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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1158079
審判番号 不服2006-1247  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-19 
確定日 2007-05-21 
事件の表示 特願2004- 71417「モータ及びその駆動制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月22日出願公開、特開2005-261135〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年3月12日の出願であって、平成17年7月11日付で手続補正された後、同年12月13日付で拒絶査定され、これに対し、平成18年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年2月20日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年2月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「交互に異極に着磁された複数の永久磁石を連続して配置した移動体に対して、複数の電磁コイルの列をステータとして前記移動体に非接触に配置し、この電磁コイル列に励磁電流を供給して、前記電磁コイル列の複数のコイルを交互に異極に励磁させて、前記移動体と前記電磁コイルとの間の吸引-反発により当該移動体を移動運動させる駆動回路を備えるとともに、前記電磁コイル列を複数の相から構成し、複数相からなる各相の前記電磁コイルに位相差を設けてなる、前記移動体と前記電磁コイルとを備えたモータの駆動システムであり、
前記駆動回路は、
前記永久磁石の移動による周期的な磁界変化を検出してアナログ値を出力するセンサを前記複数相のそれぞれ前記位相差を持つように備えるとともに、
このセンサのアナログ出力値のピーク値を調整して出力するゲインコントローラと、
前記モータの移動方向指示部と、
前記移動方向指示部の出力に基づいて、前記センサの出力極性を反転させて前記移動体の移動方向を反転させる反転回路、かつ、
前記ゲインコントローラの出力を増幅した後これをPWM制御して、前記電磁コイルを励磁するパターンを形成し、当該パターンを前記電磁コイルを励磁駆動する波形として、当該電磁コイルに直接供給するPWM制御部と、を備え、
前記移動体は異なった二つの永久磁石の異極配列を対とする構成を複数構成させ、対の構成となる前記異極の配列した間の位置を2πとした際に、前記センサは、前記2π間の任意位置をリニアに検出できる様に構成した、モータ駆動制御システム。」と補正された。

上記補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ステータとして移動体に非接触に配置」される「電磁コイル」について「(電磁コイル)の列」及び「(電磁コイル)列」との限定を付加するとともに、「移動体」について「移動体は異なった二つの永久磁石の異極配列を対とする構成を複数構成させ」るとの限定を、「(磁界変化を検出する)センサ」について、「(磁界変化を検出)してアナログ値を出力」するとの限定、及び「(移動体の)対の構成となる異極の配列した間の位置を2πとした際に、センサは、前記2π間の任意位置をリニアに検出できる」との限定を付加し、「センサの出力」について「(センサの)アナログ出力値」との限定を、「ゲインコントローラの出力をPWM制御」することについて「(ゲインコントローラの出力を)増幅した後これをPWM制御」するとの限定を、「駆動する」について「励磁駆動する」との限定を付加し、更に、「回転方向指示部」を「移動方向指示部」とすることで、明細書の記載との関係で請求項1の記載の明りょう化を図るものである。
そしてまた、上記補正は、「モータの駆動システム」について「電磁コイル列の複数のコイルを交互に異極に励磁させて、・・・(移動体を移動運動)させる駆動回路を備えるとともに、前記電磁コイル列を複数の相から構成し、複数相からなる各相の電磁コイルに位相差を設けてなる」との限定を付加するとともに、上記「駆動回路」が、「ゲインコントローラ」、「移動方向指示部」、及び「(移動方向指示部の出力に基づいて、)センサの出力極性を反転させて移動体の移動方向を反転させる反転回路」「を備え」るとの限定、及び「(電磁コイル列の)複数相のそれぞれ位相差を持つように(センサを)備える」との限定を付加するものである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮及び同法同項第4号に規定された明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由(平成17年9月9日付の拒絶理由通知書にて通知。)に引用された実願昭55-18059号(実開昭56-120785号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「(1) モータ回転軸と、この回転軸に取付けられこの回転軸に対して直角な2つの主面を有して前記回転軸方向に着磁されかつ前記主面の各々のモータ回転方向に沿って異なる磁極が交互に配列されるように着磁された環状マグネットと、前記主面の各々と所定間隙をもって対向配置された第1及び第2のコイルとを含むブラシレス直流モータ。
(2) 前記第1及び第2のコイルは互いにπ/2の電気角を有する関係に配置されていることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のモータ。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ) 「この考案はブラシレスモータに関し、特に二相ブラシレス直流モータに関するものである。・・・
かゝるブラシレス直流モータは、ロータとしての環状マグネットと、この環状マグネットの外周に沿って着磁された磁極列と対向した各相の駆動用コイルを夫々互いにπ/2の電気角だけずらして配設し、これらコイルをステータとした構造である。そして、これらコイルへの電流供給方式として、ロータマグネットとステータコイルとの相対位置関係を互いにπ/2の電気角だけずれたホール素子等の磁電変換素子により検出して、これら検出出力を用いてトランジスタ等のスイッチング素子をオンオフ制御する方式が採られている。」(明細書第1頁17行?第2頁15行)

