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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1158221
審判番号 不服2005-7231  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2007-05-25 
事件の表示 特願2000- 13678「ダイシングテープからのチップ剥離方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 3日出願公開、特開2001-210608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成12年1月24日の特許出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月15日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本件補正明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】薄板からなる水晶ウェハを樹脂板と粘着部とからなるダイシングテープに固着して、前記水晶ウェハをダイシングソーによって分割してチップとしての複数の水晶片を得た後、前記ダイシングテープを加熱して前記粘着部に気泡を発生させて波状とし、前記ダイシングテープから前記水晶片を剥離するダイシングテープからのチップ剥離方法において、
前記水晶ウェハを分割して複数の水晶片が固着されたダイシングテープは、熱源及び温度センサの埋設されて中央部に多数の貫通孔を有する熱伝導性の金属からなる吸着板に前記多数の貫通孔に直接に対面して真空吸着され、前記多数の貫通孔の下部には真空ポンプからの吸入パイプが取り付けられて前記ダイシングテープは前記複数の貫通孔が設けられた領域内に全面的に吸着され、
前記熱源は前記中央部の外周に設けられて前記温度センサに連動した温度制御装置によって一定の温度に制御されるとともに前記吸着板を加熱して、前記ダイシングテープから前記複数の水晶片を剥離したことを特徴とするダイシングテープからのチップ剥離方法。」

2.刊行物に記載の発明及び事項
これに対して、当審における平成18年11月6日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-120968号公報(以下、「刊行物1」という。)には以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1
ア.段落【0012】?【0013】
「‥‥‥まず、本発明のダイボンディングに使用されるダイボンディング装置は、図1に示すように、内部に加熱のための図示しないヒータが内蔵された金属製の円筒から成るヒータブロック1と、‥‥‥、から成っている。‥‥‥‥‥
ヒータブロック1上には、表面に複数の半導体チップ7aを保持するエキスパンドテープ7がその周縁にて係止されたエキスパンドリング9を介して伸張状態で支持されている。エキスパンドテープ8は、図2に断面を示すように、伸張性を有する基材フィルムとしてのテープ本体8aと、テープ本体8aに裏面にて貼合された熱発泡性の発泡シート8bと、発泡シート8bの表面に形成された粘着材8cと、から成っている。この発泡シートは、一定の温度、例えば約100℃、に加熱することにより発泡を生じるように形成されている。」
イ.段落【0015】?【0018】
「このようなウエハを準備したら、図3(a)に示すように、ウエハ7を上述したような構成のエキスパンドテープ8に貼着した状態でダイシングブレード10を用いたダイシングによるフルカットを施すことにより個別素子としての半導体チップ7aに分割する。この場合のダイシングはここでは図示を省略する粘着材と共に発泡シートも同時にカットされるような深さで行う。
ウエハを分割したら、エキスパンドテープ8をその外周にてエキスパンドリングに装着し、中央部分に保持した半導体チップがピックアップステージとしてのヒータブロック1上に位置するようにテープ本体8aが伸張されるようにエキスパンドリングを下方に押し下げた状態でヒータブロックに固定する。このようなエキスパンドテープ8の伸張により、図3(b)に示すように、半導体チップは発泡シート8bと共に、相互に離間された状態でヒートブロック1上に配置されることになる。半導体チップ7a相互間の間隔はエキスパンドリングの押し下げによるエキスパンドテープ8の伸張量により決定されるのだが、本発明の方法では、従来の方法で用いていたような円筒部材やその内孔及びこれによるエキスパンドシートの吸引や突き上げ針による突上げ等を必要としないので、半導体チップ間の間隔はコレットによる半導体チップ7aのエキスパンドテープ8からのピックアップが可能な間隔を確保し得る程度にエキスパンドテープの伸張がなされれば足りる。
エキスパンドリングによりエキスパンドテープ8を伸張したら、エキスパンドリングを固定した状態で、ヒータブロックに内蔵したヒータに電流を供給することにより、エキスパンドテープ8の発泡シート8bに発泡を生じる温度より高い温度、例えば約100℃、になるまでヒータブロックを加熱する。このようなヒータブロック、従って発泡シート8b、の加熱により発泡シート8bは、図3(c)に示すように、発泡11を生じ、各半導体チップ7aはテープ本体7aに対して上方に押し上げられると共にエキスパンドテープ8から部分的に剥離された状態になる。
このように、半導体チップが発泡シートから部分的に剥離された状態で、図3(d)に示すように、吸着コレット2を任意の半導体チップ7aに向けて下降させバキュームによる吸着によりエキスパンドテープ8から剥離すると共にこれを上方へピックアップし、被ボンディング体の所要の箇所に向けて移送し及びボンディングすることにより任意の半導体チップについてのダイボンディング工程が完了する。」
ウ.段落【0020】
