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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1158637
審判番号 不服2004-25778  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-16 
確定日 2007-06-07 
事件の表示 平成11年特許願第 45911号「画像復号装置および画像復元方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-244928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 手続
本願は,平成11年2月24日の出願であって,平成16年10月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成17年1月13日付けで手続補正(明細書または図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされたものである。

2 原査定の理由
原査定の理由は,概略,下記のとおりである。

記(原査定の理由)
(1)本願は,特許請求の範囲(請求項1ないし12)の記載が不明確であるから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願の請求項1から12までに係る発明は,下記刊行物に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ア 特開平7-59045号公報
イ 特開平7-99647号公報
ウ 特開平8-280011号公報
エ 特開平7-336690号公報
オ 特開平8-317386号公報
以上

第2 補正の適否及び特許請求の範囲の記載事項
1 補正の適否
平成17年1月13日付けの手続補正は,(後記のとおり,補正後の特許請求の範囲の記載が依然として不明確ではあるものの,)願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正であって(第17条の2第3項),その内容から見て,誤記の訂正(第17条の2第4項第3号)または拒絶の理由に示す事項についての明りょうでない記載の釈明(第17条の2第4項第4号)を目的とするものに該当するとみることができる。

2 特許請求の範囲の記載事項
本願の補正後の特許請求の範囲の記載のうち,補正後の請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】フィールド単位に供給される符号化した画像データを受信し,該受信した画像データを復号する画像復号装置において,該装置は,
供給される多重化信号の誤りを検出し,正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段と,該切り出された画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段と,前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段とを備え,
さらに,該装置は,
前記復号手段から正常に復号した画像データを格納する復号結果格納手段と,
前記復号手段から正常に復号した画像データの入出力を選択する第1の選択手段と,
前記復号結果格納手段からの復号した画像データの入出力を選択する第2の選択手段と,
第2の選択手段を介して前記復号結果格納手段に格納されていた画像データに基づいて誤ったフィールドの画像データを予測する画像予測手段と,
誤り検出の結果が正常を示す状態に応じて前記復号手段から正常に復号した画像データを前記復号結果格納手段に供給する第1の選択手段の動作を制御する第1制御信号,前記復号結果格納手段の正常に復号した画像データを外部に出力させる第2の選択手段の動作を制御する第2制御信号,前記誤り検出の結果が誤りを示す状態に応じて前記復号結果格納手段に対する前記復号手段が正常に復号した画像データの破棄および前記復号結果格納手段から復号した画像データの第2の選択手段への読出しを制御する第3制御信号,および前記画像予測手段にて第2の選択手段を介して前記誤りに対応して供給される画像データだけを外部に繰り返し出力させる制御および誤りを補償する画像データの書込み/読出し制御を行う第4制御信号を生成し,前記画像予測手段に供給される一画像における半分の画像を一フィールドとし,前記誤りを示したフィールドに対して相前後するいずれかのフィールドの画像データを第4制御信号に応じて前記画像予測手段から前記復号手段への供給を制御する誤り補償制御手段とを含むことを特徴とする画像復号装置。」

第3 当審の判断
1 原査定の理由(1)について(特許法第36条第6項第2号)
a 「誤り検出の結果が正常を示す状態」の場合
請求項1には,「誤り検出の結果が正常を示す状態に応じて前記復号手段から正常に復号した画像データを前記復号結果格納手段に供給する第1の選択手段の動作を制御する第1制御信号」,「前記復号結果格納手段の正常に復号した画像データを外部に出力させる第2の選択手段の動作を制御する第2制御信号」と記載されており,「誤り検出の結果が正常を示す状態」の場合には,復号手段から正常に復号した画像データが前記復号結果格納手段に供給され,該正常に復号した画像データが外部に出力されることは見て取れるものの,この場合に,請求項1の「画像予測手段」が「復号手段」による復号動作にどう関与するのか明確でなく,「復号手段」が過去に正常に復号した画像データをどのような経路で入手して参照画像とするのかが不明確である。
また,フィールド単位で復号される画像データを上記記載のとおり外部に出力する場合,最終的な出力画像として,2つのフィールドをライン毎に交互に合成して生成されるフレーム画像が得られるのかどうか不明であり,ましてや,MPEGのように前後のフレームから双方向予測を行う場合には,入力画像の順序と出力画像の順序を入れ替える必要もあるので,そのような動作をいかに実現し得るのかも不明である。この点に関連し,本願明細書段落40ないし段落42を参照すると,2つのフィールドから1フレーム分の予測データ及び出力画像データを生成する機能は「画像データ予測部26」が有するとも考えられるが,そうとすると,請求項1の「復号結果格納手段」,「第2の選択手段」,「画像予測手段」の相互関係が不明である。