(ウ) 「第3図は、この考案の実施例の断面図であり、モータ回転軸4は軸受5a及び5bにより更にはスラスト受部6によって回転自在に軸支されている。この回転軸4に環状のロータマグネット7が支持部材8を介して取付けられている。このマグネット7は回転軸方向に着磁されており、また回転軸4に垂直な2つの主面すなわち上下面の回転方向に沿って夫々多極配列構造となるように着磁されている(第4,5図参照)。これら上下面の磁極配列部と所定間隙を有して対向配置された駆動用のステータコイル9及び10が設けられており、これらコイル9及び10は平板状ヨーク部材11及びキャップ状ヨーク部材12に夫々取付けられている。
第4図及び第5図は、第3図に示すモータにおけるロータマグネット7と上下駆動コイル9及び10との位置関係を示す概略展開図及び下側からの平面図である。これら図に示す如く、両コイル9及び10は互いに電気角π/2だけずれた位置関係に取付けられており、更に磁電変換素子である位置検出素子13及び14も電気角π/2だけずれて配設されている。」(同書第4頁10行?第5頁10行)

(エ) 第5図の平面図には、ヨーク部材11及び12に取付けられたステータコイル9,10が、夫々、複数のコイルの列から構成された例が示されている。

(オ) 第4図及び第5図の記載から、引用例1に記載されたブラシレス直流モータでは、ステータコイル9,10を構成する複数のコイルが交互に異極に励磁されて、環状のロータマグネット7とステータコイル9,10との間の吸引-反発により、ロータマグネット7が回転する構成であることは明らかである。

(カ) 引用例1の記載全体からみて、第3図?第5図に記載されたブラシレス直流モータは、ステータコイル9,10の配置以外は、第1図及び第2図に示される従来例と同様であるといえる。そうすると、第3図?第5図に記載されたブラシレス直流モータにおいても、ロータマグネットとステータコイルとの相対位置関係を互いにπ/2の電気角だけずれたホール素子等の磁電変換素子により検出し、これら検出出力を用いてトランジスタ等のスイッチング素子をオンオフ制御するコイルへの電流供給方式が採られているものであるということができる。

これら記載事項及び図示内容から、引用例1には、

「上下面の各々のモータ回転方向に沿って異なる磁極が交互に配列されるように着磁された環状のロータマグネット7と、夫々が複数のコイルの列からなり、互いにπ/2の電気角を有する関係で前記ロータマグネット7の上下面の各々と所定間隙をもって対向配置されたステータコイル9,10と、電気角π/2だけずれて配設された磁電変換素子であるホール素子13,14とを備え、
前記ロータマグネット7と前記ステータコイル9,10との相対位置関係を前記ホール素子13,14により検出して、これら検出出力を用いてトランジスタ等のスイッチング素子をオンオフ制御し、ステータコイル9,10を構成する複数のコイルを交互に異極に励磁し、前記ロータマグネット7と前記ステータコイル9,10との間の吸引-反発により、前記ロータマグネット7を回転させるブラシレス直流モータ」の発明(以下「引用発明」という。)

が記載されているものと認められる。

イ また、原査定の拒絶の理由(平成17年9月9日付の拒絶理由通知書にて通知。)に引用された「特開昭62-16088号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「〔発明の目的〕
本発明の目的は、駆動回路に簡単な追加をするだけで、直流モータの起動時間を短縮する駆動回路を提供する事にある。」(第2頁左上欄9?12行)

