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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1158680
審判番号 不服2005-13245  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-11 
確定日 2007-06-08 
事件の表示 特願2001-362109「感熱プレラベル付きガラスびん」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月10日出願公開、特開2003-165544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年11月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年8月30日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「外面に、糖類及び/又はその誘導体と、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含むコーティング液によるコーティングを行った後、そのコーティング層の上に感熱ラベルを貼付したことを特徴とする感熱プレラベル付きガラスびん」(以下、「本願発明」という。)

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-31095号公報(平成13年2月6日公開、以下、「引用文献1」という。)には、「感熱プレラベル付きガラスびん」に関して以下の事項が記載されている。
(イ)段落番号【0001】【発明の属する技術分野】に、「本発明は、外面の保護や装飾のためにガラスびんに施されたプラスチックコーティング上に、高い接着強度で感熱ラベルを装着した感熱プレラベル付きガラスびんに関する。」
(ロ)段落番号【0006】に、「・・・洗びん時の耐水性、耐アルカリ性や充填時の耐熱性などの面で、プラスチックコーティングびんをボトラーでの使用に耐え得るプレラベルびんとして供給することは困難であった。」
(ハ)段落番号【0007】に、「また、プラスチックコーティング上に感熱ラベルを装着することも試みられたのであるが、感熱ラベルが界面剥離を起こす等、接着強度面で問題があった。」
(ニ)段落番号【0010】に、「本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プラスチックコーティングに表面処理を施すことにより、感熱ラベルを高い接着強度でラベリングできることを見出したのであって、本発明は、この知見に基づいて完成された接着強度の高い感熱プレラベル付きガラスびんを提供することを目的としている。」
(ホ)段落番号【0011】【課題を解決するための手段】に、「即ち、本発明による感熱プレラベル付きガラスびんは、ガラスびんの外面に活性エネルギー線硬化型または熱硬化型のプラスチックコーティングを施し、このプラスチックコーティングに表面処理を施した後、その表面処理面部に感熱ラベルを装着した点に特徴がある。」

また、同じく引用された特開2001-11390号公報(平成13年1月16日公開、以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ヘ)段落番号【0002】【従来の技術】に、「従来から徐冷炉の出口付近(いわゆるコールドエンド)でガラスびんの外面に固体滑剤コーティング剤を塗布するコーティングが行われている。このようなコーティングを行うことで、ガラスびんに滑性及び耐スクラッチ性が付与され、びんの強度が向上する。」
(ト)段落番号【0003】【発明が解決しようとする課題】に、「このようなコーティングを行うと、ガラスびんに滑性及び耐スクラッチ性が付与される一方びんの接着性が低下し、ガラスびんの外面にデンプン糊などの比較的接着力の弱い糊でラベルを貼付する場合、ラベルが剥がれやすくなるという問題がある。・・・本発明は、ガラスびんの滑性及び耐スクラッチ性にほとんど影響しないで糊の接着性を向上し、デンプン糊などでラベルを貼付した場合でもラベルが剥がれにくいコーティング剤、コーティング方法及びガラスびんを提供するものである。」
(チ)段落番号【0004】【課題を解決するための手段】に、「本発明は、親水性物質を添加したことを特徴とするガラスびんの固体滑剤コーティング剤、ガラスびんの製造工程における徐冷炉の出口付近で、親水性物質を添加した固体滑剤コーティング剤をガラスびんの外面に塗布することを特徴とすガラスびんのコーティング方法、及び、親水性物質を添加した固体滑剤コーティング剤を外面に塗布したことを特徴とするガラスびんである。」
(リ)段落番号【0005】に、「親水性物質を添加する前の固体滑剤コーティング剤は、主にポリエチレンの微粒子を水の中に分散させた周知のものである。・・・」
(ヌ)段落番号【0006】に、「コーティング剤に添加する親水性物質は可溶性物質及び/又は難溶性物質とすることができる。可溶性物質の例としては、界面活性剤、砂糖、食塩などがある。難溶性物質の例としてはデンプン、セルロース、セルロース誘導体、タンパク質などがある。これらの物質を混合して用いてもよい。」
(ル)段落番号【0007】に、「固体滑剤コーティング剤に可溶性の親水性物質を添加した場合・・・水洗前においては固体滑剤と親水性物質が表面に露出している。ポリエチレンなどの固体滑剤は糊の接着性が悪いが親水性物質は糊の接着性がよいので、固体滑剤のみが露出している従来のコーティングに比べて接着性が大きく向上する。・・・」
(ヲ)段落番号【0008】に、「固体滑剤コーティング剤に難溶性の親水性物質を添加した場合・・・水洗前においては固体滑剤と親水性物質が表面に露出している。ポリエチレンなどの固体滑剤は糊の接着性が悪いが親水性物質は糊の接着性がよいので、固体滑剤のみが露出している従来のコーティングに比べて接着性が大きく向上する。・・・」

