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審決分類 |
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D 審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D |
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管理番号 | 1158258 |
審判番号 | 不服2004-7328 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-12 |
確定日 | 2007-05-14 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第504482号「ポリマー性分散助剤を含んでなる色素移り抑制組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 2月 3日国際公開、WO94/02578、平成 8年12月10日国内公表、特表平 8-511811〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は1993年6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1992年11月6日、1993年6月9日 欧州特許機構(EP))を国際出願日とする出願であって、平成16年1月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年4月26日付けで手続補正がなされ、その後、平成18年4月21日付けで当審による拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成18年10月19日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願請求項1?7に係る発明は、平成15年10月24日付け及び平成16年4月26日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 a)アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000を有するポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)0.05?1重量%、および、 b)ポリマー性ポリカルボキシレート、ポリエチレングリコール、アルコキシル化ポリアミン、グルタミン酸のポリマー、ポリアミノ酸およびそれらの混合物からなる群より選ばれる分散有効量のポリマー性分散助剤、 を含む、色素移り抑制洗剤組成物。 【請求項2】 前記ポリマー性分散助剤が、ポリマー性ポリカルボキシレートである、請求項1に記載の色素移り抑制組成物。 【請求項3】 前記ポリマー性分散助剤が、ポリマー性ポリアクリレート、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、またはそれらの混合物から選ばれる、請求項2に記載の色素移り抑制組成物。【請求項4】 前記ポリマー性分散助剤が、ポリエチレングリコール、アルコキシル化ポリアミン、またはそれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の色素移り抑制組成物。 【請求項5】 請求項1に記載の色素移り抑制組成物を含み、さらに、界面活性剤、ビルダー、キレート化剤、漂白剤、酵素、泡抑制剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、螢光増白剤、研磨剤、殺菌剤、曇り抑制剤、着色剤、香料またはそれらの混合物を含む、洗剤組成物。 【請求項6】 a)アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000を有するポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)0.05?1重量%、および、 b)ポリマー性ポリカルボキシレート、ポリエチレングリコール、アルコキシル化ポリアミン、グルタミン酸のポリマー、ポリアミノ酸およびそれらの混合物からなる群より選ばれる分散有効量のポリマー性分散助剤、 を含む、無粉塵性粒状物または液体洗剤添加剤の形態である、色素移り抑制組成物。 【請求項7】 請求項6に記載の色素移り抑制組成物を含み、さらに、界面活性剤、ビルダー、キレート化剤、漂白剤、酵素、泡抑制剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、螢光増白剤、研磨剤、殺菌剤、曇り抑制剤、着色剤、香料またはそれらの混合物を含む、洗剤組成物。」 3.当審による拒絶の理由 平成18年4月21日付けの当審による拒絶の理由の概要は、理由1として、「本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項、第5項第1号及び第2号、並びに第6項に規定する要件を満たしていない。」というものであって、不備な点として次の点を指摘している。 『本願明細書の第37?39頁には、実施例I及びIIとして、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド 0-1」重量%を使用した組成物が、「優れたクリーニング及び洗浄性を示す点で極めて良好であり、着色した布帛および着色した布帛と白色の布帛との混合した洗濯物で顕著な色保護性能を有する。」と記載されているところ、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」の添加量が、0%であっても1%であっても、同様に「着色した布帛と白色の布帛との混合した洗濯物で顕著な色保護性能」を示すことが明記されているので、本願発明の内容を理解するのが困難であり、以下の(あ)?(か)の記載不備が認められる。 (なお、実施例Iの組成物において、ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシドが「0.13」重量%と記載されているが、国際出願日における明細書の記載からみて「0-1」の誤記と認められるので上記のように認定した。) (あ)本願明細書の記載を参酌するに、本願発明において、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」を添加することの技術的意義が認められず、本願明細書の記載からは、本願発明の目的ないし効果についての把握が不可能であり、当業者が容易に実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではないので、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (い)本願明細書には、「アミン対アミンN-オキシドの比率」を「1:7?1:1,000,000」とすること、及び、「分子量」を「3,000?20,000」とすることの構成及び効果(特に臨界的な効果を定量的に裏付ける比較実験データ等)についての記載が不十分であり、当業者が本願発明の内容を理解できる程度に記載されていないので、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (う)本願明細書には、ポリマー性分散助剤として使用される「グルタミン酸のポリマー」の分子量、「ポリアミノ酸」の組成及び分子量が記載されておらず、当業者が容易に実施をすることができる程度に、その発明の構成を記載するものではないので、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (え)本願明細書の記載からみて、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」の添加量がゼロであっても、「着色した布帛および着色した布帛と白色の布帛との混合した洗濯物で顕著な色保護性能」が示されるのであるから、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号の規定に適合しない。 (お)請求項1に係る「色素移り抑制洗剤組成物」は、洗剤として機能するための界面活性剤等の成分が不明であるから、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号の規定に適合しない。(請求項1を引用する請求項2?4の「色素移り抑制組成物」と相違していることに留意されたい。) (か)本願明細書の第8頁第2行?第9頁第1行には、「ポリアミンN-オキシドの製造方法」として、Polysciences製の「分子量50,000」のポリ-4-ビニルピリジンを過酸処理して、「アミン:アミンN-オキシド比は、1:4」のポリアミンN-オキシドを製造した具体例が記載されているところ、これは本願請求項1又は6の「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000」という数値範囲から外れるものであるので、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に実質的に記載したものではなく、特許法第36条第5項第1号の規定に適合しない。』 4.請求人の主張 これに対して、平成18年10月19日付けで提出された意見書において、請求人は、拒絶理由1について、「本願につきましては、当業者であれば、実施例のみではなく、本願明細書全体の記載を参照すれば、本願発明の効果が容易に理解でき、本願発明の実施をすることも容易であると思料します。」との主張をしている。 5.当審の判断 そこで、平成18年10月19日付けで提出された意見書の上記主張について、それが妥当であるか否かを検討する。 (あ)について、ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシドの添加量が、0%であっても1%であっても、同様に着色及び白色布帛の混合物で顕著なカラーケア性能を示すという矛盾について、同意見書において実質的な釈明されておらず、依然としてその矛盾は解消していない。よって、本願明細書の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではなく、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (い)について、本願請求項1に記載される発明は、「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000を有するポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)」を含むことも発明の特徴としているものである。よって、「アミン対アミンN-オキシドの比率」と「分子量」の数値範囲に関する技術的意義が本願明細書において明らかにされている必要があるところ、それらの技術的意義は記載されておらず、また同意見書においても釈明されていない。したがって、本願明細書の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではなく、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (う)について、本願明細書には、請求項1に記載されたポリマー性分散助剤として使用される「グルタミン酸のポリマー」の分子量、「ポリアミノ酸」の組成及び分子量が記載されておらず、また、同意見書においてもその釈明がなされていない。したがって、本願明細書は、当業者が容易に実施をすることができる程度に、その発明の構成を記載するものではなく、依然として、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (え)について、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」の添加量がゼロであっても「着色布帛と着色及び白色布帛の混合物で顕著なカラーケア性能」が示されるということについて同意見書においても実質的な釈明がなされていない。よって、本願請求項1に記載された「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」については、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項であるとすることはできないので、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号に規定される要件を満たしていない。 (お)について、請求項1に係る「色素移り抑制洗剤組成物」は、洗剤として機能するための界面活性剤等の成分が不明である。そして、同意見書においてもそれについての釈明はなされていない。したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号の規定に適合しない。 (か)について、本願明細書の第8頁第2行?第9頁第1行には、「ポリアミンN-オキシドの製造方法」として、Polysciences製の「分子量50,000」のポリ-4-ビニルピリジンを過酸処理して、「アミン:アミンN-オキシド比は、1:4」のポリアミンN-オキシドを製造した具体例が記載されているが、特許請求の範囲に記載された「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000」という範囲内の「ポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)」について本願明細書に具体的な記載はない。また、同意見書においてもこれに関しての釈明はなされていない。したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に実質的に記載したものではなく、特許法第36条第5項第1号に規定される要件を満たしていない。 なお、請求人は、平成18年10月19日付けの意見書において、「当業者(少なくとも外国の当業者)であれば、本願発明の効果が容易に理解でき、本願発明の実施をすることも容易であることにつきましては、本願の外国の基礎出願ないしパテントファミリーの出願が、本願と同様な明細書の記載であるにもかかわらず特許されていることからも明らかであります(EP0581753B、米国特許第5,470,507号明細書参照)。」との主張をしているが、上記欧州特許及び米国特許は、本願出願のパテントファミリーである別の特許出願に係るものであるから、本願の審査手続及び審判手続において、本願が、特許法第36条第4項、第5項第1号及び第2号、並びに第6項に規定する要件を満たすことを明細書、意見書又は審判請求書において明らかにする必要があるところ、上記の如く、これらの要件を満たすものであることを示す記載若しくは釈明はなされていないから、当該請求人の主張は採用できない。 6.むすび 以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項、第5項第1号及び第2号、並びに第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-06 |
結審通知日 | 2006-12-08 |
審決日 | 2006-12-22 |
出願番号 | 特願平6-504482 |
審決分類 |
P
1
8・
532-
WZ
(C11D)
P 1 8・ 534- WZ (C11D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 浩子 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
岩瀬 眞紀子 木村 敏康 |
発明の名称 | ポリマー性分散助剤を含んでなる色素移り抑制組成物 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 横田 修孝 |
代理人 | 紺野 昭男 |
代理人 | 吉武 賢次 |