(イ) 「第1図は、本発明によるモータ駆動回路のブロック図、第2図は第1図の要部波形図である。
第1図において、1はホール素子、2は極性判別回路、3は絶対値回路、4はパルス幅変調回路(以下PWM回路と略記する)、5はOR回路、6はFG、7は周波数電圧変換回路、8は比較器、11はモータ駆動部、20はモータコイルである。
次に動作を説明する。ホール素子1はモータの磁極の位置を検出して、ホール信号(a)を出力する。極性判別回路2は、ホール信号(a)の極性を検出して極性信号(b)を出力する。絶対値回路3は、ホール信号(a)の絶対値を検出して絶対値信号(c)を出力する。PWM回路4は、絶対値信号(c)をパルス幅変調して、パルス幅変調信号(以下PWM信号と略記する)(d)を出力する。
一方、周波数発電機6は、モータの速度に比例した周波数を有するFG信号(e)を出力し、周波数電圧変換回路7は、FG信号(e)の周波数を電圧に変換して速度誤差信号(f)を出力する。比較器8は、速度誤差信号(f)と基準電圧とを比較し起動信号(g)を出力する。この起動信号(g)は、モータが規定速度に達するまでの期間(以下、起動時と称する)は“ハイ”、モータが規定速度に達してからの期間(以下、定常時と称する)は“ロウ”のレベルを有する。また、9は定電圧、10は接地端子である。
OR回路5は、PWM信号(d)と起動信号(g)との論理和をつくり駆動信号(h)を出力する。この駆動信号(h)は、起動時は常に“ハイ”状態を維持し、定常時にはPWM信号(g)をそのまま伝えている。
モータ駆動部11には、極性信号(b)と駆動信号(h)とが入力されている。後述するように、駆動信号(h)は、モータコイル20に流れる電流をオンオフし1極性信号(b)は、モータコイル20に流れる電流の方向を定める。」(第2頁右上欄3行?左下欄19行)

(ウ) 引用例2における直流モータは、ホール素子1のモータの磁極の位置の検出に基づいてモータコイル20に流れる電流を切り換えているので、ブラシレス直流モータといえる。

(3)対 比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、その作用、機能からみて、後者の「上下面の各々のモータ回転方向に沿って異なる磁極が交互に配列されるように着磁された環状のロータマグネット7」が前者の「交互に異極に着磁された複数の永久磁石を連続して配置した移動体」に相当し、以下同様に、後者の「コイルの列」が前者の「電磁コイルの列」及び「電磁コイル列」に、後者の「夫々が複数のコイル列からなり、・・・ロータマグネット7の上下面の各々と所定間隙をもって対向配置されたステータコイル9,10」が前者の「(移動体)対して、ステータとして移動体に非接触に配置し・・・電磁コイル列を複数の相から構成」した「電磁コイル」に、後者の「ステータコイル9,10」を「互いにπ/2の電気角を有する関係で・・・配置」することが前者の「複数相からなる各相の電磁コイルに位相差を設ける」ことに相当する。
また、後者の「磁電変換素子であるホール素子13,14」が前者の「磁界変化を検出・・・するセンサ」に相当し、後者の「(ホール素子13,14を)電気角π/2だけずれて配設」することが前者の「(センサを)複数相のそれぞれ位相差を持つように備える」ことに相当し、後者の「ロータマグネット7とステータコイル9,10との相対位置関係を検出」することが前者の「永久磁石の移動による周期的な磁界変化を検出」することに相当する。
更に、後者の「ロータマグネット7を回転させる」ことが前者の「移動体を移動運動させる」ことに相当するので、後者の「(ホール素子13,14の)検出出力を用いてトランジスタ等のスイッチング素子をオンオフ制御し、・・・ロータマグネット7を回転させる」における「検出出力を用いてトランジスタ等のスイッチング素子をオンオフ制御」するための構成と前者の「移動体を移動運動させる駆動回路」とは、「移動体を移動運動させる駆動部」との概念で共通する。
また、後者において、「ステータコイル9,10を構成する複数のコイルを交互に異極に励磁」する際に、該ステータコイル9,10に励磁電流が供給されることは自明である。
そして、後者における「ホール素子13,14」及び「トランジスタ等のスイッチング素子」はブラシレス直流モータを駆動させるための素子であるので、駆動部に備えられた素子といえ、また、後者のブラシレス直流モータは、「モータの駆動システム」及び「モータ駆動制御システム」を備えているといえる。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、

