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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1158577
審判番号 不服2003-22357  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-18 
確定日 2007-06-06 
事件の表示 特願2000-127656「半導体パッケージのパッド構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月16日出願公開、特開2001-44608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月24日(パリ条約による優先権主張1999年7月20日(KR)大韓民国)の出願であって、原審において、平成15年8月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年11月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成18年5月26日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年11月30日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.当審において通知した拒絶の理由
平成18年5月26日付けで通知した2つの拒絶の理由のうち、理由Bは以下のとおりである。
『B.本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


理由Bについて
平成15年11月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の記載が以下の点で不明瞭であり、発明の構成が明確でない。
・請求項1には「ソルダランドの上面に形成され,半導体パッケージの複数個のリードが接着される複数個のパッド」、「前記第1及び第2パッド部が・・・上向に所定距離だけ突出され,前記複数個のパッドの高さが上昇し・・・前記複数個のパッドに所定深さで陥没し」と記載されている。
一般的に、印刷回路基板に形成されたランドと半導体パッケージのリードとを半田付けするものにおいて、印刷回路基板に形成されたランドをパッドと称することがある。
しかしながら、請求項1には、パッドや第1及び第2パッド部が熱により液状化する半田で形成されているかのごとく記載されており、ソルダランドと半田とパッド、第1及び第2パッド部との関係が不明瞭である。
・請求項1には「前記第1及び第2パッド部が引力及び表面張力によって上向に所定距離だけ突出され」と記載されているが、引力とは何か不明瞭であり、なぜ第1及び第2パッド部が突出するのか不明瞭であり、「パッドの高さが上昇」することとの関係も不明瞭。

本願においては、【0026】、【0037】、【0043】、【0044】、【0045】の記載からみて、パッド15、55や第1及び第2円形パッド部17,18,57,58が、一般的にパッドと称されるもの(ランド)とは異なり、半田のような熱により液状化する物質により形成されるものであるとしても、発明の詳細な説明が以下の点で不明瞭である。
・【0020】に「このパッド15の上面にはリード13が接合される接合部16が形成される。・・・したがって,半導体パッケージ10の複数個のリード13が対応する複数個の接合部16に各々半田付けされる。」とあり、パッド15の上面と半田との関係が不明瞭。
・【0024】に「また,第1及び第2円形パッド部17,18の高さはパッド15の高さと同一に維持されるので,リード13の底面に接触させる場合,均一にリード13の底面に接触させることができる。」とあるが、第1及び第2円形パッド部は突出するものであるから、均一にリードの底面に接触するとは認められない。
・【0027】の記載はきわめて不明瞭。引力とは何か、なぜ第1及び第2円形パッド部のみが上向に上昇するのか、なぜ第1及び第2円形パッド部の中心点を中心に鉛が集中するのか、なぜパッド部の上面部分15bが第1及び第2円形パッド部17,18方向に集中するのか、不明瞭。また、「結果的にパッド15の高さが上昇する」とあるが、第1及び第2円形パッド部17,18方向に集中したとすると、その分パッドの上面部分15bは下降するものと認められ、不明瞭である。
・【0028】に「図5に示したように,続けてリード13を下方に移動しパッド15の上面15bに固定すると,リード13の底面13aがパッド15の上面15bに充分な深さで陥没し接触できるようになる。」とあり、【0029】に「リード13はパッド15に均一に接触する」とあるが、図5においては、リードの底面13aとパッドの上面15bとの間に間隔(斜線の部材が介在している)があり、リードの底面とパッドの上面とが接触しているとは認められないし、陥没しているとも認められない。
・図5、6、7におけるリードの底面とパッドの上面との間の斜線の部材が何を表しているのか不明瞭。
・図6においてリード13の左側面と斜線の部材の左側面は同一面にあり、これに対しパッド15の左側面は段差となっているが、なぜこのような形状となるのか不明瞭。
・図7においてリード13の右側面と斜線の部材の右側面は同一面にあり、これに対しパッド15の右側面は段差となっているが、なぜこのような形状となるのか不明瞭。
・【0031】に「パッド15の上面15bはリード13の底面13aに均一に接触するようになる。」とあるが、図6、7においては、リードの底面とパッドの上面との間に間隔(斜線の部材が介在している)があり、リードの底面とパッドの上面とが接触しているとは認められない。
・【0036】に「また,図9に示したように,第1及び第2円形パッド部57,58の高さは第1及び第2パッド55,65の高さと同一に維持されるので,リード53の底面が接触する場合,均一にリード53の底面53a(図11)に接触できる。」とあるが、第1及び第2円形パッド部は突出するものであるから、均一にリードに接触するとは認められない。
・【0038】の記載はきわめて不明瞭。引力とは何か、パッド55のどの部分が上向に上昇するのか、なぜ円形パッド部の中心点を中心に鉛が集中するのか、なぜパッド55及び円形パッド部57の両方が上昇するのか、不明瞭。
・【0039】に「リード53の底面53aがパッド55の上面に均一に接触し所定深さで陥没する。」とあるが、図11、12においては、リードの底面53aとパッドの上面55aとの間に間隔(斜線の部材が介在している)があり、リードの底面とパッドの上面とが接触しているとは認められないし、陥没しているとも認められない。
・図11、12におけるリードの底面とパッドの上面との間の斜線の部材が何を表しているのか不明瞭。
・【0041】に「リード53が所定深さでパッド55に陥没している」とあるが、図11、12において、リードがパッドに陥没しているとは認められない。』