「また、上述の説明では、ウエハに形成し及びこれを分割して得る半導体チップとして、LED素子を例に説明したが、本発明はこれに限られることなく、通常のダイオードやトランジスタまたはIC等の素子にも同様に適用可能なことはいうまでもない。」
エ.図3から、発泡シート8bに発泡11を生じることによりエキスパンドテープ8の粘着材の表面が波状となっていることが看取される。

上記摘記事項ア.?ウ.、上記認定事項エ.、及び図1?3の記載からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウェハ7を基材フィルムとしてのテープ本体8aと、テープ本体8aに裏面にて貼合された熱発泡性の発泡シート8bと、発泡シート8bの表面に形成された粘着材8cとからなるエキスパンドテープ8に固着して、前記半導体ウェハ7をダイシングブレード10によって分割して半導体チップ7aを得た後、前記エキスパンドテープ8を加熱して前記発泡シート8bに発泡11を生じさせて粘着材の表面を波状とし、前記エキスパンドテープ8から前記半導体チップ7aを剥離するエキスパンドテープ8からのチップ剥離方法において、
前記半導体ウェハ7を分割して複数の半導体チップ7aが固着されたエキスパンドテープ8は、ヒータが内蔵された金属製のヒータブロック1上に伸張状態で支持され、
前記ヒータは前記ヒータブロック1を加熱して、前記エキスパンドテープ8から前記複数の半導体チップ7aを剥離したエキスパンドテープ8からのチップ剥離方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エキスパンドテープ8」は、本願発明における「ダイシングテープ」に相当しており、以下同様に、「ダイシングブレード10」は、「ダイシングソー」に、「発泡11を生じさせて」は、「気泡を発生させて」に、「ヒータ」は、「熱源」に、「金属製の」は、「金属からなる」に、それぞれ相当している。
また、引用発明における「半導体ウェハ7」は、「ウエハ」である限りにおいて、本願発明における「薄板からなる水晶ウェハ」と共通するものであり、以下同様に、「半導体チップ7a」は、「チップ」である限りにおいて、「チップとしての水晶片」と共通し、「粘着材の表面を波状」とすることは、粘着部を波状とする限りにおいて、「粘着部に気泡を発生させて波状」とすることと共通し、「ヒータブロック1」は、ダイシングテープを支持する支持部材である限りにおいて、「吸着板」と共通する。
さらに、本願発明の熱源及び温度センサが「埋設」されていることは、本件出願の図面の図1を参酌すれば、熱源及び温度センサの周囲が吸着板に覆われた態様をなしていることが看取できるから、「内蔵」されているとも表現することができる。そうすると、本願発明の「埋設」は、「内蔵」である限りにおいて、引用発明の「内蔵」と共通する。

してみれば、本願発明と引用発明とは、
「ウェハをダイシングテープに固着して、前記ウェハをダイシングソーによって分割してチップを得た後、前記ダイシングテープを加熱して気泡を発生させて粘着部を波状とし、前記ダイシングテープから前記チップを剥離するダイシングテープからのチップ剥離方法において、
前記ウェハを分割して複数のチップが固着されたダイシングテープは、熱源の内蔵されて金属からなる支持部材に支持され、
前記熱源は支持部材を加熱して、前記ダイシングテープから前記複数のチップを剥離したダイシングテープからのチップ剥離方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]ウェハとチップが、本願発明では、各々薄板からなる水晶ウェハ、水晶片であるのに対して、引用発明1では、各々半導体ウェハ、半導体チップである点。
[相違点2]ダイシングテープが、本願発明では、樹脂板と粘着部とからなり、粘着部に気泡を発生させるのに対して、引用発明では、基材フィルムとしてのテープ本体8aと、テープ本体8aに裏面にて貼合された熱発泡性の発泡シート8bと、発泡シート8bの表面に形成された粘着材8cとからなり、発泡シート8bに気泡を発生させる点。
[相違点3]本願発明では、支持部材が吸着板であって、ダイシングテープが中央部に多数の貫通孔を有する吸着板に前記多数の貫通孔に直接に対面して真空吸着され、前記多数の貫通孔の下部には真空ポンプからの吸入パイプが取り付けられて前記ダイシングテープは前記複数の貫通孔が設けられた領域内に全面的に吸着されているのに対して、引用発明では、ダイシングテープが支持部材上に伸張状態で支持されている点。
[相違点4]本願発明では、吸着板が熱伝導性の金属からなるのに対して、引用発明2では、金属からなるものの熱伝導性とは特定されていない点。
[相違点5]本願発明では、熱源が吸着板の中央部の外周に設けられ、埋設されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
[相違点6]本願発明では、吸着板に温度センサが埋設されており、熱源が前記温度センサに連動した温度制御装置によって一定の温度に制御されるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1について]
上記相違点1について検討するに、水晶片からなるチップを得るために水晶ウェハをダイシングすることは周知の事項であり、被加工物を半導体ウェハに替えて薄板からなる水晶ウェハとすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点2について]
上記相違点2について検討するに、樹脂板と粘着部とからなり、粘着部に気泡を発生させるダイシングテープは文献を挙げるまでもなく周知であり、該周知のダイシングテープを、基材フィルムとしてのテープ本体8aと、テープ本体8aに裏面にて貼合された熱発泡性の発泡シート8bと、発泡シート8bの表面に形成された粘着材8cとからなるダイシングテープに替えて用いることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
[相違点3について]
