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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1158259
審判番号 不服2004-10816  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-24 
確定日 2007-05-21 
事件の表示 平成 6年特許願第508304号「不均質膜及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月31日国際公開、WO94/06850、平成 8年 5月 7日国内公表、特表平 8-504224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [手続きの経緯]
本願は、平成5年9月16日(優先権主張1992年9月23日、米国)に国際出願したものであって、平成12年5月18日付けで手続補正書が提出され、平成15年8月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成15年11月13日付けで意見書が提出され、平成16年2月16日付けで拒絶査定がなされ、平成16年5月24日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされ、平成16年6月22日付けで明細書及び審判請求書の手続補正書が提出され、平成16年8月6日付けで審判請求書の手続補正書及び手続補足書が提出され、平成17年4月5日付けで前置報告されたものである。
尚、平成16年6月30日付けで誤訳訂正書が提出されたが、平成16年9月10日付けで却下理由通知がなされ、平成16年11月19日付けで手続却下の処分がなされている。
[本願発明及び平成15年8月28日付けの拒絶の理由]
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年6月22日付けの手続補正書により補正された本願明細書の記載からみて、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】バインダー内に配合されたイオン交換樹脂からなり、そのバインダーが(a)0.940以下の密度を有する線状低密度ポリエチレン及び(b)0.940以上の密度を有し、且つ200,000よりも大きな平均分子量を有する高分子量高密度ポリエチレンよりなる群から選択された材質からなることを特徴とする、支持体不要の不均質なイオン交換物質。」
これに対して、拒絶査定の拒絶理由とされた平成15年8月28日付けの拒絶の理由の概要は、補正前の本願特許請求の範囲の請求項1?27に係る発明は、特公昭51-12313号公報(以下、「引用文献1」という。)、特開昭50-41790号公報(以下、「引用文献2」という。)、特開昭51-46590号公報(以下、「引用文献3」という。)(尚、拒絶理由では、「特開平51-46590号公報」と表記されているが、「平」は「昭」の明かな誤記と認められる。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
[引用文献1?3の記載事項]
引用文献1:
「膨潤性イオン交換樹脂の粉末とそのイオン交換樹脂より低い軟化溶融点を有しかつ80?100℃の温度において延伸性を有するポリオレフイン樹脂とを混合し(イオン交換樹脂:ポリオレフイン樹脂重量比=8:2?2.5:7.5)その混合物をポリオレフイン樹脂が軟化溶融しイオン交換樹脂は形状を保持する温度で混練成形し、得られる成形体を実質的に他成分を含有しない80℃以上の熱水中にて数分乃至数時間浸漬処理することを特徴とする、微細な網状構造を成形体中に均一に分散して有するポリオレフイン樹脂とその網状構造の単位小胞の各々の内部に包含されている粉末状イオン交換体の製造法。」(請求項1)
「本発明に用いられるマトリックスを形成する樹脂は・・・、実際上用いられる樹脂はポリオレフイン樹脂、特にポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びその混合物が好適である。勿論ここでいうポリエチレン系樹脂とは低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを70重量%以上含有する他のオレフイン又はビニル系化合物との共重合体を含むものであり、」(第3頁5欄第15行?26行)
引用文献2:
「熱可塑性樹脂中にイオン交換樹脂の微粉末が分散した不均一イオン交換膜の製造方法において、熱可塑性樹脂とイオン交換樹脂微粉末とを2:8?8:2の割合で予備混練してペレットを調製し、この際に、予備混練前もしくはペレット化後に金属石鹸、・・・の滑剤を熱可塑性樹脂とイオン交換樹脂の合計100重量部に対して0.1?10重量部配合するようにし、このようにして調製したペレットを押出成膜した後、50?150℃で熱圧処理することを特徴とするイオン交換膜の製造方法。」(請求項1)
「熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、目的に応じて選定すればよいが、通常の目的にはポリオレフインが用いられる。」(第2頁左下欄第14行?16行)
引用文献3:
「ポリオレフイン樹脂に微粉状カチオン交換性物質を混合し、得られた混合物を膜状に成形し、この膜状成形物を80℃以上のアルカリ金属塩類又はアンモニウム塩類水溶液中で処理することを特徴とする高イオン濃度における・・・不均質カチオン交換膜の製造方法。」(請求項1)
「(1)マトリックス樹脂として使用するポリオレフイン樹脂とは エチレンの単独重合体、・・・、エチレンあるいはプロピレン主体の共重合体及びこのようなオレフイン単独重合体、共重合体を主体とする重合体混合物を意味する。」(第3頁左上欄第8行?第14行)
[当審の判断]
引用文献1?3には、イオン交換物質において、イオン交換樹脂のバインダーとしてポリオレフィン系樹脂を使用する発明が記載さており、この点で本願発明と一致しており、本願発明が、ポリオレフィン系樹脂として、「(a)0.940以下の密度を有する線状低密度ポリエチレン及び(b)0.940以上の密度を有し、且つ200,000よりも大きな平均分子量を有する高分子量高密度ポリエチレンよりなる群から選択された材質からなる」と特定しているのに対し、引用文献1?3にはこのように特定したものは明記されていない点で相違するものと認める。
そこで、この相違点を検討する。
引用文献1及び引用文献3には、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂及びその混合物も記載されており、さらに、引用文献1には、ポリエチレン系樹脂として「低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを70重量%以上含有する他のオレフィン又はビニル系化合物を含むもの」が記載されていること、そして、本願発明で特定しているいわゆる高分子量高密度ポリエチレン(HMWHDPE)及び線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は本願優先権主張日前周知のポリエチレンであり、線状低密度ポリエチレンが引張強さの高い材料であること、及び分子量が高くなると一般に機械的性質が改善されることが本願優先権主張日前周知(例えば、「桜内雄二郎著,「新版 プラスチック材料読本」,新版初版,工業調査会,1987年5月15日,p.128-135」参照)であることから、引用文献1?3に記載されたポリオレフィン系樹脂として、周知の機械物性に優れた本願発明の特定のポリエチレン樹脂の混合物を用いることは、当業者が容易に想到しえたものといえる。
そして、本願発明の効果について検討しても、所定のポリエチレン樹脂材料が備える効果がそのまま発揮されたにすぎないものであり、高分子量高密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンとイオン交換樹脂との組み合わせにより予想外の格別顕著な効果が得られたものとは認められない。
尚、審判請求人は、平成16年8月6日付け手続補足書の実験データを根拠に本願発明の格別の効果を主張するが、この実験データは、そもそも本願明細書に記載されているものではなく、また本願明細書の記載に基づくものでもないのであるから採用できないものではあるが、仮にその内容を検討しても、ポリプロピレン(PP)または低密度ポリエチレン(LDPE)のいずれかを用いた場合との比較にすぎず、しかも本願優先権主張日周知の事項である機械的強度に関するものだけであり、上記引用文献1?3と周知事項から導き出される以上の格別の効果を裏付けるものでもない。
したがって、本願発明は、引用文献1、引用文献2、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものといえる。
[結び]
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、引用文献2、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-22 
結審通知日 2006-12-26 
審決日 2007-01-09 
出願番号 特願平6-508304
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 和男天野 宏樹  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 船岡 嘉彦
高原 慎太郎
発明の名称 不均質膜及び方法  
代理人 増井 忠弐  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 栗田 忠彦  

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