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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1158348
審判番号 不服2006-3982  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-03 
確定日 2007-05-28 
事件の表示 特願2002-198073「受信装置および受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月28日出願公開、特開2003- 92740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】.経緯(手続き・査定)

[1.1] 手続の概要

本願は、平成6年4月14日に出願した特願平6-75577号の一部を平成14年7月8日に新たな特許出願としたものであり、手続きの概要は以下の通りである。

補正書(明細書の補正):平成14年 7月30日
拒絶理由の通知 :平成17年11月 2日(起案日)
意見書 :平成18年 1月10日
補正書(明細書の補正):平成18年 1月10日
拒絶査定 :平成18年 1月30日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成18年 3月 3日

[1.2] 査定

原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願各発明(請求項1?3までに係る各発明)は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


刊行物1:加井、吉村、妹尾、磯部,「高機能テレテキスト(PRESENT)受信機の試作,テレビジョン学会技術報告」,1992年10月29日,第16巻、第71号,P.7-12
刊行物2:臼井、吉村、大谷,「ISDBでのテレビジョン高機能化 番組選択補助サービスの検討」,テレビジョン学会技術報告,1994年3月18日,第18巻、第21号,P.19-24
刊行物3:柴田、大崎,特集「マルチメディア-映像とコンピュータ」 応用システム、「4-5放送」,テレビジョン学会誌,1993年11月20日,第47巻、第11号,P.88?92
刊行物4:特開平6-22233号公報

【2】.本願発明

本願の請求項1?3までに係る各発明は、本願明細書及び図面(平成14年7月30日付け、平成18年1月10日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3までに記載した以下のとおりのものである。


[請求項1に係る発明]
【請求項1】
番組のジャンルを示す選択コードを含む番組表データを受信する番組表データ受信手段と、
ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段と、
前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定手段と
を備える受信装置。

[請求項2に係る発明]
【請求項2】
前記選択コードは、階層化されている
請求項1に記載の受信装置。

[請求項3に係る発明(「本願発明」ともいう。)]
【請求項3】
番組のジャンルを示す選択コードを含む番組表データを受信する番組表データ受信手段と、
ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段と
を備える受信装置の受信方法において、
前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップと
を含む受信方法。

【3】.当審の判断

[3.1]引用刊行物の記載

〈刊行物2〉
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物2には、「ISDBでのテレビジョン高機能化 番組選択補助サービスの検討」(標題)に関し、図面と共に、以下の記載がある。

(K2.1)
「1.まえがき
・・・(中略)・・・
このため、視聴者が簡単・確実に番組を選択できることが将来のテレビに必要な機能となる。ISDBでは、放送番組と関連した種々の付加データを伝送することにより、視聴者の番組選択補助や番組付随情報の提供などの新たなサービスを提供する、テレビジョンの高機能化サービスが可能となる。
本報告では、まず、将来のテレビ伝送路となるISDBの概要とそこで実現可能な付加サービスについて述べる。さらに、・・・番組選択補助としての番組案内について必要な機能を整理し、新たな番組案内とその実現法について提案する。」(19頁左欄1行?22行)

(K2.2)
「3.ISDBにおける付加サービス
現在研究中のISDBマルチメディアサービスには、ディジタルテレビの高機能化とPRESENT(Personal REquest Service by ENhanced Teletext)などがある。後者は、文字を中心とする情報を、ジャンルやキーワードで検索し、パーソナルな利用を可能とするものである。ここでは、ディジタルテレビの高機能化についてサービスの種類とその内容について目的とする機能から整理する。
3-1 高機能化サービスの概要
放送のディジタル化に伴い、従来のアナログ1チャンネル分の帯域幅で複数のテレビ放送が可能となる。これは、チャンネルの増加、あるいはチャンネルの専門化につながる。このような状況のもとで、視聴者が簡単・確実に希望する番組を選択することができ、しかもVTRの予約録画やテレビの予約受信も簡単にできる必要がある。また、将来の高齢化社会を考慮すれば、その受信機は全ての受信者に対して使い易く、さらに教育用などでは番組内容に適した提示手段を持つことが必要である。以上の条件を目的とする機能から整理すると、視聴者の番組選択を補助するサービス、番組の内容を補完するサービス及び字幕などに分類できる。」(20頁左欄9行?30行)

(K2.3)
「・番組選択補助サービス(イントロダクション)
ディジタルテレビでは、新聞・雑誌のテレビ欄情報に相当する放送時間や番組名などの番組データを、その番組種別(ジャンル)や番組内容などと共に文字,静止画データとして数週間分伝送し、視聴者の要求でテレビ画面上に表示する。この番組表により、視聴者は他のメディアを参照することなく随時放送予定の番組を確認することができる。しかも受信側で再構成することで、番組ジャンル別や時間別など多彩な表示が可能となる。
さらに、番組の延伸など放送時間の変更にも柔軟に対応したVTR予約録画・テレビ予約受信が番組表や番組案内から簡単な操作で可能となる。」(20頁右欄1行?12行)