3.請求人の主張
これに対し、請求人は平成18年11月30日付けの手続補正書により明細書の【特許請求の範囲】、段落【0024】、【0027】、【0028】、【0031】、【0036】、【0038】、【0039】、【0041】を補正するとともに、同日付の意見書において以下のように主張する(ただし、アンダーラインは当審で付加、以下同様)。
『5)記載不備の拒絶理由について
本書と同日付で提出した手続補正書に基いて説明します。

A.段落0020
「このパッド15の上面にはリードが接合される接合部16が形成される。」と「このパッドはProjection solder pad15という」の記載から見れば、パッド15の上面にSolder(半田)が付いてりることが分かります。その半田が付いていてリード13と接続される部分が接合部16であります。

B.段落0024
第1および第2の円形パッド部は突出部ですが、リード13を複数個のパッド15に接触させる際には,第1および第2の円形パッドに所定の熱を加えて、リードが液状になった第1円形パッド部と前記第2円形パッド部に陥没されます。そこで、第1および第2の円形パッド部は突出部にもかかわらず、リード13とパッド15は均一接触できます。

C.段落0027
第1及び第2円形パッド部17,18の中心点が表面張力によって円形であるため、第一及び第二円形パッド部17,18の中心点を中心に鉛が集中します。したがって,リード13が次第に下降するに従い,パッド部の上面部分15bが第1及び第2円形パッド部17,18方向に集中し,結果的にパッド15の高さが上昇するようになります。即ち,リード13が十分に陥没できる程度でパッド15の高さが上昇するようになります。

D.段落0028
補正により、斜線の部材である半田(パッド15の上面には半田がついているのは段落0020から明確である)を介して、リード13とパッド15が均一に接触することを明らかにしました。また、段落0026の記載によれば、リード13とパッド15を取り付ける場合、所定の熱を加えるため、パッド15(半田を含む)は液状でありますので、リード13が陥没します。

E.図5,6
図6は、図5のC-C断面を図5の右側から見た図でありますので、円形パッド部がある右側だけが膨らんでいます。図7は、図5のD-D断面を図5の左側から見た図でありますので、円形パッド部がある左側だけが膨らんでいます。

F.段落0031
補正により、リード13とパッド15は半田を介して均一に接触されていることを明確にしました。

G.段額0036
第1および第2の円形パッド部は突出部ですが、リード53を複数個のパッドに接触させる際には,第1および第2の円形パッドに所定の熱を加えて、リードが液状になった第1円形パッド部と前記第2円形パッド部に陥没されます。そこで、第1および第2の円形パッド部は突出部でもかかわらず、リード53とパッドは均一接触できます。