b 「誤り検出の結果が誤りを示す状態」の場合
請求項1には,「前記誤り検出の結果が誤りを示す状態に応じて前記復号結果格納手段に対する前記復号手段が正常に復号した画像データの破棄および前記復号結果格納手段から復号した画像データの第2の選択手段への読出しを制御する第3制御信号,および前記画像予測手段にて第2の選択手段を介して前記誤りに対応して供給される画像データだけを外部に繰り返し出力させる制御および誤りを補償する画像データの書込み/読出し制御を行う第4制御信号を生成し,前記画像予測手段に供給される一画像における半分の画像を一フィールドとし,前記誤りを示したフィールドに対して相前後するいずれかのフィールドの画像データを第4制御信号に応じて前記画像予測手段から前記復号手段への供給を制御する」とあるが,第3制御信号による「前記復号結果格納手段に対する前記復号手段が正常に復号した画像データの破棄」が,上記a(「誤り検出の結果が正常を示す状態」)の場合において「復号結果格納手段」に格納された「正常に復号した画像データ」を「破棄」するものとすれば,正常に動作しないことは明らかであるし,「復号結果格納手段」に格納された誤りを検出したフィールドの画像データを破棄するものと解釈すると,「前記復号手段から正常に復号した画像データの入出力を選択する第1の選択手段」との関係が不明確である。結局,第3制御信号により,どの画像データをどのようにして「破棄」するのかが不明確である。
また,「前記誤り検出の結果が誤りを示す状態に応じて(中略)前記復号結果格納手段から復号した画像データの第2の選択手段への読出しを制御」し,「前記画像予測手段にて第2の選択手段を介して」「誤りを補償する画像データの書込み/読出し制御」する場合,どうすれば「前記誤りを示したフィールドに対して」後の(未来の)フィールドの画像データを「第4制御信号に応じて前記画像予測手段から前記復号手段へ」供給し得るのかが不明確である。
さらに,「前記誤りに対応して供給される画像データ」と「誤りを補償する画像データ」との関係が不明であり,「前記誤りに対応して供給される画像データだけを外部に繰り返し出力」することの意味も不明確である。結局,上記aの場合と同様,最終的にどのような出力画像が得られるのかが不明確である。

上記a,b,のとおりであるから,少なくとも請求項1の各手段の相互関係(特に,「復号結果格納手段」及び「誤り補償制御手段」とその他の手段との相互関係),「誤り補償制御手段」の制御内容,「画像データの入出力の選択」が不明確であって,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6号第2号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定の理由(2)について(特許法第29条第2項)
(1)本願発明
上記「第3 1」のとおり,本願の請求項1の記載が不明確であるが,本願明細書及び図面(平成16年9月13日付け及び平成17年1月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載を参酌すれば,請求項1に係る発明は,概ね以下の制御を行うことを意図したものといえる。

(a)「誤り検出の結果が正常を示す状態」の場合には,
(a-1)復号手段からの正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段に格納し,
(a-2)前記正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出して(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(a-3)前記復号結果格納手段から読み出した(2フィールド分の)該画像データを用いて参照画像を作成するよう制御し,
(b)「誤り検出の結果が誤りを示す状態」の場合には,
(b-1)誤りが検出されたフィールドの画像データを破棄し,
(b-2)前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出し,前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(b-3)前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)参照画像を作成して復号手段に供給する。

