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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1158222 |
審判番号 | 不服2005-7919 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-28 |
確定日 | 2007-05-25 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第204201号「画像情報の再符号化方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月 3日出願公開、特開平10- 32830〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1 手続 本願は、平成8年7月16日の出願であって、平成17年3月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2 査定 査定の理由は、概略、下記のとおりである。 記(査定の理由) 本願の請求項1から6までに係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ア.特開平7-111592号公報 イ.特開平6-343156号公報 ウ.特開平8-111870号公報 第2 本願発明 本願の請求項1から6までに係る各発明は、本願明細書及び図面(願書に最初に添付した明細書及び図面、及び平成16年10月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から6までに記載したとおりの「画像情報の再符号化方法及び装置」であると認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである 「符号化履歴を有する画像情報を再符号化する方法であって、前段符号化における量子化ステップサイズQ1に対して再符号化時の量子化ステップサイズQ2を、Q2=n×Q1(ただし、nは2以上の自然数)となるように決定し、該決定した量子化ステップサイズQ2を用いて入力された画像情報の再符号化を行うことを特徴とする画像情報の再符号化方法。」 第3 当審の判断 1 刊行物の記載 1-1 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-343156号公報(平成6年12月13日出願公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。 (1)【0011】 「【作用】本発明の画像再圧縮器あるいは画像記録装置を用いると、ビットストリームの一部、すなわち量子化された係数や量子化幅を復号化し再量子化することによって、標準録画時間より長い録画が可能になる。しかも、完全な符号化器や符号化処理を必要としないので、遅延が殆んど生じることなく、記録装置のサイズやコストを小さく抑えることができる。」 (2)【0013】 「まず、ビットストリームが入力端子1から入力される。可変長復号化器4ではビットストリームを認識しながら、量子化幅と量子化された係数を選びだして復号化し、伝送線9を経由して再量子化器5に送る。量子化幅と量子化された係数以外のデータは、可変長または固定長の符号のままで、伝送線8を経由してマルチプレクサー7に送られる。量子化された係数は、直交変換し量子化された係数でも、周波数帯域に分割された各バンドの係数でもよい。再量子化器5の入力端子3には再量子化パラメータMを入力する。量子化幅をQ、量子化係数をCOEFFとすると、新しい量子化幅Q’と再量子化される係数COEFF’は次のように求める: Q’= Q×M COEFF’= COEFF/M 得られたQ’とCOEFF’とを可変長符号化器6に送り、可変長または固定長符号に変換して、マルチプレクサー7でその他のデータと一緒に多重化する。このようにして元の入力ビットストリームを完全に復号化しなくても入力データを再圧縮できる。」 1-2 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-111592号公報(平成7年4月25日出願公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。 (3)【0027】 「 (中略) 推定して得られた量子化特性1で変換データT(j)を量子化すれば、前回の符号化処理の場合と同じ量子化変換データD(j)が得られるので、符号化・復号を繰り返してもDCT,逆DCT演算における精度、丸め誤差が大きくない限り、画像データに劣化が蓄積しない。 (中略) 」 1-3 引用例3 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-111870号公報(平成8年4月30日出願公開、以下「引用例3」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。 (4)【0039】 「このように、フレーム内のマクロブロック毎に前段の画像情報の符号化における量子化ステップサイズに対して親和性が高く変換歪の小さい量子化ステップサイズを用いて画像情報の再符号化を行うことが好ましい。これにより、量子化歪が小さくなり、画質向上を図ることができると共に符号化効率が改善される。」 (5)【0040】 「なお、前段符号化における量子化(第1の量子化)のステップサイズをQ1、再符号化における量子化(第2の量子化)のステップサイズをQ2とすると、例えば、最も一般的かつ基本的なデッドゾーンなしの線形量子化方式においては、Q2がQ1に等しいか又はQ2がQ1の奇数分の1の大きさとなった場合に再符号化における量子化歪が最も小さくなる。以下この点について解析する。」 