット(4’)の中間部(8)との接触面は負荷伝達面といえ、骨取り付け手段の一部分に負荷伝達面が形成されているといえる。また、穴(19)はネジのヘッド(3)が挿入されるものであるから、穴(19)は骨取り付け手段を受け止める大きさに作られているといえる。

これらの記載と図面の記載を総合すれば、引用例1には、
「(a)生体両用できる外科用のネジが切られたネジポイント(1)を有する骨取り付け手段、
(b)長手方向に延び、負荷伝達面が形成された骨取り付け手段の一部分、
(c)上面および底面と、平行で対向する側部を有する周縁部分に囲まれた長形穴(19)を有する対向する側部とを備え、穴(19)が骨取り付け手段を受け止める大きさに作られた板(6)、
(d)溝(20)に対向する溝を有する底面を備えた中間部(8)からなり、かつ
(e)前記板(6)は、横断方向の溝(20)を有し溝(20)に対向する中間部(8)の面はマッチする溝を有するオステオシンセシス用の装置。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。

2.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-226654号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【産業上の利用分野】この発明は骨折の補修、四肢伸張および骨奇形の矯正に有効な外部固定システムに関する。特に、この発明は改良された外部固定システムに関するもので、ねじ込んだロッドとねじ込んだ締め具とワイヤロッドの要素が個々にあるリングを利用しており、骨折の固定、四肢伸張、骨奇形の矯正の所謂イリザロフ(Ilizarov)法と呼ばれるものに有効で、それは放射線透過を使用する改良されたリング構造が軽量、高強力かつ高弾性特性のプラスチック-カーボン複合体よりできている。」(段落【0001】)
(2)「【発明が解決しようとする課題】イリザロフシステムの金属的性質は、金属部の強い放射線不透過故、患者の放射線撮影評価で臨床上の困難をもたらす。引き起こされる最も一般的な問題の1つは骨の治癒や破損の監視が、イリザロフシステムに使われている金属成分によって放射線撮影の影部において妨害されることである。第2には、完全集積したイリザロフの枠は非常な重量があり、小児科や上四肢の場合には問題である。」(段落【0006】)

これらの記載と図面の記載を総合すれば、引用例2には、
「軽量、高強力かつ高弾性特性のプラスチック-カーボン複合体よりできている骨折の固定、四肢伸張、骨奇形の矯正に用いるリング。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認めることができる。

第3 対比
本願発明と引用発明1を対比すると、後者の「生体両用できる外科用のネジが切られたネジポイント(1)」は、その機能、構造からみて、前者の「患者の骨組織に外科的に移植されるよう形成された末端部分」に相当し、同様に「底面」は「下面」に、「平行で対向する側部を有する周縁部分に囲まれた長形穴(19)」は「平行で外向きに対向する両端部を有する周縁部分に囲まれた細長いスロット」に、「対向する側部」は「外向きに対向する両端部」に、「穴(19)」は「スロット」に、「中間部(8)」は「座金」に、「オステオシンセシス用の装置」は「複合骨プレートシステム」にそれぞれ相当する。
ところで、後者において「溝(20)」と「対向する溝」がマッチするということは、互いの溝が適合する大きさ及び形状を有しており、係合することであるから、「溝(20)」と「対向する溝」は、凹部と凸部からなっているものということができ、また、「板(6)」の横断方向の溝(20)と「中間部(8)」の底面の溝(20)に対向する溝は、「中間部(8)」を「板(6)」の長手方向に位置調節する際に用いるものであることは明らかであるから、後者の「溝(20)に対向する溝」は前者の「延出する突出部」に、後者の「横断方向の溝(20)」は前者の「調節手段」にそれぞれ対応し、後者の「(d)溝(20)に対向する溝を有する底面を備えた中間部(8)からなり、かつ(e)前記板(6)は、横断方向の溝(20)を有し溝(20)に対向する中間部(8)の面はマッチする溝を有する」は、前者の「(d)延出する突出部を有する下面部分を備えた座金からなり、かつ(e)前記プレート部材は、調節手段を有しそれぞれの突出部は前記調節手段から選択されたものと適合する大きさ及び形状を有する」に相当する。
そして、後者の「板(6)」と前者の「複合骨プレート部材」は上面および下面と骨取り付け手段を受け止めるスロットを有するプレート状部材(以下、「プレート状部材」という。)で共通するといえる。

したがって、両者は、
「(a)患者の骨組織に外科的に移植されるよう形成された末端部分を有する少なくとも1つの骨取り付け手段、
(b)長手方向に延び、負荷伝達面が形成された骨取り付け手段の一部分、
(c)上面および下面と、平行で外向きに対向する両端部を有する周縁部分に囲まれた細長いスロットを有する外向きに対向する両端部とを備え、スロットが骨取り付け手段を受け止める大きさに作られたプレート状部材、
(d)延出する突出部を有する下面部分を備えた座金からなり、かつ
(e)前記プレート状部材は、調節手段を有しそれぞれの突出部は前記調節手段から選択されたものと適合する大きさ及び形状を有することからなる複合骨プレートシステム。」の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。
(相違点)
プレート状部材が、本願発明では複合材からなる「複合骨プレート部材」であるのに対し、引用発明1では複合材からなるか不明である「板(6)」である点。

第4 相違点の判断
引用発明2は、骨折の固定、四肢伸張、骨奇形の矯正に用いるリングが金属では、骨の治癒や破損の監視が、金属成分によって放射線撮影の影部において妨害されることや非常な重量がある(前記第2 2.(2)参照。)ので、骨折の固定、四肢伸張、骨奇形の矯正に用いるリングを軽量、高強力かつ高弾性特性のプラスチック-カーボン複合体より形成するというものである。そして、引用発明2は引用発明1とその技術分野が同一であり、引用発明1からみて引用発明2の課題が特別なものでもなく、引用発明1に引用発明2を適用することを阻害する特段の事情もないことから、本願発明の相違点に係る構成のようにプレート状部材を複合材からなる複合骨プレート部材とすることは、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明の効果は、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-13 
結審通知日 2006-12-18 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願平6-126818
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直土田 嘉一  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 森川 元嗣
和泉 等
発明の名称 複合脊髄装置  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 今城 俊夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 村社 厚夫  

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