また,請求項1の「供給される多重化信号の誤りを検出し(中略)前記画像データを切り出す分離手段」及び「前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段」には,(「誤り検出の結果」に応じた制御を行うための)「誤りを検出」する機能が重複して記載されていると認められるが,詳細な説明及び図面を参酌すれば,「システム多重復号器12」内で行われた誤り検出の結果が「誤り補償制御部20(誤り情報格納部20a)」に送られるのであるから,請求項1の「供給される多重化信号の誤りを検出し,正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段と,該切り出された画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段と,前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段とを備え」は,「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段と,前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段と,該切り出された画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段とを備え」と解釈するのが相当である。

そこで,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」ともいう。)を以下のとおり認定して,原査定の理由(2)についても,一応検討しておく。

「フィールド単位に供給される符号化した画像データを受信し,該受信した画像データを復号する画像復号装置において,該装置は,
供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段と,前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段と,該切り出された画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段とを備え,
さらに,該装置は,
前記復号手段から正常に復号した画像データを格納する復号結果格納手段と,
前記復号手段から正常に復号した画像データの入出力を選択する第1の選択手段と,
前記復号結果格納手段からの復号した画像データの入出力を選択する第2の選択手段と,
第2の選択手段を介して前記復号結果格納手段に格納されていた画像データに基づいて誤ったフィールドの画像データを予測する画像予測手段と,
誤り補償制御手段とを含み,
前記誤り補償制御手段は,
(a)「誤り検出の結果が正常を示す状態」の場合には,
(a-1)前記第1の選択手段の動作を制御して復号手段からの正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段に格納し,
(a-2)前記正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出して(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(a-3)前記復号結果格納手段から読み出した(2フィールド分の)該画像データを用いて参照画像を作成するよう制御し,
(b)「誤り検出の結果が誤りを示す状態」の場合には,
(b-1)前記第1の選択手段の動作を制御して誤りが検出されたフィールドの画像データを破棄し,
(b-2)前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出し,前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(b-3)前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)参照画像を作成して復号手段に供給するよう制御するものであることを特徴とする画像復号装置。」