「交互に異極に着磁された複数の永久磁石を連続して配置した移動体に対して、複数の電磁コイルの列をステータとして前記移動体に非接触に配置し、この電磁コイル列に励磁電流を供給して、前記電磁コイル列の複数のコイルを交互に異極に励磁させて、前記移動体と前記電磁コイルとの間の吸引-反発により当該移動体を移動運動させる駆動部を備えるとともに、前記電磁コイル列を複数の相から構成し、複数相からなる各相の前記電磁コイルに位相差を設けてなる、前記移動体と前記電磁コイルとを備えたモータの駆動システムであり、
前記駆動部は、前記永久磁石の移動による周期的な磁界変化を検出するセンサを前記複数相のそれぞれ前記位相差を持つように備えた、
モータ駆動制御システム。」

で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
移動体を移動運動させる駆動部に関して、前者は「移動体を移動運動させる駆動回路を備え」、「駆動回路は」、永久磁石の移動による周期的な磁界変化を検出「してアナログ値を出力」するセンサを複数相のそれぞれ位相差を持つように備える「とともに、センサのアナログ出力値のピーク値を調整して出力するゲインコントローラと、・・・前記ゲインコントローラの出力を増幅した後これをPWM制御して、電磁コイルを励磁するパターンを形成し、当該パターンを前記電磁コイルを励磁駆動する波形として、当該電磁コイルに直接供給するPWM制御部と、を備え」るのに対して、後者は、ホール素子13,14の出力について明りょうでなく、また、駆動部の構成についても明りょうでない点。

(相違点2)
移動体を移動運動させる駆動部に関して、前者が、「駆動回路は」、「モータの移動方向指示部と、前記移動方向指示部の出力に基づいて、センサの出力極性を反転させて移動体の移動方向を反転させる反転回路」を備えるのに対して、後者は、かかる構成について明りょうでない点。

(相違点3)
前者が、「移動体は異なった二つの永久磁石の異極配列を対とする構成を複数構成させ、対の構成となる前記異極の配列した間の位置を2πとした際に、センサは、前記2π間の任意位置をリニアに検出できる様に構成した」のに対して、後者は、ホール素子13,14の検出について明りょうでない点。

(4)相違点についての判断
ア 相違点1及び3について
前記引用例2には、定常時ではあるものの、ホール素子1からのモータの磁極位置を検出したアナログ信号(ホール信号(a))に基づいて、PWM信号を出力し、該PWM信号をそのまま駆動部に伝えて、モータコイルに流れる電流を制御するブラシレス直流モータの駆動回路の発明が記載されているほか、例えば、特開昭54-129417号公報(平成17年12月13日付の補正却下の決定において、周知例として提示。)には、ブラシレスモータの駆動回路として、モータのマグネットの磁界を検出する位置検出素子からの正弦波状の位置検出信号(アナログ信号)を三角波信号によってパルス幅変調してパルス信号(PWM信号)を作成し、該パルス信号によってコイルに励磁電流を供給するものが記載されている。
してみると、ブラシレスモータの駆動回路において、モータの磁極の位置を検出するホール素子からのアナログ値の出力からPWM信号を得て、該PWM信号によってコイルを励磁駆動させることは、周知技術であるといえる。
また、前記引用例2の第2図におけるホール信号(a)(定常時)及び特開昭54-129417号公報の第4図(B)及び(C)に示されるように、何れのホール素子の出力値も略正弦波状となっているので、これらのホール素子は、モータの磁極を構成する対の異極の配列した間の位置を2πとした際に、この2π間の任意位置をリニアに検出可能といえる。
一方、ホール素子によるモータの回転位置の検出信号に基づいてコイルに励磁電流を供給するモータ制御装置において、AGC回路を用いてホール素子からの検出信号の振幅値を適正な値に保持し、該AGC回路からの出力を増幅してコイルの励磁信号生成することは従来周知の技術であり(例えば、特開平2-114883号公報、特開平5-30780号公報等参照)、該周知技術のAGC回路を用いてホール素子からの検出信号の振幅値を適正な値に保持する態様が、上記相違点1に係る本願発明の構成の「センサのアナログ出力値のピーク値を調整して出力するゲインコントローラ」での態様に相当する。
そして、引用発明及び上記各周知技術は、何れも、ホール素子によるモータの回転位置の検出信号に基づいて励磁電流をコイルに供給するブラシレスモータとして共通の機能を有するものであるので、そうすると、上記周知技術を参照し、引用発明におけるモータのステータコイル9,10に励磁電流を供給するための夫々の駆動部を、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって、容易想到の範囲といえる。
また、略正弦波状のアナログ値を出力するホール素子を用いた場合、これらのホール素子によって、モータの磁極を構成する対の異極の配列した間の位置を2πとした際の、この2π間の任意位置をリニアに検出可能となることは、前述のとおりである。