(K2.4)
「3-2 高機能化サービスでの提示メディア
高機能化サービスでの番組案内として利用可能な提示メディアには、文字,音声,静止画及び動画などが考えられる。・・・(中略)・・・そこで付加情報データ量が少ない文字を中心に、音声,静止画及び小動画を効果的な方法で提示し、付加サービスでの番組案内とする。表1に以下の検討のために仮定した各提示メディアとそのデータ量を示す。」(20頁右欄29行?38行)

(K2.5)
「4.番組案内サービス
ディジタルテレビ高機能化でのサービスには番組選択補助を目的としたものと、番組内容補完を目的としたものに大別される。さらに前者は番組表と番組案内があるが、番組表については、テレビという表示機能が限定される装置での必要機能の検討を行った。ここでは、番組付加サービスのうち、番組案内についてデータ量などから検討する。
・・・(中略)・・・
これらの特徴を参考に、新たな番組案内の機能として次の点を挙げることができる。
・必要な視聴者は常時参照できること
・少ない伝送データ量で多彩な提示が可能なこと
・ジャンル別提示やVTRの予約録画など、付加価値的な利用が可能であること」(21頁右欄1行?22頁左欄16行)

(K2.6)
「4-2 放送のインタラクティブ性
・・・(中略)・・・
これに対して伝送容量が少ない伝送路では、受信データを受信機に用意されたメモリに蓄積し、視聴者の操作に従って表示する方法(同c)が考えられる。」(22頁右欄18行?36行)

(K2.7)
「4-3 高機能付加サービスとしての番組案内
番組案内に求められる機能としては、いつでもジャンル別など多彩に参照できることが望ましい。」(22頁左欄42行?右欄1行)

(K2.8)
「7.むすび
以上番組選択補助サービスで、比較的データ量が多い番組案内について・・・(中略)・・・検討した。
今後番組関連情報や番組表など、他の高機能化サービスを同時に実施する際の検討や、・・・(中略)・・・視聴者の個人の視聴履歴を参考に、自動的に番組選択を補助するインテリジェントな機能を持つ受信機の検討などを進めたい。」(24頁左欄24行?33行)

〈刊行物3〉
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物3には、「4-5 放送」(標題)に関し、図面と共に、以下の記載がある。

(K3.1)
「3.2 サービス
ISDBでは,動画・音声からなる従来のテレビサービスやファクシミリ,テレソフトウェアなどの単独のデータサービスだけでなく,様々な情報を組合せたマルチメディアサービスが可能である.この例として,現在次のサービスについて研究が行われている。」(91頁左欄5行?左欄10行)

(K3.2)
「(1) ディジタルテレビ
ISDBでは,動画・音声に加えて文字や静止画のデータを伝送することが可能であり,表1のような新しいテレビサービスと受信利用形態が実現できる。」(91頁左欄11行?左欄末行)

(K3.3)
「表1 ISDBの新しいテレビサービス
・・・(中略)・・・
イントロダクション/
(内容)いつでも番組表,番組案内を画面上に表示できる。放送時間の変更にも対応した予約受信.予約収録に使用できる。/
(利用例)ジャンル別番組表、週間番組表、特定ジャンル番組一括録画予約」(91頁表1)

(K3.4)
「(2) 高機能テレテキスト(PRESENT)
PRESENT(Personal REquest Service by ENhanced Teletext)は,文字情報を主体として図形・静止画・音声などを組合せたマルチメディア番組をインタラクティブに視聴できるサービスである.
PRESENTでは,番組に関連するマルチメディアで表現された詳細な情報を効率的に検索することができる.例えば図4のように,番組中の用語などを説明する文字や静止画からなる「詳細情報」を必要に応じて参照することができる.また,関連する他の番組を参照することもできる.
さらに,ディスプレイ上に表示された「ジャンル表」や「キーワード表」から必要な項目を選択することにより,個人の趣味,好みに応じた番組の選択受信を容易に行うことができる.
以上を実現するため放送局側では,番組に関連する「詳細情報」,番組間のリンクを示す「関連番組番号」,「ジャンル」,「キーワード」などを番組と同時に伝送している.」(91頁右欄1行?92頁左欄5行)

〈刊行物1〉
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、「高機能テレテキスト(PRESENT)受信機の試作」(標題)に関し、図面と共に、以下の記載がある。

