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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1158620
審判番号 不服2004-12787  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-22 
確定日 2007-06-07 
事件の表示 平成11年特許願第265935号「CRT(CathodeRayTube)用セミフラットパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月21日出願公開、特開2000-113841〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年8月17日(パリ条約による優先権主張1998年8月17日、大韓民国)の出願であって、平成16年3月15日付けで拒絶査定(平成16年3月24日発送)がなされ、これに対し、同年6月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月22日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成16年7月22日付けの手続補正について
当該補正は、特許請求の範囲については、当該補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2ないし4を新たな請求項1ないし3としたものであるから、請求項の削除を目的とする事項に該当する。そして、当該補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項第1号の規定に適合する。

3 本願発明
平成16年7月22日付けの手続補正は、上記のとおり特許法第17条の2第3項及び第4項第1号の規定に適合するものであるから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成11年10月14日付け手続補正書、平成15年7月16日付け手続補正書及び平成16年7月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 縦横比が4:3であり、パネルの外面の対角曲率半径Rdが30,000mmより大きく、かつパネルの内面はほぼ球状であるCRTにおいて、前記パネルの内面の横曲率半径をRxi、縦曲率半径をRyi、対角曲率半径をRdi、パネル有効面の縦の長さの1/2をYeとする時、パネルの曲率半径に関し、Ryi<Rdi<Rxiであって2×Ryi<Rxi、パネルの縦曲率半径とパネル有効面の縦の長さの1/2に関し、Ryi/Ye>7の条件で設定されることを特徴とするCRT用セミフラットパネル。」

