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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26D
管理番号 1158220
審判番号 不服2005-4200  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-10 
確定日 2007-05-25 
事件の表示 特願2003-164748「切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 1029〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年6月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、
「回転軸線を中心にして回転する回転体に一体化され略上記回転軸線に沿って延びている回転刃と、静止部材に取り付けられ略上記回転軸線に沿って延びている固定刃とにより被切断物を切断する切断装置であって、
上記回転刃の回転刃先線が直線状態とされ、
上記固定刃の固定刃先線が直線状態とされ、
上記回転刃先線の一端が、回転体の一端側において上記回転軸線を中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記回転刃先線の他端が、回転体の他端側において上記回転軸線を中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記一端側の仮想円の直径と上記他端側の仮想円の直径は実質的に同径であり、
上記回転刃は、その回転刃先線の一端側と他端側が上記回転軸線を中心として上記仮想円の円周方向にずれるように配置され、
上記固定刃は、その固定刃先線が上記回転刃先線のずれ方向とは逆方向にずれるように配置され、
上記回転刃先線のずれ角と上記固定刃先線のずれ角とが実質的に等しくなるように設定され、
上記回転刃先線と固定刃先線との交差箇所が、上記回転体の軸方向の略中央部の交差箇所で交差したときに上記一端側および他端側の仮想円よりも小さな最も小径の仮想円上を通過するとともに、上記回転刃先線と固定刃先線が一定のクリアランスを維持しながら上記回転軸線と平行な方向に移動するようになっており、
複数の固定刃が上記回転軸線を挟んで対称となる位置に配置され、
上記複数の固定刃と回転刃が交差する複数の交差箇所に、それぞれ棒状の被切断物を押し込むように供給する供給手段が設けられるとともに、上記各供給手段はそれぞれ被切断物を複数供給するようになっており、上記複数の供給手段から供給されて複数の交差箇所で切断された被切断物が共通の容器に蓄えられるようになっていることを特徴とする切断装置。」
にあるものと認める。
なお、平成19年2月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4において、請求項1には「非切断物」及び「上記回転軸」と記載されているが、
「非切断物」については、「非」の意味から回転刃と固定刃によって切断されない物と解すべきところではあるが、切断装置によって切断される物が切断されない物と解することは矛盾を生じるものであり、明細書の発明の詳細な説明の欄の、例えば、段落【0033】,【0043】にも、回転刃と固定刃により切断される合成樹脂素材9が「被切断物」と記載されており、また、「上記回転軸」については、「上記」と引用する語が「回転軸線」のみであり、明細書の発明の詳細な説明の欄の段落【0032】?【0033】においても、回転刃が、固定刃と同様に「回転軸線」に沿って延びていることが記載されていることから、「非切断物」は「被切断物」の、また、「上記回転軸」は「上記回転軸線」の、それぞれ誤記と認め、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を上記のように認定した。

2.刊行物記載の発明(事項)
これに対し、当審における平成18年12月12日付けで通知した拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である実願昭53-121494号(実開昭55-41210号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)、特開昭52-44449号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されていると認められる。