(K1.1)
「1.まえがき 衛生放送のデータチャンネルや将来のISDB(統合デジタル放送)では通常のTV放送の他に、各種のデータ放送を行うことが検討されている。このデータ放送には大きく分けて、TV番組に関連する情報を流す番組補完型のサービスとTVと無関係の情報を流す独立型のサービスに分かれる。独立型のサービスの一つとして高機能テレテキストと呼ぶ文字情報を主体としたマルチメディアサービスを検討している。今回、高機能テレテキスト(愛称PRESENT=Personal REquest Service by ENhanced Teletextの略)のシステムについて検討し、3種類の受信機を試作し、受信機機能の実験的な検討を行った。
高機能テレテキスト受信機では、大量の情報に対し、送出側で付加したインデックスデータをもとに、効率的な検索、情報提示を行うことができるように考慮しているとともに、各種のポインティングデバイスを用いて、より良いヒューマンインターフェイスの実現をめざしている。」(7頁左欄1行?右欄3行)

(K1.2)
「2.高機能テレテキストシステムの概要 (1)番組内容と情報アクセスイメージ
高機能テレテキストで提供する番組は、文字を主体とした情報番組で、各番組は、「タイトル」、「概要」、「本文」等から成る情報のかたまりであり、本文内に「詳細情報」を配置できる。・・・(中略)・・・
大量の番組から、必要な番組を選ぶため、各番組にキーワードとジャンル番号を付けるとともに、全体の番組表(メニュー)やキーワードの一覧表を送るようにしている。ジャンルはFig.2に示すように概念の大きさにより、2段階に階層化し、ジャンル番号で表している。上位の概念を大ジャンルと呼び、下位の概念を小ジャンルと呼ぶ。
」(7頁右欄10行?8頁左欄9行、Fig.2)

(K1.3)
「(2)システム構成
Fig.3にBSデータチャンネルを伝送路に用いた場合のシステム構成を示す。制作装置で番組データに対し、キーワードなどのインデックスデータを付加するとともに、・・・(中略)・・・受信端末では受信データの蓄積・検索・表示を行う。」(8頁左欄下から6行?右欄7行、図3)

(K1.4)
「(2)情報アクセス方法
視聴者から見た情報アクセスに対する考え方は次の2つが基本になる。
[1]視聴者の明確な意志による検索条件を確実に速く実行する。
[2]視聴者のなんとはなしの好みに応じ、快適な情報散歩の環境を実現する。
また、いずれの場合も一般視聴者が利用することを考えると操作方法が安易でなければならない。
[1]のために キーワード検索、ジャンル検索、アレンジメニュー [2]のためにタイトル一覧、標準メニューなどの機能を用意する。
ここで今回の受信機の特徴の一つであるアレンジメニューと標準メニューの考え方について説明する。
(a)アレンジメニュー
検索の手がかりとしてキーワードやジャンルを用いることはデータベース等で一般に行われている。これを放送システムに当てはめた場合、定期的流れてくる情報に対し、繰り返し必要なキーワードやジャンルを指定しなければならない。そこで、これらをあらかじめ表のかたちで入力しておき、好みの順番で検索結果を表示するようにした。これは自分の好みで紙面をならべることに相当し、アレンジメニューと呼んでいる。例えば、一般誌の新聞などでは、1面は政治から始まっているが、スポーツから読みだす人もいるのであり、それを電子的に可能にしている。」(9頁左欄23行?右欄8行)

(K1.5)
「さて、高機能テレテキストでは番組内容を少ない情報量で表現する手段として、「タイト」、「キーワード」、「ジャンル」の3つが各番組に付加されている。・・・(中略)・・・
なお、3節で述べたアレンジメニューは、あらかじめフィルタを複数用意場合、標準メニューは人間(編集者)がフィルタ機能を果たしている場合という見方ができる。」(11頁左欄20行?36行)

[3.2]請求項3に係る発明について

[3.2.1]対比

請求項3に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)と刊行物2に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。

(a)目的、刊行物2の概要等
本願発明は、「本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、所望する番組のチャンネルを、容易に選択することができるようにするものである。」(段落0005)ところ、
刊行物2は、「ISDBにおける付加サービス」(ディジタルテレビの高機能化とPRESENTがある)のうちの、放送番組と関連した種々の付加データを伝送するサービスである「ディジタルテレビの高機能化サービス」について紹介・検討するものであり、同サービスのうちの、とりわけ
視聴者が簡単・確実に希望する番組を選択することができ、しかもVTRの予約録画やテレビの予約受信も簡単にできるようにするサービスである視聴者の番組選択を補助するサービス(イントロダクション)について、その内容・機能等を紹介・検討するものであって(前掲(K2.1)?(K2.3))、
視聴者の番組選択を容易化するという目的において相違はない。