(2)刊行物の記載
原査定において引用された特開平8-317386号公報(平成8年11月29日,以下「引用例」という。)には,図面とともに,次のとおりの記載がある。
ア 「【産業上の利用分野】本発明はインターレス符号化画像の復号方法及び装置に係り,特に,MPEG等の国際標準化方式により符号化されたインターレス画像の復号を行なうためのインターレス符号化画像の復号化方法及び装置に関する。
動画像のディジタル伝送,蓄積サービスの実現には,情報量を効率的に圧縮することが不可欠である。(中略)フレーム間予測は,動画像符号化の国際標準化方式であるH.261,MPEG-1,及びMPEG-2に採用されている。MPEG-2はMPEG-1の拡張であり,NTSC信号,やPAL信号などのインターレス画像を効率的に符号化できるような方式になっており,フィールドごとに独立した画像として符号化することが可能である。」(段落【0001】ないし段落【0003】)
イ 「本実施例の復号装置11は符号化データを元のデータに復元する可変長復号化部12,可変長復号化部12で復元されたデータに逆量子化処理を行なう逆量子化部13,逆量子化されたデータに逆離散コサイン変換処理を行なう逆離散コサイン変換部18,復号画像を保持するフレームメモリ14,逆離散コサイン変換部18で逆離散コサイン変換されたデータとフレームメモリ14に保持された参照画面とを加算し,フレーム間予測による復号画像を得る加算器15,フレームメモリ14に保持された復号画像を表示する表示部16,可変長復号化部12でのデータ復号時にエラーが生じた際にエラーが生じたデータを補償し,画像への影響が少なくなるようにデータを制御するエラー復帰制御部17より構成される。
可変長復号化部12には符号化装置側で国際標準化方式であるH.261,MPEG1,MPEG2等の動画像符号化方法により符号化された動画像を符号化データが供給される。可変長復号化部12は符号化されたデータを復号し,データエラーが発生した場合にはエラー復帰制御部17にエラー通知を行なう。
可変長復号化部12で復号化された復号化データは逆量子化部13に供給される。逆量子化部13では可変長復号化部12から出力される復号化データに対して逆量子化処理を行ない,その結果を逆離散コサイン変換部18に供給する。
逆離散コサイン変換部18には逆量子化部13から逆量子化データが供給される。逆離散コサイン変換部18では逆量子部13から出力される逆量子化データに対して,逆離散コサイン変換処理を行ない,その結果を加算器15に供給する。
加算器15には逆離散コサイン変換部18から逆離散コサイン変換処理結果が供給されると共に,フレームメモリ14からフレーム間予測に用いられる参照画像データが供給されており,逆離散コサイン変換部18からの逆離散コサイン変換処理結果と,フレームメモリ14からの参照画像データとを加算することにより復号画像データを生成する。」(段落【0025】ないし段落【0028】)
ウ 「加算器15で復号された復号画像データはフレームメモリ14に供給される。フレームメモリ14は加算器15から供給された復号画像データを保持する。フレームメモリ14に保持された復号画像データは表示部16に供給される。表示部16はフレームメモリ14から供給される画像データに応じた画像を出力する。」(段落【0028】)
エ 「エラー復帰制御部17は可変長復号化部12からエラー通知が供給されるとエラーが発生したフィールドに対してフレームメモリ14に保持された他のフィールドの画像データを代用するようにフレームメモリ14のデータの書き換えを行なう。」(段落【0029】)
オ 「エラー復帰制御部17ではデータにエラーを検出すると,エラーが検出されたデータが第1フィールドの画像データに相当するものか,第2フィールドの画像データに相当するものかを判断する(ステップS1-1,S1-2)。
ステップS1-2で,第2フィールドに相当する画像データにエラーが検出されたと判断されると,次にエラー復帰制御部17は図4(B)に示すようにエラーが生じたフィールドBF1の前に復号された第1フィールドFB1の復号画像データAをエラーが生じた第2フィールドBT1の復号画像データに代用する(ステップS1-3)。
以上によりエラーが生じたフィールドの補償が行なえる。1フレームのデータが得られるエラー復帰制御部17は次のフィールドが復号化されると,復号化されたフィールドが第1フィールドか第2フィールドかを判断する(ステップS1-4,S1-5)。ステップS1-5で復号化されたフィールドが第1フィールドの場合には一連のデータ補償処理を終了する。
また,ステップS1-5で次に復号化されたフィールドが第2フィールドの場合には図4(C)に示すように復号化された第2フィールドBF2のデータBを第2フィールドBF2と対をなし1つのフレームを形成する第1フィールドTF2のデータBに代用する(ステップS1-6)。
以上により復号できなかったフィールドが補償され,1フレーム分の画像データが復元される。このため,後に続くデータの画像予測等に影響を与えることなく続けて画像を表示できるようになる。」(段落【0031】ないし段落【0034】)

(3)対比
本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。

a 引用例の上記記載アによれば,引用発明は,MPEG等の国際標準化方式により符号化されたインターレス画像の復号を行なうためのインターレス符号化画像の復号化方法装置であって,動画像のディジタル伝送に用いられ,フレーム間予測を採用し,インターレス画像をフィールド毎に独立した画像として符号化するものであるから,「フィールド単位に供給される符号化した画像データを受信し,該受信した画像データを復号する画像復号装置」に関するものといえる。