上記相違点3について検討するに、ダイシングテープの加熱において、チップが載置された領域に亘って付着力を減少させるのであれば、少なくともチップが載置された領域を均一に加熱することが望ましいことは明らかである。そして、板状物の加熱において、板状物と載置面との間の空隙の有無や大小により板状物の温度にバラツキが生じること、これを防止するために真空吸着を行うことは周知の事項である(例えば、特開平2-103550号公報の第1ページ右下欄第15行?第2ページ左上欄第16行、同ページ右下欄第9?15行、特開平10-284360号公報の段落【0002】、【0006】?【0008】参照)。してみれば、引用発明に該周知の事項を適用して吸引孔を有する吸着板を得ることに格別の困難性は認められない。
そして、吸引孔を吸着板の中央に設けた多数とすることも、ダイシングテープのチップが載置された領域を必要な程度加熱できる範囲において、当業者が適宜なし得る事項にすぎないところ、吸着を行う領域と被吸着物との大きさをほぼ同程度とすることも周知の事項(必要であれば、上記特開平10-284360号公報の図1、上記特開昭63-62347号公報の第1頁左下欄第16行?右下欄第11行に記載の半導体ウエハの面積に対応するよう設定された吸着領域と第4図、原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(特開平11-97161号公報)の図1に記載の吸着プレート3の表面3aとワーク10の大きさの関係を参照)であることを勘案すれば、被吸着物を均一に加熱する際に、吸引作用が生じる領域内にワークを載置して全面的に吸着することは、当業者が適宜なし得る事項である。
また、吸着孔を貫通孔とすること、吸着部と真空ポンプを吸引パイプで接続することも周知の事項(必要であれば、特開昭63-62347号公報の第1頁左下欄第16行?右下欄第11行、第4図に記載の吸引孔42、特開平8-203815号公報の段落【0003】、図3に記載の貫通孔3とホース4、特開平7-58191号公報の段落【0010】、図2に記載の貫通孔13に連通するバキュームライン14と真空ポンプ15参照)にすぎず、貫通孔の下部に吸入パイプを取り付けることも、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そして、該周知の事項を支持部材に適用すれば、ダイシングテープが、多数の貫通孔に直接に対面して真空吸着されるようになることは明らかである。
してみれば、該周知の事項を引用発明に適用して、引用発明における上記相違点3に係る構成を本願発明のそれとすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点4について]
上記相違点4について検討するに、熱源を設けた加熱部材を、熱伝導性の金属から構成することは、周知慣用な事項である(必要であれば、当審における平成18年11月6日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平2-31441号公報の第6頁右下欄第17?19行、上記特開平10-284360号公報の段落【0032】参照)。
してみれば、該周知慣用の事項を引用発明に適用して、引用発明における上記相違点4に係る構成を本願発明のそれとすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点5について]
上記相違点5について検討するに、熱源による加熱はダイシングテープを加熱するものであるから、ダイシングテープを所望の温度とすることができるのであれば、熱源を吸着板の如何なる位置に埋設するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。そして、吸着板に熱源を埋設する場合に、貫通孔が存在する部分に熱源を設けられないことは、吸着板の構造上明らかであるから、熱源を設ける位置を吸着板の中央部の外周とすることは、貫通孔を避けた位置の一つを選択したものにすぎない。
また、熱源を内蔵する1つの形態として埋設することも当業者が適宜なし得ることである。
してみれば、該設計的事項を引用発明に適用して、引用発明における上記相違点5に係る構成を本願発明のそれとすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点6について]
上記相違点6について検討するに、加熱の状態を一定に保つために、熱源の温度を一定に制御することは、通常行われる技術的事項にすぎない。そして、温度を一定に制御する手段としての温度センサ及び温度センサに連動した温度制御装置は周知の事項であり、また、熱源を埋設した部材に、温度センサを同様に埋設することも、周知の事項である(例えば、特開平10-135315号の段落【0012】、図1、特開平10-41375号の段落【0009】、図1、特開平4-293225号の段落【0021】、図4を参照)。
してみれば、該周知の事項を引用発明に適用して、引用発明における上記相違点6に係る構成を本願発明のそれとすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、及び周知の事項から予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-09 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-05 
出願番号 特願2000-13678(P2000-13678)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 進吾紀本 孝高山 芳之  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 中島 昭浩
豊原 邦雄
発明の名称 ダイシングテープからのチップ剥離方法  

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