(b)「番組のジャンルを示す選択コードを含む番組表データを受信する番組表データ受信手段」、「受信装置」、「受信方法」について

(b1)「番組表データ」
本願発明でいう「番組表データ」とは、明細書の段落20?30(特に段落20),図4?6によれば、番組を紹介(案内)するものであって、静止画像、音声(オーディオ信号)、テキストデータ、ジャンル分けデータ、時刻情報、その他の番組情報を含むその他のデータで構成されるものであるとしている。
刊行物2では、前掲(K2.3)の「新聞・雑誌のテレビ欄情報に相当する放送時間や番組名などの番組データを、その番組種別(ジャンル)や番組内容などと共に文字,静止画データとして数週間分伝送し、視聴者の要求でテレビ画面上に表示する。この番組表により、視聴者は他のメディアを参照することなく随時放送予定の番組を確認することができる。」からすれば、
上記「番組表」は、放送時間や番組名などの「番組データ」や、「番組種別(ジャンル)」、「番組内容」を含み、文字,静止画データとして数週間分伝送されるものとされ、本願発明でいう「番組表データ」に含まれるものといえる。
また、前掲(K2.4) の「番組案内として利用可能な提示メディアには、文字,音声,静止画及び動画などが考えられる。」、「そこで付加情報データ量が少ない文字を中心に、音声,静止画及び小動画を効果的な方法で提示し、付加サービスでの番組案内とする。」や、
前掲(K2.5)の「ディジタルテレビ高機能化でのサービスには番組選択補助を目的としたものと、番組内容補完を目的としたものに大別される。さらに前者は番組表と番組案内があるが、番組表については、テレビという表示機能が限定される装置での必要機能の検討を行った。ここでは、番組付加サービスのうち、番組案内についてデータ量などから検討する。」からすれば、
刊行物2では、「番組案内」は「番組表」とは異なるものを示す用語として用いているものの、その内容をみると、刊行物2でいう「番組案内」も、本願発明でいう「番組表データ」に含まれるものといえる。

以上のことから、刊行物2でいう「番組表」(「放送時間や番組名などの番組データ」や「番組種別(ジャンル)」,「番組内容」を含むもの)も「番組案内」も、本願発明でいう「番組表データ」といい得るものである。
以下、刊行物2の上記「番組表」と「番組案内」を総称し、特に刊行物2記載のものであることを区別していう場合、「番組表データ(刊行物2)」という。

(b2)「選択コード」、「番組表データ受信手段」
上述した、「番組表データ(刊行物2)」は、すべてディジタル情報で伝送され受信されるものであることは明らかであり、また、
これに含まれる「番組種別(ジャンル)」は、いかなる番組種別(ジャンル)であるかを識別し特定できるようコード化されたディジタル情報で伝送され受信されることは明らかであるところ、
そのような「番組種別(ジャンル)」を示すコードを、本願発明が使用する用語である「選択コード」と称しても支障はないから、
引用発明(刊行物2)でも、「番組のジャンルを示す選択コード含む番組表データ」が伝送受信されている。
したがって、従って、刊行物2には、「番組のジャンルを示す選択コード含む番組表データを受信する番組表データ受信手段」の開示があるといえる。
なお、伝送受信される「番組表データ(刊行物2)」には、いかなる番組であるか「番組」自体を識別し特定する「番組識別コード」が含まれていることも明らかである。

(b3)「受信装置」
前掲(K2.3)の「視聴者の要求でテレビ画面上に表示する。・・・受信側で再構成する・・・VTR予約録画・テレビ予約受信」なる記載におけるテレビやVTRは、本願発明でいう「受信装置」といい得、(b2)で上述した「番組表データ受信手段」を備えるものと認定し得るものである。

(b4)以上のことから、引用発明として、「番組のジャンルを示す選択コードを含む番組表データを受信する番組表データ受信手段」を備える「受信装置の受信方法」なるものを認定することができる。

(c)番組予約(「選択コード記憶手段」、「判定ステップ」、「予約設定ステップ」)について

(c1)「選択コード記憶手段」、「判定ステップ」
刊行物2には、「ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段」、「前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップ」についての明確な開示はない。
相違が認められる。

(c2)「予約設定ステップ」

(c21)「前記番組表データを参照し」
前掲(K2.6)の「受信データを受信機に用意されたメモリに蓄積し、視聴者の操作に従って表示する方法(同c)が考えられる。」における「受信データ」には、上記「番組表データ(刊行物2)」が含まれるから、受信した上記「番組表データ(刊行物2)」は、受信機に用意されたメモリに蓄積されるものである。
そして、上記「視聴者の操作」には、前掲(K2.3)の「番組データを、その番組種別(ジャンル)や番組内容などと共に文字,静止画データとして数週間分伝送し、視聴者の要求でテレビ画面上に表示する。」からすれば、番組データや番組表を表示するための操作が含まれるものといえ、受信側装置(テレビ、VTR)がこのような操作を受け付けたとき、(受信機に用意されたメモリに蓄積された)上記「番組表データ(刊行物2)」を参照して表示するものといえる。