b 引用例の上記記載イ及び図2によれば,可変長復号化部12は符号化されたデータを復号し,データエラーが発生した場合にはエラー復帰制御部17にエラー通知を行ない,逆量子化部13では可変長復号化部12から出力される復号化データに対して逆量子化処理を行ない,逆離散コサイン変換部18では逆量子部13から出力される逆量子化データに対して,逆離散コサイン変換処理を行なう。そして,加算器15には逆離散コサイン変換部18から逆離散コサイン変換処理結果が供給されると共に,フレームメモリ14からフレーム間予測に用いられる参照画像データが供給され,逆離散コサイン変換部18からの逆離散コサイン変換処理結果と,フレームメモリ14からの参照画像データとを加算することにより復号画像データを生成する。
また,引用例の記載ア,ウ,オ及び図4を参照すれば,フィールド毎に符号化された画像データを復号してフレーム間予測を行い,画像を表示しているから,上記復号した画像データには,該画像データがどのフィールドかを示すフィールド情報を含むことも明らかである。
「画像データの誤りを検出する誤り検出手段」及び「画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段」の存在が認められる。
もっとも,画像データは,本願発明では,「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段」によって「切り出された」画像データであるのに対し,引用発明では,ディジタル伝送された動画像を受信した画像データではあるものの,「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段」によって「切り出された」画像データかどうか定かではない。

c 引用例の上記記載ウによれば,加算器15で復号された復号画像データはフレームメモリ14に供給され,保持される。また,引用例の上記記載エによれば,エラーが発生した場合には,エラーが発生したフィールドに対してフレームメモリ14に保持された他のフィールドの画像データを代用するようにフレームメモリ14のデータの書き換えが行われる。
フレームメモリ14は,「復号手段から正常に復号した画像データを格納する復号結果格納手段」として機能し,「誤り検出の結果が正常を示す状態の場合」には,「復号手段からの正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段に格納」するとともに,「誤り検出の結果が誤りを示す状態の場合」には,「誤りが検出されたフィールドの画像データを」他のフィールドの画像データで代用するよう制御していると認められる。
もっとも,本願発明では,「復号手段から正常に復号した画像データの入出力を選択する第1の選択手段」を有し,「前記第1の選択手段の動作を制御して」復号結果格納手段への格納または破棄の選択を行っているのに対し,引用例には,そのような記載はない。

d 引用例の上記記載イ,エ,オ,図2及び図4によれば,エラーが発生していない状態では,加算器15には逆離散コサイン変換部18から逆離散コサイン変換処理結果が供給されると共に,フレームメモリ14からフレーム間予測に用いられる参照画像データが供給されており,逆離散コサイン変換部18からの逆離散コサイン変換処理結果と,フレームメモリ14からの参照画像データとを加算することにより復号画像データを生成する。そして,加算器15で復号された復号画像データはフレームメモリ14に供給されて保持されるとともに,表示部16に供給される。
一方,エラーが発生した場合には,エラーが発生したフィールドに対してフレームメモリ14に保持された同一フレームの他方のフィールドの画像データを代用するようにフレームメモリ14のデータの書き換えが行われ,エラーのため復号できなかったフィールドが補償されて,1フレーム分の画像データが復元され,表示されるとともに,参照画像として加算器15に与えられる。
フレームメモリ14は,「前記復号結果格納手段に格納されていた画像データに基づいて誤ったフィールドの画像データを予測する画像予測手段」としても機能し,「誤り検出の結果が正常を示す状態の場合には,正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段(としてのフレームメモリ14)から読み出して(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,前記復号結果格納手段(としてのフレームメモリ14)から読み出した(2フィールド分の)該画像データを用いて参照画像を作成するよう制御し」,「誤り検出の結果が誤りを示す状態の場合には,正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段(としてのフレームメモリ14)から読み出し,前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した前記正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)参照画像を作成して復号手段に供給するよう制御」していると認められる。
上記制御及び上記cの制御を行う「誤り補償制御手段」の存在が認められる。
もっとも,誤ったフィールドの画像データを正常に復号した画像データで代用する際,前記復号結果格納手段から画像予測手段への正常に復号した画像データの受け渡しは,本願発明では,「復号結果格納手段からの復号した画像データの入出力を選択する第2の選択手段」を有し,「第2の選択手段を介して」行っているのに対し,引用例には,そのような記載はない。