(1)刊行物1
(1-ア)第1頁第14?16行
「本考案は、固定下刃とロータに装着され回転する上刃との接触で断裁を行なうロータリーカツタの改良に関するものである。
(1-イ)第4頁第16行?第6頁第10行
「第2図にもとずいて、本案の断裁原理を説明する。
第2図において、Xが水平母線、2bがロータ軸線で、このロータ軸線2bは水平母線Xに対して角A傾斜している。また3aはストレート下刃の刃先線でこの刃先線3aは水平母線Xと平行である。
そこでロータ軸線2bにRの距離はなれ、ロータ軸線2bと平行な線4b上にストレート上刃を配設するとする。するとこのストレート刃は二点鎖線で示した円筒Cの周面上を回転することとなる。しかし、この場合ストレート下刃3の中点Mで円筒Cと接すると、ストレート下刃の端部P点ではロータ軸線2bからの距離OP=Lが円筒Cの半径Rとは異なり、R≠Lとなるため上下両刃が全ての場所で接することができない。
しかし、このストレート上刃を角A’ =角Aの条件で角A’ 分傾斜角を持たせるとすると、線4bは刃先線3aと一致し全ての位置で上下両刃が接することとなる。但し、この場合切断角はなくなる。そこでこのネジレ角A’を反対側に角Aだけ持たせることとする。すると角A’だけ傾斜角をもつた線(ストレート下刃3の刃先線3aに相当)と角Aだけ傾斜角をもつた線(ストレート上刃4の刃先線4aに相当)とは同一軌跡を通り、すべての位置で上下両ストレート刃3,4が接することとなり断裁が行なえるものである。」
(1-ウ)第6頁第11?14行
「本考案ロータリーカッタは上記のごときであつて、上下両刃がともにストレート刃であるため、製造、保守がきわめて容易であり、特に刃の着脱及び研磨に関しては調整が全く不要である。」
上記記載事項(1-イ)において、「ロータ軸線2bからの距離OP=L」及び「円筒Cの半径R」は、直径に換算すると、それぞれ「直径2L」及び「直径2R」となり、また、ストレート上刃4の刃先線4aの両端は、ロータの一端側において上記ロータ軸線2bを中心に持つ直径2Lの仮想円の円周上に配置されることは明らかである。
そうすると、これらの記載事項から図面を参照して、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ロータ軸線2bを中心にして回転するロータに一体化され略上記ロータ軸線2bに沿って延びているストレート上刃4と、静止部材に取り付けられ略上記ロータ軸線2bに沿って延びているストレート下刃3とにより被切断物を切断するロータリカッタであって、
上記ストレート上刃4の刃先線4aが直線状態とされ、
上記ストレート下刃3の刃先線3aが直線状態とされ、
上記刃先線4aの一端が、ロータの一端側において上記ロータ軸線2bを中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記刃先線4aの他端が、ロータの他端側において上記ロータ軸線2bを中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記一端側の仮想円の直径2Lと上記他端側の仮想円の直径2Lは実質的に同径であり、
上記ストレート上刃4は、その刃先線4aの一端側と他端側が上記ロータ軸線2bを中心として上記仮想円の円周方向にずれるように配置され、
上記ストレート下刃3は、その刃先線3aが上記刃先線4aのずれ方向とは逆方向にずれるように配置され、
上記刃先線4aのずれ角Aと上記刃先線3aのずれ角A’ とが実質的に等しくなるように設定され、
上記刃先線4aと刃先線3aとの交差箇所が、上記ロータの軸方向の中点Mの交差箇所で交差したときに上記一端側および他端側の仮想円よりも小さな直径2Rの仮想円上を通過するとともに、上記刃先線4aと刃先線3aが上記ロータ軸線2bと平行な方向に移動するようになっているロータリーカッタ。」

(2)刊行物2
刊行物2には、次の事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
(2-ア)第2頁右上欄第2?4行
「本発明は裁断工具を取り付けて水平に配置したロータを有する裁断機(カツテイング・ミル)に関する。」
(2-イ)第4頁右上欄第4行?同頁左下欄第3行
「ロータ10にはブレード11が設けてあり、これらのブレードの裁断刃はロータの回転軸線と同心上の円筒面内に位置している。・・・
固定ブレード14はロータのブレード11と共働するように設けられる。固定ブレード14は上側ハウジング部2内に配置され、」
(2-ウ)第1図
複数の固定ブレード14について、ロータの回転軸線を挟んで対称となる位置に配置されているものが含まれていることが看取される。
上記記載事項及び第1図の記載からみて、刊行物2には、次の事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
「回転軸線を中心にして回転するロータ10に一体化され略上記回転軸に沿って延びているブレード11と、上側ハウジング部2に取り付けられ略上記回転軸線に沿って延びている固定ブレード14とにより被切断物を切断する裁断機であって、
ブレード11及び固定ブレード14が複数配置され、上記固定ブレード14が回転軸線を挟んで対称となる位置に配置されていること。」

3.対比・判断
本願発明と、引用発明とを対比すると、
引用発明における「ロータ軸線2b」は本願発明における「回転軸線」に、以下同様に、「ロータ」は「回転体」に、「ストレート上刃4」は「回転刃」に、「ストレート下刃3」は「固定刃」に、「刃先線4a」は「回転刃先線」に、「刃先線3a」は「固定刃先線」に、「直径2L」は「直径」に、「刃先線4aの角A」は「回転刃先線のずれ角」に、「刃先線3aの角A’ 」は「固定刃先線のずれ角」に、「ロータ軸2の軸方向の中点M」は「回転体の軸方向の略中央部」に、「直径2R」は「最も小径」に、それぞれ、相当することは明らかである。
また、引用発明における「ロータリカッタ」は、切断装置と表現できるものである。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「回転軸線を中心にして回転する回転体に一体化され略上記回転軸に沿って延びている回転刃と、静止部材に取り付けられ略上記回転軸線に沿って延びている固定刃とにより被切断物を切断する切断装置であって、
上記回転刃の回転刃先線が直線状態とされ、
上記固定刃の固定刃先線が直線状態とされ、
上記回転刃先線の一端が、回転体の一端側において上記回転軸線を中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記回転刃先線の他端が、回転体の他端側において上記回転軸線を中心に持つ仮想円の円周上に配置され、
上記一端側の仮想円の直径と上記他端側の仮想円の直径は実質的に同径であり、
上記回転刃は、その回転刃先線の一端側と他端側が上記回転軸線を中心として上記仮想円の円周方向にずれるように配置され、
上記固定刃は、その固定刃先線が上記回転刃先線のずれ方向とは逆方向にずれるように配置され、
上記回転刃先線のずれ角と上記固定刃先線のずれ角とが実質的に等しくなるように設定され、
上記回転刃先線と固定刃先線との交差箇所が、上記回転体の軸方向の略中央部の交差箇所で交差したときに上記一端側および他端側の仮想円よりも小さな最も小径の仮想円上を通過するとともに、上記回転刃先線と固定刃先線が上記回転軸線と平行な方向に移動するようになっている切断装置。」