また、前掲(K2.2)の「視聴者が簡単・確実に希望する番組を選択することができ、しかもVTRの予約録画やテレビの予約受信も簡単にできる必要がある。」、前掲(K2.3)の「VTR予約録画・テレビ予約受信が番組表や番組案内から簡単な操作で可能となる。」や、前掲(K2.6)の「番組案内の機能として、」「ジャンル別提示やVTRの予約録画など、付加価値的な利用が可能であること」からすれば、
番組データや番組表の表示の為の操作以外に、予約(予約録画や予約受信)を希望する番組の予約のための操作も予定されているといえ、受信側装置(テレビ、VTR)がこのような操作を受け付けたとき、上記「番組表データ(刊行物2)」を参照して予約を設定するものといえる。
すなわち、受信側装置(テレビ、VTR)が、番組の予約(予約録画や予約受信)のための操作を受け付けたとき、上記「番組表データ(刊行物2)」を参照して番組の予約(録画予約や受信予約)を設定するものといえる。
したがって、刊行物2には、番組予約するのに、受信装置の受信方法として、「前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップ」の開示があるといい得るから、引用発明の受信装置の受信方法も、本願発明と同様、「前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップ」を含んでいるといえる。

もっとも、番組予約するのに、「選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップ」を含むこと、
「前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップ」が、判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定するステップであることについての開示はない。
相違が認められる。

[3.2.2] 一致点・相違点
上記「[3.2.1]対比」からすれば、本願発明と刊行物2記載の発明(引用発明)とは、

〔一致点〕
番組のジャンルを示す選択コードを含む番組表データを受信する番組表データ受信手段
を備える受信装置の受信方法において、
前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップ
を含む受信方法。

といい得る点で一致し、

〔相違点〕
本願発明では、
〔S1〕受信装置が、ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段を備えるものとし、
〔S2〕受信装置の受信方法が、
前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップを含むとし、
〔S3〕受信装置の受信方法が含む、番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップが、
前記判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定するステップであるとするのに対して、

引用発明では、
受信装置が、そのような選択コード記憶手段を備えるとはしておらず、
受信装置の受信方法が、そのような判定ステップを含むとはしておらず、
受信装置の受信方法が含む、番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップが、
判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定するステップではない点

で相違することが認められる。

[3.2.3].相違点の判断

上記相違点のうち、〔S1〕「受信装置が、ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段を備える」の「選択コード記憶手段」における選択コードの記憶が「複数」である点をひとまず措き、この点を除く相違点についてまず先に検討し{(1),(2)}、選択コードの記憶が「複数」である点についてはその後検討する{(3)}。

(1)刊行物3
刊行物3の前掲(K3.1)?(K3.3)は、ISDBにおける2種類のサービス、すなわち、
ディジタルテレビに関するサービス{前掲(K3.2),(K3.3)}と、
高機能化テレテキスト「PRESENT」のサービス{前掲(K3.4)}
について開示するものであり(それぞれ、刊行物2の、ディジタルテレビの高機能化サービス及びPRESENTと同じものを意味することは明らかである。)、
特に、前者(ディジタルテレビに関するサービス)のうちの「イントロダクション」サービスは、刊行物2の前掲(K2.3)の「番組選択補助サービス(イントロダクション)」と同じサービスを意味することは明らかであるところ、 前掲(K3.3)には、その「イントロダクション」サービスの利用例として「特定ジャンル番組一括録画予約」が開示されている。
この開示に接すれば、当業者は、普通に、「ユーザ(視聴者)が、所望する特定ジャンルを指定する操作を行えば、その指定されたジャンルの番組についてユーザ(視聴者)が個別に指定する操作を繰り返し行わなくても、受信装置が一括して録画予約や受信予約をする機能」(以下、短く「ジャンル指定一括予約」機能という。)を想定するものである。
また、刊行物2自体にも、視聴者の番組選択補助の一環として「番組ジャンル」を積極的に利用することが挙げられている{前掲(K2.3),(K2.5),(K2.7)}。
これらのことからみて、引用発明の受信装置の番組予約機能(番組予約録画や番組予約受信機能)に、上記「ジャンル指定一括予約」機能を付加することは当業者が容易になし得ることといえる。

なお、上記「ジャンル指定一括予約」と同様の機能は、刊行物3以外にも、
周知例1:特開平6-14288号公報
{「もしくは、番組IDコードや番組カテゴリーコード等で一括予約しておいてもよい。」(段落0013)},
周知例2:特開平4-291046号公報(段落0005,0011,0016,0029?0034)},
周知例3:特開平3-99535号公報
{「番組情報には、その番組のジャンル、出演者、内容などの属性が含まれているので、その属性を利用して番組の予約ができる。」(3頁左下欄14行?17行)、「出演者などの番組情報を利用して、例えば、Aという俳優が出演している番組であることを指定すれば、それに該当する番組を自動的に予約することも可能である。」(4頁左下欄7行?9行)}
にみられるように周知の技術思想にすぎない。