したがって,両者は,
「フィールド単位に供給される符号化した画像データを受信し,該受信した画像データを復号する画像復号装置において,該装置は,
前記画像データの誤りを検出する誤り検出手段と,前記画像データに伸張処理を施して復号し,該画像データがどのフィールドかフィールド情報として検出し,該フィールド情報を含む復号した画像データを生成する復号手段とを備え,
さらに,該装置は,
前記復号手段から正常に復号した画像データを格納する復号結果格納手段と,
前記復号結果格納手段に格納されていた画像データに基づいて誤ったフィールドの画像データを予測する画像予測手段と,
誤り補償制御手段とを含み,
前記誤り補償制御手段は,
(a)「誤り検出の結果が正常を示す状態」の場合には,
(a-1)復号手段からの正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段に格納し,
(a-2)前記正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出して(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(a-3)前記復号結果格納手段から読み出した(2フィールド分の)該画像データを用いて参照画像を作成するよう制御し,
(b)「誤り検出の結果が誤りを示す状態」の場合には,
(b-1)誤りが検出されたフィールドの画像データを破棄し,
(b-2)前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを復号結果格納手段から読み出し,前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)出力画像を作成して外部に出力し,
(b-3)前記誤りが検出されたフィールドの画像データに代えて,該読み出した前記(a-1)の正常に復号したフィールドの画像データを用いて(2フィールド分の画像データから1フレームの)参照画像を作成して復号手段に供給するよう制御するものであることを特徴とする画像復号装置。」
である点で一致し,以下の各点で相違している。

[相違点1]画像データは,本願発明では,「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段」によって「切り出された」画像データであるのに対し,引用発明では,ディジタル伝送された動画像を受信した画像データではあるものの,「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段」によって「切り出された」画像データかどうか定かではない点。
[相違点2]本願発明では,「復号手段から正常に復号した画像データの入出力を選択する第1の選択手段」を有し,「前記第1の選択手段の動作を制御して」復号結果格納手段への格納または破棄の選択を行っているのに対し,引用例には,そのような記載はない点。
[相違点3]誤ったフィールドの画像データを正常に復号した画像データで代用する際,前記復号結果格納手段から画像予測手段への正常に復号した画像データの受け渡しは,本願発明では,「復号結果格納手段からの復号した画像データの入出力を選択する第2の選択手段」を有し,「第2の選択手段を介して」行っているのに対し,引用例には,そのような記載はない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。
a 相違点1について
受信した多重化信号から「供給される正常な多重化信号に対する復号処理時間を保証しながら,該多重化信号から前記画像データを切り出す分離手段」によって画像データを切り出し,「切り出された」画像データを復号することは,周知技術(例えば,特開平7-38888号公報参照)であり,引用発明に相違点1に係る構成を付加することに格別の困難はない。また,これによる効果も予測される範囲を超えるものではない。

b 相違点2について
誤りを含む画像データを画像メモリに格納することなく破棄することは周知技術(例えば,特開平10-23431号公報,特開平11-4450号公報参照,特開昭63-50284号公報(選択手段を有し,誤りの有無に応じて画像メモリへの格納・破棄を選択している。)参照)にすぎず,引用発明において,復号手段(逆離散コサイン変換部18)と復号結果格納手段(フレームメモリ14)の間に(第1の)選択手段を設けて,格納・破棄を選択することは当業者が容易に想到し得ることである。また,これによる効果も予測される範囲を超えるものではない。

c 相違点3について
画像メモリ間のデータの移動を制御する際に,(第2の)選択手段を介して行うことは,当業者が適宜なし得る設計的事項であり,引用発明において,フレームメモリ14に対するエラー復帰制御部17の制御に相違点3に係る構成を採用することに格別の困難はない。また,これによる効果も予測される範囲を超えるものではない。

以上判断したとおり,本願発明における上記相違点1ないし3に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり,また,各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして,本願発明の作用効果も,引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,請求項1の記載が不明確であり,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,請求項1に係る発明は,特許を受けることができない。仮に,善解したとしても,請求項1に係る発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,残る請求項(請求項2ないし12)について特に検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-29 
結審通知日 2007-04-03 
審決日 2007-04-16 
出願番号 特願平11-45911
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 537- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 祐樹  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 北岡 浩
南 義明
発明の名称 画像復号装置および画像復元方法  
代理人 香取 孝雄  

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