2 対比 本願発明と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 ア 本願発明の「符号化履歴を有する画像情報を再符号化する方法であって」について 引用例1の上記記載(1)によれば、ビットストリームは量子化された係数を含んでいるから「符号化履歴を有する画像情報」であり、また、引用例1の画像再圧縮器は、可変長復号化器4と量子化器5と可変長符号化器6によって、ビットストリームを再圧縮するものであるから、「符号化履歴を有する画像情報を再符号化する方法」の構成が認められる。 イ 本願発明の「前段符号化における量子化ステップサイズQ1に対して再符号化時の量子化ステップサイズQ2を、Q2=n×Q1(ただし、nは2以上の自然数)となるように決定し」について 引用例1の上記記載(2)によれば、引用例1の「量子化幅Q」「新しい量子化幅Q’」「再量子化パラメータM」は、本願発明の「前段符号化における量子化ステップサイズQ1」「再符号化時の量子化ステップサイズQ2」「n」に各々相当している。 また、引用例1の上記記載(1)によれば、引用例1の画像再圧縮器は、標準録画モードで録画された画像を長時間録画モードで録画された画像に再圧縮するためのものであるから、符号量を減少させるためには、新しい量子化幅Q’は、前段の量子化幅Qより、大きくする必要があるので、「Q’= Q×M」を規定する「再量子化パラメータM」は1より大きい値といえる。 もっとも、引用例1には、「再量子化パラメータM」は、自然数であるとも、小数を含むとも特定されていない。相違が認められる。 ウ 本願発明の「該決定した量子化ステップサイズQ2を用いて入力された画像情報の再符号化を行う」について 引用例1の上記記載(2)によれば、「新しい量子化幅Q’」は「Q’= Q×M」で求めている。 また、再量子化される係数COEFF’と量子化係数 COEFFは、「COEFF’= COEFF/M」のような関係があり、この式は、以下のとおり変形できる。 COEFF’= COEFF/M =(COEFF×Q)/(M×Q) =(COEFF×Q)/Q’ この式は、新しい量子化幅Q’を用いて、量子化係数COEFFを再度量子化していることになるから、「該決定した量子化ステップサイズQ2を用いて入力された画像情報の再符号化を行う」の構成が認められる。 上記アないしウの対比結果によれば、両者は、 「符号化履歴を有する画像情報を再符号化する方法であって、前段符号化における量子化ステップサイズQ1に対して再符号化時の量子化ステップサイズQ2を、Q2=n×Q1となるように決定し、該決定した量子化ステップサイズQ2を用いて入力された画像情報の再符号化を行うことを特徴とする画像情報の再符号化方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 本願発明では、nが2以上の自然数であるのに対し、引用発明では、nが2以上の自然数か否か明らかでない点。 3 判断 上記相違点について検討する。 a 引用例2、3の記載技術 引用例2の上記記載(3)によれば、 「推定して得られた量子化特性1で変換データT(j)を量子化すれば、前回の符号化処理の場合と同じ量子化変換データD(j)が得られるので、符号化・復号を繰り返してもDCT,逆DCT演算における精度、丸め誤差が大きくない限り、画像データに劣化が蓄積しない。」 と記載されているから、「前段符号化における量子化ステップサイズ」と「再符号化時の量子化ステップサイズ」の量子化特性における量子化代表値が各々同じであれば、再符号化時おける新たな量子化誤差が発生しないので、符号化・復号を繰り返しても画像データに劣化が蓄積しないことがみてとれる。 また、引用例3の上記記載(5)によれば、 「Q2がQ1に等しいか又はQ2がQ1の奇数分の1の大きさとなった場合に再符号化における量子化歪が最も小さくなる。」 と記載されていることから、以下の事項が導ける。 (1) Q2がQ1に等しい場合においては、「前段符号化における量子化ステップサイズQ1」と「再符号化時の量子化ステップサイズQ2」の量子化特性における量子化代表値が各々同じになるので、再符号化時おける量子化歪は最も小さくなる。 (2) Q2がQ1の奇数分の1の大きさとなった場合においては、「前段符号化における量子化ステップサイズQ1」と「再符号化時の量子化ステップサイズQ2」の量子化特性における量子化代表値が同じ部分(奇数分の1以外の部分)で、再符号化時おける量子化歪は最も小さくなる。 b 容易想到性 引用例1には、「再量子化パラメータM」が、「2以上の自然数である」ことを積極的に排除する記載はない。また、量子化ステップは、通常、自然数で表されるから、「量子化幅Q」「新しい量子化幅Q’」のいずれも自然数であるためには、「再量子化パラメータM」も自然数であることが必要であり、かつ、「再量子化パラメータM」は1より大きい値であることから、「再量子化パラメータM」は、「2以上の自然数である」蓋然性は高いといえる。 上記の事項は、引用例1には、明記されていないので、以下は、「再量子化パラメータM」が、「2以上の自然数」でないとして検討する。 量子化誤差を減らすように、量子化特性を設定することは、引用例2、3のとおり、当該技術分野において、当業者であれば当然追求すべき周知の技術的課題であるといえる。 してみると、引用例1において、量子化誤差を減らすように、量子化特性を設定する際に、上記引用例2、3の記載技術を考慮すれば、「再量子化パラメータM」を、nが2以上の自然数に設定することは、当業者が容易に想到できたものといえる。 また、相違点に係る構成による効果も予測される範囲を超えるものではない。 第4 むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-14 |
結審通知日 | 2007-03-20 |
審決日 | 2007-04-04 |
出願番号 | 特願平8-204201 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 祐輝 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 松永 隆志 |
発明の名称 | 画像情報の再符号化方法及び装置 |
代理人 | 山本 恵一 |