そして、引用発明の受信装置の番組予約機能に、上記「ジャンル指定一括予約」機能を付加する場合、
(i)(上記〔S1〕に対応する点、但し、「選択コード記憶手段」における、選択コードの記憶が「複数」である点は、ひとまず除く)
受信装置を、
「ユーザが所望する選択コードを記憶する選択コード記憶手段を備える」ものとすること
(ii)(上記〔S2〕に対応する点)
受信装置の受信方法を、
「前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップ」を含むとすること
(iii)(上記〔S3〕に対応する点)
受信装置の受信方法が含む、前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップを、
「判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合、その選択コードに関する前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する」ステップとすること、
以上(i)?(iii)は、いずれも当業者が容易に想到し得ることである。

その理由は、以下(2)のとおりである。

(2)上記(i)?(iii)が、当業者が容易想到である理由

(2.1)上記(i) (「選択コード記憶手段」)
ユーザ(視聴者)が、番組表データを利用して所望する番組の予約ができるようにする工程は、一般に、
ユーザの操作によりユーザが予約を所望する番組がどの番組であるかを特定する工程、すなわち、番組指定を受け付ける工程(工程1)、
番組表データを参照し、受け付けた番組の予約を設定する工程(工程2)
からなる。
上記「工程2」は、一般的には、通常、番組表データを参照して、受け付けた番組から、放送時間等の予約に必要な予約設定情報(以下、短く「予約設定情報」という。「予約設定情報」や「ジャンル」は、番組が特定されれば引き出すことのできる情報(番組付随情報)として、番組表データに含まれている。)を得、受け付けた番組の予約を設定する工程を実行するようになされている。{この点周知である。例えば、
周知例5:特開平3-88159号公報(3頁左下欄15行?右下欄13行等参照)、
周知例6:特開平6-22233号公報(段落0021等参照)等参照。}

そして、上記「工程1」の受け付けは、番組を特定する何らかの番組特定情報を、番組特定情報受け付用の記憶手段に記憶することでなされる。{例えば、いかなる番組であるかを識別し特定するためのコード(「番組識別コード」)が、「番組識別コード」受け付用の記憶手段に記憶することでなされる。記憶保持しなければ続く予約設定処理が行えないからであり、このことは、当業者に自明である。

これに対し、上記「ジャンル指定一括予約」の場合、ユーザにより指定されるのは、番組自体ではなくジャンルであるため、上記「工程1」は、ユーザの操作により指定されたユーザの所望するジャンルを受け付ける工程(「工程1’」)、となり、
その受け付けは、ジャンルを示す「選択コード」が、「選択コード」受け付用の記憶手段に記憶することでなされることとなる。このような記憶手段が(続く処理を行う上で)必要であることは、上記の場合と同様、当業者に自明である。
したがって、上記(i){受信装置を、「ユーザが所望する選択コードを記憶する選択コード記憶手段」を備えるものとすること}は、当業者が容易になし得ることである。

(2.2)上記(ii) (「判定ステップ」)
上記「工程1’」では、ジャンル(ジャンルを示す「選択コード」)は指定されたものの、それだけでは番組が特定できず、そのまま直接番組予約を設定する工程に入れない。番組予約のためには、ジャンル(ジャンルを示す「選択コード」)から、番組やその番組の予約設定情報を特定する工程が不可欠である。

《刊行物2の番組表データの構成》
受信装置で記憶する番組表データとしては、
番組毎に、番組に付随するジャンルや予約設定情報を含む番組関連情報を配列した構成の基本的なタイプのもの(以下、「タイプA」という。)のほか、
ジャンル毎に、番組やその番組の予約設定情報を含む番組関連情報を配列した構成のもの(以下、「タイプB」という。)
も想定されるところ、
刊行物2の前掲(K2.3)「この番組表により、・・・番組を確認することができる。しかも受信側で再構成することで、番組ジャンル別や時間別など多彩な表示が可能となる。」からすれば、
刊行物2の番組表データの構成(そのような表示用再構成前)は、上述したタイプAと同様、番組毎に、番組に付随するジャンルや予約設定情報を含む番組関連情報を配列した構成のものが予定されているものといえる。(そして、上記の、「再構成」とは、番組ジャンル別に表示するため、上述したタイプAからタイプBへの再編成することと読める。)

《判定ステップ》
そうすると、刊行物2の番組表データを用いて、指定されたジャンル(ジャンルを示す「選択コード」)から、指定されたジャンルの番組の予約設定情報を特定するには、番組表データの中から指定されたジャンルの番組を検索することが必要となることは明らかであるところ、
ジャンルや予約設定情報は番組に付随するものであるから、
その検索の具体作業は、「番組表データに含まれる選択コードの中に、指定された選択コードと一致するもの(選択コード、選択コードが一致する番組)があるか否かを調べ」、指定された選択コードと一致するものがある場合、その選択コードに対応するジャンルの番組の予約設定情報を抽出し特定する作業であるから、
刊行物2の番組表データを用いて、指定されたジャンル(ジャンルを示す「選択コード」)から、指定されたジャンルの番組の予約設定情報を特定しようとする場合、上記具体作業のうちの「番組表データに含まれる・・・調べ」る作業、すなわち、指定された選択コードと、番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する工程が必要となることは、当業者に自明である。
したがって、上記(ii)の、
受信装置の受信方法を、
前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップを含むとすること
は、当業者が容易になし得ることである。