4 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平9-245685号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、カラー受像管に係り、特にパネルの有効領域の平坦度の向上と真空外囲器の大気圧強度の向上とを両立させることができるカラー受像管に関する。」
(2)「【0016】【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。【0017】図1にその一形態であるカラー受像管を示す。このカラー受像管は、後述する実質的に矩形状の有効領域1の周辺部に側壁2が設けられたガラス製パネル3と、このパネル3の側壁2端部に接合されたガラス製漏斗状のファンネル4とからなるガラス製外囲器を有し、そのパネル3の有効領域1の内面に、青、緑、赤に発光する3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン5が形成され、この蛍光体スクリーン5に対向して、その内側にシャドウマスク6が配置されている。一方、ファンネル4のネック7内に3電子ビーム8を放出する電子銃9が配設されている。そして、この電子銃9から放出される3電子ビーム8をファンネル4の外側に装着された偏向装置10の発生する磁界により偏向し、シャドウマスク6を介して上記蛍光体スクリーン5を水平、垂直走査することにより、カラー画像を表示する構造に形成されている。」
(3)「【0018】上記パネル3は、図2(a)に示すように、有効領域1の外面12が長軸方向(X-X軸方向)および短軸方向(Y-Y軸方向)の曲率半径がともにほぼ無限大であるほぼ平面に形成されている。このほぼ平面からなる外面12に対して、内面13は、図2(a)のX-X軸断面を同(c)に示したように、長軸方向の曲率半径をほぼ無限大とし、図2(a)のY-Y軸断面を同(b)に示したように、短軸方向に曲率をもつ円筒状曲面に形成されている。この形状を基本として、・・・有効領域1の内面13を長軸方向にわずかに曲率をもつ曲面とすることは任意である。」
(4)「【0019】上記ように有効領域1の外面12がほぼ平面をなし、内面13が曲面からなるパネル3は、その内面13の曲面形状によって有効領域1周辺部の厚さが決り、有効領域1のX-X軸方向長さがY-Y軸方向長さよりも長い、横>縦のカラー受像管では、パネル3内面の対角部の落込み量が同一であり、その対角部での厚さが同じであれば、その内面13が平均曲率の最も大きい曲面となる。【0020】ここで、平均曲率とは、外面上の任意点におけるあらゆる方向の曲率半径のうち、最大の曲率半径をRmax.、最小の曲率半径をRmim.とした場合、
【数1】K=1/Rmax.+1/Rmim.
で定義される値である。真空外囲器の大気圧強度は、パネルの外面形状および内面形状により決まるが、上記のように有効領域1の外面がほぼ平面であるパネル3では、内面の平均曲率が真空外囲器の大気圧強度を決定する重要な要因の一つとなる。また、数2で表される値も、真空外囲器の大気圧強度を決定する一つの指標とすることができる。
【数2】K=1/R2max+1/R2min
【0021】上記パネル3は、これら数1、数2の値をともに、あらゆる内面形状に対して最大にすることができ、パネルの強度を高めることができる。したがってパネルの外面12をほぼ平面として平坦度を向上させても、現在一般に使用されている外面が平坦化されたパネルとくらべて、パネルの厚さを厚くするなどの補強を大幅に軽減でき、またパネルの有効領域に補強フィルムを貼着して補強するなどをおこなわなくても、パネルの平坦化が可能となり、その平坦化により、高い大気圧強度をもち、かつ視認性の向上したカラー受像管を構成することができる。」
(5)「【0023】【実施例1】実施例1として、最近のカラー受像管の主流である横縦の比が16:9、対角寸法が66cmのカラー受像管に適用した場合について説明する。【0024】この実施例1のパネルは、有効領域の外面をほぼ完全な平面とし、図3に示すように、有効領域1の内面13を、長軸方向の曲率半径を無限大とし、短軸方向を単一曲率半径とした円筒状曲面としたものであり」
(6)「【0040】【実施例6】この実施例6のパネルは、有効領域の外面をほぼ完全な平面とし、有効領域の内面を完全な円筒状曲面ではなく、図6に示すように、長軸方向にわずかであるが曲率をもつものとなっている。具体的には、内面の長軸端14での落込み量Δ16が、
Δ16=1mm
となるように、曲率半径がR41363となっている。また短軸方向の曲率半径が、短軸上を曲線17a、短辺付近を曲線17bで示したように、わずかに異なるものとなっている。表3にこの実施例6のパネルの特性を実施例1のパネルのパネルと比較して示す。【0041】【表3】
(当審注:以下【表3】を抜粋して示す。)
実施例6
パネル内面対角平均曲率半径 R7782
長軸曲率半径 R41363
短軸曲率半径 R2620
上記のような曲面にすることにより、パネルの有効領域の内面は、完全な円筒状曲面とはならず、中央部18および対角部19ともに、平均曲率は小さくなるが、基本となる曲面形状は、この発明の曲面形状を満足しており、真空外囲器の大気圧強度についても、上記各実施例とほぼ同等のものとなる。」
したがって、上記摘記事項(1)?(6)からみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「縦横比が16:9であり、パネル3の外面はほぼ完全な平面とし、かつパネル3の内面は曲面形状であるカラー受像管において、前記パネル3の内面の短軸曲率半径がR2620であり、長軸曲率半径がR41363であり、対角平均曲率半径がR7782であり、パネル対角寸法が66cmであるカラー受像管用パネル。」

5 対比
本願第1発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「パネル3」、「対角平均曲率半径」、「カラー受像管」、「短軸曲率半径」、「長軸曲率半径」は、それぞれ、本願第1発明の「パネル」、「対角曲率半径Rd」、「CRT」、「縦曲率半径Ryi」、「横曲率半径Rxi」に相当する。
(2)引用発明のパネル3の外面はほぼ完全な平面であるから、外面の対角平均曲率半径は無限大となり、本願第1発明の「外面の対角平均曲率半径Rdが30,000mmより大き」いことに含まれる。
(3)引用発明では、対角寸法が66cmであり、縦横比が16:9であることから、パネル3の縦の長さの1/2(「Ye」に相当)は、幾何学的に算出することができ、161.8mmとなる。ここで、引用発明にいう対角寸法は、パネル有効面の対角寸法であるとして上記算出を行っているが、当該対角寸法をパネル自身の対角寸法(外径対角寸法)を意味しているとしても上記算出値が大きく変動するものでもなく、下記の不等式の条件を満たしていることに変わりはない。
そうすると、引用発明において、短軸曲率半径がR2620であり、長軸曲率半径がR41363であり、対角平均曲率半径がR7782であり、Yeが161.8mmとなるから、本願第1発明の不等式の条件「Ryi<Rdi<Rxi」、「2×Ryi<Rxi」及び「Ryi/Ye>7」をすべて満たしていることが明らかである。
(4)本願第1発明では、「内面はほぼ球状である」CRTと規定しているが、上記(3)に記載した不等式の条件を満たす内面についてほぼ球状と規定しているのであるから、同じ条件を満たしている引用発明の内面形状は、本願第1発明でいう「内面はほぼ球状である」ことと異ならない。
以上(1)?(4)の考察から、両者は、
【一致点】
「所要の縦横比であり、パネルの外面の対角曲率半径Rdが30,000mmより大きく、かつパネルの内面はほぼ球状であるCRTにおいて、前記パネルの内面の横曲率半径をRxi、縦曲率半径をRyi、対角曲率半径をRdi、パネル有効面の縦の長さの1/2をYeとする時、パネルの曲率半径に関し、Ryi<Rdi<Rxiであって2×Ryi<Rxi、パネルの縦曲率半径とパネル有効面の縦の長さの1/2に関し、Ryi/Ye>7の条件で設定されるCRT用セミフラットパネル。」
である点で一致し、次の相違点で相違する。
【相違点】
相違点:所要の縦横比が、本願第1発明では、4:3であるのに対し、引用発明では、16:9である点。

