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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09J |
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管理番号 | 1158256 |
審判番号 | 不服2003-12223 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-30 |
確定日 | 2007-05-23 |
事件の表示 | 平成6年特許願第502387号「位置決め及び位置換え可能な接着物品」拒絶査定不服審判事件〔平成6年1月6日国際公開、WO94/00525、平成7年9月14日国内公表、特表平7-508303〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯、本願発明 本願は、平成5年6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1992年6月26日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成15年3月24日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成15年6月30日に拒絶査定不服審判が請求され、以後、当審における手続の経緯は以下のとおりである。 平成17年 9月12日 拒絶理由通知 平成18年 3月13日 意見書、手続補正書 平成18年 4月25日 拒絶理由通知 平成18年11月 9日 意見書、手続補正書 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成6年12月26日付けの特許法第184条の8第1項の規定による翻訳文(特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づく1994年7月11日付け補正書の翻訳文)、平成12年5月30日付け手続補正書、平成15年2月13日付け手続補正書、平成18年3月13日付け手続補正書及び平成18年11月9日付けの手続補正により補正された明細書からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】両面接着シートであって: (1)第一接着層であって、非構造型第一面と、実質的に均一に分布し、且つ平らな接着層表面から15μm?200μmの範囲における高さにまで外方向に突き出た複数の接着ペグを含んで成る位相的微細構造型第二面とを有し、ここでこれらのペグはこの接着層の全表面接触面積の25%未満を占める本質的に平らな上面を有し、そしてそのペグの土台とつながっており、且つこれらのペグの間にある平らな接着面は全接着層の30%より大である第一接着層;及び (2)第二接着層であって、非構造型第一面と、実質的に均一に分布し、且つ平らな接着層表面から15μm?200μmの範囲における高さにまで外方向に突き出た複数の接着ペグを含んで成る位相的微細構造型第二面とを有し、ここでこれらのペグはこの接着層の全表面接触面積の25%未満を占める本質的に平らな上面を有し、そしてそのペグの土台とつながっており、且つこれらのペグの間にある平らな接着面は全接着層の30%より大である第二接着層; を含んで成り、ここでこの第一及び第二接着層の非構造型面は互いに隣り合っている、両面接着シート。」 2 当審における拒絶理由 当審が発した平成18年4月25日付けの拒絶理由は、本願発明1は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物1及び刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由(理由2)を含むものである。 刊行物1 実願平1-128090号(実開平3-67043号)のマイクロフィルム 刊行物4 特開昭58-13682号公報 3 引用刊行物に記載された発明 刊行物1には、 (a)「シート基材の片面に粘着剤層が設けられ、該粘着剤層の表面に離型紙が剥離可能に積層されているマーキングシートにおいて、該離型紙の粘着剤層と接する面には、多数の凹部と凸部を有する凹凸模様が形成され、凹凸模様の各凸部はシート基材の端縁まで連なっているマーキングシート。」(1頁、実用新案登録請求の範囲、請求項1)に係る発明が記載され、さらに、 (b)「離型紙表面に形成された凹凸模様の凸部は、シート基材の端部にまで連なっている。この凹凸模様は、多数の溝を有するストライプ模様や多数の溝が碁盤目状に設けられた模様、角状、丸状の突起部を有する格子模様、水玉模様であってもよい。多数の溝を碁盤目状に設ける場合、凹凸加工に用いられるロール表面の凹凸のサイズは、50?300メッシュが好ましい。