また、番組表データを用いて、指定されたジャンルから、指定されたジャンルの番組を特定するのに、番組表データから指定されたジャンルの番組を検索することは、周知のことにすぎないことからみても、上記(ii)は当業者が容易に想到し得ることといえる。
これには、例えば、
周知例3:特開平3-99535号公報
{「番組情報には、その番組のジャンル、出演者、内容などの属性が含まれているので、その属性を利用して番組の予約ができる。例えば、・・・ジャンルがドラマである番組を蓄積されている番組情報から入力部7を介して制御部1で検索して(ヘ)、対象となる番組があるか制御部1でチェックする(ト)。・・・格納される(ワ)。」(3頁左下欄14行?右下欄10行)、第2図,第4図等参照}、
周知例4:特開昭60-236591号公報
{「またキーボード9は、・・・番組予約が終了する。(2頁左下欄17行?3頁右上欄3行),第4図等参照}、
周知例5:特開平3-88159号公報
{特許請求の範囲,「次に動作について説明する。・・・一覧表示する。」(3頁左上欄14行?右上欄13行),「番組の録画予約を行う場合には、・・・録画予約の設定を行う。」(3頁左下欄15行?右下欄6行)、第2図,第4図等参照}
周知例7:特開平3-30140号公報
{「番組情報を含む電波を受信する・・・メモリー上に記憶する。」(2頁右下欄下から3行?3頁左上欄2行),「録画予約は、・・・また、番組のジャンルが入力された場合にはそのジャンルの番組が検索され表示される。・・・予約メモリ6上に必要なデータが設定される。」(3頁左上欄10行?右上欄4行)等参照}
等が参照される。

なお、上記(ii)につき、本願発明(請求項3)では、
「前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、・・・番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否かを判定する判定ステップ」と特定していて、一致判定の内容は「選択コードが一致する番組があるか否か」としているが、
これに対応する録画予約の実施例では、
明細書の段落0109に「・・・ステップS22に進み、その読み出された番組表データに付随する(含まれる)選択コードが、メモリ91に記憶されている選択コード(・・・)と一致するか否かが判定される。・・・読み出された番組表データに付随する選択コードが、メモリ91に記憶されている選択コードと一致すると判定された場合、ステップS23に進み、その選択コードを含む制御テキストデータのうちの時刻情報およびチャンネル情報を参照しながらテレビ番組の録画予約(記録予約)が行われる。」と記載されると共に、図15のステップ22に「記憶ジャンルと一致する番組?」と記載されていて、一致判定の内容は、「選択コードが一致するか否か」、または、「選択コードと一致する番組か否か」としている。
すなわち、本願発明の「選択コードが一致する番組があるか否かを判定する」判定ステップとは、「選択コードが一致するか否かを判定する」ものも、「選択コードが一致する番組か否かを判定する」ものも含む意と解せられる。
上記(iii)の点についても、同様に、本願発明の「選択コードが一致する番組があると判定された場合」とは、「選択コードが一致すると判定された場合」も、「選択コードが一致すると番組と判定された場合」も含む意と解せられる。

(2.3)上記(iii) (「予約設定ステップ」)
上述したように当業者容易想到である上記(ii)において、「前記選択コード記憶手段に記憶されている前記選択コードと、前記番組表データ受信手段により受信した番組表データに含まれる前記選択コードが一致する番組があるか否か」が、すでに判定されているのであるから、
この判定ステップの処理後に、前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップを実行させることは、番組予約という目的から当然であるところ、
上記「ジャンル指定一括予約」機能、すなわち、刊行物2の「特定ジャンル番組一括録画予約」の開示に接した当業者が、普通に想定する、「ユーザ(視聴者)が、所望する特定ジャンルを指定する操作を行えば、その指定されたジャンルの番組についてユーザ(視聴者)が個別に指定する操作を繰り返し行わなくても、受信装置が一括して録画予約や受信予約をする機能」を付加するのであるから、
引用発明の、「前記番組表データを参照し、番組の予約を設定する予約設定ステップ」を、ユーザ(視聴者)が番組表データを参照して行う番組指定操作を経ること無しに、「判定ステップの処理で選択コードが一致する番組があると判定された場合」に実行するステップとすること、すなわち、上記(iii)とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2.4)小括
以上(i)?(iii)を総合したものも、格別顕著なものがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)「ユーザが所望する複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段」を、「複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段」とする点について