H.段落0038
リード53の底面53aがパッド55の上面55aに隣接すると,この時、円形パッド部57には表面張力によって円形パッド部57の中心点を中心に鉛が集中します。したがって,パッド55及び円形パッド部57の上段部が上向に所定距離t1上昇しリード53の底面53aに接触するようになります。即ち、リード53を圧着すると、その力によりパッド55及び円形パッド部57の上段部が上向に膨らみます。そこで、リード53の底面がパッド55及び円形パッド部57に接触されます。

I.段落0039と段落0041
斜線部材は段落0020に記載のように半田です。補正により、その半田を介して、リード53とパッド55が均一に接触できるし、リード53とパッド55に所定の深さで陥没できます。』

4.当審の判断
平成18年11月30日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「補正後の明細書」という)の特許請求の範囲には「前記リードを前記複数個のパッドに取り付ける時に前記パッドに所定の熱を加えると,前記リードが液状のパッドに陥没するとともに,前記第1円形パッド部と前記第2円形パッド部が表面張力により中心が集中し高さが高くなり,前記リードの両側面に各々融着される」という記載があり、これに関連し、補正後の明細書の段落【0027】には、「リード13の底面13aがパッド15の上面15bに隣接すると,第1及び第2円形パッド部17,18の中心点が表面張力によって円形であるため、第一及び第二円形パッド部17,18の中心点を中心に鉛が集中する。したがって,リード13が次第に下降するに従い,パッド部の上面部分15bが第1及び第2円形パッド部17,18方向に集中し,結果的にパッド15の高さが上昇するようになる。即ち,リード13が十分に陥没できる程度でパッド15の高さが上昇するようになる。」と記載されている。なお、段落【0027】中の「鉛」は「半田」を表すものと認められる。

補正後の明細書の段落【0020】の記載及び上記意見書の主張A、Dを考慮すると、本願の実施例におけるパッド15は、その上面に半田がついているものと認められる。また、補正後の明細書の段落【0022】に「パッド15の両側面の所定位置には第1及び第2円形パッド部17,18が側方に互いにジグザグ形状で各々突出形成される。」とあるから、本願の実施例におけるパッド15は、両側面の所定位置に第1及び第2円形パッド部17,18を有するものである。
したがって、本願の実施例においては、半田が、第1及び第2円形パッド部17,18を両側面の所定位置に有するパッド15上面にあるものと認められる。

ところで、上面に半田がついているパッド構造において、パッド上の半田が熱により溶融すると、半田は表面張力によりパッドの広い部分へ引き寄せられて、パッドの広い部分において半田の盛り上がり高さが高くなることは、従来周知の事項である(例えば、特開平8-330714号公報、特開平9-232740号公報、特開平6-77632号公報参照)。
この技術常識を考慮すれば、両側面の所定位置に第1及び第2円形パッド部17,18を有し、上面に半田がついている本願の実施例のパッド15においても、熱を加えてその上面の半田を溶融させた際には、半田は表面張力によりパッド15の広い部分へ引き寄せられて、半田の盛り上がり高さが高くなるものと認められるから、第1及び第2円形パッド部17,18の中心点を中心に半田(鉛)が集中し、第1円形パッド部と第2円形パッド部が表面張力により中心が集中し高さが高くなるとは認められない。しかも、補正後の明細書の発明の詳細な説明に、第1及び第2円形パッド部17,18の中心点を中心に半田(鉛)が集中し、第1円形パッド部と第2円形パッド部が表面張力により中心が集中し高さが高くなるための本願特有の構成が記載されているとも認められない。

上述のとおり、補正後の明細書の実施例において、なぜ第1及び第2円形パッド部17,18の中心点を中心に半田(鉛)が集中するのか、パッド15の高さが上昇するのか、依然として不明瞭であるから、補正後の明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されているとは認められない。また、補正後の明細書の特許請求の範囲の「前記第1円形パッド部と前記第2円形パッド部が表面張力により中心が集中し高さが高くなり」という記載も、同様に依然として不明瞭であるから、補正後の明細書の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-04 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願2000-127656(P2000-127656)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H05K)
P 1 8・ 537- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新海 岳豊島 ひろみ  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
永安 真
発明の名称 半導体パッケージのパッド構造  
代理人 亀谷 美明  

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