具体的には、第2図に示すロール6表面の断面図において凸部7上面の幅をa、凹部8の開口幅をb、凸部7の高さをcとすると、a=15μm?5μm、b=490μm?80μm、c=200μm?15μmが好ましい。次に、凹凸加工が施された樹脂膜表面に、離型剤を塗布して離型紙を作製する。離型剤の塗布には、シリコーン加工が好ましい。ここで、離型剤の塗布厚は凹凸加工の寸法に比して非常に小さいので、凹凸加工は、離型紙にそのまま残ることになる。よって、このようにして作製された離型紙の離型剤表面には、凹凸模様が形成されている。この離型紙の表面に粘着剤を塗布し、乾燥後、これにシート基材を積層接着してマーキングシートが得られる。このようにして作製されたマーキングシートの離型紙を剥すと、粘着剤層の表面には離型紙表面と同様に凹部と凸部を有する凹凸模様が転写されている。」(明細書4頁10行?5頁16行)と記載され、 (c)図面頁には以下の第2図が示されている。 刊行物4には以下の記載がある。 (d)「感圧接着剤層の厚み未満の粒径であって、その平均粒径が10μ未満で且つ難接着性の非中空固体粒子が、一様に分散した該固体粒子の分散層を、感圧接着剤層の少なくとも一方の表面上乃至表面層に有することを特徴とする感圧接着剤層。」(特許請求の範囲第1項) (e)「本発明は感圧接着剤層に関し、たとえば感圧接着シート状構造物の感圧接着剤層として利用して被貼着基体の表面へ貼着するに際して、該被貼着基体表面の所望貼着部位への貼着位置合わせを容易にし、且つ又、必要に応じて該所望貼着部位への修正移動や貼着不全たとえばしわ、気泡ふくらみなどの発生回避のための修正移動などを可能とするのに充分な、小さい初期接着性(・・・)を示し、しかも圧着後の経時的な接着力増大率及び増大した接着力の値が顕著に大きく、圧着後の表面状態が滑かで、更に製造容易である等のユニークな改善諸性能を発揮できる感圧接着剤層に関する。」(1頁左下欄最下行?右下欄13行) (f)「テープ、フィルム、シート状などの如き基材の表面に感圧接着剤層を有する感圧接着シート状構造物は知られており、例えば、看板用途、自動車・建築物などの装飾・表示用途、自動車・コンテナーなどのフリートマーキング用途、その他の広い分野に於て、被貼着基体の表面へ貼着利用されている。このような感圧接着剤層はその初期接着力が充分に大きく、被貼着基体の表面へ貼着する熟練を要し、熟練者にとってもなお、所望貼着部位へ一回で正確に貼着することは極めて困難であって、貼着位置のずれを生じ易い。そのために、屡々、所望貼着部位への修正移動や貼着不全たとえば、しわ、気泡ふくらみなどの発生回避のための修正移動など、適正部位への貼り直しや移動が必要となるが、その際、基材の変形・破断や皺の発生などのトラブルを生ずる場合が多い。このようなトラブルは、とくに、大きなサイズの感圧接着シート状構造物の貼着に際して、より大きなトラブルとなる。上述のような感圧接着剤層に於ける技術課題を解決するために、該感圧接着剤層の望ましい接着力を実質的に低下させずに、その初期接着力だけを小さくしようとする試みもいくつか提案され、知られている。」(2頁左上欄3行?右上欄10行) (g)「本発明の感圧接着剤層は、種々の態様で感圧接着構造物の接着剤層として有利に利用できる。例えば、該感圧接着剤層の片面に、該層の厚み未満の粒径であって、その平均粒径が10μ未満で且つ難接着性の非中空固体粒子の分散層を有し、その上に剥離紙層を具備し、そして他面には、テープ、フィルム、シート状などの如き任意の基材を有し、該剥離紙層を、夫々、設け、一方の剥離紙層を除いて、上記分散層を設けた側を被貼着基体の表面に圧着することにより、貼着後、該基材を表面に有するように貼着する態様の感圧接着シート状構造物として利用できる。又、例えば、該感圧接着剤層の両面に、上記非中空固体粒子の分散層及び剥離紙層を除いて、その分散層を設けた側を被貼着基体の表面に圧着し、次いで、他方の剥離紙層を除いて、他の被貼着体の表面に圧着し、斯くて、二つの被貼着基体を本発明感圧接着剤層を介して貼り合わせる態様の感圧接着シート状構造物として利用することもできる。」(5頁左上欄6行?右上欄7行) 4 対比・判断 刊行物1には、粘着面に凹凸模様が形成された粘着剤層を有する接着シートが記載され(摘記a)、その凹凸模様は、碁盤目状に形成され、凹凸模様がa=15μm?5μm、b=490μm?80μmであり、角状の突起部を有する格子模様であってもよいとされている(摘記b,c)から、格子模様の凸部上面が角状の代表的な正方形であるものとして、凸部の上面の接着剤面の面積及び凸部の間にある凹部の平らな粘着剤面の面積を計算すると、凸部の上面の面積は粘着剤層の全表面接触面積のたかだか3%であり、凸部の間にある凹部の平らな粘着剤面の面積は、凸部上面から凹部の平らな面につながるテーパー部分を考慮しても30%以上はあるものと認められ(全表面接触面積に対する凸部上面の面積及び凸部の間にある凹部の平らな粘着剤面の面積の割合に関する計算については後記する。)