上記刊行物2の「特定ジャンル番組一括録画予約」なる開示では、その「特定ジャンル」が単数であるとも複数であるとも特定していないが、
ユーザ(視聴者)には、複数のジャンルの番組(例えば、「洋画ジャンル」に属する洋画番組と「外国ドラマジャンル」に属する外国ドラマの両方の番組や、「ニュースジャンル」に属するニュース番組と「天気予報ジャンル」に属する天気予報番組の両方の番組に興味を持っていて、その複数のジャンルの番組を見落とすことなく予約したいユーザがいることは、十分想定しえるものである。
そして、そのような複数のジャンルについて番組予約する機能を実行する工程としては、
一度に1つのジャンル指定のみを受け付け、受け付ける度に、指定されたジャンルの番組を検索し、見つけた番組について予約を設定する作業を繰り返し実行する工程のほか、
一度に複数のジャンル指定を受け付け、指定された複数のジャンルの番組をまとめて検索し、見つけた番組について予約を設定する作業を実行する工程も、共に、当業者に容易に想定されるところ、
後者の方が、ユーザにとっては、より手間が省け、所望番組の一括(自動)予約という観点からも便利であるし(例えば、刊行物2の前掲(K2.8)には、番組選択補助として、自動番組選択まで検討されている旨の記載がある。)、
装置にとっても、検索が1回で済み番組検索がより効率的となって好ましいことは、当業者が十分に予測し得ることである。

したがって、引用発明の受信装置の番組予約機能に、上記「ジャンル指定一括予約」機能を付加する場合、当業者容易想到とした「ユーザが所望する選択コードを記憶する選択コード記憶手段」を、「複数の選択コードを記憶する選択コード記憶手段」とすることも、当業者が容易に想到し得ることというべきである。

また、このことは、
一般に、検索が複数のキーのANDやORの組み合わせでなされることが常套かつ慣用であることや、
「複数のジャンルを予め指定しておき、これら指定された複数のジャンルを、好みの番組を選択受信(蓄積)するためのフィルタとして機能させる技術」が、上記刊行物1に開示されているように公知にすぎず、
同技術が、放送からの番組選択(検索)に相当するもので、番組表データからの番組選択(検索)ではないとしても、ユーザが所望する複数のジャンルの番組視聴を可能とする目的でそのジャンルの番組を探して抽出する点では異なるところはなく、番組表データからの番組選択(検索)についても適用できる技術であることは自明であること
からみても、当業者が容易に想到し得ることというべきである。

同技術が刊行物1に記載されていることを以下に示す。

《刊行物1開示の技術》
前掲(K1.1)?(K1.3)によれば、ISDBにおける付加サービスのうちの、PRESENT(Personal REquest Service by ENhanced Teletext)について、
各番組にキーワードとジャンル番号を付けるとともに、全体の番組表(メニュー)やキーワードの一覧表を送り、受信機側で、受信データの蓄積・検索・表示を行うとし、
前掲(K1.4),(K1.5)によれば、
受信機側で、ジャンル番号が付されて送られてくる番組を選択(蓄積)受信するのに、好みの順番で複数のジャンルをあらかじめ表のかたち(アレンジメニュー)で入力しておき、好みの順番で検索結果を表示するようにすること、これが番組の選択(蓄積)受信するときのフィルタを複数用意することを意味するとされている。
したがって、「複数のジャンルを予め指定しておき、これら指定された複数のジャンルを、好みの番組を選択受信(蓄積)するためのフィルタとして機能させる技術」が開示されている。

(4)まとめ(請求項3に係る発明)
本願発明の、上記相違点に係る構成による効果も、上記各刊行物の記載及び周知事項から予測し得るもので格別顕著なものがあるとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物2、刊行物3、および刊行物1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

《周知例1?7一覧》
(1)周知例1:特開平6-14288号公報
(2)周知例2:特開平4-291046号公報
(3)周知例3:特開平3-99535号公報
(4)周知例4:特開昭60-236591号公報
(5)周知例5:特開平3-88159号公報
(6)周知例6:特開平6-22233号公報(拒絶理由通知で刊行物4として提示済み)
(7)周知例7:特開平3-30140号公報

[3.3]請求項1に係る発明について

請求項1に係る発明は、請求項3に係る発明を「もの(装置)」の発明として表現したものにすぎず、請求項3に係る発明と実質的に変わるところはないから、
上記「3.2」で判断したと同様の理由により、刊行物2、刊行物3、および刊行物1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3.4]請求項2に係る発明について

請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に、「前記選択コードは、階層化されている」なる限定を付した発明であるが、番組のジャンルを階層化することは周知のことにすぎず{例えば、刊行物1の前掲(K1.2)参照。}、この点が格別であるとすることもできない。
したがって、請求項2に係る発明も、刊行物2、刊行物3、および刊行物1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】.むすび
以上のとおり、請求項1?3に係る発明は、いずれも、刊行物2、刊行物3、および刊行物1に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-30 
結審通知日 2007-04-02 
審決日 2007-04-17 
出願番号 特願2002-198073(P2002-198073)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 北岡 浩
松永 隆志
発明の名称 受信装置および受信方法  
代理人 稲本 義雄  

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