3.対比・判断
本願発明と上記引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は、
外面に、コーティングを行った後、そのコーティング層の上に感熱ラベルを貼付したことを特徴とする感熱プレラベル付きガラスびん
の発明である点で一致しており、コーティングに関して、本願発明が「糖類及び/又はその誘導体と、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含むコーティング液による」コーティングであるのに対し引用文献1に記載されたコーティングは、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型のプラスチックコーティングを施し、このプラスチックコーティングに表面処理を施したものである点で相違している。

そこで上記の相違点について検討する。
上記の相違点に係る事項は、その手段はおいて、いずれも、外面に保護や装飾のためのプラスチックコーティングを施されたガラスびんに感熱ラベルを貼付して、感熱プレラベル付きガラスびんとなす際にプラスチックコーティング層に対する感熱ラベルの接着性が低下するという本願出願前周知の共通の課題を解決するものである。
さらに検討すると、上記引用文献2には、同様に、プラスチックコーティングガラスびんのラベルの接着性を向上するための手段として、親水性物質を添加した固体滑剤コーティング剤を外面に塗布することが記載されており、該親水性物質として本願発明の「糖類及び/又はその誘導体」に相当する、砂糖、デンプン、セルロース、セルロース誘導体又はこれらの混合物が例示され[上記摘示記載(ヌ)参照]、「親水性物質を添加する前の固体滑剤コーティング剤は、主にポリエチレンの微粒子を水の中に分散させた周知のもの」である[上記摘示記載(リ)参照]とされている。
すなわち、引用文献2には、ガラスびんのプラスチックコーティング層に対するラベルの接着性を向上させるために、「糖類及び/又はその誘導体と、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含むコーティング液による」コーティングを施すことが記載されているということができる。
そして、上記引用文献2に記載された、「糖類及び/又はその誘導体と、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含むコーティング液」によるコーティングのラベルとの接着性の向上は、上記親水性物質中のカルボキシル基や水酸基の親水性によるものであり、それらは、ラベルの接着手段が引用文献2に例示されたデンプン糊の場合と同様に熱可塑性樹脂等からなる感熱接着剤である場合にも、接着性を向上させることは、当業者であれば容易に推察しうる技術常識ということができる。
この点について、たとえば、特開2001-220179号公報には、ガラス被覆用ポリエステル樹脂の酸価が高い、すなわち、被覆樹脂中の遊離カルボキシル基が多い方が、被膜とラベルの接着性がよく、このことはラベル用の接着剤がでんぷん糊の場合にも、感熱接着剤の代表的材料であるビニル樹脂の場合にも同様であることが示されている[段落番号【0016】、【0020】、【0047】等の記載参照]。
してみれば、上記引用文献1に記載された感熱プレラベル付きのプラスチックコーティングガラスびんにおいて、コーティング層と感熱ラベルとの接着性を向上させるための手段として、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型のプラスチックコーティングに表面処理を施すに代えて、引用文献2に記載された「糖類及び/又はその誘導体と、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含むコーティング液による」コーティングを施すようにすることは、上記の技術常識を勘案すれば当業者が容易に想到しうる事項であり、それによって生じる作用・効果も、上記の引用文献1及び2の記載等から当業者が容易に予測しうる程度のものと認められる。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、本願出願前周知の技術的事項を勘案すれば、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-16 
結審通知日 2007-03-13 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願2001-362109(P2001-362109)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 大志  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 豊永 茂弘
石田 宏之
発明の名称 感熱プレラベル付きガラスびん  
代理人 神戸 真  
代理人 川端 佳代子  

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