イ 相違点2について
一般に、正逆転の切替可能なブラシレスモータは周知であるといえるところ、例えば、特開昭54-156113号公報には、回転方向の切替操作に基づいて、ホール素子の出力極性を反転させて、これにより、モータの回転方向を反転させる点が記載されている。
そうすると、上記周知技術を踏まえ、引用発明において、回転方向の切替手段を設けるとともに、回転方向の切替に基づきホール素子の出力極性の反転を行うことで、モータの回転方向を反転させる構成をとることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明及び上記各周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
平成18年2月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年7月11日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、本願については、平成17年11月14日付の手続補正もされているが、当該補正は平成17年12月13日付の補正却下の決定により却下された。

「交互に異極に着磁された複数の永久磁石を連続して配置した移動体に対して、複数の電磁コイルをステータとして前記移動体に非接触に配置し、この電磁コイルに励磁電流を供給して前記移動体と電磁コイルとの間の吸引-反発により当該移動体を移動運動させるようにした、前記移動体と前記電磁コイルとを備えたモータの駆動システムであり、前記永久磁石の移動による周期的な磁界変化を検出するセンサと、このセンサの出力のピーク値を調整して出力するゲインコントローラと、前記モータの回転方向指示部と、回転方向指示部の出力に基づいて、かつ、前記ゲインコントローラの出力をPWM制御して、前記電磁コイルを励磁するパターンを形成し、当該パターンを、前記電磁コイルを駆動する波形として、当該電磁コイルに直接供給するPWM制御部と、を設けた、モータの駆動制御システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「ステータとして移動体に非接触に配置」される「電磁コイル」について「(電磁コイル)の列」及び「(電磁コイル)列」との発明特定事項を省き、以下同様に、「移動体」について「移動体は異なった二つの永久磁石の異極配列を対とする構成を複数構成させ」るとの発明特定事項を、「(磁界変化を検出する)センサ」について「(磁界変化を検出)してアナログ値を出力する」及び「(移動体の)対の構成となる異極の配列した間の位置を2πとした際に、センサは、前記2π間の任意位置をリニアに検出できる」との発明特定事項を、「センサの出力」について「(センサの)アナログ出力値」との発明特定事項を、「ゲインコントローラの出力をPWM制御」することについて「(ゲインコントローラの出力を)増幅した後これをPWM制御」するとの発明特定事項を、「駆動する」について「励磁駆動する」との発明特定事項を、そして更に、「モータの駆動システム」について「電磁コイル列の複数のコイルを交互に異極に励磁させて、・・・(移動体を移動運動)させる駆動回路を備えるとともに、前記電磁コイル列を複数の相から構成し、複数相からなる各相の電磁コイルに位相差を設けてなる」との発明特定事項を省くとともに、上記「駆動回路」が、「ゲインコントローラ」、「移動方向指示部」、及び「移動方向指示部の出力に基づいて、センサの出力極性を反転させて移動体の移動方向を反転させる反転回路」「を備え」るとの発明特定事項、及び「(電磁コイル列の)複数相のそれぞれ位相差を持つように(センサを)備える」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-29 
結審通知日 2007-03-30 
審決日 2007-04-10 
出願番号 特願2004-71417(P2004-71417)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02P)
P 1 8・ 575- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天坂 康種  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 高木 進
高橋 学
発明の名称 モータ及びその駆動制御システム  
代理人 大賀 眞司  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  
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