、凸部7の高さcは、c=200μm?15μmである(摘記b)から、本願発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、いずれも、全表面接触面積の25%未満を占める平らな上面を有し、高さ15?200μmの平らな接着層表面から外方向に突き出た凸部を有し、それは実質的に均一に分布し、凸部の土台とつながっており、かつ凸部の間にある平らな接着面は全接着層の30%より大である微細構造をもつ接着層を有する接着シートである点で一致し、 (1)本願発明1は第1接着層と第2接着層の非構造型面が互いに隣り合っている両面接着シートであるのに対し、刊行物1に記載された発明はシート基材の上に粘着剤層が設けられている片面の接着シートである点、 (2)本願発明1は2個の接着層の非構造型面が互いに隣り合っていて、接着層に裏地部分(基材部分)がないのに対し、刊行物1に記載された発明はそのような構成を有していない点、 の2点で相違している。 しかしながら、初期接着力だけを小さくすることにより、貼着位置合わせを容易にしたり、接着時の気泡ふくらみを回避することができるようにした感圧接着シートは本願出願前に周知のものであり(例えば、摘記f参照。)、刊行物4に記載された発明では、そのような目的の感圧接着シート(摘記d?f)において、初期接着力だけが小さい感圧接着剤層を片面に設けたものと両面に設けた態様のものの両方の態様が記載されている(摘記g)から、刊行物1に記載された発明において、凹凸を設けることにより初期接着力だけを小さくした感圧接着剤層を両面に設けた両面接着シートとすることは当業者が容易に想到する構成である。 両面接着シートとした場合、裏地部分(シート基材部分)がない、接着層が隣り合っているものとすること、あるいは接着剤層の凹凸のない方の層を共通のものとすることが可能であることは当業者がすぐ理解でき、そのような構成を採用することは容易に想到するものであるから、結局、刊行物1に記載された発明において、接着剤層の接着面の微細構造を一つの接着剤層の両面に設け、裏地のないものにすること、すなわち、接着層の非構造型面を互いに隣り合っている構造とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、上記相違点(1)、(2)に係る本願発明の構成は、いずれも当業者が容易に着想しうるものである。 (全表面接触面積に対する凸部上面の面積及び凸部の間にある凹部の平らな粘着剤面の面積の割合に関する計算について) 刊行物1において、「a=15μm?5μm、b=490μm?80μm、c=200μm?15μmが好ましい。」とされているので、a=15μm、b=80μm、c=15μmの場合について計算する。請求人のいう「内角α」(凸部上面の内角)は刊行物1に直接記載はないが、角状の凹凸模様の凸部であるので、α=135゜として計算する(α<90゜では凸部が構造的に弱くなることが明らかであり、α=180゜では凸部でなくなるので、90゜と180゜の中間値を採用する。通常の凸部であれば90?135゜程度であると考えられる。)と、一つのユニットは、一辺を95(80+15)μmとする正方形(95×95=9025μm2)であり、凸部上面は一辺15μmの正方形(15×15=225μm2)となる。凸部側面のテーパー部は垂直投影面積が1800μm2(45×45-15×15)、実面積2546μm2((15+45)×15√2÷2×4)であるから、全表面積は9771μm2(9025+2546-1800)であり、テーパー部を除いた凹部の平らな接着面の面積は7000μm2(95×95-45×45)となり、凸部上面の全表面積に対する割合は225/9771=2.3%、底部の平らな接着面の面積の全表面積に対する割合は7000/9771=71.6%となる。 この計算から、粘着剤層の凸部の上面の面積は粘着剤層の全表面接触面積のたかだか3%であり、凸部の間にある凹部の平らな粘着剤面の面積は、凸部の上面から凹部の平らな面につながるテーパー部分を考慮しても30%以上はあるものと認定した。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1及び刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-13 |
結審通知日 | 2006-12-19 |
審決日 | 2007-01-09 |
出願番号 | 特願平6-502387 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C09J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 泰之 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
鈴木 紀子 岩瀬 眞紀子 |
発明の名称 | 位置決め及び位置換え可能な接着物品 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 福本 積 |