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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1158412 |
審判番号 | 不服2005-20308 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-20 |
確定日 | 2007-06-01 |
事件の表示 | 特願2005-122046「磁性部材、モータ装置、着磁方法、及び記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-304475〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 出願の経緯・本願発明 本件出願は、平成17年4月20日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものである。そして、その請求項1には次のとおり記載されている。 「モータ装置のロータに配設され、前記ロータを駆動する磁性部材であって、 前記磁性部材の内径をD、径方向の肉厚をt、ラジアル方向に磁化された磁極の数をP、前記モータ装置を駆動する交流電流の相数をMとした場合、前記Dが20[mm]以下で、前記tがπD/(0.75MP-π)<t≦πD/(0.5MP-π)となるように設定されていることを特徴とする磁性部材。」(この発明を以下「本願発明」という。) 2. 引用刊行物 刊行物1:特開2004-147378号公報 刊行物2:特開平7-79536号公報 刊行物3:特開平7-274450号公報 (1) 刊行物1の記載事項 (ア)原査定の拒絶の理由に引用された、上記刊行物1には、「モータ装置用永久磁石、モータ装置、及びモータ装置用永久磁石の製造方法」と題した発明について、図面とともに次の記載がある。 ・「【請求項2】 モータ装置のロータに配設される円筒状のモータ装置用永久磁石であって、 前記モータ装置用永久磁石は、異方性を有するSm-Co系磁性材料から構成されており、磁場配向後にラジアル方向に磁化され、磁化の方向が揃えられた区分が円周方向に等間隔に形成されており、 前記モータ装置用永久磁石の内径をD、径方向の肉厚をt、前記区分の数をN、前記モータ装置を駆動する交流電流の相数をMとした場合、前記Dが20[mm]以下で、前記tがt≦πD/(NM-π)となるように設定されていることを特徴とするモータ装置用永久磁石。」 ・「【0057】 【数6】πD/(2×NM-π)≦t≦πD/(0.75×NM-π)…(6)」 (イ) すると、刊行物1には、 「モータ装置のロータに配設される永久磁石であって、 前記永久磁石の内径をD、径方向の肉厚をt、磁化の方向が揃えられて円周方向に等間隔に形成された区分の数をN、前記モータ装置を駆動する交流電流の相数をMとした場合、前記Dが20[mm]以下で、前記tがt≦πD/(NM-π)となるように設定されている永久磁石。」との発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。 (2) 刊行物2、3の記載事項 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、前記刊行物2の段落【0009】、【0010】及び前記刊行物3の第8図とその説明には、永久磁石の肉厚がコギングトルクの大小に影響があることについて開示がある。 3. 本願発明と引用発明との対比 両者を比較すると、後者の「モータ装置のロータに配設される永久磁石」が、前者の「モータ装置のロータに配設され、前記ロータを駆動する磁性部材」に相当し、後者の「磁化の方向が揃えられて円周方向に等間隔に形成された区分の数」としての「N」が、前者の「ラジアル方向に磁化された磁極の数」としての「P」に相当するので、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 (1) 一致点 「モータ装置のロータに配設され、前記ロータを駆動する磁性部材であって、 前記磁性部材の内径をDとした場合、前記Dが20[mm]以下である磁性部材。」 (2) 相違点 磁性部材の内径をD、径方向の肉厚をt、ラジアル方向に磁化された磁極の数をP、モータ装置を駆動する交流電流の相数をMとしたときの肉厚tについて、本願発明の場合、「πD/(0.75MP-π)<t≦πD/(0.5MP-π)となるように設定」されるものであるのに対して、引用発明の場合は、t≦πD/(MP-π)である点。 4.相違点についての判断 (1) 小型モータにおいても、コギングトルクの低減は一般的な課題である。そして、刊行物2、3の記載によれば、一般に永久磁石の肉厚がコギングトルクの大小に影響があることは明らかである。 引用発明のものは、主に着磁の問題を解決するべく、特定不等式によって永久磁石の肉厚を特定の数値範囲に設定するものであるが、この場合においても、上記刊行物2、3の記載を参照して、先ずは設定された肉厚の範囲内において肉厚を変化させれば、コギングトルクの大きさも変化するであろうことが当然に推測される。 ところで、引用発明のものの肉厚の範囲については、その境界値に臨界的意義が存するというものでないことが明らかである。すると、引用発明において、コギングトルクについての課題解決に重きを置いて、その方向を探ろうとすれば、着磁の問題をある一定水準に維持しつつ、コギングトルク問題の改善を図るべく、この数値範囲をさらに拡げて、もう少し広い数値範囲の肉厚についても実証してみようとするのが、当業者の通常の創作能力の発揮というものである。 そうすると、このような当業者の通常の創作活動によって、妥当な肉厚tの数値範囲は自ずと明らかになるはずであって、肉厚tの下限については、刊行物1に記載のある不等式「πD/(2×NM-π)≦t≦πD/(0.75×NM-π)」による数値範囲を外して、例えば「πD/(0.75MP-π)<t」とし、また上限については、コスト等との兼ね合いから大凡の最大肉厚を設計的に設定し、例えば「t≦πD/(0.5MP-π)」として、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲であるといえる。 (2) 本願発明の作用効果も、刊行物1ないし3に記載された発明から当業者が予測できた範囲のものである。 したがって、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) なお、本願発明の作用効果について付言する。 本願発明の磁性部材は、その内径D、径方向肉厚tおよびモータの極数P、相数Mについて、内径Dのみを20mm以下と規定した上で、磁性部材の径方向の肉厚tが、特定の不等式で表される範囲の全てを特許請求の範囲とするものである。このことからすると、本願発明の特許請求の範囲はあまりにも広いこととなるが、その請求の範囲の全てについて作用効果が確認できているとは認め難い。 発明の作用効果については例えば、理論的に証明する、実験により確認するなどの仕方があるが、本願発明の場合、そのどちらもなされていないと考えられる。即ち、本願発明は元々、不等式自体がコギングトルク問題を解決でき得ることを理論的に説明するものではないことから、本来であれば、実験により、数値範囲の全てについて効果の実証を行わなければならないのである。しかし、明細書には何ら実験等を行ったとする形跡がない。この点、例えば、相数、極数についての具体例として挙げられている【図4】の、相数Mを3、極数Pを2を採用したとすると、本願発明の肉厚の上限値「πD/(0.5MP-π)」がマイナス値となってしまうのである。この点をみても、発明の全ての範囲について効果を確認していないことが明らかである。 5. むすび 以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-29 |
結審通知日 | 2007-04-03 |
審決日 | 2007-04-16 |
出願番号 | 特願2005-122046(P2005-122046) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天坂 康種 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 丸山 英行 |
発明の名称 | 磁性部材、モータ装置、着磁方法、及び記憶装置 |
代理人 | 川井 隆 |
代理人 | 仲野 均 |