6 判断
上記相違点について検討する。
CRTの技術分野においては、日本のテレビの標準方式では、毎秒30画面、縦横比4:3の画面を525本の水平走査線に分解して送ることにしてきたため、それを受像して表示するテレビ受像用の縦横比4:3のCRTは従来から慣用されてきたものであり、また、縦横比16:9の横長のCRTも、ハイビジョン放送や、横長の映画用DVDを表示するために近年広く用いられるようになったものであるから、縦横比として、4:3のものも、16:9のものも、いずれも慣用されている。
そして、引用例には、「【0019】上記ように有効領域1の外面12がほぼ平面をなし、内面13が曲面からなるパネル3は、その内面13の曲面形状によって有効領域1周辺部の厚さが決り、有効領域1のX-X軸方向長さがY-Y軸方向長さよりも長い、横>縦のカラー受像管では、パネル3内面の対角部の落込み量が同一であり、その対角部での厚さが同じであれば、その内面13が平均曲率の最も大きい曲面となる。【0020】ここで、平均曲率とは、外面上の任意点におけるあらゆる方向の曲率半径のうち、最大の曲率半径をRmax.、最小の曲率半径をRmim.とした場合、
【数1】K=1/Rmax.+1/Rmim.
で定義される値である。真空外囲器の大気圧強度は、パネルの外面形状および内面形状により決まるが、上記のように有効領域1の外面がほぼ平面であるパネル3では、内面の平均曲率が真空外囲器の大気圧強度を決定する重要な要因の一つとなる。また、数2で表される値も、真空外囲器の大気圧強度を決定する一つの指標とすることができる。
【数2】K=1/R2max+1/R2min
【0021】上記パネル3は、これら数1、数2の値をともに、あらゆる内面形状に対して最大にすることができ、パネルの強度を高めることができる。」(上記摘記事項(4)参照)、「前述したように、パネルおよびファンネルからなる真空外囲器の大気圧強度は、このパネルの平均曲率および曲率2乗和と相関があり、一般にこれらの値が大きいほど、真空外囲器の大気圧強度は大きくなる」(段落【0027】参照)と記載されており、これらの記載によれば、数1、数2の値が大きいほど真空外囲器の大気圧強度は大きくなることは、縦横比が、16:9であるか4:3であるかを問わず成り立つもの解される。そうすると、引用発明に示された曲率半径の大小関係を、慣用されている縦横比4:3のパネルに適用することは、当業者にとって困難性はない。
したがって、引用発明を、上記慣用されている縦横比4:3のパネルに適用して、本願第1発明のごとく改造することは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願第1発明の奏する効果も、引用例に記載された事項及び上記慣用手段に基づいて、当業者であれば予測し得る範囲内のものにすぎない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用発明及び上記慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-27 
結審通知日 2007-01-10 
審決日 2007-01-23 
出願番号 特願平11-265935
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平松岡 智也渡戸 正義  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 下中 義之
小川 浩史
発明の名称 CRT(CathodeRayTube)用セミフラットパネル  
代理人 浜本 忠  

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