[相違点1]
本願発明では、回転刃先線と固定刃先線との交差箇所が、一定のクリアランスを維持しながら上記回転軸線と平行な方向に移動するようになっているのに対して、
引用発明では、そのことについて不明な点。
[相違点2]
本願発明では、複数の固定刃が回転軸線を挟んで対称となる位置に配置され、上記複数の固定刃と回転刃が交差する複数の交差箇所に、それぞれ被切断物を供給する供給手段が設けられているとともに、上記複数の供給手段から供給されて複数の交差箇所で切断された被切断物が共通の容器に蓄えられるようになっているのに対して、
引用発明では、そのようになされていない点。
[相違点3]
本願発明では、固定刃と回転刃が交差する箇所に設けられている供給手段が、棒状の被切断物を複数押し込むように供給するようになっているのに対して、
引用発明では、そのようになされていない点。

そこで、上記相違点1ないし3について検討すると、
[相違点1]については、
略回転軸線に沿って延びている回転刃と、略上記回転軸線に沿って延びている固定刃とにより被切断物を切断する切断装置において、良好な切断がなされるために、回転刃先線と固定刃先線との交差箇所が一定のクリアランスを維持しながら回転軸線と平行な方向に移動するように調整することは、従来慣用されている事項にすぎないことである。(必要であれば、実願昭62-85090号(実開昭63-194708号)のマイクロフィルムの明細書第1頁最下行?第2頁第6行、実願昭58-9394号(実開昭59-190511号)のマイクロフィルムの明細書第5頁第13行?第6頁第1行及び第4図参照。)
したがって、引用発明においても、良好な切断がなされるために、回転刃先線と固定刃先線との交差箇所が一定のクリアランスを維持しながら回転軸線と平行な方向に移動するように調整することは当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎないことである。

[相違点2]については、
刊行物2にも記載されているように、回転軸線を中心にして回転する回転体に一体化され略上記回転軸に沿って延びている回転刃と、略上記回転軸線に沿って延びている固定刃とにより被切断物を切断する切断装置において、回転刃及び固定刃が複数配置され、上記複数の固定刃が回転軸線を挟んで対称となる位置に配置されていることは、本件出願前に周知の事項であり(上記刊行物2記載の事項参照。)、また、上記複数の固定刃と回転刃が交差する複数の交差箇所に、それぞれ被切断物を押し込むように供給する供給手段が設けられているとともに、上記複数の交差箇所で切断された被切断物が共通の容器に蓄えられるようになっていることも本件出願前に周知の事項である。(必要であれば、特開昭56-76320号公報の特許請求の範囲、第3頁右下欄第11行?第4頁左上欄第8行及び第2図、特開昭53-22683号公報の特許請求の範囲(1)及び第1図参照。)
したがって、引用発明に各周知の事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点3]については、
回転軸線を中心にして回転する回転体に一体化され略上記回転軸に沿って延びている回転刃と、略上記回転軸線に沿って延びている固定刃とにより被切断物を切断する切断装置において、固定刃と回転刃との交差する箇所に設けられている供給手段が棒状の被切断物を複数押し込むように供給するようになされていることは、本件出願前に周知の事項である。(必要であれば、特開平11-291239号公報の段落【0009】?【0012】及び図1,3、上記実願昭58-9394号(実開昭59-190511号)のマイクロフィルムの明細書第7頁第6?18行及び第3図参照。)
したがって、引用発明に各周知の事項を適用することにより、相違点3に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の奏する効果も、引用発明、上記刊行物2記載の事項、慣用事項及び各周知の事項から十分予測できる程度のものであって格別なものでもない。
したがって、本願発明は、引用発明、上記刊行物2記載の事項、慣用事項及び各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記刊行物2記載の事項、慣用事項及び各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-12 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-04 
出願番号 特願2003-164748(P2003-164748)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 中島 昭浩
鈴木 孝幸
発明の名称 切断装置  
代理人 森本 直之  

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